ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ゴビンダ医師のハンスト闘争(10)

(2)MEPC報告書の提出
デウバ首相による「医学教育令」制定の3か月弱後,首相任期終了(2018年2月15日)直前の2018年2月4日,「医学教育問題調査委員会(Medical Education Probe Committee [MEPC])が調査報告書をデウバ首相に提出した。

MEPCは,ゴビンダ医師らの要求によりプラチャンダ首相(MC)が2017年4月17日に設置した委員会であり,紛らわしいがMNC(ネパール医学委員会)とは別の組織。

医学教育問題調査委員会(MEPC)
設置目的・権限:医科・歯科大学の開設,授業料,学生数,教職員配置などの調査,および「ネパール医学委員会(Nepal Medical Council)」の運営状況調査。
委員長:ガウリ・B・カルキ(元特別裁判所裁判長[注])。
委 員:ウペンドラ・デブコタ(医師),スルヤ・P・ガウタム(教育省事務次長),ほか数名。
 [注]最高裁判所―上訴裁判所(16)―郡裁判所(75)
    最高裁判所―(他の裁判所)特別裁判所/行政裁判所/労働裁判所
    (ただし連邦制移行に伴い,裁判所組織も改変中。)

このMEPCが2017年8月3日,ネパール医学委員会(NMC)の元委員らを召喚し,医科大学受入学生不正増員容疑で聴取することを決めた。召喚されたのは,アニル・K・ジャー元委員長,AE・アンサリ元副委員長を含む元委員ら20名(*2)。

さらにまたMEPCは,職権乱用調査委員会(CIAA)の専門職員8名も,カトマンズ大学医学部大学院入試に不正関与した容疑で召喚した。

そして11月に入り,医学教育令が制定されると,その直後の11月12日,MEPCはトリブバン大学(TU)とカトマンズ大学(KU)の幹部の召喚を決めた。TU幹部はカトマンズ・ナショナル医科大学設立に不正関与した容疑であり,KU幹部は医大授業料不正値上げの容疑。

召喚された大学幹部
TU:ヒラ・B・マハルジャン元副学長,ティルタ・R・カニヤ副学長,スダ・トリパティ名誉総長(Rector),ディリ・ウプレティ教務職員(Registrar),およびカトマンズ・ナショナル医科大学インフラ監査担当のカルビル・N・シャルマ教授ら他の教職員6名。
KU:ラムカンタ・マカジュ副学長ほか。

さらにこの日,MEPCは,前回の召喚に応じなかったNMC調査委員のシャシ・シャルマ医師も再召喚した。

このようにMEPCが召喚し聴取してきたのは,主にネパール学界,政官界の著名有力者たちであり,ここからだけでもネパールにおける医学教育問題の根深さ,解決の難しさがよく見て取れる(*5,6)。

MEPCは,こうした召喚・聴取に基づき2018年2月4日,デウバ首相に報告書を提出した。その概要は以下の通り。

MEPC報告書概要
・医学分野の改革につき調査し,それに基づき改革を実行せよ。
・医学生たるに必要な能力の確保・維持。
・医科大学学生定員は,NMCが割り当てる。
・学生数過多,授業料過大徴収,教育水準不足の医科大学に対する処分。
・大学,保健省,教育省,NMC各代表からなる委員会を設置し,医大を年2回以上調査。
・不正関与の教職員等43名の適正な処罰。処罰被対象者は,召喚されたTU副学長らであり,在職者は免職。また,医学教育に不当介入したCIAAロックマン・カルキ委員長についても適正な処分を行う。
・連邦医大を設置し,その下に各州3校までの提携医大設置を可能とする。
・医学教育令が実際に施行されるまで,提携医大の学生数は提携元大学が定める。
・医科大学の大学暦の統一。

このような内容の報告書を作成したMEPCは,それをデウバ首相に提出しようとしたが,当初,首相は受け取りを拒んだ。これに対し,ガウリ・カルキMEPC委員長が受け取らないなら郵便で送りつけると迫ったので,仕方なくデウバ首相は2018年2月4日,報告書を受け取り,担当の教育省に回した。ただし,報告書を受け取ったものの,首相はそれを公表せずコメントも一切拒否した。保健医療改革への消極姿勢が如実に表れている(*7,8,9,10,11)。

▼カトマンズ・ナショナル医科大学(同校FBより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/01 @ 15:17

カテゴリー: 健康, 教育

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