ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ゴビンダ医師のハンスト闘争(14)

5.オリ共産党政権成立とその医学教育政策
 (1)医学教育政策後退とゴビンダ医師の抵抗
 (2)オリ政権の医学教育法案(以上前出)

(3)医学教育法案批判
この政府提出「医学教育法案」に対し,ゴビンダ医師はむろんのこと,野党や市民社会の多くも猛反発した。
ガガン・タパ(コングレス党議員,元保健大臣)
共産党政府は,半年もあったのに,医学教育令を法律として制定することをしなかった。そして,「[医学教育令代替]法案を議会に提出してのはよいが,その法案では,医学教育令の重要規定が特定利益諸集団の都合の良いように改変されてしまっていた。コングレス党は,このような法案は認めない。」「もし新しい医学教育法案が従来の医学教育令に規定されていた諸規定を持たないのであれば,われわれは,それに反対するため再び立ち上がらざるをえないだろう。」(*1)

「政府は,共産党系実業家のために,現行政令の定める諸規定を改変した。法案の中のそれらの改変は,これまでの取り決めに反するものであり,わが党(NC)は議会において,それらに断固反対するであろう。」(*2)

ディレンドラ・P・バドゥ(コングレス党議員)
下院に7月6日,政府案修正動議を提出し,こう述べた。「医学教育令は,政府とKC医師との合意に基づき制定された。この政令に沿う法案を要求し,KC医師は決死のハンストをしているのだ。」(*3)

スシラ・カルキ(元最高裁長官)
「公的弁護制度連盟」集会において,スシラ・カルキ元最高裁長官は「現政府がKC医師の諸要求を葬り去ることを考えているのなら,それは専制主義者,封建主義者,そしてマフィアの作る政府である」と述べ,オリ政府を厳しく批判した。この集会には,KB・マテマも出席している。カルキは,こう続けている。

「[KCには妻子はない。]KC医師は,この国に利用可能で軽負担の保健サービスと医学教育を実現することをもっぱら訴えている。彼の要求は,個人的なものではなく,人民の要求である。KC医師が人民のために闘うのは犯罪だろうか? 何かと人民を引き合いに出す政府だが,一般の人々や地方・遠隔地の貧しい人々の福祉については,政府は特にこれといったことは何もしてこなかった。」(*4)

KB・マテマ(元医学教育政策に関する上級委員会代表,元トリブバン大学副学長,元駐日大使)
マテマは,「マテマ委員会」が勧告しゴビンダ医師がその実施を強く要求しているカトマンズ盆地内医大新設10年間禁止を政府が医学教育法案から削除したことを厳しく批判し,こう述べている。

「この規定は,他の地域での医大および附属病院の開設を促進するためのものだった。全国に18ある医大のうちカトマンズ盆地にはすでに11の医大がある。中部は人口80万人に対し医大は1,極西部は250万人に対し医大はゼロ。だから,われわれは地方の一般の人々にも良好な保健医療が受けられるようにするため,首都盆地以外の地域での医大開設を勧告したのだ。」(*5)

ビシュヌ・P・アルヤル(ジャーナリスト)
ビシュヌ・P・アルヤルは,その記事「共産党有力者の経済的利益が医学教育法案問題の核心」(『リパブリカ』7月5日)において,政府提出「医学教育法案」は共産党幹部の金儲けのためのものにすぎないと一刀両断のもとに切り捨てた。下記イラストを見ると,利害関係は一目瞭然(*5)。

▼共産党有力者と医学教育法案
『リパブリカ』7月5日

*1 “Legal void likely in medical education after Wednesday,” Republica, July 3, 2018
*2 “Replacement medical education bill draws flak,” Republica, July 1, 2018
*3 “NC blocks House over issue of Dr KC,” Republica, July 7, 2018
*4 “This is a govt of tyrants, feudalists and mafia: Ex-CJ Karki,” Republica, July 4, 2018
*5 Bishnu Prasad Aryal, “Business stake of CPN bigwigs at heart of medical education bill tussle,” Republica, July 5, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/01/06 @ 14:42