ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (4)

5.ハニーさんのハンスト:開始から飢餓死まで
ハニーさんが,大村入管センターで最後のハンストを開始し飢餓死するに至った経緯は,入管庁「調査報告書」および関係報道等によれば,おおよそ次の通り。

[2018年06月]4回目の仮放免請求,不許可。
[2019年01月]大村センター診療室での健康診断を拒否。「日本で子どもが生活しており,子どものためにも自ら帰国することを選ぶことはできません」と看守に述べる。
[2019年02月]健康診断拒否。5月の健康診断も拒否。
[2019年05月30日]ハニーさん,看守に,1週間ほど前から摂食していないと述べ,「約10年間自由がありません。仮放免でも強制送還でもいいので,ここから出してください」と訴える。
[2019年05月31日]大村センター診療室での点滴と採血を拒否。外部病院を受診し,脱水のため点滴を受ける。
[2019年06月01-04日]外部病院で診察,拒食による脱水のため点滴を受ける。
[2019年06月05日]所内,外部のいずれでも,治療を受けないと述べる。
[2019年06月14日]経腸栄養剤,一口服用。
[2019年06月17日]拒食を続けると生命が危険と警告されるが,治療拒否。サニーさん「私は自由になりたいだけだ。病気などないから治療は必要ない。」
[2019年06月18日以降]居室内で横臥。拒食,治療拒否続行。体重測定拒否。水分は時折摂取。
[2019年06月24日]《午前8時53分》血圧127(108)/114(82),脈拍54(35)。体重測定拒否。《午前8時54分》点滴,朝食,薬服用のいずれも拒否。水を約20ml飲む。《午後0時54分》息が荒いと看守が報告。《午後1時16分》血圧・体温とも測定不能。その後,心肺蘇生処置実施。《後1時40分》救急車で甲病院搬送。《午後2時11分》甲病院で死亡確認。

体重の変化(身長171cm)
[2018年10月26日]71kg ⇒[2019年5月30日]60.45kg ⇒[6月5日]61.55kg ⇒[6月17日]50.60kg ⇒[6月25日]46.6kg(司法解剖時)

このようにして,サニーさんは,大村センター看守による拒食確認から26日後,実際には拒食はその数日前から始められているとみられるので拒食開始約1か月後に,「飢餓死」してしまった。

この拒食,つまりハンストがいかに過酷なものであったかは,サニーさんの体重が特に大きな持病もないにもかかわらず,ハンスト開始後急減していることだけを見ても明らかである。

サニーさんの身長は171cm,体重は大村センター収容2年余後の2018年10月26日には71kgであった。それがハンストの繰り返しで半年後には60kg余となり,そして2019年6月25日のハンスト死の時には46.6kgに急減していた。

私自身の体験からも,体重急減がつらいことはよくわかる。私は身長162㎝で,体重は長年,約52kgで安定していたが,家族介護の無理がたたって半年ほどで46㎏にまで急減した。わずか10%ほどの減少にしかすぎないのに,体調は著しく悪化,いつ倒れるかわからないような状態になってしまった。

サニーさんの場合,71kgの体重が半年後には46kg余へと,3割以上も激減した。身長171cmだから,ガリガリに痩せてしまっていたのだろう。死が切迫していることは,この外見からだけでも明らかなのに,大村センターは結局,彼の生命を救うことが出来なかったのである。

*1 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」2019年10月
*2 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査結果(概要)
*26 「ハンストのナイジェリア人男性が飢餓死するまで 調査報告書を読んだ医師が解説」dailyshincho, 2019/10/08
*34 野村昌二「体重71キロが47キロに…入管収容者の餓死 外国人に人権ないのか?」AERA,2019/11/12
*35 大橋毅「「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」の検討」,2019/12/28

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/05/29 @ 09:42

カテゴリー: 社会, 労働, 人権

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