ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (8)

9.強制治療・強制栄養の残虐非人道性
日本政府は,「調査報告書」でも明らかなように,入管施設収容のハンスト者(拒食者)に対し強制治療・強制栄養をすることを認めている。

しかしながら,「リスボン宣言」や「マルタ宣言」をみれば明らかのように,それらは極めて残虐で非人道的であり,とうてい許容されるものではない。

このことは,古くから欧米で繰り返されてきた強制治療・強制栄養の多くの記録を見ても明らかである。以下参照。
ゴビンダ医師のハンスト闘争(21)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(22)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(23)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(24)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(25)

以上の多くの事例から明らかなように,入管施設被収容者に強制治療・強制栄養を実施し,力づくでハンスト(拒食)を断念させようとするようなことは,なすべきではない。残虐,非人道的であるばかりか,それらを強行しても成功の見込みはない。

したがって,サニーさんに対し強制治療・強制栄養を実施しなかったこと,それをもって出先機関たる大村センターの責任を問うべきでもない。大村センターの責任は,仮放免など他の採りうる方法によりハンスト死を防止するための努力を十分に尽くさなかったことにある。

 
■奴隷用強制摂食器具(National Museum of Denmark)/フォアグラ強制給餌(Stop Force-feeding)

10 見直されるべき入国管理政策
大村センターでハニーさんをハンストに追い込み,死に至らしめたのは,日本政府の入国管理政策そのものである。

外国人労働者を,尊重されるべき人格をもった「人間」としてではなく,安上がりで使い勝手の良い「労働力」としてのみ受け入れ,日本側の都合で不要となれば,一方的に送り返そうとする。もし在留資格が切れ,特別在留資格も得られず強制退去命令を受け収容施設に入れられてしまうと,仮放免はあるにせよ,原則として出国まで「無期限」で拘束される。

また,入管施設被収容者が難民申請をしていても,難民認定は極めて厳しく,やはり長期の「無期限」収容ということになってしまう。

外国人労働者や移民・難民の扱いは,どの国においても難しい課題だが,日本の場合は,とりわけ問題が多い。ただ,はっきりしているのは,このままでは「無期限」収容への抗議ハンストはなくならず,しかもそれを断念させるための強制治療・強制栄養はあまりにも残虐・非人道的なため実施は実際には困難だということである。

入管施設でのハンスト問題は,外国人労働者あるいは移民・難民の処遇を根本的に改める以外に,解決されることはないだろう。


■強制摂食反対ポスター/ICE強制摂食抗議デモ(NYT, 2019/01/31

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/06/02 @ 08:51