ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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国連を敵に回した靖国参拝

1.国連の靖国参拝批判
国連のパン・ギムン(潘基文,Ban Ki-moon)事務総長が,安倍首相の靖国参拝を批判した。事務総長報道官の「声明」によれば,パン事務総長はこう述べている。
 ・「過去から生じる緊張がいまだに(北東アジア)地域を悩ませていることを非常に遺憾に思う」。
 ・「事務総長は一貫して地域の国々に対し、共有する歴史について共通の認識や理解に至るよう促してきた」。
 ・「他者の感情、特に被害者の記憶に敏感であることや、(各国が)相互信頼の構築や連携強化に尽力すること」が必要。
 ・各国の指導者は「特別な責務」を負う。(共同,12月28日)
これは,まずい。日本は,国連,つまりは国際社会を敵に回してしまったのだ。

2.韓国寄りの国連事務総長
むろん,国連も事務総長のパン・ギムン氏も,必ずしも中立公平ではない。パン氏の経歴は以下の通り: 韓国外交部勤務(1970-),外交部国連課長(1980-),駐米総領事(1987-),駐米公使(1992-),外交通商部長官(2004-),国連事務総長(2006-)。

この経歴から見て,パン事務総長が韓国の国益を考えるのは自然な成り行きだ。国連人事では韓国人や身内の優遇をしばしば批判されてきたし,またネパールに関することでも,たとえばプラチャンダの「ルンビニ開発」など,様々な案件においてパン事務総長の韓国寄りがうかがえる。もちろんアメリカともツーカーの仲のはずだ。

3.稚拙で危険な安倍独善外交
しかし,建前はともあれ,外交では,そのようなこともありうることが当然折り込まれている。この国際政治の常識からすると,準備も根回しもない安倍首相の靖国参拝は,独りよがりの愚策中の愚策といってよい。パン事務総長は,米政府の靖国参拝「失望」声明を受け,絶好のチャンスとばかり,国連としての「遺憾」声明を出したのだろう。

これで,日本は米国ばかりか,世界社会をも敵に回してしまった。繰り返すが,国際機関が中立公平でないのは,自明のこと。それを十分考えた上で,最大限国益に沿うような可能な政策を選択するのが,まともな大人の政治家だ。『美しい国へ』の書評で指摘したように,安倍首相は,精神的に自立した大人の政治家ではない。だから,このような幼稚な失敗外交をやるのだ。

いまの日本は,国際連盟脱退(1933-35年)により国際的に孤立し破滅へと転落していった頃と,構図的には,よく似ている。世界のどこにも通用しない独善を,壮挙と錯覚している。このような世界の非常識をヒステリックに叫ぶのが愛国的ともてはやされ始めたら,集団誇大妄想に囚われ,ふたたび取り返しがつかない事態に陥るであろう。

131228b ■The Korea Times(28 Dec.)

4.中国の対日情報戦略
さらにもう一つ,警戒すべきは,パン国連事務総長の「声明」をいち早く最も詳しく伝えたのは,中国メディアだということ。28日付新華社英語版によれば,パン事務総長は,安倍首相の靖国参拝について,こう発言している。

“It is highly regrettable that tensions from the past are still plaguing the region.”
“The secretary-general is aware of the visit by the Prime Minister of Japan to the Yasukuni shrine, as well as of a strong reaction to it by China and the Republic of Korea.”
“The secretary- general has been consistent in urging the countries in the region to come to a common view and understanding of their shared history.”
The UN chief “stresses the need to be sensitive to the feelings of others, especially memory of victims, and focus on building mutual trust and stronger partnership.”(Xinhua 2013-12-28)

このパン事務総長の公式発言を受け,新華社は,こうコメントした。「安倍首相は木曜日,A級戦犯14人を含む戦死者を祀る神社に参拝した。この神社は,日本の過去の軍国主義のシンボルとみられてきた。」(Ibid)

そして,さらにそれに続けて,中国外務報道官の次のような発言を詳しく伝えた。すなわち,安倍首相の靖国参拝は,日本の植民地支配や侵略戦争を正当化し,日本軍国主義に対する国際社会の審判を否定し,戦後の国際社会秩序を覆そうとするものだ,と。

この中国の靖国参拝批判は,韓国や米国そして国連,つまりは日本をのぞく世界社会の靖国参拝批判と大筋において同じであり,安倍首相の参拝弁解よりもはるかに客観的であり説得力がある。

しかも,中国には日本にはない大国的な戦略的思考がある。中国からは,新華社だけでなく,たとえば中国国際放送など,多くのメディアも同趣旨の靖国参拝批判を世界に向け繰り返し流している。まさしく中国発情報の洪水,日本は到底太刀打ちできない。

世界各地の報道を見ると,多くが新華社記事を転載したり引用したりしている。日本発はあっても,たいてい欧米通信社系のものだ。しかも,多くは英語メディアだから,記事へのコメントは,たいてい外国人のものであり,日本人からのものはほとんど無い。見るも無惨な,安倍ニッポン完敗!

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 ■中国国際放送 英語版/日本語版(12月28日)

5.保守主義者の決起を
安倍首相には,パワーポリティックスへの冷徹な認識もなければ,世界世論を味方につけ国益を図るに必要な戦略的思考もない。保守主義は,本来,成熟した現実主義であるはずだ。自民党の保守本流は,いつまで,このような未熟なアマチュア冒険政治を放任しておくつもりなのだろう。手遅れになる前に,決起すべきではないのか。

谷川昌幸(C)

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2013/12/29 at 03:00

制憲議会選挙2013(20):「革命英雄プラチャンダ」試論2

マオイストが「包括和平協定」(2006年)締結後,合法政党となり,体制内化していったことは,周知の事実である。この変身は,コングレス(NC)や共産党統一マルクス・レーニン派(CPN-UML)が,そしてまた西洋中心の国際社会が,要求したことであった。

マオイストの体制内化は,文字通りドラスティックであった。党幹部ら,特にプラチャンダ議長は,おおかたの期待をはるかに超える「革命的」な過激さで体制内化し,人々のドギモを抜いた。プラチャンダは,勇敢な「革命英雄」から,過激な体制内「豪傑」へと華麗な転身を遂げたのである。

プラチャンダは,首相就任直後,「王様ベッド」を首相公邸に運び込み,世間をあっと言わせた。その後も,超豪華党本部や党議長宅,中・米をも巻き込んだ巨大利権ルンビニ開発,息子を押し立てたエベレスト遠征など,アッケラカンと権力私物化を満喫した。そして,今回選挙では,親族縁者をあちこちに立て,身内コネ社会ネパールの実情を,一身をもって満天下に暴露した。さすが大物,何ら臆するところがない。ネアカの大豪傑だ。

131129b ■「選挙公約(प्रतिबद्धता पत्र )」開発計画 

ネパール政治社会の宿痾とされる権力私物化や利権は,王制下では,特権階級が比較的限定されていたため,わかりやすく,それだけ御しやすかった。ところが,民主革命により権力分有参加が一気に進展し社会関係が複雑化したため,権力や様々な意思決定過程に参加する人びとの数が激増し,それに応じて,権力私物化や利権も拡散した。いまでは,多くの人が,どこかで,何らかの利権を求め,右往左往している。

プラチャンダは,いまやその利権的コネ社会ネパールのチャンピオンである。ネパール社会の現実を理念化して映し出す鏡,それがプラチャンダだ。多くの人びとが,いたるところで,こそこそやっていることを,プラチャンダは,大胆不敵にも,何の言い訳もせず,何はばかることなく,平然とやってのけてきた。まさしくネアカ豪傑だ。

プラチャンダが,自覚的に露悪的態度をとり,世間を覚醒させようとしているのかどうか,それはわからない。しかし,プラチャンダの権力私物化や身内コネ優遇を非難すれば,たちどころにそれは,非難している人びと自身に跳ね返ってくる。あなた自身はどうなのか,と。

すくなくとも,よそもの外国人には,こそこそと小ずるく利権をあさる小心者よりも,米・中をも手玉にとり,何はばかることなく,アッケラカンと巨大利権を要求するプラチャンダの方が,はるかに魅力的だ。

もしプラチャンダが,自覚的にこのような自己戯画化の態度をとっているなら,彼は本物の大物だといえよう。

131129a ■「選挙公約(प्रतिबद्धता पत्र )」裏表紙

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/11/29 at 13:56

対ネ最大投資国,中国

新華社(8月21日)によれば,対ネパール投資において,中国が最大投資国となった。

ネパール政府統計2012-13によれば,諸外国の対ネ直接投資は193.9億ルピーで,中国がその30.9%を占め,初めてインドを抜き,最大の対ネ投資国となった。
 ▼2011-12年度 インド:38.8億ルピー  中国:10億ルピー
 ▼2012-13年度 中国:59.9億ルピー  インド:25億ルピー

これが大きな意味を持つことは明白。中国にとって,ネパールは南にインドを控えており,経済的にも政治的にも重要性は増すばかり。インドとの軋轢はあろうが,この流れはもはや止められない。

この中国投資でいま注目されているのが,ポカラ国際空港の建設。中国輸出入銀行からの長期低利融資1億4500万ドルを受け,中国の空港(成都双流国際空港など)をモデルに, 中国CAMC(中工国际工程股份有限公司)が施工する。

このポカラ国際空港は,1989年頃から日本のJICAが手がけたが,結局,中国丸抱えで建設されることになった。ルンビニ開発も,もとは日本が手がけていたが,こちらも,バイラワ国際空港建設を手始めに,結局,中国勢が中心となりそうだ。

まさに破竹の中国経済進出。昨日の新華社ニュースによれば,中国は公館もネパール国内に増設するという。日本は蹴散らされても実害は大してないが,インドにとっては,心中穏やかではあるまい。

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 ■ポカラ国際空港フェイスブック

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/08/23 at 09:12

カテゴリー: インド, 経済, 旅行, 中国

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桜満開の校庭で籾干し:パンガ

17日もティハール休みの続き。午前、ホテル屋上でヒマラヤ連山を見ながらひなたぼっこ。午後2時頃から丘を下り、パンガ、イェチョー方面に散策に出た。道草をしながら、イェチョーまで40分くらい。

キルティプールのパンガへの岐路のところに電気屋さんがあった。看板はサムスン、そして驚いたことに店頭山積みのテレビはネパール製。ムスタン車ばかりかテレビまでネパールで作るようになったのだ。プラチャンダのルンビニ開発が始まれば、タライ工業地帯製の家電が日本にどっと輸入されるようになるかもしれない。

 ■電気屋さん(キルティプール)

パンガは、キルティプールのすぐ隣、古い家屋が残り、なかなか趣のある村(町)だ。家の戸口に絵付きの大きな瓶が置いてあるのも優雅だ。

 
 ■パンガの民家/UMLの年賀宣伝

このパンガの入口に、こんな宣伝が出ているのに気づいた。下はコーラの宣伝、中間にネパール新年(ヒンドゥー教/仏教)広告、上にキリスト教会(福音派?)の呼びかけ。左下には今時のネパール女性、その奥には仏教かヒンドゥーの神像。これは意味深だ。

かつては宣教師が真っ先にやってきたが、資本主義社会になるとコーラが一番乗り、続いてキリスト教という順になる。コーラを飲めばアメリカが恋しくなり、そうなればキリスト教の出番というわけだ。俗に言うコーラ帝国主義。この展開はマオイストが敏感に感じ取り、闘争初期には米帝の先兵コーラの工場を標的にし、いくつかを実際に破壊した。しかし、いまではマオイストが率先してコーラを飲んでいる。ということは、キリスト教導入もマオイスト先導ということになるかもしれない。

 ■コーラ・ネパール新年・キリスト教

それはともあれ、パンガ村の外れには立派な「ジャナセワ高校」があり、その校庭では近所総出で籾干しをやっていた。桜が校庭の南西角に植えてあり、いままさに満開。上方北にはランタンの高峰。これは壮観だ。

 ■桜と籾干し(ジャナセワ高校)

 
 ■ランタンと籾袋/イェチョー付近の小道とランタン

さらに先に進み、イェチョー付近にくると、チョバールの丘やヒマラヤの山々が別の角度から見えるようになる。平地で、近景に家屋、花、バナナ、人物などが入るので、高度感は丘の上よりも格段に大きい。「ヒマラヤは高い」を感じたければ、低い平地に下りるに限る。素人の安物カメラの手持ち撮影でも、この程度の迫力は出せるのだから、やはりヒマラヤはすごい。ただし、こりすぎると絵に描いたような写真になってしまう。

イェチョーには桜もある。農家、牛、秋桜と並ぶと異国情緒たっぷり。こちらも楽しめる。

 
 ■チョバールの丘/農家と牛と桜

 
 ■ランタンとバナナ/グルカルポリとキルティプールの丘 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/20 at 01:17

ルンビニ開発、了解覚書に署名・成立

中国主導のルンビニ開発計画の了解覚書(MoU)が11月7日、署名・成立した。中国側はAPECF(アジア太平洋相互協力基金)、ネパール側はLDSC(ルンビニ開発調整委員会)[ないしLDNDC=ルンビニ開発国家指導委員会]。LDSC議長はいうまでもなく、プラチャンダ(プスパカマル・ダハール)統一共産党毛沢東派(UCPN-M)議長だ。
 ▼ルンビニ開発

計画では、ルンビニ国際平和都市建設に30億ドル投資する予定。途方もない大計画だが、政治的にも経済的にも成算はありそうだ。

政治的には、中国と、この開発計画に深く関与している米国で、インドを牽制する意味合いがある。

国際政治は複雑怪奇で、米国は中国と対立しつつも、対印では手を結ぶ。一方、対中では、米国はインドと組む。そして、そこにプラチャンダのネパールが利用されつつ、漁夫の利をねらう。おそらく各国情報機関も関与しているであろう。素人にはうかがい知れない、国際政治の伏魔殿である。

経済的には、投資が始まれば、将来性は甚大だ。ルンビニ付近は、開発余地が十二分にあり、隣にインドの巨大人口・巨大市場、中国とも道路と鉄道とで結ぶ計画がある。ここに国際空港ができると、チトワン、ポカラも含め、一大観光地、巨大商工業地が出来上がる。

そこに目をつけた中国は、さすが抜け目がない。成功すれば、プラチャンダも大富豪となり、マオイスト革命などきれいさっぱり忘却してしまうだろう。

しかし、問題はインド。国境沿いの、目と鼻の先に、中国・米国のなにやら怪しげな機関も関与していると噂の開発計画を黙認するかどうか? その気になれば、インドはいつでもこんな計画など、ぶち壊すことができるだろう。


 ■朝霧に浮かぶ摩天楼。カトマンズ開発も急ピッチ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/09 at 10:30

カテゴリー: 経済, 外交, 中国

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プラチャンダの政治センス:「連邦民主共和国同盟」結成

プラチャンダは,現在のネパールでは,ダントツの政治センスを持つ本物のカリスマである。

1.カリスマ政治家としてのプラチャンダ
首相就任後,直ちに「王様ベッド」を首相公邸に搬入させたこと,ルンビニ開発で米中要人や国連事務総長を手玉にとったこと,息子にエベレストを征服させ山頂に赤旗を立てさせたこと――これらすべてが,プラチャンダの政治センスの良さ,カリスマとしての資質をよく示している。

人民は,ネアカのプラチャンダを英雄として愛しており,その証拠に,大金・小金を湯水のごとく使おうが,息子が不倫・逃亡しようが,彼に失脚の兆しは無い。

プラチャンダ非難をしているのは,民衆ではなく,ひがみっぽい小物政治家・知識人である。民衆は,英雄が好きなのだ。

2.民族/ジャーティの政治的制御
その政治家プラチャンダは,他の誰よりも,民族/ジャーティのもつ破壊力を熟知している。人民戦争を勝利させ王制を打倒したのは,プロレタリア「階級」ではなく,被抑圧「民族/ジャーティ」である。

しかし,その一方,民族/ジャーティ帰属意識は非合理的なものであり,日常的な合理的制御は困難である。このこともプラチャンダはよく知っている。民族アイデンティティは破壊には使えても建設には使えない――この洞察をふまえ,プラチャンダはその政治的手腕により民族/ジャーティを政治的に巧妙に利用しつつ,マオイスト革命を前進させようとしているのだ。

3.両面作戦の力わざ
最近のプラチャンダの政策は,多民族(多アイデンティティ)州をにおわせることによりコングレス党と統一共産党に制憲議会選挙実施への譲歩を迫り,これが十分功を奏さないとみると,単一民族(単一アイデンティティ)州に比重を移し,両党の被抑圧民族/ジャーティ派に揺さぶりをかけるという両面作戦である。

難しい両面作戦だが,それを力わざで統合できるのが,プラチャンダのカリスマたるゆえんである。

4.戦略としての連邦共和国同盟
プラチャンダが8月13日結成し自ら議長となった「連邦共和国同盟」も,この両面作戦のなかの一戦略である。

この「同盟」結成により最も大きな衝撃を受けているのが統一共産党。ライ副議長は離党し,ジャナジャーティ(少数民族)のための新党結成を予定。他にも,離党を考えている単一民族(単一アイデンティティ)州主義者は少なくない。あるいは,離党ではなく,残留し,単一民族州のための党内闘争を強化していこうと考えている幹部も少なくない。(ekantipur,16-17 Aug)

そうしたなか,最も注目されるのが,バイダCPN-M議長だ。もし彼が「連邦共和国同盟」に参加することになれば,プラチャンダ議長の完勝ということになる。

プラチャンダは,単一民族(アイデンティティ)州など,実現不可能であることをよく知っている。よくわかった上で,その強力なエネルギーを政敵の破壊に利用しようとしているのだ。

こんな恐ろしく危険なことを平然と仕掛けることができるのは,彼が偉大な政治的カリスマだからである。

(参照)Anurag Acharya, “In the name of peace and constitution,” Nepali Times, 16 Aug.

谷川昌幸(C)

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2012/08/17 at 14:49

プラチャンダ中国利権vsバブラム印度利権

トリブバン国際空港(TIA)の管理運営をインドの開発投資会社IL&FSに委託するという話は,バブラム・バタライ首相が昨年10月訪印したとき出てきたという(ekantipur, 4 Jul)。

また,このときIL&FSは,カトマンズ-タライ高速鉄道やバイラワ国際空港の建設にも関心を示したという。

このようなインド側のアプローチに対し,バタライ首相がどう対応したのか分からないが,少なくともインド側が親印派バブラム首相を介してネパール開発利権を得ようとしていることは明白である。

これと対照的に,プラチャンダ議長はこのところ目立った動きをしていない。つい数ヶ月前までは,中国系NGO「アジア太平洋交流協力基金(APECF)」によるルンビニ開発の大風呂敷を広げていたのが嘘のようだ。国連事務総長や韓国政府まで取り込み,得るべきものは得たので一休み,といったところか。

ネパールでは,1990年の民主化以降,経済自由化が進められ,公営事業の多くが民営化された。国家財産,国民財産の払い下げ,たたき売りである。そこには当然,巨大利権が生じ,政治家らが介入する。プラチャンダのルンビニ開発やバブラムのTIA民間委託もその一環である。(注:プラチャンダとバブラムはマルクス・レーニン・毛沢東主義を党是とするUCPNの議長と副議長。)

たしか昨年,カトマンズの水道事業の払い下げが議論された。西欧のどこかの会社が買うという話だったが,これはどうなったのだろう? 貧乏人向けの水道管よりも金満階級向けのタンクローリーに投資した方が儲かるということで,立ち消えになったのかな?

資本主義は,このように命の水ですら商売にする。命を売り買いし,あぶく銭を稼ぐ。命も金次第。いじましく,醜い。

ネパールは,他ならぬ世界最強マオイストが率先して経済自由化を推し進めている点において,世界最先端を行くといってよいであろう。

谷川昌幸(C)

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2012/07/05 at 11:27

TIA空港,インド管理へ?

ネパール政府は,トリブバン国際空港(TIA)の管理・運営をインドの会社に委託する計画という(Republica, 4 Jul)。委託先とされるのは,IL&FS。インフラ開発・金融などの大手であり,日本のオリックスも1/4の大株主(2011年度)。日本も無関係ではない。

 ■IL&FS

トリブバン空港については,以前から治安を理由にインドがしばしば介入した。この管理・委託計画については非難囂々で頓挫の可能性大だが,もし実現すれば,インドはネパールの首根っ子(首都空港)を押さえることになる。

人民戦争終結後,インドは中国の後塵を拝してきた。ラサ-カトマンズ-ルンビニ鉄道計画,ルンビニ国際空港計画,ポカラ国際空港計画,西セティダム計画等々。しかし,もしTIA管理・運営受託となれば,一気に形勢逆転となる。

ネパール政治は,印中米英,そして日本まで絡み,複雑だ。民主化支援,憲法制定支援など,内政干渉そのものだ。外国介入により混乱が続けば,最近とみにお元気な元国王の復権でさえ十分に考えられるだろう。

【参照】
2012/03/27 西セティ・ダム,さらに紛糾
2012/03/20 西セティ・ダム建設,紛糾
2012/01/18 「ネパール=中国友好年」と「ルンビニ観光年」
2011/10/26 プラチャンダのルンビニ開発とバブラムのBIPPA,または中印覇権競争
*ルンビニ開発については,検索「ルンビニ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/04 at 17:25

カテゴリー: インド, 中国

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パン国連事務総長,4月末訪ネ

パン国連事務総長が4月28日,訪ネし,4月29日現地開催の「ルンビニ開発国際会議」に出席する。

以前,パン事務総長は,新憲法制定を訪ネ条件にしていたから,訪ネ決定は,4~5月頃に新憲法が制定されるということではないかと推測される。もしそうなら,めでたいことだし,それをセットした,プラチャンダ議長は,やはり偉い。

それはそうとして,この国際会議には,16仏教国元首が招待される。さて,日本は仏教国かな? 中国-韓国-国連枢軸により憲法制定がセットされ,お祝いがルンビニで派手に催されるというのであれば,かっこわるくて,日本は出席できないだろう。

偉大なプラチャンダ議長(ルンビニ開発調整委員会委員長)は,パン総長をルンビニ開発委員会委員長に担ぎ出すらしい。もちろん,大ルンビニ(ルンビニ・ルパンデヒ・カピルバスツ・ナワルパラシ)開発構想のためだ。

たぶん,日本は外されるだろうな。カネも青写真も中国と韓国(とタイ)からくる。なんせ,115m大仏,ラサ=カトマンズ=ルンビニ鉄道,新国際空港,そして金ぴか五星ホテルと目白押しだから,落日ニッポンなんか,お呼びじゃない。

谷川昌幸(C)

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2012/03/10 at 17:50

カテゴリー: 経済, 文化, 旅行, 中国

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外務審議官訪ネ:地味報道と誤解

別所外務審議官(ネパール報道ではDeputy Foreign Minister)が22-23日,ネパールを公式訪問され,バブラム首相らとも会見されたが,メディアの扱いは小さかった。

別所審議官は,ネパール平和構築支援や青年50人への危機管理訓練などを約束され,日本援助のカトマンズ=バクタプル道路の視察もされたらしい。

これに対し,ネパール各紙がその小さな記事の中で特に言及したのは,バブラム首相らが別所審議官に対し,「ルンビニ観光年2012」に日本人仏教徒観光客を多数送り込んで欲しい,と要請したということ。

あれあれ! ルンビニ開発は,韓国のプランで,中国資本が手がけるのではなかったかな? 115m大仏に,プール付五星高級ホテル。残念ながら,韓国援助の新国際空港も中国援助のルンビニ鉄道も間に合いそうにないが,それでも中国・韓国による巨大開発が始まっているであろうルンビニに,清貧を旨とする日本人仏教徒を招くという。

ネパールは,日本を誤解している。政府系ライジングネパールは,別所審議官訪ネ記事を「経済記事」に分類し,バブラム首相やプラチャンダ議長らも日本のフトコロを当てにしている。完全な誤解。日本は,もはや中国や韓国のようなお金持ちではないのだ。

落日ニッポンの姿は,政府開発援助(ODA)削減をみれば,明らかだ。

目も当てられない惨めさ。ODAは今後も大幅削減を免れない。金持ちの清貧ではない。本当に,お金が無いのだ。

しかも,ネパール援助は,日本にとって見返りがほとんど無かった。費用対効果が極端に悪い。「国益のための援助」に方向転換した日本政府が,「無駄な援助」をバッサリ切る可能性は十分にある。

金の切れ目が縁の切れ目となるかどうか? そうさせないのが外交の役目だが,さて,どうなるやら。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/02/25 at 11:05

カテゴリー: 経済, 外交

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