ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

検索結果

京都の米軍基地(39):二重の危険にさらされる住民

京都の住民は,米軍Xバンドレーダーの危険に加え,福井原発事故被曝の危険にもさらされている。

これを改めて思い知らされたのが,兵庫県発表(4月24日)の「放射性物質拡散シミュレーションの結果について」。福井原発事故による放射性物資の拡散がこれだけ遠くにまで及ぶとすれば,京丹後市(印)はむろんのこと京都市(印)ですら深刻な被曝の危険にさらされていることになる。

そこで不思議なのは,京丹後市や京都市・京都府が原発廃止に回らないばかりか,原発再稼働の場合の危険性を深刻に受け止め,地域住民避難の準備や訓練を十分にやっているようにも見えないこと。まぁ,さもありなん――京丹後市長や京都府知事には,はるか彼方の「国益」の方が大切なのだから。

140425c140425d
 ■兵庫県シミュレーション

140425b140425a
 ■舞鶴市避難計画/京都市対応計画
 
[参考資料]
・兵庫県「放射性物質拡散シミュレーションの結果について」2014年4月
・「京都市原子力発電所事故対応暫定計画」平成24年4月
・「舞鶴市原子力災害住民避難計画」平成25年3月
福井原発関連記事

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/25 at 20:37

京都の米軍基地(22):「詭弁」答弁と無責任市議会

京丹後市議会は,9月24日,議員全員協議会を開催し,「米軍Xバンドレーダーの配備受け入れ要請に関する対応について」協議した。(クリック→ユーチューブ再生)

不思議なのは,中山市長の防衛大臣訪問(9月10日)や受入表明(9月19日)の前に,議会で何の決議もしていないこと。議員全員協議会で何回か協議しているが,これは要するにおしゃべり,正式の議会での受入決議は,新聞報道で見る限り,ない。しかも,受け入れについては,市長「受入表明」だけで済ませ,正式の文書は出さないという。こんな重大問題なのに,議会決議も,文書での正式回答もなし。なぜ要求しないのか? こんなていたらくでは,議会の責任放棄と批判されても,いたしかたあるまい。

受入表明後の議員全員協議会(9月24日)は,したがって気が抜けたビール,中山市長のお話し拝聴に終始した。

131009b ■中山市長の議会答弁(9月24日)

そうした中,1人気を吐いていたのが,共産党の森勝議員。質問は,日米安保や地位協定に関する原理的・理論的なものと,沖縄米軍基地等の現実を踏まえた具体的なものとの二本立て。中山市長は,この質問にしどろもどろ,日米安保も地位協定もまともに読んでいないことが露見してしまった。官僚市長だから,政治家の領分たる原理的・理論的議論は,あまり経験がないのだろう。また一方,具体的諸事実に基づく質問にも,官僚的はぐらかし以外の対応はまったく出来なかった。みじめだ。森議員に「幼稚だ」「詭弁だ」とバカにされても,怒ることすらできない。完敗,森議員に赤旗1本だ。

森議員については,議会HP記載以上のことは何も知らない。本拠は網野町。舌鋒鋭く,懲戒請求(2011年10月)されるようなこともあったらしいが,議会中継で見る限りネアカであり,好感が持てる。論敵からも愛されているにちがいない。

共産党には,よく勉強し,地域住民のため地道に活動している党員が少なくない。空気を読まず(読めず)正論を吐くので煙たがられるが,地域の風通しをよくしていることは間違いない。共産党の良心のような人びとだが,党官僚組織内では正当に評価されていないようだ。というよりもむしろ,立身出世に関心がないからこそ,地域での無私の活動が続けられるのだろう。森議員のことは今回の一連の議会発言でしか知らないが,おそらく共産党のそのような誠実な地方党員のお一人であろう。

ここで不思議なのは,森議員のような論客がいるのに,共産党が彼を十分に活躍させていないこと。何らかの配慮かもしれないが,実に惜しい。いまや京丹後市議会は世界に公開され,中山市長と森議員の議論も世界中の人びとに見られている。彼らはどう評価するか? これは明白。世界市民の多くは森議員の完勝と判定するにちがいない。中山市長の官僚答弁は,霞ヶ関のカスミの中では通用しても,世界市民社会では通用しない。森議員の言うとおり,「幼稚」であり「詭弁」だからだ。

131009a ■森議員の議会質問(9月24日)

米軍は世界最強の軍隊であり,自分の手を縛る約束はしないし,たとえしても守りはしない。それは,直近の饗庭野オスプレイ問題を見ても明白。オスプレイは,経ヶ岬や福井原発群の上を飛行するかもしれないのだ。

それでも経ヶ岬に,軍事機密の塊のような米軍Xバンドレーダーを「誘致」するという。なぜか? おそらく無理な広域合併で無用な豪華ハコモノを造りすぎ,市税じゃじゃ漏れ,首が回らなくなり万事休す,米軍基地にすがらざるを得なくなったのだろう。「国家の安全」だの「国益」だのといった高尚な話しではない。背に腹はかえられぬ。要するに,貧すれば鈍するということであろうか。

[参照]森議員の質問
米軍Xバンドレーダー受入:京丹後市議会(9月24日)
米軍Xバンドレーダー配備:京丹後市議会(9月11日)森議員質問
京丹後市Xバンドレーダー審議(6月20日)森議員質問
米軍Xバンドレーダー関連記事▼

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/09 at 22:19

京都の米軍基地(18):Xバンドレーダー受け入れ表明

京都府知事と京丹後市長が,予定通り,すんなりと米軍Xバンドレーダーの経ヶ岬配備を受け入れた。抵抗らしい抵抗もなく,めぼしい補助事業もない。米軍=防衛省=米日軍事産業にとっては,赤子の手をひねるより簡単。楽勝。安上がりで済みそうだ。これが,かつての都,京都の現状なのだ。

1.お願いの倍返し
京丹後市広報や新聞各紙(9月10-11日)によれば,9月10日,山田・京都府知事と中山・京丹後市長が小野寺防衛相と面会し,京都府知事要請書「米軍TPY-2レーダー配備に係る確認・要請事項」と京丹後市長要請書「米軍のTPY-2レーダーの追加配備について」を手渡した。そして,これを受け取った防衛相は「政府として責任をもって対応する」と回答した。知事は,これを「安全確保など政府の責任で対応する約束をもらった」と評価し,記者会見で受け入れ方針を表明した(朝日9月11日)。正式表明は9月17日の定例府議会において。

しかし,日本政府が米軍に対し「お願い」はできても,重要な事案については規制らしい規制はできないことは,沖縄を見るまでもなく,周知の事実である。京都府と京丹後市は,日本政府に対し「米軍へのお願い」を「日本政府にお願い」したにすぎない。「お願い」の倍返しだ。

2.Xバンドレーダー体制と秘密保護法
ここで改めて思い起こすべきは,Xバンドレーダー配備は単なる武器と軍人・軍属の配備ではないということ。それは,より正確には,京丹後市を「Xバンドレーダー体制」のもとに置くということを意味する。

いま安倍内閣は「特定秘密保護法」の制定を急いでいる。朝日新聞によれば,その概要は次の通り。
 ————————
特定秘密保護法案
 (1)防衛(2)外交(3)外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止(4)テロ活動の防止――の4分野について、行政機関の長が指定した「特定秘密」を漏らした場合に、刑事罰が科される。最長は懲役10年。公務員だけでなく、特定秘密の提供を受けた国会議員、特定秘密を取り扱う業者、これを漏らすよう促した人など民間人も対象となる可能性がある。(朝日9月11日)
————————

これは,京丹後市「Xバンドレーダー体制」にとっては,まさに願ったり叶ったり,鬼に金棒。もし“経ヶ岬Xバンドレーダーの出力は○○KW”などという「特定秘密」を某国や某々国の人に,いやたとえ日本の友人・知人にであれ,知らせたなら,「特定秘密漏洩罪」により逮捕され,懲役10年にされてしまう恐れがある。

山田知事は,警官増員や派出所増設を国に要請したが,これも,本当は,公安関係機関と協力し,近隣住民を監視させるのが隠された真の目的。しかし,それもしばらくの間。「特定秘密保護法」が成立すれば,もはやそんな遠慮はいらない。政府は増派された警官を存分に動員し,公然と住民を監視することができる。

3.原発とXバンドレーダーとオスプレイ
さらに警戒を要するのが,オスプレイの饗庭野演習場(滋賀県高島市)での演習。米軍は目的合理的であり,たまたま饗庭野を選んだのではない。地図を見ると分かるように,饗場野は一群の福井原発のすぐ近く。そして,まもなく経ヶ岬にXバンドレーダーも配備される。いずれもテロ攻撃目標。オスプレイは,それらの防衛のため,饗庭野で訓練すると考えるべきだ。

原発防衛のためなら,原発の上や近辺を飛ぶ。落ちるかもしれないが,そんなことは米軍の知ったことではない。

そして,京丹後。Xバンドレーダーは,某国や某々国の情報活動の重要ターゲットとなり,またテロ攻撃の目標ともなる。所有主の米軍は,当然,これを守るため最善の努力をする。その一環としてオスプレイを飛ばすことは十分にあり得ることだ。丹後住民は,いずれ低空飛行のオスプレイに脅かされながら生活することを余儀なくされるであろう。

4.滅私奉公こそ「国益」
それもこれも,お国のため。滅私奉公こそ「国益」。「国益」とは,所詮,そんなものなのだ。

130911a
■右下赤塗り=饗庭野演習場,赤星=経ヶ岬Xバンドレーダー,海岸赤印=原発(Google)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/09/11 at 15:24

京都の米軍基地(12):早期受け入れ要請

7月11日,京丹後市議会議員が,市長に対し,米軍Xバンドレーダー基地受け入れ要請を提出した。議員総数22名のうちの,清風クラブ9名,丹政会4名,雄飛会2名,無会派2名の計17名。(米軍X バンド・レーダー配備受け入れについてpdf)

———————————————————————————————-

京丹後市長 中山泰 様 

平成25年7 月11日

(清風クラブ代表)吉岡和信,(丹政会代表)三崎政直
(雄飛会代表)吉岡豊和,(無会派) 足達昌久,松本聖司

米軍X バンド・レーダー配備受け入れについて

近年、北朝鮮の長距離弾道ミサイル実験や、周辺諸国による我が国固有の領土・領海への侵入行為などにより、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。そのような中、ミサイル防衛の強化を目的に、日米両政府によって米軍Xバンド・レーダー追加配備計画が合意された。その後平成25年2 月26日には防衛事務次官が市役所を訪れ、経ヶ岬分屯基地を最優先候補地として検討・調整したい旨の申し入れがあった。

京丹後市民にとっては突然の出来事でもあり、市民の中に戸惑いや不安の声が広がったことについては理解できるものがある。

議会としては基地対策調査特別委員会を設置し、青森県つがる市への視察等を行うとともに、議員全員協議会を3回開催し、防衛省から説明を受け質疑を行ってきた。また、市としても市民説明会を市内各地域で行うとともに、防衛省へ質問状を送り、その都度回答を得てきたところである。

今般、市から各会派及び無会派議員に対し、Xバンド・レーダー配備計画について意向の問い掛けを受ける中で、我々は、市民の中にある不安や戸惑いの声に留意し、十分配慮しながらも、我が国を取り巻く国際情勢や日米両政府の合意の重み、過度な沖縄の基地負担などを考えた場合、市民の安心・安全の確保を前提に、京丹後市へのXバンド・レーダー配備はやむを得ないものと考えている。

我々は市に対し、下記の事項を付記し、いたずらに時間をかけることなく、Xバンド・レーダー配備受け入れに向けて総合判断して頂くことを求める。

1、国に対し、市民の安心・安全の確保について、万全の対策を講じるよう求めること。
2、国に対し、日米地位協定の運用の課題等について、日米両政府において引き続き見直しの検討を進めるよう求めること。
3、国に対し、民生安定事業等について、地元の不安の声に十分配慮するとともに、事業の拡大を求めること。

以上


—————————————————————————————–

多少の留保はあれ,これは事実上,地元からの積極的な米軍基地設置要請とみてよいだろう(下記市議会構成参照)。これで丹後の人びとは,福井原発からの安全に加え,米軍基地からの安全にも,細心の注意を払わざるをえなくなる。

原発は都市のため,Xバンドレーダーは米国のため。しかも,原発も米軍も核心部分は不明。その正体不明のものから身を守る!? --丹後の人びとは,抽象的な日本国家やはるかかなたの米国ではなく,自分と家族と近隣の人びとの身近で具体的で切実な安全を守るには,これから先,どうすればよいのだろうか? 

京丹後市議会(22名)の構成
清風クラブ(9)◎吉岡和信,金田琮仁,谷口雅昭,中村雅,芳賀裕治,藤田太,堀一郎,松本経一,由利敏雄
丹政会(4)◎三崎政直,池田惠一,谷津伸幸,和田正幸
日本共産党(4)◎森勝,田中邦生,橋本まり子,平林智江美
雄飛会(2)◎吉岡豊和,川村博茂
無会派(3)足達昌久,岡田修,松本聖司

参考資料(2013.7.19追加)】金田そうじんのフルスイングレポート
「・・・・20代、30代の若い人達から、「金田さん、レーダーいいですよねえ」と、切り出されたので、少し驚いて「どう思う?」 と返したところ、口ぐちに 「賛成です」 との意見でした。
日本の国防はアメリカとの日米安全保障条約のもとで衛られている、それがだめなら日本が自ら、防衛費を増やし軍備を整える、場合によっては核武装も視野に、、、以外なことばも出てきました。
「ただ(無料)で平和は得られない、 戦後の日本は日米安保条約によって国の防衛に〝お金と気〝 を使わなくてよかったから、世界が驚く程のスピードで経済発展をした」 
私もこの考えを持っている者の一人だ、との話をしたり、と、大いにしゃべり合いました。私は、若い人達も国の安全保障について、それぞれの思いを持っていることに、たくましさを感じました。・・・・」(地域のみなさんとの懇談からの 思い 『Xバンド・レーダー』より)

参考資料(2013.7.19追加)】 米軍基地設置反対派のビラ
130719

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/07/17 at 14:55

福井原発と京阪神と水上勉

京都新聞元旦特集の一つは,「原発にノー」。それによると,御用鈍足ソフト「SPEEDI」の予測でも,京都市の一部は放射性物質汚染区域に入る。が,これでもなお嘘くさい。放射性物質が,そんなに都合よく予測範囲内に収まるとは考えにくく,実際には風向きによっては京都市,大阪市,神戸市にも広く濃く降下すると考えるべきだろう。

というよりもむしろ,丹後生まれの私の実感からすると,京阪神が原発風下になる確率は,もっともっと高いように思う。低気圧や台風でも,風向きは大きく変わる。京都新聞元旦特集でも,まだなお「不都合な真実」は隠されているのではないか?

福井原発については,大飯出身の水上勉がその差別性を厳しく批判していた。若狭は,京阪神など都市により収奪され,貧困に陥れられ,蔑視され,あげくはその尻ぬぐいをさせられている。贅沢三昧,浪費都市の電力は誰がつくっているのか?

水上勉の地方差別批判は問題の本質を突いている。もし自民党,産業界,都市住民が原発をつくりたいなら,まずは東京湾岸,大阪湾岸につくるべきだ。地産地消。もしつくれないなら,それは若狭でも青森でも,危険なのだ。原発は,地方蔑視の最たるものである。

130101a
 ■高浜原発拡散予測:3月(京都新聞2013-1-1)

130101b
 ■高浜原発拡散予測:2月(京都新聞2013-1-1)

130101c
 ■関西道路図(NEXCO)。この位置関係からして,京都・大阪・神戸・奈良・大津が拡散範囲に入らないのは不自然。SPEEDIより庶民実感の方が予測能力ははるかに高いのではないか?

【参照】
構造的暴力としての原発:堀江邦夫『原発ジプシー』
風力発電も原発もイヤだな
原発報道,朝日とネパリタイムズ
青森沖セシウム汚染魚の報道姿勢
権力監視下のネット社会:原子力安全規制情報
早川教授訓告処分は大学自治の自殺行為
ネパール大使館,大阪に退避

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/01/01 at 15:38

カテゴリー: 経済, 人権

Tagged with , , , ,

風力発電も原発もイヤだな

原子力発電の代わりに風力発電を,という声が日増しに大きくなっているが,風力もイヤだな。私個人にとっては,原発以上に,風力は現実的な脅威だ。

長崎にいた頃,村や島に行くと,巨大風車が設置され,風を受け,大空を切り裂き,回転していた。絵のように美しい風景を無機質な巨大機械が破壊し,野鳥を殺し,そして,おそらく村人の生活を圧迫し精神的・肉体的に苦しめているにちがいない。

秀吉朝鮮出兵陣地,名護屋城の近くには,九電の玄海原発がある。対岸からの遠望でも威圧され,近くに住む村人たちの苦痛は想像にあまりある。事故や地震あるいはテロ攻撃などで原発が破壊されれば,交通の便の悪い周辺住民は,とても逃げ切れないのではないか。

この玄海原発の近くにも風力発電所がいくつかある。唐津側の絵のように美しい小さな村の裏山に巨大風車が数台設置れていた。涙なくして見られない光景。おそらく村人たちは,四六時中,頭上で回転する巨大風車に威圧され,低周波音圧波動に苦しめられながら,日々生活せざるをえないのだろう。
 玄海原発(九電HP)

丹後のわが村は,福井原発群から30キロ圏。原発事故が発生すれば避難せざるをえない。風向きが悪ければ,高濃度汚染され,住めなくなってしまうだろう。福井原発群は,たしかに現実の脅威だ。

一方,わが村は過疎であり,周囲を小高い山に囲まれている。丹後半島は風に恵まれ,山地の地価は限りなくゼロに近い。送電網も既設火力発電所のおかげで,申し分なく完備している。これだけ条件がそろっているので,そのうちわが村周辺にも風力発電所が設置されるのではないかと恐れている。

周辺の稜線沿いや山腹に巨大風車が林立し,四六時中,回転しているわが小村――グロテスクな世紀末風景だ。精神的圧迫,低周波振動による健康障害など,とてもじゃないが,こんな村には住めない。
 福井原発群(福井県原子力センターHP)

 高浜・大飯原発からの距離(朝日新聞2011.5.21)

福井原発群は,わが村にとって,確かに脅威だが,日常的には目にするわけではなく,直接的な被害を受けているわけでもない。いま生きている村人個人にとっての直接的リスクは,車やガス器具などよりもはるかに低い。

ところが,もし風力発電所が近くにできると,被害は四六時中,原発の比ではない。無人島ならいざ知らず,こんな非人間的なグロテスクなものは,つくってはならない。

それでも,どうしてもつくるというのなら,電力を必要としている大都市やその周辺に設置すべきだ。たとえば皇居周辺や大阪城公園など。あるいは,高速道沿いや,東京湾岸,大阪湾岸などもよい。近くにつくれば,風力発電は原発以上に耐えがたいものであることが,理解されるであろう。

保守主義の観点に立てば,原発は廃止すべきである。そして,近代人権主義の観点に立てば,風力発電は,無人島などを除き,設置すべきではない。(自然保護の観点からは,風力発電もすべて禁止すべきだが,この点については別に論ずる。)

【参考資料】
有象無象、「発電成金」を目指せ! 再生可能エネルギーバブルの経済効果 (日経ビジネス2012年7月4日)
 再生可能エネルギーで発電した電力を、一定期間、一定金額で電力会社が買い取る新制度の開始を受けて、エネルギービジネスに新規参入する企業は後を絶たない。7月1日の制度開始から当面は、かなりの好条件が設定されていることから、産業界は色めき立っている。
 実際、これまでエネルギービジネスなど眼中になかった人たちが、商機を見て参入を検討している。ある自治体担当者は、「毎日のように『空いている土地はないか』と問い合わせがあるんです」と明かす。その中には、「この会社は…」と首を傾げるようなところも少なくないという。
 再生可能エネルギーによる発電事業をプロジェクトファイナンスで実施する場合、エクイティ利回り(自己資金に対する利回り)は10%前後まで高まる可能性がある。この低金利のご時世に、これだけの利回りが期待できる金融商品はあまりない。新規参入が相次ぐのは当然のことだろう。
 この状況を、「再エネバブル」や「再エネ狂想曲」と表現するメディアは多い(ここには、もちろん弊誌も含まれている)。・・・・・・・・・・・・・・

【参照】節電・停電

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/09 at 11:43

カテゴリー: 経済, 人権

Tagged with ,

ネパール大使館,大阪に退避

ネパール各紙の報道によれば,ネパール政府は3月18日,東京の大使館を閉鎖し,大阪に退避させた。

在日ネパール人に知らせることもなく,電話を止め,館員率先して大阪に避難したそうだ。いかにもネパール的。(ただし,大使はまだ東京残留らしい。)ekantipur(19 Mar)はこう書いている――

「ネパール外務省筋によれば,・・・・他の国々の館員たちも東京から他の都市に避難を始めているし,また,もっと重要なのは,日本政府が,外国使節や公館に対し,放射能被曝の警告を出したことである。」

これは本当だろうか? 前半の,諸外国が自国民に退避を勧告しているというのは,周知の事実である。では,後半は?

日本に大恩のあるネパールの外務省である。まさか,ウソではあるまい。もし事実だとすると,日本政府は,自国民には「安全」を強調しつつ,外国人には危険だから用心せよ,と警告していることになる。

まさか,そんなことはあるまい。ネパールの人々が,聞き違いをしているのだろう。そう信じたいが,日本政府の福島原発情報ががどこまで信用されているかとなると,そこは疑問であり,ネパール政府にそう受け止められても仕方ない状況にあることは,残念ながら事実である。

それはそうとして,ネパール大使館の大阪移転が上策かと問われれば,そうともいえない,と答えざるをえない。

周知のように,福井には14(13)基もの原発が林立している(図1)。しかも,ここは地震の巣で,京阪神は風下。危険は東京の比ではない。確率の問題だから,リスク判断はもちろん個々人,各国政府に任せざるをえないが,基本的条件は十分考慮すべきだろう。

要は,神(自然)の声を聞くか日本国政府や福井県(図2参照)の声を聞くかである。これは信仰の問題であり,個々人が自分で判断せざるをえない。

▼追加1(3月23日)
ネパール・メディアは報道しないが,東京のネパール大使館は再開されたらしい。フォローアップしないのも,ネパール・メディアの特技。事実の確認が難しい。そのくせ,パラス元皇太子は発砲などしていない,という「面白い」記事を各紙が競って報道している。いかにもネパールらしい。

▼追加2(3月24日)
ネパール大使館の大阪(名誉総領事館)への退避はやはり本当らしい。東京でもある程度業務を継続するかもしれないが,事態は混乱しており,よく分からない。一時,大使館と連絡が取れなかったのは,被災ネパール人救援と大阪退避準備で手一杯だったからだろう(cf. Nepal Mountain News)。

朝日(3月21,24日)や読売(3月23日)によると,東京からの退避大使館は次の通り。
  大阪へ: ドイツ,スイス,クロアチア,エクアドル,ネパール
  神戸へ: パナマ
  広島へ: フィンランド

朝日(24日)によると,23日現在,東京の大使館閉鎖は27カ国にのぼる。そのなかでも,やはりネパールは素早かったようだ。朝日も「アジア地域ではネパールのみとなっている」と賞賛している。

匿名で,しかもタイトルが間違っているが,生々しく具体的なので,下記記事を転載した。ご参照ください。

Nepali Embassy in Japan shifted to Tokyo

Posted by nmn, Nepal Mountain News, Friday, March 18th, 2011

Nepali Embassy in Japan has been moved from Tokyo to Osaka amid fear that radioactive materials released after powerful explosion of a nuclear reactor in Phukusima Daiichi Nuclear Power Station could pose health threats.

According to Foreign Secretary Madan Kumar Bhattarai, all embassy staffers are due to reach Oshaka Thursday evening.

“The Nepali embassy will temporarily conduct its operations from Oshaka,” he said. Osaka is some 520 kilometers away from Tokyo.

The decision of the Ministry of Foreign Affairs (MoFA) to move the embassy to a safer place comes after Western countries including Britain started evacuating their nationals from Fukushima Power Station.

Likewise, concerns are high in China and among Japan´s neighboring countries after top United States nuclear official claimed that damage to the Nuclear Power Station was far more serious than Japan had acknowledged.

On Wednesday, Nepali embassy in Japan had rescued some Nepalis living in Phukusima area and brought to Tokyo. Likewise, another 52 Nepalis, affected by earthquake and subsequent Tsunami in Sendai area, have also been brought to Tokyo.

Asked if the government had any plans to evacuate Nepali nationals from Japan, senior MoFA officials said they do not have any such plans as yet.

“Now the rescued Nepalis are free to do what they think is right since there is no problem of mobility as it was in Libya. We presume that they would not have problems purchasing air tickets,” the official further said.

—————————————————————————-

図1 福井原発地図
>(http://www.geocities.co.jp/Technopolis/6734/img/ritti0049.pdf#search=’福井 原発 地図’より作成)

図2 福井県HP

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/03/19 at 11:49

カテゴリー: 社会, 外交

Tagged with , ,

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。