ネパール評論 Nepal Review

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陸自,ネパール撤退

UNMIN派遣の第4次陸自隊員6名が1月18日帰国,日本のネパール派兵は終了した。

「ネパール国際平和協力隊」は,2007年3月1次隊派遣,以後,1年ごとに4次隊まで継続,通算3年10ヶ月派兵されていた。

この日本派兵は,ネパール人民には,ほとんど知られていない。北沢防衛大臣は「労いの言葉」において,「国連本部,UNMIN,ネパール政府などからも高い評価を受け」(自衛隊ニュース,2011.2.1)と自画自賛したが,ここには「ネパール人民」はない。日本政府が誰の目を気にし,誰のために派兵したかは明白である。

陸自UNMIN派遣は,本格的な自衛隊海外派兵のための予行演習である。北沢防衛大臣はこう述べている。

「UNMINにおける活動は、部隊ではなく個人の派遣による活動であり、またその業務内容も、任務地における武器及び兵士の管理の監視業務という、これまで防衛省・自衛隊が経験したことのない、新たな挑戦とも呼べるものでありました。・・・・さらには我が国の国際平和協力活動の幅を広げることができました。」(上記「労いの言葉」,強調引用者)

意味不明の(含意明白の)「個人派遣」,「武器及び兵士の管理の監視業務」――これまでやりたくて仕方なかったことが,快適で安全無比のネパールで実地訓練できた。防衛大臣自身がいうように,これは「我が国の国際平和協力活動の幅を広げること」が最大の目的であった。決してネパール人民のための派兵ではない。

派遣隊員の発言は,当然,検閲されているが,それでも本音が漏れており,興味深い

■赤瀬丈 1陸尉
「今回の派遣においての一番の成果は、様々な国の軍人たちと一緒に仕事をすることで、それぞれの国の人の考え方、文化等を知ることができ視野が広がったということである。」(自衛隊ニュース,2011.2.15,強調引用者)

「一番の成果」は、ネパール平和貢献ではなく、「様々な国の軍人」との交流だったという。自分を日本陸軍の「軍人」と自覚し、他国の「軍人」と一緒に作戦(operation)を展開した。それが「一番の成果」だったという。たいへん正直な、しかも正確な事実認識だ。

先の記事「丸山眞男の自衛隊合憲論・海外派兵論」でも述べたように,憲法前文による自衛隊合憲化・海外派兵拡大の動きは,朝日新聞社説の変説=変節もあり,ますます進行している。しかし,軍隊は自己増殖し始めたら止まらない。ピストルも持っている。あの苦い経験をもう忘れたのだろうか?

 (防衛省2011.1.18,朝雲新聞2011.1.20)
この写真を見ると,「陸自隊員→中央即応集団配属→PKO個人派遣→帰国・中央即応集団→陸自隊員」の手品がよくわかる。丸山眞男の国連警察隊(国連軍)派遣論そのものではないか!

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/02/16 at 11:13

カテゴリー: 平和, 憲法, 人民戦争

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陸自隊員UNMIN派遣,4ヶ月延長

日本政府は11月16日,「ネパール国際平和協力隊」(陸自隊員UNMIN派遣)を4ヶ月延長し,2011年3月31日までとした。

ネパール派遣陸自隊員は,日本政府が直接指揮しているわけではない。陸自隊員は,「中央即応集団(CRF)」司令部所属とされ,そこから「個人として」UNMINに派遣され,UNMIN指揮下で停戦監視活動に当たっているのだ。

この「中央即応集団」は2007年3月28日に編成され,国内の緊急事態(テロなど)への対処と,国際平和協力活動を主な任務としている。これは軍と民の間の灰色部分,自衛隊にとっては未開拓の広大な中間地帯である。防衛省はここに目をつけ,軍民協力を促進し,自衛隊の国内外での活動を急拡大させるための尖兵として,中央即応集団を設置したのである。

その自衛隊にとって,陸自隊員UNMIN派遣は絶好のチャンスであった。中央即応集団の編成が2007年3月28日(朝霞駐屯地発足3月31日),陸自隊員(中央即応集団司令部所属)のネパールへ向けての出発が3月30日。ネパール国際平和協力隊は,中央即応集団発足の祝砲,その尖兵といってよいであろう。

しかも,防衛庁は2006年12月の「省」昇格関連法の成立により「省」に昇格し,それと同時に,念願の自衛隊海外活動も晴れて「本来業務」となった。その防衛省にとって,自衛隊の「本来業務」としての初の海外活動が,このネパール国際平和協力隊だったのである。

ネパールは日本では絶大な人気があり,そこでの停戦監視活動にも危険はほとんど無い。ヒマラヤも象も寺院も,素朴な村や子供も,全部「本来業務」としての海外活動の宣伝に使い放題。日本政府が,当事国のネパールや国連以上に陸自隊員のネパール派遣(派兵)に積極的なのは,そのためであろう。前のめり,イケイケドンドンなのだ。
(防衛省幕僚監部HP)

周知のように,ネパールは印中両大国にもまれ外交上手,国連に平和構築支援を要請しつつ,国連が受諾して本格介入し,大金も投入し,引くに引けない状態になると,掌を返したように国連の「無能」を非難し,ちゃんとやれないなら「出ていけ」とさえ要求し,国連とギリギリの取引をしている。実にしたたか,たいしたものだ。

これに対し,国連も,UNMIN派遣期間の延長を当初の1年から,半年ごと,4ヶ月ごとに設定し,それをカードに,ちゃんとやらないなら本当に引き上げるぞ,と脅し,ネパール側の平和努力を要求している。国連もネパール側とギリギリの外交交渉をしているのだ。

国連の次のUNMIN派遣期限は,2011年1月15日まで。これ以上の延長はしない,と国連は宣言している。ネパール側に突きつけた最後通牒なのだ。(実際には,何らかの形で延長される可能性はある。)

これに対し,不思議なのが日本の陸自UNMIN派遣の期間延長。日本の「ネパール国際平和協力隊」派遣(日本出発)は3月30日,UNMIN発足の2ヶ月半後であったため,派遣期間設定がその分ずれることはあり得るが,3年も経過し,国連が「延長」カードを使うため延長期間を4ヶ月ごとに設定し始めても,日本政府はなぜかそれに合わせることをせず,国連の期間延長の先回りをし,UNMIN派遣期限よりも数ヶ月先を陸自派遣の期限に設定してきた。

2010年1月UNMIN期限5月15日まで延長に対し,3月陸自派遣7月31日まで延長。5月UNMIN9月15日まで延長に対し,7月陸自派遣11月30日まで延長。9月UNMIN2011年1月15日まで延長(最後)に対し,11月陸自派遣2011年3月31日まで延長。

陸自派遣期間は,発足時を除き,つねにUNMIN派遣期間より2ヶ月半先までとなっている。発足が2ヶ月半遅れたのと,期間設定の技術的な問題もあるのだろうが,3年以上もたっているのであり,調整ができないはずはない。

日本政府が,つねに国連の先回りをし,陸自派遣期間を延長してしまえば,日本政府は「延長」カードを使用できないし,国連の「延長」カードの効果も殺いでしまう。日本政府は,2大国中国とインドの間に陸自隊員を派遣している,つまり派兵しているのだ。見方によれば,これはかなり大胆な,危険な政策だ。一刻も早く任務を完了し撤退,つまり撤兵するということは考えていないのであろうか。

ネパール陸自隊員派遣は実際には派兵であり,憲法上許されるはずもないが,それをひとまず棚上げしても,なぜ日本政府が国連の先回りをして派遣期間を延長しなければならないのか,なぜそんなに前のめりにならなければならないのか,どう考えても合点がいかない。やはり,「ネパール国際平和協力隊」を自衛隊海外活動の尖兵として利用することが最大の目的となっているのではないだろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/22 at 10:17

カテゴリー: 外交, 平和

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UNMIN派遣隊員がCRF報道官に

谷川昌幸(C)
やはり,そうだったのか! UNMIN派遣陸自隊長(第1次隊)をつとめた石橋克伸1佐が,中央即応集団(CRF)司令部の報道官になっていた。
 
 1.自衛隊とNGOとUNMIN派遣隊員
以前に紹介した田鈴香氏の記事の続編「続・ただ今,陸上自衛隊国際活動教育隊に滞在中! 集中模擬訓練「指揮所演習」始まる」(日経ビジネス,9月30日)によると,NGOのいくつかは,どうやら自衛隊に取り込まれつつあるようだ。
 
そして,そのNGOと自衛隊の媒介役の一人が,UNMIN派遣経験を持つ石橋1佐なのだ。吉田氏は,CRF「指揮所演習」についてこう説明している。
 
 「次のスケジュールにあったNGOの訪問では、実際のNGO、難民支援協会の事務局次長が仮想の現場を訪れた。そして、自衛官を相手に、実際にNGOの活動との調整をするロールプレイを行った。
  評価役の教官や他の隊員など衆人が見守る中できっと緊張したのだろう。NGOが繰り出す事情説明と協力の要請に、渉外担当の担当官は、「答えず拒否せず」の感じが否めない。お役所的な対応に感じられる。
 日常的に人に慣れているNGO職員の方が、「では、こうすればいいのでしょうか」と、口調は滑らかだ。筆者は、隊員はNGOに助けられているな、とすら感じた。
 ここは、さすがに、ロールプレイ後、先輩でネパールの国際連合ネパール支援団(UNMIN)で軍事監視員の経験を経てきた石橋克伸1佐が積極性を持って接するようにと、助言をした。」
 
見事な「民軍協力」だ。ネパールは「NGOの総合デパート」といってよく,そこで実地訓練をしてきた石橋1佐がNGOの扱いになれているのは当然である。
 
2.自衛隊に取り込まれるNGO
 しかし,NGOは「民軍協力」のつもりでも,実際には丸腰NGOは,権限と金と武器を持つ自衛隊の対等パートナーではありえない。必ず,いつしか「軍民協力」になり,NGOは軍に利用されることになる。
 
 3.米軍ー自衛隊ーNGO
この自衛隊=NGO「軍民協力」が恐ろしいのは,その自衛隊も米軍の下働きをさせられているからだ。吉田氏はこう説明している。
 
武器だけでなく、計画書作成でも米国様式を共有 ・・・・なるほど、米軍様式は武器だけではなく、計画書作成というソフトにおいても共有されているのか、と気付いた。」 (ゴシック原文)
 
米軍は世界展開しており,しかもオバマ政権は米単独主義から国際協調主義へと戦略転換した。自衛隊はその米軍に魂(ソフト)も身体(武器)も握られ,米国が要求すれば,米軍補完のため自衛隊の世界展開を進めざるをえない。しかも,米国はソフトパワー重視に転換したから,自衛隊の世界展開は必然的に民生支援重視の「軍民協力」となる。米軍が自衛隊を利用し,自衛隊がNGOを取り込み,利用する。あまりに単純明快で,にわかには信じられないほどだ。
 
そして――自衛隊ネパール派遣こそが,その広告塔なのだ。
 
参照

Written by Tanigawa

2009/09/30 at 10:53

カテゴリー: 平和

自衛隊のネパール文化宣伝利用

谷川昌幸(C)

自衛隊が,ネパールの自然と文化を宣伝に利用し始めた。陸自ネパール派遣の隠された目的はこれであり,私がもっとも恐れていたことだ。
 ▼陸自UNMIN報告 (5分36秒)

1.マチャプチャレの搾取
宣伝ビデオの冒頭に出てくるのが,マチャプチャレ。神聖な神の山が,自衛隊の宣伝に利用されている。テロップは次の通り。

  世界一高い山があるところ
  それは,私の想像をはるかに
  超えた魅惑的な景色・・・・

  ネパール 
  豊かな自然の中で
  人々が神様と共に暮らす国

90213h (UNMIN報告)

2.神仏の搾取
次に出てくるのが,寺院。ヒンドゥーの神々も仏たちも,自衛隊宣伝に利用されている。

 90213i (UNMIN報告)

3.子供の搾取
そして,自然や神仏以上に問題なのが,子供の利用。子供の無邪気が自衛隊宣伝にさかんに利用されている。子供を「軍事目的」で使用することは禁じられているはずだ。

 90213g 90213j (UNMIN報告)

4.人民軍に学ぶ自衛隊
その一方,摩訶不思議なのが,陸自隊員と人民軍との懇ろなつきあい。どうやら,イデオロギー抜きで,マオイスト兵から実戦経験を学んでいるようだ。さすが神秘の国,ここに来れば,何でも許されてしまう。

90213k (UNMIN報告)

5.まじめになりきれぬ人民軍
といっても,自衛隊と人民軍の間には,大きな文化的差異がある。ネパールの畏友からマオイスト・ビデオCD「反撃」と「赤い挙手の礼・共和制をネパールに」を送ってもらい,見ている。   

実に面白い。人民軍(女性多し!)の行進やダンスの宣伝ビデオだが,まじめにやろうとすればするほど,どことなくぎこちなくなり,喜劇的となる。人民軍は,本質的に長調であり,陽気なのだ。ネパール・マオイストは,本家中国の先輩のようにはなれない。

90213 (「反撃」)

6.陰鬱な自衛隊
この正反対が自衛隊。「陸自UNMIN報告」のBGMは,気の滅入りそうな短調(でなければ,短調的な旋律)。映像も,暗くて陰気。帝国陸軍も陰気で,軍歌もたいてい短調だった。よくあれで戦争がやれたものだ。

陸自隊員がマオイスト人民軍から学ぶべきは,この長調,本質的な喜劇性だ。この長調を持ち帰り,自衛隊内に長調菌をばらまけば,自衛隊は統制を失い,内部から崩壊するだろう。

7.サイとワニには手を出さないで!
自衛隊は,すでにヒマラヤと寺院(神仏)と子供を宣伝に利用した。これだけでも,思わず,「自衛隊万歳!」と叫びそうになった。

もし,自衛隊宣伝にサイやワニまで動員されたら,もうメロメロ,きっと,「陸自6人などとケチくさいことをいうな」,「一個連隊を出せ」,「日の丸戦車を空輸せよ」と叫んでしまうだろう。

どうか,サイやワニにまでは手を出さないでいただきたい。

Written by Tanigawa

2009/02/13 at 11:19

カテゴリー: 平和

佐藤優「護憲論」と朝日の陸自UNMIN記事

谷川昌幸(C)

今日の朝日新聞社会面(西部版,4月22日)は,面白い。右上が,佐藤優「伝統守るため護憲必要」,その左下が小暮哲夫(朝日記者)「『本来任務』初の派遣,国連ネパール支援,自衛官6人参加」。絶妙の配置だ。

1.権力と権威を分離する憲法を守れ
佐藤優さんは,かつて鈴木宗男氏の懐刀,いまは有罪判決を受け上告中。休職中とはいえ,外務省職員だ。

その佐藤さんが,鈴木氏や自分が国策捜査で逮捕・起訴されたことへの反省をこめ,権力と権威が一体化することの危険性に警鐘をうち鳴らしている。

「権力と権威が一体化するとどうなるか。大衆を扇動するポピュリズムに流れ,正義を振りかざした大統領の下で国策捜査が行われると,私や鈴木宗男さんは極端な場合,死刑になる可能性すらあるのだ。」(朝日)

また,日本が交戦権をもち,天皇が宣戦布告する場合のことを考えると,象徴天皇制と戦争放棄を定めた現行憲法は変えるべきではないという。

「外交官として仕事をしていた頃,日本は軍隊を持って普通の国になるべきだと思っていた。だが,逮捕・勾留された経験から,憲法の文言を一言も変えてはならないと強く思うようになった。」(朝日)

佐藤さんも鈴木さんも,自分が奉仕(行使)してきた権力に裏切られ,捨てられた経験から多くのことを学ばれ,実に立派な人物になられた。権力を恣に利用してきた方々だからこそ,敵に回したときの権力の恐ろしさを知り抜き,憲法でそれを縛ることの必要性を痛感されているのだろう。歴史を心に刻むとは,まさにこのことだ。

2.何も学ばない安倍首相
鈴木,佐藤両氏とは逆に,歴史から何も学ばなかったのが,岸信介やその孫の安倍首相だ。宮沢元首相はいうに及ばず,後藤田正晴氏のような強面政治家でも,多少ともまともな保守主義者であれば,敗戦により,権威・権力一体型国体(天皇制)の恐ろしさ,危険性を思い知らされ,決して戦前回帰をたくらんだりはしなかった。

ところが,軽薄保守の安倍首相には,保守思想の重さが全く理解できていない。「伝統」とは重いものに決まっているのに,重い伝統を担う決意があるからこそ保守なのに,安倍首相は敗戦の重みにも,その後の憲法60年の伝統の重みにも耐えられず,安直に伝統を放棄し,改憲しようとしている。中韓に脅され靖国参拝をためらい(参拝しないと言う勇気もない),アメリカに脅され従軍慰安婦にあいまいに謝罪する。これが「美しい国」の首相か。小泉さんの方が敵ながらあっぱれ,はるかに美しかった(困った耽美的ニヒリストだったが)。

3.朝日の陸自UNMIN記事
右上(右派)の反戦護憲論に対し,左派を気取る朝日は左下に陸自UNMIN記事を配したが,これがヌエ的記事,こんなものなら朝雲新聞の方がはるかに立派だ。

ネパール側の本音は,日本陸軍(海外では陸軍)ではなく,それが持ってくる金だけ。市ヶ谷あたりでモニターを見ていてもらえば済むのに,わざわざネパールくんだりまで日本陸軍を引きずり込んだのは,軍隊はODAとは比較にならないほどおいしい金づるだから。その証拠に,派遣された陸自隊員には,事実上,何の権限もなく,ただそこにいて見ているだけ。

それなのに,朝日記事は,無線チェックをする陸自隊員の勇姿を大きな写真で紹介している。いまのところまだ無背景なので我慢できるが,もしヒマラヤかゾウでも背景に写し込まれると,もうダメ,100人中の他の99人と一緒に私も「日本国自衛隊,バンザイ!」と叫んでしまうにちがいない。

朝雲新聞がネパール派遣陸自隊員の勇姿を華々しく伝えるのはよい。それは立派な行為だ。が,朝日が,ヌエ的記事でUNMIN陸自を大きく報道するのは,国民を誤った方向へ誘導する品性下劣な行為だ。

朝日は,鈴木,佐藤両氏を編集顧問に迎え,歴史の見方や,事実の捉え方・報道の仕方を一から学び直すべきだろう。

Written by Tanigawa

2007/04/22 at 17:58

カテゴリー: 平和