ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for the ‘健康’ Category

ネパールのコロナ感染60万人突破,都市部から地方へ

ネパールの新型コロナ(COVID-19)感染者累計が6月8日,とうとう60万人を超えてしまった。日本の76万人よりは少ないが,人口当たりにするとネパールは日本の3倍以上になる。深刻だ。

しかも,このところネパールのコロナ感染は,都市部から地方へと移りつつある。カトマンズなどの都市部では,ロックダウンをはじめとする強力な規制や感染防止キャンペーンの強化,さらには感染者の早期発見・隔離が,問題は多々あれ,徐々に効果を発揮し,新規感染は緩やかに減少し始めた。また,不幸にして感染しても,都市部では,不十分とはいえ医療体制が,地方に比べればはるかに整っている。

これに対し,情報も医療体制も不備の地方では,インドや都市部から持ち込まれたコロナ・ウィルスが一気に拡大し始めた。

「ネパールでは,平野から山地へウィルスが登ってきている。*5 「カトマンズ盆地では感染のピークを過ぎたように見えるが,周辺の諸郡ではこの1週間で感染が急増している。この1週間で,マクワンプルの1日当たり感染者数は17人から101人へ,ダディンでは85人から342人へと急増した。*5」

・ガンダキ州: 293人(5月17日)⇒1159人(5月27日)
・ゴルカ郡: 23人(5月17日)⇒500人(5月27日)
・バルパク村(標高1900m): 5月後半の2週間で12人死亡
・カンチェンジュンガ・グンサ村(標高3200m): 40家族のいずれも家族1人以上感染
・マナン村(標高3200m): 感染者がでた。(*5)

このように,地方でコロナ感染が急拡大していることは確かだが,その実態は十分には明らかはでない。

「村々では,検査は十分ではなく,誰も感染拡大の実情をよく知らない。医者たちは,そのうち地方でおびただしい犠牲者が出るのではないかと警告している。*1」

村々では,そもそも検査が不十分だし,たとえ感染が分かっても,知識不足のため,あるいは生活のためやむなく,また医療体制不備のため,感染村民たちが出歩いている。そのため村民の80%が感染している村さえあるという*1,4,8)。

このように,ネパールでは,コロナ・ウィルスが流行地の外国や都市部から地方に持ち込まれ,そこで感染が急拡大していることは確かなようだ。ネパールの地方の実情を考えると,憂慮に堪えない。     

     ■worldometer / nepal

*1 Arjun Poudel, “Even as virus reaches rural Nepal, results of PCR tests take up to five days,” Kathmandu Post, June 8, 2021
*2 “With 3,370 new cases, Nepal’s Covid-19 tally reaches 591,494,” Kathmandu Post, June 7, 2021
*3 Sagar Budhathoki, “Covid-19 Nepal: Villages are turning into hotspots. What should the govt do now?,” english.onlinekhabar.com, June 7, 2021
*4 “COVID-19 raging in rural areas,” Himalayan, Jun 06, 2021
*5 “In Nepal, virus climbs from plains to mountains,” Nepali Times, May 28, 2021
*6 Suresh Bidari, “Covid-19 Nepal: This Parsa village has several cases, but no one is isolated,” english.onlinekhabar.com, May 21, 2021
*7 Rastriya Samachar Samiti, “Coronavirus spreads in Humla’s five rural municipalities,” Himalayan, May 18, 2021
*8 Arjun Poudel, “Fewer tests mean reported cases in rural Nepal could just be tip of the iceberg,” Kathmandu Post, May 17, 2021
*9 Masta KC, “Rural Nepal fights back Covid-19,” Nepali Times, May 17, 2021
*10 Priti Thapa, “At the Covid-19 frontlines in rural Nepal,” Nepali Times, May 9, 2021

(C) 谷川昌幸

Written by Tanigawa

2021/06/09 at 17:20

カテゴリー: 社会, 健康

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コロナ禍からの漠たる未来不安

昨夕,新型コロナ(COVID 19)ワクチンを接種してもらった。1回目。しばらくすると,左腕の接種部分付近がしびれ始め,夜になると,鈍痛が左腕全体に広がってきた。

左腕の鈍痛だけではない。身体が注入された異物(ワクチン)を攻撃し始めたのか,ほてった感じで,いつまでも眠くならない。とうとう,一睡もしないまま,朝になってしまった。

ワクチンを接種してもらった左腕の鈍痛は,今日の午後になって,さらにひどくなった。このへんがピークだとは思うが,さていつまで続くやら・・・・。

それにしても,このような自然界にはない人造ワクチンを世界中の80億もの人々の相当数――理想的には全員――に接種しなければ,コロナ流行が止められないとは,なんたる恐ろしい,SFが現実化したような時代になってしまったものか。

世界のコロナ感染者累計(人)

むろん,新型コロナのような感染症の大流行そのものについては,公衆衛生をはじめ様々な分野で研究がすすめられ,効果的な予防法や治療法が見つけられ,そのつど制圧されるであろう。

私も,何よりも死を恐れる人間の一人として,それを願ってやまないが,その一方,まったくの素人ながら,コロナ大流行のような現象の繰り返しは,要するに,人類が増えすぎたからではないか,という素朴な疑問を禁じ得ない。

他の動物や植物であれば,増加しても,自然の許容量を超えそうになれば,必ず何らかの自然的規制が働き,許容範囲内に戻る。非情だが,それが自然の摂理。

ところが,人間は,他の動植物の有しない知恵により,自然を科学的に観察し,人為的にそれを制御したり改変したりできるようになった。これにより,人間増殖の自然的な限界は,次々と取り払われてきたのである。

その結果,いまやどこに行っても,たいてい人間がいる。逆に,以前はそこにいた様々な動植物たちは次々と姿を消している。人間は,その知恵により自然を征服しつつある。

新型コロナの流行も,多数説のウィルス自然由来説(コウモリ等からの感染)をとるなら,とめどもなく増殖する人間に対する自然界からの自然な規制である。ところが,これに対し人間は,身体に人造ワクチンを入れることにより,その自然の人口増殖規制を人為的に無効化しようとしている。この人為による自然の克服は,以前の他の感染症流行の場合と同様,今回のコロナ・パンデミックに対しても,すでに大きな効果を発揮し始めている。

しかしながら,たとえ今回の新型コロナが予防ワクチンにより制圧できたとしても,自然の側は,おそらく次のウィルスか他の何らかのものにより増えすぎた人類に立ち向かわせるであろう。これに対し,人間の側もまた別の新たな人造ワクチンか何かで迎え撃つ・・・・。こうして人間の自然な身体と生活は,一歩一歩,確実に自然から離れ,人造化されていく。サイボウーグ化だ。

また,人類の一部は,許容量を超えた地球を離れ,月や火星など,他の天体に移住し始めることにさえなるだろう。

以上は,もちろん全くの素人の極論である。また,人口論は,古来,もっとも危険な取り扱い要注意の議論である。が,それはそうだとしても,コロナ・パンデミックに脅え,予防ワクチンの副作用(副反応)に現に苦しめられていると,ついそんな暗い未来を思い浮かべてしまう。

杞憂にすぎないとよいのだが。

地球は何人の人間を維持できるか? すでに限界超過なら,何が起きるか?

(C)谷川昌幸

Written by Tanigawa

2021/06/07 at 19:36

Under Control ― オリ首相と安倍首相

1.オリ首相の「under control」発言
ネパールのオリ首相が5月8日,CNNインタビューにおいて,コロナ対策について問われ,こう答えた―

「ネパールでも,むろん他のいくつかの国々と同様,パンデミック(感染爆発)が広がっている。が,ネパールでは,コロナ(コビド19)感染は,いまのところ『under control(コントロール下,制御下)』と見るべきだ。*1」

「昨年,われわれは感染をunder controlの状態にしていた。感染死はゼロになった。新規感染は1日当たり50人以下だった。ところが,一般民衆は,パンデミックはもう終わり心配するほどではない,と考えてしまった。それが,コロナ感染の第2波を引き起こしたのだ。・・・・われわれは,感染をunder controlの状態に置くため,全力をあげてきた。*2」

このオリ首相の「under control」発言は,首相報道補佐官ツイッターにも投稿され,一挙に拡散された*3。

    ■首相報道補佐官ツイッター,2021/05/08

2.「out of control」の現実
このように,オリ首相はCNNインタビューにおいて,コロナ感染は「under control」と強気で語ったが,実際にはこの頃,ネパールでも「感染が激増,病院ではベッドも酸素も不足し,事態はコントロール不能(out of control)の状態」になっていた*4。

    ■The Guardian, 2021/04/30

ネット版National Geographicによれば,「ネパールではコビド19がコントロール不能(out of control)の状態で拡大」をしており,「いまや救急病棟は満員」,「死亡率も隣国インドより高くなっている」。しかも,保健所によれば,感染者数は,政府発表よりも実際にははるかに多い。スター病院のコロナ担当者は,「いまは戦争のような状態だ」とさえ語っている*5。

コロナ感染は,政官界にも及んでいる。オリ首相の「under control」発言インタビューをツイッターに投稿した報道補佐官自身でさえ,投稿日の夕方,感染が判明。他に,オリ首相秘書官数名,大臣2名を含む国会議員26名,議会事務官19人など,多くが感染している。

3.首相「under control」発言への猛反発
こうした状況を見れば,ネパールのコロナ感染状況は危機的と言わざるをえない。にもかかわらず,オリ首相は,「under control」とCNNを通して世界に向け宣言してしまった。

この発言には,当然ながら,ごうごうたる非難の声が上がり,一挙に拡大した。たとえば,ボジラジ・ポカレル元選管委員長は,「オリは,国際社会に向け,現状を隠し事態はコントロール下(under control)と語るのではなく,ネパールが現に直面している現実を正確に語るべきだった」と批判している*1。

非難はもっとも至極である。では,なぜオリ首相は,どう見ても無理であるにもかかわらず,このようなことを強気で断言してしまったのか?

4.政治も「out of control」状態
オリ首相は,対印外交でも内政でも,強硬なナショナリストであった。2018年2月の政権発足後2年ほどは,その政策があつれきは多々あれ,与党共産党が下院絶対多数を握っていたこともあり,結果的には成功しているように見えていた。

ところが,政権発足2年を過ぎると,ネパール共産党内のオリ派と反オリ派の対立が激化し始める一方,対印関係もカラパニ領有権をめぐり悪化していった。

こうして政権維持に不安を感じ始めたオリ首相は,強行突破を図るべく,2020年12月,突然,下院を解散してしまった。しかし,この解散はあまりにも強引であり,最高裁で2021年2月違憲とされ,議会は再開された。そして,この再開議会において2021年5月,オリ首相は,信任案が否決され,辞任を迫られた。ところが,反オリ派の方も首相選出に必要な多数派を形成できなかったのをみて,オリ首相は,バンダリ大統領に助言しオリを首相に任命させてしまった。こうして再任されたオリ首相は,またもや強引に議会を解散,半年後の2021年11月に選挙を実施することにしたのである。

この半年余のネパール議会政治は,まさにドタバタ,憲法上の根本的な疑義も多々指摘されている。文字通り「out of control」と批判されても致し方あるまい。

そこにコロナ感染第2波が押し寄せてきた。オリ首相は,コロナ対策でも窮地に追い詰められた。もしこれを「out of control」と認めてしまえば,議会政治の事実上の「out of control」のダメ押しとなり,政権維持が一層困難になる。そこで,オリ首相はCNNインタビューで,つい,コロナ感染は「under control」と口走ってしまった,ということではないだろうか。状況からは,そう推測される。

5.日本英語の「under control」
それと,もう一つ。このCNNインタビューでの「under control」発言のとき,オリ首相は,とっさに日本英語での用法を思い浮かべ,それに習ったのではないかという推測。いまのところ証拠は何一つないが,興味深い仮説ではある。

周知のように,日本英語の「under control」は,安倍晋三議員が首相であったとき,オリンピック東京招致のため世界に向け発信した,最も基本的で重要な英語キーワードであった。

2013年9月,安倍首相はオリンピック招致のためブエノスアイレスでのIOC総会に出かけ,英語(米語)で,東京開催の安全性をアピールした(「皇室利用と日本語放棄で五輪を買った安倍首相:”under control”のウソ公言」ネパール評論2013/09/13)*6。

“Some may have concerns about Fukushima. Let me assure you, the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo.” 「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。」(首相官邸HP *8)

しかしながら,福島原発が2013年9月時点で「under control(統御されている)」状態とはほど遠かったことは,明らかだ。現在に至っても,燃料デブリや増加し続ける汚染水など,多くのものの処理が先送りされており,とうてい「under control」などとは言えない状況である。

ところが,それにもかかわらず,安倍首相は被災福島原発を「under control」と説明し,オリンピック招致に成功,以後,日本政府もこれを基本方針として継承してきた。すなわち,日本政府公認の日本英語では,被災福島原発のような状況をもって「under control」と言い表すことになったのである。

この日本英語の「under control」は,東京オリンピック開催問題や福島原発事故が議論されるとき,しばしば言及され,世界的に有名となり,日本英語の語義として定着していった。

6.オリ首相「under control」は日本英語?
さて,そこで問題は,オリ首相の「under control」。ネパールは日本と親密な関係にあり,ネパールの人々が日本英語をマスターしていて,何ら不思議ではない。そして,そうしたネパールの人々であれば,この半年余のネパールのコロナ感染状況や政治状況を「under control」と呼ぶことに,さほど躊躇することもあるまい。福島の被災原発がコントロールされているのと同じように,ネパールのコロナも政治も,多少問題はあれ,ちゃんとコントロールされているではないか,と。

では,オリ首相自身は,どうであったのか? 与党分裂とコロナ感染拡大とで切羽詰まって,英米英語の意味で「under control」と口走ってしまったのか? それとも,日本に学び,日本英語の意味で「under control」と説明してしまったのか? いまのところ,私には,いずれとも判断できない。機会があれば,どなたかにお教えを請いたいと思っている。

7.誤魔化しよりましな自覚的変更
それともう一つ,「under control」との関連で注目すべきは,ネパールの政治家たちの状況適応力の高さである。彼らの多くは,状況の変化に応じて融通無碍に自分にとって最も有利と思われる方に立場を変えていく。無定見,無原則と見えるかもしれないが,少なくとも現実政治の場では,いったん始めたら状況がいかに変わろうが修正困難な「武士に二言なし」型・「インパール作戦」型の日本の政治家たちよりはましである。

オリ首相も,CNNインタビュー後,「under control」発言に猛反発されると,そのわずか2日後,The Guardianに,”Nepal is being overwhelmed by Covid. We need help”とタイトルをつけたメッセージを寄せ,先の発言を事実上,全面的に撤回してしまった(タイトルが首相自身のものかは不明)。「ネパールはコロナに席巻され圧倒されている(overwhelmed)」というのだ*8。

    ■首相報道補佐官ツイッター,2021/05/10

「under control」でないとも,「out of control」だとも言っていないが,事実上,同じとみてよいだろう。文字通り,豹変。だが,オリ首相は,コントロール下でないのにコントロール下と強弁し誤魔化し続ける日本英語式の「under control」に逃げ込むことをせず,ネパールのコロナ感染状況は英米英語でいう「under control」ではないことを,はっきりと認めた。誤りを誤りと認め,方針転換する。この方が,外国語の語義まで勝手に変えて現実を隠蔽し続けるよりも,はるかに危険が少なく,よりましな政治とはいえるであろう。

このところ日本政治における言葉の軽視は,目に余る,議論はまるで成り立たず。詭弁,誤魔化し,繰り返し,無視等々に明け暮れる。少しはネパールの政治家たちの真剣な議論を見習うべきではないか。

*1 Oli’s virus ‘situation under control’ remark meets with criticism, Kathmandu Post, 2021/05/09
*2 Pandemic is Under Control: PM Oli, Newbussinessage, 2021/05/09
*3 首相報道補佐官ツイッター,2021/05/08
*4 Nepal facing deadly Covid wave similar to India, doctors warn, ‘Situation is out of control’ as cases spike and hospitals run short of beds and oxygen, The Guardian, 2021/04/30
*5 COVID-19 spirals out of control in Nepal: ‘Every emergency room is full now’, National Geographic, 2021/05/12
*6 「皇室利用と日本語放棄で五輪を買った安倍首相:”under control”のウソ公言」ネパール評論,2013/09/13
*7 「IOC総会における安倍総理プレゼンテーション」2013年9月7日
*8 KP Sharma Oli, “Nepal is being overwhelmed by Covid. We need help,” The Gurdian, 2021/05/10

(C)谷川昌幸

Written by Tanigawa

2021/06/02 at 14:32

専門特化医療に振り回される老病人

目と鼻が異常に乾燥し始めてから早や1年余,いまもって日夜,四六時中,悩まされ,苦しめられている。症状は重くなったり軽くなったりと波があるものの,全体として悪化の方向に向かっているようだ。

1.医療の専門特化  
医者には,もちろん診てもらった。目の乾きが特にひどく,ゴミが入っているような違和感や痛みを感じ,視野がぼけ見えにくくなったときは,眼科へ。担当医は,最新機器を駆使し様々な検査をしてくれたが,結果は「目には特に異常なし」,「ドライ・アイではない」であった。本人がひどい症状を訴えているのに「異常なし」とは,まか不思議。また,目と同時に鼻も乾くと訴えると,鼻は専門外とのこと。仕方なく,市販の点眼用人工涙液を使用し誤魔化している。

また,鼻の方が異常に乾き,ヒリヒリ痛み出血さえした時は,耳鼻科で診てもらった。担当医は,最新CTスキャナー(たぶん?)で鼻の部分の頭部断層連続画像を撮影し,それを見せながら「特に異状なし」と説明してくれた。鼻の中(鼻腔)を直接見ての診察は,ほんの数秒(と感じた)。また,鼻と同時に目も乾くが関係しているのではないかと尋ねると,「関係ない」と即断。本人は現に「目鼻の乾き」で苦しんでいるのに,まったくもって不可解。仕方なく,鼻についても,市販の点鼻液スプレーで,その場しのぎをしている。

眼科は目だけ,耳鼻科は耳鼻だけの高度専門化が,地域医療でも進んでいるようだ。

2.医者巡りの右往左往
とはいえ,目鼻の乾きは苦しく,日常生活もままならない。そこでネット情報をあさり,目鼻そのものというよりは,もっと根本的な何らかのアレルギーか,いやそれとも「シェーグレン症候群」とかいう難病ではないかと疑い,内科で関係しそうな多項目の血液検査をしてもらった。ところが,幸か不幸か,これらの血液検査でも特に異状は無し。

であれば,虫歯か? 全く痛みはないが,上あごの最奥に乳歯が1本残っていて,これが虫歯になっていた。位置的には鼻腔にごく近い。ひょっとしてこの虫歯から何らかの感染が鼻腔に及んでいるのではないかと疑い,いずれ治療しなければならないこともあって,歯科で抜歯治療してもらった。抜歯後,患部に殺菌液をつけてもらい,数日,感染防止薬を服用すると,目鼻の乾きが幾分おさまり始めたような感じがした。が,喜びもつかの間,1週間もすると目鼻は元の乾燥状態に戻ってしまった。虫歯抜歯でもダメ。もうお手上げ。

むろん,人間の心身は複雑であり,原因不明の病気があっても何ら不思議ではない。私の目鼻の乾きの原因が判然としないのも,現状ではやむをえないだろう。苦しいが,当面は,医者巡りを続けつつ,様子を見るしか仕方あるまい。

3.医療の「専門たこつぼ化」
しかし,そう諦めてはみたものの,この1年あまり,あれこれ診察を受けてみて,全くの素人ながら疑問に感じざるを得ないようなこともあった。近年の医療のハイテク高度化,専門特化の進行が,地域医療現場の医者をして,診察すべき病気を生身の患者の訴える病気として総合的に見ることを妨げている場合が少なくないのではないかという疑問,いわば医療の「専門たこつぼ化」への危惧だ。(先端医療の高度専門化は当然。問題は,役割分担を考慮せず,地域医療現場まで過度に専門特化し,専門医がバラバラで競合しあい,患者の医療情報ですら積極的には共有しようとしていないように思われること。)

最近の地域医療現場の医者は,忙しいこともあってか,患者の訴えを丁寧に聴くことをせず,自分の専門分野内の検査の数値や画像だけを見せ,それで診断して,よしとする傾向がある。総合的に病気を診て診断しようとしないから,自分の専門分野内の検査で異常がなければ,それでおしまい。それ以外は別の医者に診てもらえ,ということになる。

が,もし医療がこのような「専門たこつぼ化」した診察でよいのであれば,生身の医者よりもAIによる診断の方が迅速正確で安上がりということになる。そうなれば,医者は,不眠不休で働く超高性能の「AIロボット医師」に取って代わられてしまうことになるであろう。

4.医療の原点としての総合医
以前には,地域社会のお医者さんの多くは,高度に専門特化した専門医ではなかった。近くのお医者さんに行くと,内科的病気はむろんのことケガであっても,とりあえずは診て手当をしてくれた。

私も子供の頃,持病の扁桃炎や手足のケガなどで,「先生(村のお医者さん)」に時折お世話になった。僻地の小村だったから,そうせざるをえなかったのだろうが,いま振り返ると,そうした医者のあり方には,単に「そうせざるをえなかった」というにとどまらない,より根源的な医療の原点としての意義があったように思われる。高度な検査機器は何一つない質素な医院だったが,「先生」は診察を受けにきた村人の訴えに耳を傾け,じっくり問診してくれていた。

今日においても,身近な地域のお医者さんには,専門特化ばかりを競うのでなく,訪れた患者の訴えにまずは耳を傾け,様々な病気の可能性を考え,総合的な観点から診察してくれる「総合医(総合診療医)」であってほしい。そうした「総合医」こそが,私たちの「かかりつけ医」には望ましいのではないだろうか。

【参照】
(1)英国「総合医療 General Practice」(It’s Your Practice: A patient guide to GP services)

(2)「総合診療医養成へ拠点 地方5大学前後 不足解消狙う 厚労省」毎日新聞 2020/2/3 
(3)厚生労働省「総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業 実施要綱(案)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2021/05/27 at 19:08

老化の悲哀

生物にとって老化・老衰は宿命とはいえ,いざそれが自分の身に現れ始めると,当初は「まさか,まだ」と疑い,見て見ぬふりをし,ごまかして安心しようとするが,いつまでもそのようなことは続けられるはずもなく,どうしても否定しきれなくなると,落胆し,あきらめ,結局は認めざるをえなくなる。

■チトワン

私は,小身痩躯(中学以降,2年ほど前まで163cm/52kg前後)だが,幸い,いたって健康で,これといった病気には一度もなったことがなく,健康診断や予防注射も法定義務となっているもの以外は受けたことがなかった。

そんな私にも,70歳を過ぎるころから身体に少しずつ異変が現れ始めた。頭髪が抜け,視力が落ち,眠りが浅くなった。「あれ,変だなぁ・・・・老化が始まったのかな?」とは思ったが,まだ,老化といっても,どこか他人事,自分自身のこととしては見ていなかった。

■ビラトナガル付近

ところが,母の介護で少々無理をし疲労蓄積を感じ始めた2年ほど前のある日,風呂に入り鏡に映った自分の身体を改めて見てみて,愕然とした――肋骨が浮き上がり,まるで骸骨のよう。あわてて小型体重計を買ってきて量ると,わずか45kg。中学生になって以降,もともと痩身ではあったが,こんなに痩せ細ったことは一度もなかった。

これは大変と,以後,栄養のありそうなものを出来るだけたくさん食べるようにしてきたが,いまもって体重は元の52㎏前後までは戻らない。いくら努力しても45kg前後の維持が精一杯。なぜだろう?

当初,体重減は介護疲れによる一時的な現象と頭から思い込んでいたが,いつまでたっても体重が回復しない現実を目の当たりにすると,本当の原因は病気か何か,別のところにあるのではと疑わざるをえなくなった。そこでイヤイヤながらも健康診断を受けてみたが,出た数値はどれも年相応,特に異状なし,ということであった。

あれ,医学的にはどこも悪くないはずなのに変だなぁ,とあれこれ思案していて,ハタと気付いた――これは自然な老化現象の一つにちがいない,他の動植物と同様,私も老化で痩せていき,いずれ骨と皮のようになり,枯れ果てる宿命なのだ,と。こうして,いささか遅ればせながらも,老化・老衰が,直視せざるをえない自分自身の現実の問題として切実に意識されるようになったのである。

■キルティプルより

私の老化は,今年に入り,新型コロナ(コビト19)感染拡大とほぼ同時に始まった鼻と眼の異常な乾燥により,さらに一段と進行したことが明白となった。いわゆるドライノーズ,ドライアイである。

はじめ鼻(鼻腔)が渇き始め,それが徐々に眼にも及んでいった。この時も,当初はまだ,風邪でも引いたのだろうと思い,たいして気にもしていなかったが,症状は,良くなったり悪くなったりを繰り返しながら,全体としては着実に悪化していった。

鼻腔がカラカラに乾き,嗅覚が異常に過敏となり,さらに激痛が始まり,時々出血さえする。これが四六時中。しばらくすると,鼻腔に加え,眼も乾き始めた。眼球を動かすと,ホコリが入っているかのような違和感を感じ,痛む。これも四六時中。

鼻にはドライノーズ用スプレー,眼には涙型点眼剤を使用。さらにマスクを湿らせ,昼も夜も一日中,着けるようにした。

が,それでも眼も鼻も治らない。そのため,夜は頻繁に目が覚め,熟睡できない。そして昼間も,鼻と眼の不快な痛みに加え,重度の不眠のため,イライラしたりボゥーとしたりしていて,集中して何かを考えたり行ったりすることは,およそ出来ない。

このような状態が続き,改善の兆しも見えないので,すっかり参ってしまい,再び怖ごわ健康診断を受けてみたが,またしても特に異状は無し。検査結果で見る限り,74歳にしては,数値的には健康なのだ。

とすれば,これもまた,痩せと同様,自然な老化現象の一つと覚悟せざるをえない。これまで鼻や眼に潤沢に供給され,それらを水みずしく保ってきた鼻水や涙が減り,涸れ始めたのだ。イヤなことだが,これも自然必然,なんとかやり繰りし折り合いをつけつつ,完全に涸渇し枯れ果てるまで生きていく以外に方法はなさそうだ。

■キルティプルより

むろん,こんなことを書くと,何を大げさな,老化など誰にとっても当たり前のことではないか,と呆れられ笑われるかもしれない。が,前述のように,少なくともほとんど病気知らずで生きてきた私自身にとっては,このような体重減や眼鼻の不調は初めての経験であり,したがって,それらにどう対処し,どう折り合いをつけていくべきか,まったく見当もつかなかったのである。

だから,このブログも,2020年6月10日の記事を最後に,これまで長期にわたって投稿してこなかった。関心のある情報を集め,読み,分析し,自分なりに評価して文章化することが出来なかったからである。

それでも,この半年余りの悪戦苦闘の結果,体重減や眼鼻の不調は自然な老化現象なのだと諦め,身体と精神をそれに合わせていくしかないことに気づき始めた。老化は,これから先,確実に,さらに加速度的に進む。それと折り合いをつけつつ,できるだけ平穏に生きていくように心掛けたい。わが愛犬が,痩せ細り骨と皮のようになりながらも,最後まで愛嬌を振りまきつつ,眠り込むように18年の生涯を全うしたように。

諦念は悟りであり救いである――そう願いたい。

■カトマンズ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/11/01 at 16:35

カテゴリー: 健康, 宗教, 文化

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コロナ危機深刻化のネパール

ネパールはいま,コロナ(コビド19)感染拡大と,ロックダウン(封鎖)長期化による生活苦という二重の危機に直面している。

ネパールのコロナ感染は,全国対象の厳しいロックダウンが3月24日に発令され,現在も継承されているにもかかわらず,拡大の一方だ。WHO統計によれば,6月7日現在,累計で感染者3,235人,死者13人。


 ■ネパールのコロナ感染者累計/日毎感染者数(WHO)

このネパールの状況は,国境を接する隣国インドの現状と当然,連動している。インドでもコロナ感染拡大は続き,6月7日現在,累計感染者246,628人,死者6,929人に達している。危機的状況だ。


 ■インドのコロナ感染者累計/日毎感染者数(WHO)

このような状況をみると,ネパールにとって全土ロックダウンはやむを得ない緊急措置といえるが,それが長期化すると,人々の生活に深刻な影響を及ぼす。仕事はなくなり,学校は閉鎖,病気になっても病院は手いっぱいで診てもらえない。生活そのものが危なくなり始めているのだ。

特に深刻なのが,出稼ぎ労働者,日雇い労働者,零細商工業者など,経済基盤の弱い人々。ロックダウンが始まると,彼らはたちまち仕事を失い(コロナ失業),生活苦に陥ってしまった。

地方も大変だ。カトマンズなど都市部で働いていた多くの人々が,仕事を失い,徒歩など四苦八苦して,村へと帰っていった。インドから,そして湾岸諸国など海外からも,失業した出稼ぎの人々が,何とか国境を越え,続々と村に帰ってくる。村に彼らを受け入れる余力はあるのだろうか? 出稼ぎ送金なしで村はやっていけるのだろうか? いや,そもそもネパール国家経済は,国外出稼ぎ送金激減でも,やっていけるのだろうか?

ネパール政府はむろん,ロックダウンによる失業を救済するための対策は考えている。中央政府は困窮家族に食料など支援物資を配布しているし,カトマンズ市も困窮失業者に週2回,公共事業の仕事を割り振り,経済的支援をしている。が,これらの支援事業は焼け石に水,拡大一方の困窮家族の救済には到底足りていない。労働問題専門家のガネシュ・グルン氏(国家計画委員会元委員)は,こう警告している。

「政府は,何ら対策も立てずに,ロックダウンを延長した。これが続けば,コビド19よりも飢えで死ぬ人の方が多くなるだろう。*3」

このような状態でロックダウンが続き,収入が減り生活が苦しくなってくると,店を開けるなど,あちこちでロックダウン無視が増えてきた。商工会議所,私学連盟などもロックダウン緩和の要望を出した。ロックダウン継続は,このままでは困難な状況になってきたのである。

これに対し,政府は,「公衆衛生非常事態」宣言を準備している。これが発令されると,政府は,民間の施設,人員,組織(NGO,INGOを含む)をコロナ対策に動員することが出来る。根拠は,公衆衛生法,感染症法など。強権的とも見える政府への強力な授権措置である。

その一方,政府は,ロックダウンの具体的な緩和策も検討している。I・ポクレル副首相を長とする「コロナ危機対策センター」が準備しているのは,ロックダウンを6段階で緩和していき,70日以内に完全解除する案。生活,健康,教育,経済など,それぞれについて必要性が高く,感染拡大リスクの低い部分から順次規制を解除していく計画であり,それ自体は現実的で合理的なものといえよう。

しかしながら,難しいのは,コロナ感染抑え込みと行動規制緩和が目論見通り両立するか,という問題。上掲のコロナ感染推移図を見ると,ネパールは,インドと同様,まだ感染拡大期にあり,ここで人々の行動規制を緩和することには大きな危険が伴うであろう。

他方,ロックダウン長期化が,ネパール社会全体に深刻な打撃をもたらすこともまた確かである。どうすればよいのか? 日本などより,はるかに難しく困難な状況に,ネパールは置かれていると見ざるをえないであろう。

*1 Aditi Aryal, “Thousands of Nepalis without food or shelter await entrance at the Karnali border,” Kathmandu Post, May 26, 2020
*2 “Feed the hungry”, Editorial, Kathmandu Post, June 5, 2020
*3 Anup Ojha, “Thousands of people are struggling under lockdown but government has offered no real solution,” Kathmandu Post, June 3, 2020
*4 Tika R Pradhan, “Government is considering plans to ease the lockdown but there’s no decision yet,” Kathmandu Post, June 6, 2020
*5 “Nepal’s Covid-19 tally reaches 3,448 with 213 new cases on Sunday,” Kathmandu Post, June 7, 2020
*6 Binod Ghimire, “Private schools to lobby government to resume classes next month,” Kathmandu Post, June 7, 2020
*7Makar Shrestha, “Lockdown forces a family into destitution,” Kathmandu Post, June 7, 2020
*8 KASHI KAFLE/MARIE-CHARLOTTE BUISSON, “Agriculture: Can it provide relief to returnee migrants and vulnerable populations?,” Himalayan Times, June 03, 2020
*8 RAM KUMAR KAMAT, “Health ministry pitches for declaring health emergency,” Himalayan Times, June 06, 2020
*9 “KMC set to launch ‘Cash for Work’ scheme,” Himalayan Times, June 06, 2020
*10 “UNLOCKDOWN: The lockdown has outlived its usefulness, it is time to get a move on,” Editorial, Nepali Times, June 3, 2020
*11 Nasana Bajracharya, “Nepal lockdown continues leaving scores hungry. But, there are a few who feed them,” english.onlinekhabar.com, May 16th, 2020
*12 “India Coronavirus Map and Case Count, New York Times, June 7, 2020

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2020/06/09 at 09:23

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (9)

[参考資料]
*1 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」2019年10月
*2 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査結果(概要)
*3 入国管理局長「拒食中の被収容者への対応について」(通達),2001年11月2日
*4 入国管理局「退去強制業務について」平成30年12月
*5 出入国在留管理庁「収容・仮放免に関する現状」令和元年11月25日
*6 出入国在留管理庁「送還忌避者の実態について」2020/03/27
*7 「仮放免に関する主な通達・指示」難民支援協会,2019年11月
*8 「法務大臣閣議後記者会見の概要[ナイジェリア人男性の死亡に関する質疑について]」令和元年7月2日
*9 宮崎岳志「東京入国管理局に収容されている外国人多数がハンガーストライキを行っているとの報道に関する質問主意書」平成29年5月16日提出,質問第318
*10 「衆議院議員宮崎岳志君提出 東京入国管理局に収容されている外国人多数がハンガーストライキを行っているとの報道に関する質問に対する答弁書」内閣衆質193第318号,平成29年5月26日
*11 福岡難民弁護団「大村入国管理センターでのナイジェリア人の死亡事故についての声明」2019/06/27
*12 九州弁護士会連合会「大村入管センターにおけるナイジェリア人死亡事案に関する調査報告書に対する理事長声明」2019/10/29
*13 東京弁護士会「外国人の収容に係る運用を抜本的に改善し、不必要な収容を直ちにやめることを求める会長声明」2019/07/01
*14 日本弁護士連合会「大村入国管理センターにおける長期収容に関する人権救済申立事件(勧告)」2019/11/25
*15 「緊急ステートメントー飢餓死したナイジェリア人男性についてー」FREEUSHIKU,2019/10/03
*16 クルドを知る会,日本クルド文化協会,日本クルド文化協会クルド人難民Mさんを支援する会「大村入管ナイジェリア人飢餓死事件の調査発表を受けての共同声明」2019/10/07
*17 関東弁護士会連合会「入国管理局による外国人収容問題に関する意見書」2019/01/15
*18 「患者の権利に関するWMAリスボン宣言
*19 WMA Declaration of Malta on Hunger Strikers, Medical Assembly, 2017
*20 Ian Miller, A History of Force Feeding: Hunger Strikes, Prisons and Medical Ethics, 1909–1974, Palgrave Macmillan, 2016
*21 Mary A Kenny, Derrick M Silove and Zachary Steel, “Legal and ethical implications of medically enforced feeding of detained asylum seekers on hunger strike,” The Medical journal of Australia 180(5),  April 2004
*22 Hernán Reyes, “Medical and Ethical Aspects of Hunger Strikes in Custodyand the Issue of Torture,” Research in Legal Medicine, Vol 19, 1998.
*23 「サニーさんの死なぜ 大村入管のナイジェリア人 収容3年7ヵ月」西日本新聞,2019/07/18
*24 「柚之原牧師「現在の制度に無理がある」 大村入国管理センターの長期収容問題」長崎新聞,2019/9/29
*25 「仮放免求めハンスト相次ぐ 大村入国管理センターの長期収容問題」長崎新聞,2019/9/29
*26 「ハンストのナイジェリア人男性が飢餓死するまで 調査報告書を読んだ医師が解説」dailyshincho, 2019/10/08
*27 “Nigerian on hunger strike dies in Japanese immigration centre,” guardian, 2019/10/02
*28 レジス・アルノー「男性が不慮の死「外国人収容所」悪化する惨状 今もハンガーストライキが行われている」東洋経済,2019/08/06
*29 「収容外国人ハンストで死亡 入管施設で初、報告書公表」nikkei,2019/10/01
*30 「法務省に入国拒否され長期収容の27人がハンスト 長崎では死者も」newsweekjapan,2019/06/26日
*31 「長崎に収容のナイジェリア人「飢餓死」報告書 入管ハンスト初の死者」東京新聞,2019/10/02
*32 「入管施設での外国人死亡、ハンストでの餓死だった。入管庁「対応問題なし」」朝日新聞デジタル,2019/10/01
*33 「入管施設で餓死 人権軽視ひずみあらわに」信毎・社説,2019/10/03
*34 野村昌二「体重71キロが47キロに…入管収容者の餓死 外国人に人権ないのか?」AERA,2019/11/12
*35 大橋毅「「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」の検討」,2019/12/28
*36 難民支援協会HP
*37 二村伸「急増する長期収容」NHK開設室,2019/08/21
*38 望月優大「追い込まれる長期収容外国人」2018/11/05,gendai,simedia.jp
*39 「『みんなで裸を見たと言われた』・・・・入管収容女性が手紙で訴え」毎日新聞HP,2020/05/18
*40 「「2週間だけ仮放免」 繰り返される外国人長期収容 「一瞬息させ、水に沈めるようだ」」毎日新聞,2019/11/12
*41 織田朝日「入管施設でハンストを続ける被収容者を苦しめる「2週間のみの解放」」ハーバー・ビジネス・オンライン,2019/11/01
*42「衝撃の内部映像、収容者“暴行”入管施設で何が?」TBS news23, 2019/12/24
*43 アムネスティ「入管施設で長期収容に抗議のハンスト198人」2019/10/ 08
*44 西田昌矢「入管収容者がハンストで半減? 死亡例受け仮放免増加、出所後も困窮」西日本新聞,2020/4/6
*45 「収容外国人の「ハンスト」拡大=仮放免求め、死者も-入管庁調査」jiji.com,2019/10/01
*46 「「入管は自分たちを殺したいのかな?」入管収容所で抗議のハンストが拡大」ハーバービジネスオンライン,2019/08/07
*47 「入管センター「外国人ハンスト」騒動、人権派新聞各紙がほとんど触れない事実」週刊新潮,2019/08/15・22日号
*48 「入管施設で長期収容に抗議のハンスト198人」アムネスティ,2019/10
*49 志葉玲「法務省は違法な収容をやめて―難民や弁護士らが会見、衰弱したハンスト参加者らが再収容の危機」Yahooニュース,2019/08/13
*50 志葉玲「救急車を二度追い返した!東京入管の非道、医師法や法務省令に違反の指摘~手遅れで死亡した事例も」Yahooニュース,2019/03/14
*51 鬼室黎「絶食ハンストした2人、入管が再収容 仮放免から2週間」朝日新聞デジタル,2019/07/24
*52 鬼室黎「入管にハンスト抗議、イラン人仮放免 体重25キロ減も」朝日新聞デジタル,2019/07/10
*53 「牛久入管 100人ハンスト 5月以降拡大、長期拘束に抗議」東京新聞,2019/07/25
*54 「「死ぬか出るか」入管ハンストの男性2人、会見で語った心境」J-CASTニュース, 2019/08/13
*55 「不法滞在外国人、ハンスト続出で入管苦慮…約4割は元刑事被告人」産経新聞,2019/09/30
*56 樫田秀樹「人権非常事態 死に追いやられる難民申請者」,『世界』2019年12月
*57 樫田秀樹「長期収容、自殺未遂、餓死…問題続出の背景に何がある?18年勤めた元職員が語る「入管」の闇」週プレNEWS, 2020/01/13
*58 西田昌矢「入管収容者がハンストで半減? 死亡例受け仮放免増加、出所後も困窮」西日本新聞,2020/04/06
*59 山田徹也「不法入国者が収容される現場の「壮絶な実態」 収容期間は長い人で4年超、医療面での問題も」東洋経済,2020/01/18 5:00
*60 「民主主義とは何かー5日間、計105時間に及ぶハンガーストライキで元山仁士郎さんが訴えたかったこと」琉球新報 2019年1月21日
*61 「元山さんのハンストに共感、県内外から応援続々 辺野古投票実現へ署名も」沖縄タイムス,2019/01/17
*62 「沖縄県民投票めぐるハンストを中止 医師の指摘で」朝日デジタル, 2019/01/19
*63 「「県民投票の会」元山氏のハンスト、ドクターストップ 105時間で終了」沖縄タイムス,2019/01/19
*64 「沖縄、不屈の歴史 ハンストは権力への意思表示」毎日新聞,2019/01/19
*65 辰濃哲郎「沖縄の世論を動かした若者たちの断固たる行動 分断と歴史、葛藤の島でもがく若者たち(3)」東洋経済ONLINE,2019/02/10
*66 三上智恵「「県民投票潰し」とハンガーストライキ」マガジン9,2019/01/23
*67 「宜野湾市役所前テントについて」宜野湾市ホームケージ
*68 「「ハンストはテロと同質」「さっさと死ね」秘書ツイート 衆院議員が謝罪」沖縄タイムス,2019/01/26
*69 「高須克弥、橋下徹、ネトウヨ、安倍応援団がバカ丸出しのハンスト叩き! 元山氏、ウーマン村本が完全論破」リテラ,2019/01/22
*70 美浦克教「沖縄県民投票と日本本土~元山仁士郎さんの105時間ハンストに思うこと」ニュース・ワーカー2,2019/01/20
*71 中村尚樹「琉球弧に見る非暴力抵抗運動~奄美と沖縄の祖国復帰闘争史~

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2020/06/03 at 09:50

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (8)

9.強制治療・強制栄養の残虐非人道性
日本政府は,「調査報告書」でも明らかなように,入管施設収容のハンスト者(拒食者)に対し強制治療・強制栄養をすることを認めている。

しかしながら,「リスボン宣言」や「マルタ宣言」をみれば明らかのように,それらは極めて残虐で非人道的であり,とうてい許容されるものではない。

このことは,古くから欧米で繰り返されてきた強制治療・強制栄養の多くの記録を見ても明らかである。以下参照。
ゴビンダ医師のハンスト闘争(21)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(22)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(23)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(24)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(25)

以上の多くの事例から明らかなように,入管施設被収容者に強制治療・強制栄養を実施し,力づくでハンスト(拒食)を断念させようとするようなことは,なすべきではない。残虐,非人道的であるばかりか,それらを強行しても成功の見込みはない。

したがって,サニーさんに対し強制治療・強制栄養を実施しなかったこと,それをもって出先機関たる大村センターの責任を問うべきでもない。大村センターの責任は,仮放免など他の採りうる方法によりハンスト死を防止するための努力を十分に尽くさなかったことにある。

 
■奴隷用強制摂食器具(National Museum of Denmark)/フォアグラ強制給餌(Stop Force-feeding)

10 見直されるべき入国管理政策
大村センターでハニーさんをハンストに追い込み,死に至らしめたのは,日本政府の入国管理政策そのものである。

外国人労働者を,尊重されるべき人格をもった「人間」としてではなく,安上がりで使い勝手の良い「労働力」としてのみ受け入れ,日本側の都合で不要となれば,一方的に送り返そうとする。もし在留資格が切れ,特別在留資格も得られず強制退去命令を受け収容施設に入れられてしまうと,仮放免はあるにせよ,原則として出国まで「無期限」で拘束される。

また,入管施設被収容者が難民申請をしていても,難民認定は極めて厳しく,やはり長期の「無期限」収容ということになってしまう。

外国人労働者や移民・難民の扱いは,どの国においても難しい課題だが,日本の場合は,とりわけ問題が多い。ただ,はっきりしているのは,このままでは「無期限」収容への抗議ハンストはなくならず,しかもそれを断念させるための強制治療・強制栄養はあまりにも残虐・非人道的なため実施は実際には困難だということである。

入管施設でのハンスト問題は,外国人労働者あるいは移民・難民の処遇を根本的に改める以外に,解決されることはないだろう。


■強制摂食反対ポスター/ICE強制摂食抗議デモ(NYT, 2019/01/31

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/06/02 at 08:51

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (7)

8.入管庁のハンスト死防止策提言
入管庁「調査報告書*1」がハンスト死防止のため提言しているのは,もう少し具体的にいうと,つぎのような方策である。

(1)説得,カウンセリングの強化。精神疾患が疑われる場合は,精神科受診(p13)。
(2)「拒食や治療拒否により・・・・危険が生じている場合には,・・・・強制的治療を行うことが可能となるよう体制を整備」(p14)。
(3)強制治療実施に不可欠の常勤医師の確保(p14-15)。
(4)「強制的治療の体制を確保できた収容施設を拒食対応拠点と定め,・・・・時機を失することなく当該被収容者を当該拠点に移収して処遇する」(p15)。

このように「調査報告書」は,強制治療・強制栄養の実施をハンスト死防止策として提言する一方,送還や仮放免についても,検討を求めてはいる。

しかし,送還については,促進のための方策の検討が必要と述べているにすぎない。

また,仮放免については,弾力的な運用の検討を提言してはいるが,ハンスト(拒食)を理由とする場合には,極めて消極的である。

・「拒食による健康状態の悪化は,拒食を中止して摂食を再開したり点滴治療を受けることなどにより解消されるべきものであり,拒食者の健康状態の悪化を理由として仮放免を行うことについては慎重な検討を要する」(p15-16)。
・「(拒食で生命が危険になり)治療・回復を図るためには一時的に収容を解いて治療に専念させることが不可欠かつ適切であると考えられる場合には仮放免を検討する必要があるところ,こうした仮放免は飽くまでも治療や健康状態の回復を目的とし,この目的に必要な限度で行うべきものである。」(p16)。
・「拒食による健康状態の悪化は,拒食の中止又は収容施設内においても可能な点滴等により改善される性質のものであり,拒食者の健康状態の回復を図るために仮放免が不可欠ということはなく,このような状態における仮放免は,仮放免許可を得ることを目的とした他の被収容者の拒食を誘発するおそれがあることに鑑みると,一般に,拒食により健康状態が悪化したものを仮放免の対象とすること自体,極めて慎重でなければならない」(p13)。

このように見てくれば,「調査報告書」が,送還困難なハンスト者(拒食者)が危険な状態になったときは,(1)医師の判断に基づき強制治療・強制栄養を実施するか,あるいは(2)健康回復のため仮釈放し,健康回復後速やかに再収容する,という立場をとっていることは明らかである。

■収監サフラジェットへの強制摂食(英紙1913年5月24日)

*1 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」2019年10月

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/06/01 at 15:23

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (5)

6.大村入管センターの対応
このハニーさんハンスト死の責任は,入管庁「調査報告書(*1)」を見る限り,不当で不合理な出入国管理制度を制定し維持してきた日本政府にある。(出先機関職員個々の根源的な抵抗義務の問題については,別の機会に論じることにする。)

大村入管センターの職員は,規定に従い,サニーさんに対し繰り返し摂食と受診を促した。そして,それでも拒食が続き衰弱が激しくなると,何とか説得し所内診療を受けさせた。

サニーさんを診察した診療室医師(非常勤)は,彼に対し,これ以上拒食を続けると生命が危ないと警告し,センター側には彼を説得して点滴を受けさせるよう指示した。

この医師は,同意なき治療(強制治療)は実施すべきでないという立場をとっており,入管センター側には「衰弱して拒絶意思を明示しなくなった時点で直ちに入院治療させることを指示した」(p49)。

この医師の強制治療否認の立場は医学倫理上広く認められており,大村センター診療室医師(非常勤)9名も近隣の医療機関もすべて,この立場をとっていた。そのため,大村センターは,サニーさんに対する強制治療は実施困難と判断し,担当医師の指示に従うことにしたのである。

むろん大村センターも,拒食については,入管局長通達「拒食中の被収容者への対応について」(2001年11月2日*3)があることは十分承知していた。

この通達によれば,拒食3週間を超えると診療室医師と看守が拒食者に強制治療への移行を伝え,22日目から医師が不要と判断しない限りそれを実施することになっている。また,これ以外に,体重減少10%以上の場合および医師が必要と認めた場合は,強制治療を実施する。ただし,拒食21日を超えても,医師が不必要と判断したときは,強制治療は延期する。さらに,医師が強制治療が必要と判断したにもかかわらず拒食者が強制治療を拒否する場合には,「治療行為実施の最終的な決定は入国者収容所長又は地方入国管理局長の指示による」(2(5))。

回りくどく難解な表現だが,要するに「通達」によれば,強制治療は,(1)医師の必要との判断のもとに実施されるが,(2)それでも,その強制治療が拒否される場合には,入国者収容所長または地方入国管理局長がその実施につき最終決定する,という規定になっている。

大村センターは,この入管局長「通達」の存在を十分承知していながら,なぜかそれを診療室医師には知らせていなかった。この医師の強制治療否認の立場が分かっていたからか,あるいは他の理由からか,そこのところは分からない。いずれにせよ,医師は,たとえ「通達」を知らされても,医学倫理上の立場を変えることはなかったであろうから,「通達」を知らせなかったことそれ自体は特に問題とするには当たらないであろう。

しかしながら,大村センターが「衰弱して拒絶意思を明示しなくなった時点で直ちに入院治療させる」という診療室医師の指示に従ったことは,結果的には失敗し,ハニーさんを飢餓死させることになってしまった。

その意味で,大村センターにハンスト死への結果責任があることは明らかである。大村センターは,ハンスト死防止のため,仮放免への努力を尽くすべきだった。しかしながら,地方出先機関にすぎない大村センターには無期限収容の原則から外れることは難しく,たとえ仮放免の努力をしても,結局は,規定通り診療室医師の指示には従わざるを得ないことになっていたであろう。

むろん,ハンスト死防止のためであれば,強制治療是認の医師や医療機関を他に探すべきであったといえなくもないが,本人の同意なき強制治療は,たとえそれを是認する医師や医療機関が見つけられたとしても,それ自体,きわめて残虐な,とうてい許容されざる拷問に等しい措置である。

大村センターには,ハニーさんハンスト死への責任はあるが,それは仮放免のための努力を尽くさなかったからであり,断じて強制治療を実施しなかったからではない。真に責められるべきは,出先機関たる大村センターではなく,最後の手段としてのハンストに訴えざるをえないような出入国管理政策をとり続けている日本国政府である。

■Bobby Sands Trust HPより

*1 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」2019年10月
*2 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査結果(概要)
*3 入国管理局長「拒食中の被収容者への対応について」(通達),2001年11月2日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/05/30 at 11:10

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