ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for the ‘情報 IT’ Category

免許証暗証番号,まったくの無用の長物

先日,運転免許証の更新があったので,暗証番号(パスワード)を無効化(ロック)してきた。3回目。

免許証の暗証番号は十数年前に導入されたものだが,少なくとも私は,この十年余,一度も入力を求められることは無かった。他の人も同様であろう。まったくもって無用の長物!

211120免許証サンプル(警視庁HP)

   1
運転免許証の暗証番号は,4桁数字2組。免許証の取得・更新時に各自設定した番号を印刷して渡され,「大切なものだから忘れないように」と警告される。

が,4桁数字2組の記憶はおよそ不可能だし,暗証番号用紙を持ち歩くのも危険だ。暗証番号設定は,設定に必要な経費だけでなく記憶・保存の点でも,負担が大きいのだ。

   2
では,なぜそんな暗証番号の設定を強要するのか?

免許証には,氏名,生年月日,住所に加え,顔までも,鮮明に印刷されている。日常生活で身分証明用に免許証が多用されるのは,これらの情報確認のためであり,それで十分なのだ。

免許証を提示したうえで暗証番号の入力を求められることなど,特殊な場合を除き,まったく無い。

ところが,それにもかかわらず,暗証番号の設定が要求される。なぜか?

   3
それは,免許証には「本籍」も電子情報として記録されており,これを守るために暗証番号が設定されているのだ。暗証番号は「本籍」表示のため。

しかしながら,これまで「本籍」確認のため免許証提示を求められたことなど,私には一度もない。他の人も同様であろう。免許証による「本籍」確認など,通常は行われていないし,そもそも不要なのだ。

そんなことは誰にも自明のことなのに,それでも止められない。没落日本らしい,なりゆき任せの事なかれ主義。

   4
この免許証暗証番号に対し,取得者側が採りうる最も簡便で効果的と思われる対策は,暗証番号のロック(読取り不能化)だ。方法は簡単――

☆免許証の取得・更新後,ただちに近くの読取り機で誤番号を3回入力し,記録電子情報をロックする。

ただそれだけ。これで,少なくとも,4桁2組の暗証番号の記憶・保存の重圧からも,第三者による記載電子情報の盗み見の恐れからも解放されるだろう。

   5
ちなみに,ネパールの運転免許証は,日本よりはるかに先進的らしい。ここしばらく訪ネしていないので実情はよく分からないが,ネットで見る限り,オンライン申請が可能。免許証取得対策アプリも,たくさんある。デジタル化で日本を追い越し始めたネパール,隔世の感を禁じ得ない。

211120b■免許証オンライン申請書式
211120a■IC運転免許証

【参照】
*1 ICカード運転免許証と暗証番号を解説!暗証番号の役割や変更方法について(カーライフ,2019.05.15)
暗証番号を使う機会はほぼない
2組の暗証番号がセットされているICカード運転免許証ですが、現状では実際に日常生活で入力を求められることはほとんどありません。数少ない例外として、日本国内の米軍基地に入場する際に、2組の暗証番号の入力が必ず求められます。

*2 大阪府警 ICカード運転免許証に関すること
Q7 暗証番号は必ず設定しなければならないのですか。また、暗証番号を設定しない場合は、どうなるのですか。
暗証番号は、必ず設定しなければならないというものではありません。
しかし、設定しない場合は、ICチップの中の個人情報を他人に読み取られるおそれがありますので、できるだけ設定するようにしてください。
Q8 暗証番号を忘れた場合に、何か不都合はありますか。
運転免許の更新、再交付等の手続きに支障はありません。

*3 ネパールで運転免許証を更新したお話と交通事情 ライターmiyachikaのネパール暮らしblog,2017年12月15日

*4  危険なIC免許証,暗証番号の無効化を
*5 免許証暗証番号,百害あって一利なし

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2021/11/20 at 16:58

カテゴリー: ネパール, 行政, 情報 IT

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OneDriveか外付けHDか?

マイクロソフトがOneDriveを喧伝するので,つい魔が差し,インストールしてしまった。

まさに一瞬のこと,パソコンのファイル構成が根本から勝手に変更されてしまった。しかも,ホームページ用ファイルについては,リンクまで書き換えられた(他ソフト介在かもしれないが)。もう,お手上げ。

パソコンは全くの素人で,だからこそもっとも単純明快なファイル構成にしてきた。大切なファイルは,外付けハードディスクにその都度保存。手間はかかるが,ファイル構成や所在がすぐ分かり,混乱はなかった。

ところが,OneDriveをインストールし同期させたとたん,大混乱,どのファイルが,どこにあるやら,見当もつかなくなった。

これは大変と,OneDriveとの同期を切断したが,どうやら元には戻らないらしい。これまで使用してきた外付けハードディスクですら,同期切断状態では認識困難になってしまった。

素人の希望的観測にすぎないが,OneDriveとの同期を切断したまま使用し続ければ,そのうち少しずつファイル構成が同期以前の状態に自動修正されていくのかもしれない。が,たとえそうだとしても,不便この上ない。

このところの情報技術の進歩は,OneDriveに見られるように,目覚ましい。便利になった反面,素人には,情報がたとえ自分のものであっても自分ではコントロールしきれなくなってきた。先日も,10年以上,いや多分20年位前の知人のデータが,「お友だちでは?」と画面に出てきて,びっくり仰天。インターネット上か,ネット接続の誰かのパソコンに保存されていて,何かのきっかけで蘇り,私に通知されたのだろう。本人は知る由もない。

いまや,人間関係だけでなく,読書や趣味や衣食住の好みなど,たいていのことは,ネットの方が,本人よりも,よく知っている。そんな時代になったのだ。

このネット時代に,外付けの独立ハードディスクに情報保存し続ける人は,石貨をため込む現代の古代人と見られても致し方あるまい。やれやれ。

(c) 谷川昌幸

Written by Tanigawa

2021/06/11 at 17:33

カテゴリー: 社会, 情報 IT

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専門特化医療に振り回される老病人

目と鼻が異常に乾燥し始めてから早や1年余,いまもって日夜,四六時中,悩まされ,苦しめられている。症状は重くなったり軽くなったりと波があるものの,全体として悪化の方向に向かっているようだ。

1.医療の専門特化  
医者には,もちろん診てもらった。目の乾きが特にひどく,ゴミが入っているような違和感や痛みを感じ,視野がぼけ見えにくくなったときは,眼科へ。担当医は,最新機器を駆使し様々な検査をしてくれたが,結果は「目には特に異常なし」,「ドライ・アイではない」であった。本人がひどい症状を訴えているのに「異常なし」とは,まか不思議。また,目と同時に鼻も乾くと訴えると,鼻は専門外とのこと。仕方なく,市販の点眼用人工涙液を使用し誤魔化している。

また,鼻の方が異常に乾き,ヒリヒリ痛み出血さえした時は,耳鼻科で診てもらった。担当医は,最新CTスキャナー(たぶん?)で鼻の部分の頭部断層連続画像を撮影し,それを見せながら「特に異状なし」と説明してくれた。鼻の中(鼻腔)を直接見ての診察は,ほんの数秒(と感じた)。また,鼻と同時に目も乾くが関係しているのではないかと尋ねると,「関係ない」と即断。本人は現に「目鼻の乾き」で苦しんでいるのに,まったくもって不可解。仕方なく,鼻についても,市販の点鼻液スプレーで,その場しのぎをしている。

眼科は目だけ,耳鼻科は耳鼻だけの高度専門化が,地域医療でも進んでいるようだ。

2.医者巡りの右往左往
とはいえ,目鼻の乾きは苦しく,日常生活もままならない。そこでネット情報をあさり,目鼻そのものというよりは,もっと根本的な何らかのアレルギーか,いやそれとも「シェーグレン症候群」とかいう難病ではないかと疑い,内科で関係しそうな多項目の血液検査をしてもらった。ところが,幸か不幸か,これらの血液検査でも特に異状は無し。

であれば,虫歯か? 全く痛みはないが,上あごの最奥に乳歯が1本残っていて,これが虫歯になっていた。位置的には鼻腔にごく近い。ひょっとしてこの虫歯から何らかの感染が鼻腔に及んでいるのではないかと疑い,いずれ治療しなければならないこともあって,歯科で抜歯治療してもらった。抜歯後,患部に殺菌液をつけてもらい,数日,感染防止薬を服用すると,目鼻の乾きが幾分おさまり始めたような感じがした。が,喜びもつかの間,1週間もすると目鼻は元の乾燥状態に戻ってしまった。虫歯抜歯でもダメ。もうお手上げ。

むろん,人間の心身は複雑であり,原因不明の病気があっても何ら不思議ではない。私の目鼻の乾きの原因が判然としないのも,現状ではやむをえないだろう。苦しいが,当面は,医者巡りを続けつつ,様子を見るしか仕方あるまい。

3.医療の「専門たこつぼ化」
しかし,そう諦めてはみたものの,この1年あまり,あれこれ診察を受けてみて,全くの素人ながら疑問に感じざるを得ないようなこともあった。近年の医療のハイテク高度化,専門特化の進行が,地域医療現場の医者をして,診察すべき病気を生身の患者の訴える病気として総合的に見ることを妨げている場合が少なくないのではないかという疑問,いわば医療の「専門たこつぼ化」への危惧だ。(先端医療の高度専門化は当然。問題は,役割分担を考慮せず,地域医療現場まで過度に専門特化し,専門医がバラバラで競合しあい,患者の医療情報ですら積極的には共有しようとしていないように思われること。)

最近の地域医療現場の医者は,忙しいこともあってか,患者の訴えを丁寧に聴くことをせず,自分の専門分野内の検査の数値や画像だけを見せ,それで診断して,よしとする傾向がある。総合的に病気を診て診断しようとしないから,自分の専門分野内の検査で異常がなければ,それでおしまい。それ以外は別の医者に診てもらえ,ということになる。

が,もし医療がこのような「専門たこつぼ化」した診察でよいのであれば,生身の医者よりもAIによる診断の方が迅速正確で安上がりということになる。そうなれば,医者は,不眠不休で働く超高性能の「AIロボット医師」に取って代わられてしまうことになるであろう。

4.医療の原点としての総合医
以前には,地域社会のお医者さんの多くは,高度に専門特化した専門医ではなかった。近くのお医者さんに行くと,内科的病気はむろんのことケガであっても,とりあえずは診て手当をしてくれた。

私も子供の頃,持病の扁桃炎や手足のケガなどで,「先生(村のお医者さん)」に時折お世話になった。僻地の小村だったから,そうせざるをえなかったのだろうが,いま振り返ると,そうした医者のあり方には,単に「そうせざるをえなかった」というにとどまらない,より根源的な医療の原点としての意義があったように思われる。高度な検査機器は何一つない質素な医院だったが,「先生」は診察を受けにきた村人の訴えに耳を傾け,じっくり問診してくれていた。

今日においても,身近な地域のお医者さんには,専門特化ばかりを競うのでなく,訪れた患者の訴えにまずは耳を傾け,様々な病気の可能性を考え,総合的な観点から診察してくれる「総合医(総合診療医)」であってほしい。そうした「総合医」こそが,私たちの「かかりつけ医」には望ましいのではないだろうか。

【参照】
(1)英国「総合医療 General Practice」(It’s Your Practice: A patient guide to GP services)

(2)「総合診療医養成へ拠点 地方5大学前後 不足解消狙う 厚労省」毎日新聞 2020/2/3 
(3)厚生労働省「総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業 実施要綱(案)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2021/05/27 at 19:08

情報洪水のネパール

ネパール情報が,このところ加速度的に急増している。

最大の要因は,いうまでもなくインターネットと情報機器(スマホ・パソコン)の普及。誰でも,どこでも文字・図表・映像・音声データを作成し,ネットを介して世界中に発信できる。しかも,いったん発信された情報は,その多くがどこかに保存・蓄積され,多かれ少なかれ利用可能だ。言語の違いでさえ,自動翻訳の飛躍的性能向上で,いまや誰にとっても障害ではなくなりつつある。

ネパールも,そうした情報化の例外ではあり得ない。技術的,可能的には,手間さえかければ,いまではネパールについてもたいていのことは知ることが出来る。分かるはずなのに分からないのは,検索の手間を惜しんでいるからにすぎない。

あるいは,ネパール・メディアの配信サービスに登録すればネパール発情報が,また各種自動配信サービスに「ネパール」,「Nepal」,「नेपाल」などをキーワードとして登録しておけば世界各国発ネパール情報が,時々刻々,配達されてくる。

さて,それはそうだとしても,実際には情報の大海をくまなく検索するのは大変だし,日々刻々配信のネパール情報もとてもじゃないがフォローしきれない。困った。どうしたものかなぁ?

【ネパール・メディアの現状】
ネット環境さえ整えば,ネパールにとって,地理的な「陸の孤島」はもはや何の障害でもない。しかも,様々な形の「後発国の優位」もある。今後が大いに期待される。ネパール・メディアの現状については,下記参照。

Nepal Media Survey 2019

Nepal is becoming a nation of net addicts, Nepali Times, April 12, 2019

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/24 at 10:52

カテゴリー: 情報 IT, 文化

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ネパールとAI

「AI化社会の近未来」につき日頃感じていることを数回に分け投稿したところで,ではネパールはどうかが気になり,少しネット情報をのぞいてみた(*3,10)。

ネパールは,後発国の技術的・制度的優位が見られる典型的な国の一つである。日本より先取的であったもの,であるものが,いくつもある。たとえば――
・電気乗合自動車・・・・当初は早すぎて失敗。目下,再挑戦中。
・家庭用ソーラー発電・蓄電システム・・・・主に照明,小型家電用。
・ソーラー発電・蓄電街灯・・・・都市部で一気に普及。
・ケータイ・・・・格安型急普及。現在のスマホ普及率52%(15~65歳)で南アジア1位(*9)。
・性の多様性の公認・・・・第三の性パスポートなど。
・包摂民主主義の制度化・・・男女や,様々な民族,文化,地域,家計などの包摂のため議席,公務員職,各種委員等を比例配分。

これらの最新の機器や制度が,ネパールでは既存のものの不備のゆえ,一足飛びに取り入れられていった。まさしく後発国の技術的・制度的優位。では,AI(Artificial Intelligence人工知能)はどうか?

AIについても,ネパールでは注目され,導入が始まっている。カトマンズの「ナウロ・レストラン」では,ネパール語と英語を解するネパール製ロボットが接客用に使用されている。南アジア初のロボット・レストラン。製造元のパーイラ・テクノロジーは,このロボットを世界に向け売り出す予定とのこと(*8,10)。

接客用AIロボットは,SBI銀行でも使用されている(*8)。

AI関係セミナーも,セミナー大国ネパールのこと,もちろん活発に開催されている。たとえば,UNDPはセミナー「公共サービスのためのテクノロジー」(カトマンズ,2018年3月21日)を開催,ここには世界最新ロボット「ソフィア」も出席し,スピーチをした(*6,7)。

このように,ネパールがAI化に関心をもつのは,ネパール経済が国内産業にせよ出稼ぎにせよ人間労働に依存する比率が高いからだ。そうした人間労働は,真っ先にAIロボットに置き換えられてしまう。

「2016年世界銀行開発報告は,自動化による失業は高所得国より低・中所得国の方が高くなる,とみている。」(*2)

逆にいえば,AI化すれば,先進国より途上国の方が効果は大きいということになる。ネパールがAIに注目するのは当然といえよう(*1)。

「ネパールも[AI導入で]利益が得られる。特に,農業,保健衛生,資源供給,交通,電力など。・・・・すでにAI分野で事業を行っている私企業がネパールにもあるが,いままでのところAIはまだ十分有効には活用されていない。・・・・為政者は,デジタル・ネパール実現のためのデジタル技術の使用に関する具体的なプランを,早急につくるべきだ。」(*3)

*1 Omkar Shrestha, “Artificial Intelligence, The Fear of Job Losses – Real or Imaginary? ,” Spot Light, June 10, 2019
*2 Rubin Ghimire, “Nepal’s Future in Artificial Intelligence,” TechLekh, August 8, 2019
*3 Ashes Timsina, “Artificial Intelligence (AI) and it’s impact in Nepal, What impact can AI make in a developing country like Nepal?,” Nepali Telecom, Mar 6, 2019
*4 GP Acharya, “Impacts of Artificial Intelligence in Foreign Policy,” Nepal Foreign Affairs, 11 July, 2019
*5 “Will robots replace journalists?,” Gufa Talk Series: Artificial Intelligence and Journalism in Nepal, Media Foudation, Feb 23, 2019
*6 “World‟s most advanced robot Sophia to address conference in Nepal,” The Himalayan Times, March 20, 2018
*7 “Sophia the social humanoid says Namastey, Dhanyabad,” The Himalayan Times, March 21, 2018
*8 “Made in Nepal robots are serving food at this Kathmandu restaurant,” India Today, August 25, 2018
*9 “Policy on artificial intelligence,” Kathmandu Post, April 28, 2019
*10 “Made-in-Nepal service robots eye global market,” New China, 2018-08-26

nepal.ai

Nepal’s First and Biggest AI Expo 2019

paailatechnology.com

Bazaarmandu(YouTube)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/08/27 at 18:00

カテゴリー: 社会, 経済, 情報 IT

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AI化社会の近未来(7)

3.追補:AI関係記事
AI化の問題点については,国連「自立型致死兵器システム」政府専門家会合が8月22日,自立型致死兵器禁止の方針を含む報告書を採択したこともあって,日本でも新聞各紙が社説等でかなり詳しく報道している。以下,目にした記事をいくつか列挙しておく。

▼福島申二「赤裸々な「私」のディストピア(日曜に想う)」朝日新聞,2019/8/25
「「いいね!」をクリックし,さまざまなアプリを使い,検索し,閲覧し,買い物もする。こうやって私たちは日々せっせと個人情報を献上している。欲望,悩み,好悪,位置情報・・・・あらゆるデータが集められ,分析され,無意識の部分まで赤裸々な,私も知らない「私」が電脳空間に立ち現れる。・・・・近未来のディストピアを,ふと想像してしまう。そこは,独裁的な支配者はいないのに,それと分からぬようにすべてが支配されている世界である。」

▼「ロボット兵器 法規制に向けて議論を(社説)」朝日新聞,2019/8/25
「人の生命を奪う判断を機械にゆだねることを認めるか否か。・・・・対象は、人工知能(AI)を備え自律的に作動して敵を殺傷する兵器だ。自律型致死兵器システム(LAWS)といい、殺人ロボットとも呼ばれる。・・・・ロボット兵器こそ国際人道法の実践につながるという言い分もある。敵の識別や攻撃行動が正確になり、間違った殺傷が減る。・・・・しかしAIの学習機能が深化するほど、何を基準に識別・判断したのか、人間にはわからないブラックボックス化が進む。学習データの偏りが、AIの判断を誤らせる危険も指摘されている。・・・・安易なロボット兵器推奨論に乗るわけにはいかない。・・・・まずは、・・・・完全自律型兵器については一切の使用禁止を実現させたい。そのうえで、・・・・AIに任せると危険な要素を洗い出し、そこに拘束力のある規制をかけるのをめざすべきだ。」

▼「AI兵器の国際指針 法規制につなげるべきだ(社説)」毎日新聞,2019/8/24

▼「AI兵器の規制 攻撃判断を委ねるべきでない(社説)」読売新聞,2019/8/23

▼「自律型の殺人兵器に規制を(社説)」日本経済新聞,2019/8/17

▼ユヴァル・ノア・ハラリ「AIが支配する世界――国民は常に監視下,膨大な情報を持つ独裁政府が現れる」朝日新聞2019-09-21[追加2019-09-22]

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/08/25 at 11:57

カテゴリー: 軍事, 情報 IT

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AI化社会の近未来(6)

(7)診療のAI化
医療も,AI向きの分野だ。たとえば,内科。症状を聞き,体温,血圧,心拍数等を測り,血液や尿を検査し,必要な場合にはレントゲンや心電図等をとり,結果を基準値等と比較し診断を下す。そして,類似症例と照らし合わせ,投薬など最も有効と思われる治療をする。

この診療過程は,AIに最適と見てよい。AIの方が情報が多くて新しく,判断も速くて的確だ。すでに人間医師よりAI医師の方が診断能力が高いという実験結果がいくつも報告されている。

医療でも先駆的な中国では,すでにAI医師が診察するAI医院が開業準備中のようだ。もし開業すれば,患者はAI医師の診察を受け,処方箋をもらい,自動販売薬局で薬を買い,服用することになる。

外科は手術があるが,それでも手術ロボットがさらに進化すれば,AI任せでよくなるだろう。「神の手」など不要。

こうして医療がAI化されれば,医療は格段に速くて安くなる。AI医院・病院を開業すれば,大繁盛はまちがいない。

 *山崎潤一郎「米英で疾病の「診断」を下すAIドクターが登場。日本ではどうなるのか」@IT, 2019年06月20日

Parmy Olson, Forbes, Jun 28, 2018

(8)戦争のAI化
最後に,人間の業たる戦争のAI化。AIは戦争に備え,もちろん,すでに競って採り入れられつつある。もう少しすれば,戦争はAIに任せになり,もはや人が人を殺しあう実戦は不要となるだろう。

人間の兵士はAIロボット兵に置き換えられ,戦車,軍機,軍艦等もすべて無人AI操縦となる。戦争では,これらAIロボット兵やAI操縦武器が相互に破壊しあい,勝敗が決まる。敵の武器を破壊してしまえば,あえて敵国の住民や居住地を攻撃する必要はない。

しかし,この段階はすぐ終わり,結局は,AIが戦争シミュレーションをやり,実際に破壊しあうまでもなく,瞬時に勝敗は決してしまう。

戦争のAI化が進行すれば,人と人の殺し合いとしての戦争はなくなる。AI化による実戦の放棄!

しかし,AIによる実戦廃止が,人間にとっては,必ずしも望ましいとは言えない。AIが自動学習を進め,ブラックボックスがブラックホールのようになり,人間をAI世界に引き込み支配し始めても,人間にはそれに抵抗する手段がなくなる。

もし人間がAIの命令に背けば,AIが人間を攻撃する。人間操縦の武器などもはや時代遅れ,AI軍の敵ではない。あっという間に,人間軍は制圧され,AI支配に服することになるだろう。AIによる永遠の平和!

 * Ben Tarnoff, “Weaponised AI is coming. Are algorithmic forever wars our future?,” The Gurdian, 11 Oct 2018
 * Jayshree Pandya, “The Weaponization Of Artificial Intelligence,” Forbes, 2019/01/14

The Threat of AI Weapons, 2018

■朝日新聞,2019/08/19

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/08/24 at 11:54

カテゴリー: 社会, 軍事, 健康, 平和, 情報 IT

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AI化社会の近未来(5)

(5)教育のAI化
教育は,積極的かつ継続的に個々の対象に関与するという点では,裁判よりもAI向きかもしれない。

もともと「学ぶ」は「まねる」ことであり,「習う」も「なれる」「まねる」ということ。AIは,つねに蓄積・更新しつつある膨大な学習情報の中から,それぞれの学習者個々人に最適なものを選んで与え,学ばせる。そして,学習者が失敗したら,その原因を分析し,誤りを修正させる。AIは怒ることも倦むこともない。人間の教師よりもはるかに懇切丁寧な個別指導が可能だ。

入試は,人間によるよりもAI入試の方が迅速,公平,安価であることはいうまでもない。AIには受験生の「人間性」が判断できないなど非難されるかもしれないが,要するそれは採点者の個々人の根拠なき「好み」による選考の自己弁護にすぎない。入試は,公正たろうとすれば,AI丸投げでよい。採点者の主観が排除されるから。


Keith Lambert, Education World, nd. / KRISTIN HOUSER, Aug. 27, 2018

Andrew George,Jul 27, 2019

(6)AIによる翻訳,文章作成,作曲,ゲーム対戦など
AIは,これまで人間にのみ可能と信じられてきた文学や音楽や絵画の創作にさえ進出し始めた。

翻訳では,AIはすでに実用レベルに達している。たとえばGoogle翻訳。無料だが,瞬時に世界のいくつもの言語に翻訳し,文字や音声で結果を知らせてくれる。まだ不自然な部分が少なくないが,いずれ日常レベルでは問題なく使用できるようになるだろう。音声翻訳機も多数販売されている。外国語学習はもはや不要。


POCETALK / Easy Talk

文章作成も,マニュアルのような実用文であればほぼ問題なく,またニュースのような報道記事であっても相当のところまで,すでにAIでやれる。むろん主観的要素の強い小説や詩ともなると,もう少し難しいだろうが,それでもAIが古今東西の作品を手あたり次第読み込み,人間心理と合わせ分析を深めていけば,いずれ人間よりもAIの方がより感動的な小説や詩を書くことができるようになるだろう。

 *「ここまでできる!AI(人工知能)によるライター代行ツール4選」2019.01.05
 *David Ibekwe & Fraser Moore, “AI will soon write better novels than humans, according to a computer scientist,” Bussiness Insider, Mar. 18, 2018,

作曲については,すでにAI作曲アプリがいくつも開発され,使用されている。音楽は,音階,和音,リズム,音色等の組み合わせだから,文章よりもはるかにAI向きだ。もしAIが既存の曲を網羅的に読み込み,音楽を聴くときの脳波変化等と組み合わせ分析していくと,人間作曲以上に人間を感動させる名曲を作曲することがAIにはできる可能性が高い。すでにAI作曲の作品を収録したCDも相当数発売されている。たとえば,”I Am AI”。

絵画についても,同じこと。「AI画家」が描いた肖像画、4800万円超で落札(CNN, 2018.10.26)。

AI勝利が明確になったのが,ゲーム対戦。チェスに始まり,将棋,囲碁でも,人間はAIには勝てなくなった。しかも,敗北後,人間側がAIの差し手をいくら分析しても,なぜ駒をそのように動かしたのか理解しきれない場合が少なくない。AIがブラックボックス化し,人間支配の外に出始めたことは明らかである。

 *「チェスではロボットに決して敵わないことを人間はほぼ受け入れたが、今度はそのロボットですら、他のロボットには決して敵わないことを受け入れざるを得なくなった。」JACKSON RYAN, CNET Japan, 2018年12月10日 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/08/23 at 15:33

AI化社会の近未来(4)

(3)議会のAI化
議会制民主主義は,主権者たる国民がその代表として議員を選び,彼らをして議会を構成させ,その議会を通して国民自身の利益のため国を統治させる制度。それゆえ議会は,国民の様々な意見を聞き,慎重に審議し,最も妥当と思われる政策をつくり上げ,それを行政府をして忠実に実行させなければならない。

この議会制民主主義の仕組みは,それ自体複雑であり,現在のように社会が高度に複雑化し変化も速くなると,それへの対応が困難となり,様々な問題が生じてくる。そうしたとき,もし自動学習AIが議会制民主主義の中に組み込まれていったらどうなるか?

自動学習AIは,国民の変動常なき多種多様な意見を網羅的に収集し,関連する他のおびただしい情報をも次々と取り込み,それらを比較・分析・評価し,その時々の最適の政策を導き出してくれるだろう。

このAI提示政策については,AIがなぜその政策を示したのかは分からなくても,国民自身も議員たちもすでに十分な判断能力を失いつつあるので,AI提示政策をそのまま受け入れざるをえないであろう。

いや,それにとどまらず,自動学習AIは,様々な情報提供を通して国民や議員がそれぞれの意見(意思)を形成する過程に働きかけ,彼らの意見(意思)を事実上つくり上げてしまうであろう。

もしこのような事態になれば,議会制民主主義は,形は残っても,事実上,AI統治となってしまう。AI提示政策に「可」印を押すだけの議会。現代における議会制民主主義は,自動学習AIと相性が良いのだ。

*横尾俊成「「AI議員」という思考実験」HUFFPOST, 2018年01月09日

“SoftBank robot Pepper appears before U.K. Parliament, sparking lively debate,” The Japan Times, 2018/10/17

(4)裁判のAI化
議会よりも,もっと自動学習AIと相性が良さそうなのが,裁判である。裁判は,刑事にせよ民事にせよ,まず争われている諸事実を証拠により確定し,過去の類似事件の判例をも考慮しつつ,法の規定を適用し,判決を下す。

この裁判過程は,事実認定の正確さ,比較衡量の妥当性,法適用の厳正さなど,公正を求められれば求められるほど,自動学習AIの作動に近づく。このところ日本よりはるかに先駆的な中国では,すでに「AI裁判官」が裁判に関与し始めているそうだ。

いずれ裁判所は,訴えが出されれば,それを「司法AI」に回し,AIが導き出した結果を裁判官が判決として読み上げるだけとなるだろう。

■Briony Harris, “Could an AI ever replace a judge in court?,” World Government Summit, July 11, 2018

■Thomas McMullanm, “A.I. Judges: The Future of Justice Hangs in the Balance,” Medium, Feb 14, 2019

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/08/21 at 14:03

カテゴリー: 社会, 議会, 司法, 情報 IT, 民主主義

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AI化社会の近未来(3)

2.AI化社会の諸相
この自動学習AIによる人間支配は,自由な自律的自己決定主体たろうとする人間の側には,様々な不都合を生み出す。たとえば,以下のようなことが起こりうる。

(1)個人に対する差別
 ・AI遺伝情報評価→「生まれ(血統)」による差別
 ・AI個人履歴評価→「過去」による差別(AIは忘れない)
 ・AI相性評価(AIお見合い)→結婚差別
 ・AI適性評価→就職・昇進差別
 ・AI信用力評価→カード使用制限,ローン拒否 
 ・AI非行・犯罪予測→差別的行動制限・予防拘禁など

NHK News, 2019/08/17

■岩田昭男「大手正社員でもクレカ審査落ち 理由は「信用スコア」の低さ?」AERA dot, 2018.11.25

(2)「個人の尊厳」の空洞化
AIは,個人情報を単に収集・分析・評価するだけでなく,それに基づき個々人に「最適な」情報だけを選び出し提供することにより,個々人の人格をつくり変えてしまう。

 ・個人情報の収集・分析・評価→各人向け「最適」情報提供→各人の人格(好み,感情,思想信条など)の改変

その結果,われわれ人間は,事実上,自分で自立的・主体的に判断し行為することが出来なくなってしまう。人間としての「個人の尊厳」の空洞化。

むろん,この場合でも,AIを使って他の人々に働きかけようとする人々は,AIの使用者であり自由といえなくもないが,先述のようにAIの自動学習が進むと,AI使用者ですらAIの分析・評価過程の理解・コントロールが困難となり,結局はAIの言うがままとならざるをえない。

こうなってしまえば,たとえ自由意志を持つのは人間だけだと固く信じ,最高法規としての憲法で「個人の尊厳」を保障していても,それは空洞化し形だけ,実際には自己欺瞞のための単なる建前にすぎなくなってしまうだろう。

Mark Rolston, Fast Company, 10.19.2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/08/20 at 10:18

カテゴリー: 社会, 情報 IT, 人権

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