ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for the ‘政治’ Category

紹介:米澤穂信『王とサーカス』

タイトルに「ネパール」関係の語がないので見逃していたが,この本は,王族殺害事件(2001年6月)で緊迫するカトマンズを舞台とするフィクション。文庫版で472頁もの大作であり,ミステリ分野で高く評価され,三つの賞を授賞している。

米澤穂信『王とサーカス」東京創元社,2015年;創元推理文庫,2018年
 ☆週刊文春「ミステリーベスト10」2015年,第1位
 ☆早川書房「ミステリが読みたい!」2016年,第1位
 ☆宝島社「このミステリがすごい!」2016年,第1位

1.梗概
文庫版カバー裏面の作品紹介:
「海外旅行特集の仕事を受け,太刀洗万智はネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み,穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先,王宮で国王殺害事件が勃発する。太刀洗は早速取材を開始したが,そんな彼女を嘲笑うかのように,彼女の前にはひとつの死体が転がり・・・・・・ 2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクション,米澤ミステリの記念碑的傑作。」

さらに詳しくは,下記ネット記事参照:
*「王とサーカス」ウィキペディア


2.コメント
この作品は,長編のわりには最後の「なぞ解き」部分が少々手薄な感じがするが,ネパールに関心をもつ私としては,王族殺害事件がらみのミステリとして,面白く読み通すことが出来た。特に興味深かったのは――

(1)カトマンズの街や日本人向けロッジの雰囲気が,よく描かれている。王族殺害事件前後の頃は,たしかにそんな感じだった。

(2)この本のメインテーマは,王族殺害事件そのものではなく,その事件の――とりわけ外国メディアによる――報道の仕方の方にある。

太刀洗の取材に,王宮警備の国軍准尉はこう応える。「お前はサーカスの座長だ。お前の書くものはサーカスの演し物だ。我々の王の死は,とっておきのメインイベントというわけだ」。

ここで准将は,サーカスの演し物のように,報道はより強い刺激を求める読者の期待に応えることを目的としているのか,記者の使命とはいったい何なのか,と問いかけている。本書のタイトルが「王とサーカス」となっている所以も,ここにある

このときは,太刀洗は,この真っ向からの問いに全く答えられなかった。その彼女が,彼女なりの答えにたどり着いたのは,王宮事件とは無関係の麻薬殺人を王宮事件絡みの暗殺特ダネとして報道することをすんでのところで免れたあとのことであった。物語の結末部分で,つまり謎解きがすべて終わった後で,太刀洗はこう語っている。

《「私は・・・・・」
仏陀の目が見降ろしている。
「ここがどういう場所なのか,わたしがいるのはどういう場所なのか,明らかにしたい」
BBCが伝え,NHKが伝えてなお,わたしが書く意味はそこにある。》(451頁)

報道は,たしかにそのようなものかもしれない。が,そう思う一方,ハラハラ・ドキドキの長編ミステリの終え方としては,少々,物足りない感じがしないでもなかった。

(3)先進諸国のネパール援助の独善性・偽善性の告発。これは,幾度か,かなりストレートな形で出てくる。

サガル少年(太刀洗の現地ガイド)「よそ者が訳知り顔で俺たちは悲惨だと書いたから,俺たちはこの街で這いずりまわっている」。
――――「外国の連中が来て,この国の赤ん坊が死んでいく現実を書き立てた。そうしたら金が落ちてきて,赤ん坊が死ななくなってな」「仕事もないのに,人間の数だけ増えたんだ。」「増えた子供たちが絨毯工場で働いていたら,またカメラを持ったやつが来て,こんな場所で働くのは悲惨だとわめきたてた。確かに悲惨だったさ。だから工場が止まった。それで兄貴は仕事をなくして,慣れない仕事をして死んだ」

先進国による無邪気な,善意のネパール貧困報道やネパール援助が,ネパールをさらに苦しめ悲惨にするーーたしかに,そのような情況が,以前のネパールには,ときとして見られたことは認めざるをえない。忸怩たる思い。

【参照】
ナラヤンヒティ王宮博物館,再訪
王宮博物館と中日米
王宮博物館の見所
CIAと日本外務省-王族殺害事件をめぐって
バブラム博士,茶番のようです
王制復古の提唱
国王の政治的発言,日本財団会長同行メディア会見
退位で王制継続勧告,米大使
ビシュヌの死
王室と軍と非公然権力の闇
日本大使館の王室批判禁止警告 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2021/11/15 at 08:58

米国「性別X」パスポート,ようやく発行

米国務省が10月27日,「性別X(エックス)」パスポートを初めて発行した,と発表した。「LGBTQI+の人を含め、全ての人の自由と尊厳、平等を推進する」ためとのこと。

米国パスポートでの「性」選択は,これまでもかなり自由であった。出生証明書,既取得パスポート,州身分証明書などに記載済みの「性」とは異なる別の「性」の選択が可能だったし,性別変更には医療機関発行診断書も不要。そこに今回,いずれの性でもない「X」選択の自由(権利)が追加されたのだ。

「X」は,要するに「性」を区別しないということ。区別し,区別されなければ,より自由で便利ともいえるので,「X」選択はおそらく増加するだろう。そして,そうなっていけば,性区別を大前提とする既存社会そのものも大きく変わっていかざるをえない。スポーツの男女別,学校・会社・議会における男女別,等々。

そして,「性」が多様化・自由化すれば,「」絡みの日本の「」も,もちろん自由化せざるをえないだろう。

【参照】
第三の性パスポート,ネパールなどに倣い米でも
第三の性パスポート,ネパール発行開始
性的少数者の権利,先進国ネパールから学べ
M・F・X:ネパール「第三の性」旅券発行へ
「第三の性」パスポート,最高裁作成命令
ツクツクの女性運転手さん
制憲議会選挙2013(37):指名議席争奪
セックス超先進国ネパールに未来はあるか?
第三の性,公認

*1 U.S. Department of State, “Selecting your Gender Marker.”
*2 「男性でも女性でもない「性別X」のパスポート、米国務省が初発行」CNN,2021.10.28
*3 「性別「X」の旅券、初発給 来年から本格運用―米」時事,2021年10月28日
*4「米、初のLGBTQ旅券「Xジェンダー」選択肢」日経,2021年10月28日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2021/10/29 at 17:56

Under Control ― オリ首相と安倍首相

1.オリ首相の「under control」発言
ネパールのオリ首相が5月8日,CNNインタビューにおいて,コロナ対策について問われ,こう答えた―

「ネパールでも,むろん他のいくつかの国々と同様,パンデミック(感染爆発)が広がっている。が,ネパールでは,コロナ(コビド19)感染は,いまのところ『under control(コントロール下,制御下)』と見るべきだ。*1」

「昨年,われわれは感染をunder controlの状態にしていた。感染死はゼロになった。新規感染は1日当たり50人以下だった。ところが,一般民衆は,パンデミックはもう終わり心配するほどではない,と考えてしまった。それが,コロナ感染の第2波を引き起こしたのだ。・・・・われわれは,感染をunder controlの状態に置くため,全力をあげてきた。*2」

このオリ首相の「under control」発言は,首相報道補佐官ツイッターにも投稿され,一挙に拡散された*3。

    ■首相報道補佐官ツイッター,2021/05/08

2.「out of control」の現実
このように,オリ首相はCNNインタビューにおいて,コロナ感染は「under control」と強気で語ったが,実際にはこの頃,ネパールでも「感染が激増,病院ではベッドも酸素も不足し,事態はコントロール不能(out of control)の状態」になっていた*4。

    ■The Guardian, 2021/04/30

ネット版National Geographicによれば,「ネパールではコビド19がコントロール不能(out of control)の状態で拡大」をしており,「いまや救急病棟は満員」,「死亡率も隣国インドより高くなっている」。しかも,保健所によれば,感染者数は,政府発表よりも実際にははるかに多い。スター病院のコロナ担当者は,「いまは戦争のような状態だ」とさえ語っている*5。

コロナ感染は,政官界にも及んでいる。オリ首相の「under control」発言インタビューをツイッターに投稿した報道補佐官自身でさえ,投稿日の夕方,感染が判明。他に,オリ首相秘書官数名,大臣2名を含む国会議員26名,議会事務官19人など,多くが感染している。

3.首相「under control」発言への猛反発
こうした状況を見れば,ネパールのコロナ感染状況は危機的と言わざるをえない。にもかかわらず,オリ首相は,「under control」とCNNを通して世界に向け宣言してしまった。

この発言には,当然ながら,ごうごうたる非難の声が上がり,一挙に拡大した。たとえば,ボジラジ・ポカレル元選管委員長は,「オリは,国際社会に向け,現状を隠し事態はコントロール下(under control)と語るのではなく,ネパールが現に直面している現実を正確に語るべきだった」と批判している*1。

非難はもっとも至極である。では,なぜオリ首相は,どう見ても無理であるにもかかわらず,このようなことを強気で断言してしまったのか?

4.政治も「out of control」状態
オリ首相は,対印外交でも内政でも,強硬なナショナリストであった。2018年2月の政権発足後2年ほどは,その政策があつれきは多々あれ,与党共産党が下院絶対多数を握っていたこともあり,結果的には成功しているように見えていた。

ところが,政権発足2年を過ぎると,ネパール共産党内のオリ派と反オリ派の対立が激化し始める一方,対印関係もカラパニ領有権をめぐり悪化していった。

こうして政権維持に不安を感じ始めたオリ首相は,強行突破を図るべく,2020年12月,突然,下院を解散してしまった。しかし,この解散はあまりにも強引であり,最高裁で2021年2月違憲とされ,議会は再開された。そして,この再開議会において2021年5月,オリ首相は,信任案が否決され,辞任を迫られた。ところが,反オリ派の方も首相選出に必要な多数派を形成できなかったのをみて,オリ首相は,バンダリ大統領に助言しオリを首相に任命させてしまった。こうして再任されたオリ首相は,またもや強引に議会を解散,半年後の2021年11月に選挙を実施することにしたのである。

この半年余のネパール議会政治は,まさにドタバタ,憲法上の根本的な疑義も多々指摘されている。文字通り「out of control」と批判されても致し方あるまい。

そこにコロナ感染第2波が押し寄せてきた。オリ首相は,コロナ対策でも窮地に追い詰められた。もしこれを「out of control」と認めてしまえば,議会政治の事実上の「out of control」のダメ押しとなり,政権維持が一層困難になる。そこで,オリ首相はCNNインタビューで,つい,コロナ感染は「under control」と口走ってしまった,ということではないだろうか。状況からは,そう推測される。

5.日本英語の「under control」
それと,もう一つ。このCNNインタビューでの「under control」発言のとき,オリ首相は,とっさに日本英語での用法を思い浮かべ,それに習ったのではないかという推測。いまのところ証拠は何一つないが,興味深い仮説ではある。

周知のように,日本英語の「under control」は,安倍晋三議員が首相であったとき,オリンピック東京招致のため世界に向け発信した,最も基本的で重要な英語キーワードであった。

2013年9月,安倍首相はオリンピック招致のためブエノスアイレスでのIOC総会に出かけ,英語(米語)で,東京開催の安全性をアピールした(「皇室利用と日本語放棄で五輪を買った安倍首相:”under control”のウソ公言」ネパール評論2013/09/13)*6。

“Some may have concerns about Fukushima. Let me assure you, the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo.” 「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。」(首相官邸HP *8)

しかしながら,福島原発が2013年9月時点で「under control(統御されている)」状態とはほど遠かったことは,明らかだ。現在に至っても,燃料デブリや増加し続ける汚染水など,多くのものの処理が先送りされており,とうてい「under control」などとは言えない状況である。

ところが,それにもかかわらず,安倍首相は被災福島原発を「under control」と説明し,オリンピック招致に成功,以後,日本政府もこれを基本方針として継承してきた。すなわち,日本政府公認の日本英語では,被災福島原発のような状況をもって「under control」と言い表すことになったのである。

この日本英語の「under control」は,東京オリンピック開催問題や福島原発事故が議論されるとき,しばしば言及され,世界的に有名となり,日本英語の語義として定着していった。

6.オリ首相「under control」は日本英語?
さて,そこで問題は,オリ首相の「under control」。ネパールは日本と親密な関係にあり,ネパールの人々が日本英語をマスターしていて,何ら不思議ではない。そして,そうしたネパールの人々であれば,この半年余のネパールのコロナ感染状況や政治状況を「under control」と呼ぶことに,さほど躊躇することもあるまい。福島の被災原発がコントロールされているのと同じように,ネパールのコロナも政治も,多少問題はあれ,ちゃんとコントロールされているではないか,と。

では,オリ首相自身は,どうであったのか? 与党分裂とコロナ感染拡大とで切羽詰まって,英米英語の意味で「under control」と口走ってしまったのか? それとも,日本に学び,日本英語の意味で「under control」と説明してしまったのか? いまのところ,私には,いずれとも判断できない。機会があれば,どなたかにお教えを請いたいと思っている。

7.誤魔化しよりましな自覚的変更
それともう一つ,「under control」との関連で注目すべきは,ネパールの政治家たちの状況適応力の高さである。彼らの多くは,状況の変化に応じて融通無碍に自分にとって最も有利と思われる方に立場を変えていく。無定見,無原則と見えるかもしれないが,少なくとも現実政治の場では,いったん始めたら状況がいかに変わろうが修正困難な「武士に二言なし」型・「インパール作戦」型の日本の政治家たちよりはましである。

オリ首相も,CNNインタビュー後,「under control」発言に猛反発されると,そのわずか2日後,The Guardianに,”Nepal is being overwhelmed by Covid. We need help”とタイトルをつけたメッセージを寄せ,先の発言を事実上,全面的に撤回してしまった(タイトルが首相自身のものかは不明)。「ネパールはコロナに席巻され圧倒されている(overwhelmed)」というのだ*8。

    ■首相報道補佐官ツイッター,2021/05/10

「under control」でないとも,「out of control」だとも言っていないが,事実上,同じとみてよいだろう。文字通り,豹変。だが,オリ首相は,コントロール下でないのにコントロール下と強弁し誤魔化し続ける日本英語式の「under control」に逃げ込むことをせず,ネパールのコロナ感染状況は英米英語でいう「under control」ではないことを,はっきりと認めた。誤りを誤りと認め,方針転換する。この方が,外国語の語義まで勝手に変えて現実を隠蔽し続けるよりも,はるかに危険が少なく,よりましな政治とはいえるであろう。

このところ日本政治における言葉の軽視は,目に余る,議論はまるで成り立たず。詭弁,誤魔化し,繰り返し,無視等々に明け暮れる。少しはネパールの政治家たちの真剣な議論を見習うべきではないか。

*1 Oli’s virus ‘situation under control’ remark meets with criticism, Kathmandu Post, 2021/05/09
*2 Pandemic is Under Control: PM Oli, Newbussinessage, 2021/05/09
*3 首相報道補佐官ツイッター,2021/05/08
*4 Nepal facing deadly Covid wave similar to India, doctors warn, ‘Situation is out of control’ as cases spike and hospitals run short of beds and oxygen, The Guardian, 2021/04/30
*5 COVID-19 spirals out of control in Nepal: ‘Every emergency room is full now’, National Geographic, 2021/05/12
*6 「皇室利用と日本語放棄で五輪を買った安倍首相:”under control”のウソ公言」ネパール評論,2013/09/13
*7 「IOC総会における安倍総理プレゼンテーション」2013年9月7日
*8 KP Sharma Oli, “Nepal is being overwhelmed by Covid. We need help,” The Gurdian, 2021/05/10

(C)谷川昌幸

Written by Tanigawa

2021/06/02 at 14:32

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (9)

[参考資料]
*1 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」2019年10月
*2 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査結果(概要)
*3 入国管理局長「拒食中の被収容者への対応について」(通達),2001年11月2日
*4 入国管理局「退去強制業務について」平成30年12月
*5 出入国在留管理庁「収容・仮放免に関する現状」令和元年11月25日
*6 出入国在留管理庁「送還忌避者の実態について」2020/03/27
*7 「仮放免に関する主な通達・指示」難民支援協会,2019年11月
*8 「法務大臣閣議後記者会見の概要[ナイジェリア人男性の死亡に関する質疑について]」令和元年7月2日
*9 宮崎岳志「東京入国管理局に収容されている外国人多数がハンガーストライキを行っているとの報道に関する質問主意書」平成29年5月16日提出,質問第318
*10 「衆議院議員宮崎岳志君提出 東京入国管理局に収容されている外国人多数がハンガーストライキを行っているとの報道に関する質問に対する答弁書」内閣衆質193第318号,平成29年5月26日
*11 福岡難民弁護団「大村入国管理センターでのナイジェリア人の死亡事故についての声明」2019/06/27
*12 九州弁護士会連合会「大村入管センターにおけるナイジェリア人死亡事案に関する調査報告書に対する理事長声明」2019/10/29
*13 東京弁護士会「外国人の収容に係る運用を抜本的に改善し、不必要な収容を直ちにやめることを求める会長声明」2019/07/01
*14 日本弁護士連合会「大村入国管理センターにおける長期収容に関する人権救済申立事件(勧告)」2019/11/25
*15 「緊急ステートメントー飢餓死したナイジェリア人男性についてー」FREEUSHIKU,2019/10/03
*16 クルドを知る会,日本クルド文化協会,日本クルド文化協会クルド人難民Mさんを支援する会「大村入管ナイジェリア人飢餓死事件の調査発表を受けての共同声明」2019/10/07
*17 関東弁護士会連合会「入国管理局による外国人収容問題に関する意見書」2019/01/15
*18 「患者の権利に関するWMAリスボン宣言
*19 WMA Declaration of Malta on Hunger Strikers, Medical Assembly, 2017
*20 Ian Miller, A History of Force Feeding: Hunger Strikes, Prisons and Medical Ethics, 1909–1974, Palgrave Macmillan, 2016
*21 Mary A Kenny, Derrick M Silove and Zachary Steel, “Legal and ethical implications of medically enforced feeding of detained asylum seekers on hunger strike,” The Medical journal of Australia 180(5),  April 2004
*22 Hernán Reyes, “Medical and Ethical Aspects of Hunger Strikes in Custodyand the Issue of Torture,” Research in Legal Medicine, Vol 19, 1998.
*23 「サニーさんの死なぜ 大村入管のナイジェリア人 収容3年7ヵ月」西日本新聞,2019/07/18
*24 「柚之原牧師「現在の制度に無理がある」 大村入国管理センターの長期収容問題」長崎新聞,2019/9/29
*25 「仮放免求めハンスト相次ぐ 大村入国管理センターの長期収容問題」長崎新聞,2019/9/29
*26 「ハンストのナイジェリア人男性が飢餓死するまで 調査報告書を読んだ医師が解説」dailyshincho, 2019/10/08
*27 “Nigerian on hunger strike dies in Japanese immigration centre,” guardian, 2019/10/02
*28 レジス・アルノー「男性が不慮の死「外国人収容所」悪化する惨状 今もハンガーストライキが行われている」東洋経済,2019/08/06
*29 「収容外国人ハンストで死亡 入管施設で初、報告書公表」nikkei,2019/10/01
*30 「法務省に入国拒否され長期収容の27人がハンスト 長崎では死者も」newsweekjapan,2019/06/26日
*31 「長崎に収容のナイジェリア人「飢餓死」報告書 入管ハンスト初の死者」東京新聞,2019/10/02
*32 「入管施設での外国人死亡、ハンストでの餓死だった。入管庁「対応問題なし」」朝日新聞デジタル,2019/10/01
*33 「入管施設で餓死 人権軽視ひずみあらわに」信毎・社説,2019/10/03
*34 野村昌二「体重71キロが47キロに…入管収容者の餓死 外国人に人権ないのか?」AERA,2019/11/12
*35 大橋毅「「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」の検討」,2019/12/28
*36 難民支援協会HP
*37 二村伸「急増する長期収容」NHK開設室,2019/08/21
*38 望月優大「追い込まれる長期収容外国人」2018/11/05,gendai,simedia.jp
*39 「『みんなで裸を見たと言われた』・・・・入管収容女性が手紙で訴え」毎日新聞HP,2020/05/18
*40 「「2週間だけ仮放免」 繰り返される外国人長期収容 「一瞬息させ、水に沈めるようだ」」毎日新聞,2019/11/12
*41 織田朝日「入管施設でハンストを続ける被収容者を苦しめる「2週間のみの解放」」ハーバー・ビジネス・オンライン,2019/11/01
*42「衝撃の内部映像、収容者“暴行”入管施設で何が?」TBS news23, 2019/12/24
*43 アムネスティ「入管施設で長期収容に抗議のハンスト198人」2019/10/ 08
*44 西田昌矢「入管収容者がハンストで半減? 死亡例受け仮放免増加、出所後も困窮」西日本新聞,2020/4/6
*45 「収容外国人の「ハンスト」拡大=仮放免求め、死者も-入管庁調査」jiji.com,2019/10/01
*46 「「入管は自分たちを殺したいのかな?」入管収容所で抗議のハンストが拡大」ハーバービジネスオンライン,2019/08/07
*47 「入管センター「外国人ハンスト」騒動、人権派新聞各紙がほとんど触れない事実」週刊新潮,2019/08/15・22日号
*48 「入管施設で長期収容に抗議のハンスト198人」アムネスティ,2019/10
*49 志葉玲「法務省は違法な収容をやめて―難民や弁護士らが会見、衰弱したハンスト参加者らが再収容の危機」Yahooニュース,2019/08/13
*50 志葉玲「救急車を二度追い返した!東京入管の非道、医師法や法務省令に違反の指摘~手遅れで死亡した事例も」Yahooニュース,2019/03/14
*51 鬼室黎「絶食ハンストした2人、入管が再収容 仮放免から2週間」朝日新聞デジタル,2019/07/24
*52 鬼室黎「入管にハンスト抗議、イラン人仮放免 体重25キロ減も」朝日新聞デジタル,2019/07/10
*53 「牛久入管 100人ハンスト 5月以降拡大、長期拘束に抗議」東京新聞,2019/07/25
*54 「「死ぬか出るか」入管ハンストの男性2人、会見で語った心境」J-CASTニュース, 2019/08/13
*55 「不法滞在外国人、ハンスト続出で入管苦慮…約4割は元刑事被告人」産経新聞,2019/09/30
*56 樫田秀樹「人権非常事態 死に追いやられる難民申請者」,『世界』2019年12月
*57 樫田秀樹「長期収容、自殺未遂、餓死…問題続出の背景に何がある?18年勤めた元職員が語る「入管」の闇」週プレNEWS, 2020/01/13
*58 西田昌矢「入管収容者がハンストで半減? 死亡例受け仮放免増加、出所後も困窮」西日本新聞,2020/04/06
*59 山田徹也「不法入国者が収容される現場の「壮絶な実態」 収容期間は長い人で4年超、医療面での問題も」東洋経済,2020/01/18 5:00
*60 「民主主義とは何かー5日間、計105時間に及ぶハンガーストライキで元山仁士郎さんが訴えたかったこと」琉球新報 2019年1月21日
*61 「元山さんのハンストに共感、県内外から応援続々 辺野古投票実現へ署名も」沖縄タイムス,2019/01/17
*62 「沖縄県民投票めぐるハンストを中止 医師の指摘で」朝日デジタル, 2019/01/19
*63 「「県民投票の会」元山氏のハンスト、ドクターストップ 105時間で終了」沖縄タイムス,2019/01/19
*64 「沖縄、不屈の歴史 ハンストは権力への意思表示」毎日新聞,2019/01/19
*65 辰濃哲郎「沖縄の世論を動かした若者たちの断固たる行動 分断と歴史、葛藤の島でもがく若者たち(3)」東洋経済ONLINE,2019/02/10
*66 三上智恵「「県民投票潰し」とハンガーストライキ」マガジン9,2019/01/23
*67 「宜野湾市役所前テントについて」宜野湾市ホームケージ
*68 「「ハンストはテロと同質」「さっさと死ね」秘書ツイート 衆院議員が謝罪」沖縄タイムス,2019/01/26
*69 「高須克弥、橋下徹、ネトウヨ、安倍応援団がバカ丸出しのハンスト叩き! 元山氏、ウーマン村本が完全論破」リテラ,2019/01/22
*70 美浦克教「沖縄県民投票と日本本土~元山仁士郎さんの105時間ハンストに思うこと」ニュース・ワーカー2,2019/01/20
*71 中村尚樹「琉球弧に見る非暴力抵抗運動~奄美と沖縄の祖国復帰闘争史~

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2020/06/03 at 09:50

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (8)

9.強制治療・強制栄養の残虐非人道性
日本政府は,「調査報告書」でも明らかなように,入管施設収容のハンスト者(拒食者)に対し強制治療・強制栄養をすることを認めている。

しかしながら,「リスボン宣言」や「マルタ宣言」をみれば明らかのように,それらは極めて残虐で非人道的であり,とうてい許容されるものではない。

このことは,古くから欧米で繰り返されてきた強制治療・強制栄養の多くの記録を見ても明らかである。以下参照。
ゴビンダ医師のハンスト闘争(21)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(22)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(23)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(24)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(25)

以上の多くの事例から明らかなように,入管施設被収容者に強制治療・強制栄養を実施し,力づくでハンスト(拒食)を断念させようとするようなことは,なすべきではない。残虐,非人道的であるばかりか,それらを強行しても成功の見込みはない。

したがって,サニーさんに対し強制治療・強制栄養を実施しなかったこと,それをもって出先機関たる大村センターの責任を問うべきでもない。大村センターの責任は,仮放免など他の採りうる方法によりハンスト死を防止するための努力を十分に尽くさなかったことにある。

 
■奴隷用強制摂食器具(National Museum of Denmark)/フォアグラ強制給餌(Stop Force-feeding)

10 見直されるべき入国管理政策
大村センターでハニーさんをハンストに追い込み,死に至らしめたのは,日本政府の入国管理政策そのものである。

外国人労働者を,尊重されるべき人格をもった「人間」としてではなく,安上がりで使い勝手の良い「労働力」としてのみ受け入れ,日本側の都合で不要となれば,一方的に送り返そうとする。もし在留資格が切れ,特別在留資格も得られず強制退去命令を受け収容施設に入れられてしまうと,仮放免はあるにせよ,原則として出国まで「無期限」で拘束される。

また,入管施設被収容者が難民申請をしていても,難民認定は極めて厳しく,やはり長期の「無期限」収容ということになってしまう。

外国人労働者や移民・難民の扱いは,どの国においても難しい課題だが,日本の場合は,とりわけ問題が多い。ただ,はっきりしているのは,このままでは「無期限」収容への抗議ハンストはなくならず,しかもそれを断念させるための強制治療・強制栄養はあまりにも残虐・非人道的なため実施は実際には困難だということである。

入管施設でのハンスト問題は,外国人労働者あるいは移民・難民の処遇を根本的に改める以外に,解決されることはないだろう。


■強制摂食反対ポスター/ICE強制摂食抗議デモ(NYT, 2019/01/31

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/06/02 at 08:51

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (7)

8.入管庁のハンスト死防止策提言
入管庁「調査報告書*1」がハンスト死防止のため提言しているのは,もう少し具体的にいうと,つぎのような方策である。

(1)説得,カウンセリングの強化。精神疾患が疑われる場合は,精神科受診(p13)。
(2)「拒食や治療拒否により・・・・危険が生じている場合には,・・・・強制的治療を行うことが可能となるよう体制を整備」(p14)。
(3)強制治療実施に不可欠の常勤医師の確保(p14-15)。
(4)「強制的治療の体制を確保できた収容施設を拒食対応拠点と定め,・・・・時機を失することなく当該被収容者を当該拠点に移収して処遇する」(p15)。

このように「調査報告書」は,強制治療・強制栄養の実施をハンスト死防止策として提言する一方,送還や仮放免についても,検討を求めてはいる。

しかし,送還については,促進のための方策の検討が必要と述べているにすぎない。

また,仮放免については,弾力的な運用の検討を提言してはいるが,ハンスト(拒食)を理由とする場合には,極めて消極的である。

・「拒食による健康状態の悪化は,拒食を中止して摂食を再開したり点滴治療を受けることなどにより解消されるべきものであり,拒食者の健康状態の悪化を理由として仮放免を行うことについては慎重な検討を要する」(p15-16)。
・「(拒食で生命が危険になり)治療・回復を図るためには一時的に収容を解いて治療に専念させることが不可欠かつ適切であると考えられる場合には仮放免を検討する必要があるところ,こうした仮放免は飽くまでも治療や健康状態の回復を目的とし,この目的に必要な限度で行うべきものである。」(p16)。
・「拒食による健康状態の悪化は,拒食の中止又は収容施設内においても可能な点滴等により改善される性質のものであり,拒食者の健康状態の回復を図るために仮放免が不可欠ということはなく,このような状態における仮放免は,仮放免許可を得ることを目的とした他の被収容者の拒食を誘発するおそれがあることに鑑みると,一般に,拒食により健康状態が悪化したものを仮放免の対象とすること自体,極めて慎重でなければならない」(p13)。

このように見てくれば,「調査報告書」が,送還困難なハンスト者(拒食者)が危険な状態になったときは,(1)医師の判断に基づき強制治療・強制栄養を実施するか,あるいは(2)健康回復のため仮釈放し,健康回復後速やかに再収容する,という立場をとっていることは明らかである。

■収監サフラジェットへの強制摂食(英紙1913年5月24日)

*1 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」2019年10月

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/06/01 at 15:23

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (3)

3.最後の手段としてのハンスト
こうした状況で入管施設収容が長期化すれば,先が見通せず精神的に追い詰められた被収容者の中から,残された最後の手段として,自分自身の生命を賭したハンスト(ハンガーストライキ)に訴える人が出てくるのは当然といえよう。

入管施設でのハンストは,事実,被収容者が増え,収容が長期化するにつれ,増加している。(「ハンスト」は入管用語では「拒食」または「摂食拒否」。)しかも,これらのハンストは,仮放免などの要求が入れられないので長期化し,なかには断続的に続けられ,事実上1か月以上に及ぶ場合もある(*43)。

そうした中,ついに恐れられていたハンスト死が,現実に起こってしまった。大村入管センターでのサニーさんのハンスト死である。

200520d■ハンスト数の推移(*6)

補足ハンスト死後の仮放免増加と「強制治療」
サニーさんのハンスト死をきっかけに,ハンストでの抗議と,これに対応するための仮放免が一時的に増え,その結果,被収容者数も減少している(上図参照)。しかし,たとえ抗議ハンストの結果,仮放免されても,制約が多いうえに,回復すればすぐ再収容されてしまう(*40,41)。

こうしたハンスト死防止のための仮放免は,おそらく一時的な臨時措置であろう。政府は,ハンストをすれば放免される,と見られることを強く警戒している。政府としては,ハンスト死を防止しつつ,収容は送還まで継続しなければならない。そのため政府が採ろうとしている方策が,「強制治療(強制的治療)」や「強制栄養」。政府はいま,抗議ハンストに対し当面は短期仮放免で対応しつつ,いずれは,それを「強制治療」や「強制栄養」の実施により断念させるための準備を進めているのではないかと思われる。

仮放免:「収容令書又は退去強制令書により収容されている者について,病気その他やむを得ない事情がある場合,一時的に収容を停止し,例外的に身柄の拘束を解くための措置。逃亡,条件違反等の場合は。仮放免の取り消しが可能」(*5)。
200520c

*5 出入国在留管理庁「収容・仮放免に関する現状」令和元年11月25日
*6 出入国在留管理庁「送還忌避者の実態について」2020/03/27
*40 「「2週間だけ仮放免」 繰り返される外国人長期収容 「一瞬息させ、水に沈めるようだ」」毎日新聞,2019/11/12
*41 織田朝日「入管施設でハンストを続ける被収容者を苦しめる「2週間のみの解放」」ハーバー・ビジネス・オンライン,2019/11/01
*43 アムネスティ「入管施設で長期収容に抗議のハンスト198人」2019/10/ 08

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/05/28 at 14:56

カテゴリー: 労働, 政治, 人権

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ネパール憲法,「未来政策賞」受賞(4)

4.ネパールの青年政策
世界未来会議がネパールの憲法に基づく青年政策として特記し高く評価しているのが,「国家青年会議(National Youth Council)」設置であり,また政策としての「国家青年政策(National Youth Policy)2015」,「青年ビジョン2025(2015)」および「戦略的10か年計画(2015)」の作成である。これらは2008年設置の「青年・スポーツ省(Ministry of Youth and Sports)」の管轄下にある(*6,7)。

ネパールの青年の境遇は,いまでも,たしかに厳しい。「国家青年会議法(2015)」の定義によれば,「青年」は16~40歳。この「青年」がネパール人口の40.35%を占めているが,彼らの失業率は高く,開発指数は世界第145位に低迷している。そこでネパール政府は,「国家青年政策2015」や「青年ビジョン2025」を定め,次のような目標の実現に向け努力することになったのである(*5,6,7)。

■政策目標
・青年の担う役割を高め,国家建設・開発に寄与せしめる。
・青年の社会・政治参加の促進。
・青年の教育・雇用等の向上支援。
・周縁諸集団の青年の積極的格差是正措置による社会・政治参加の促進。
■具体的政策
・中等教育の無償義務化。各種奨学金・教育ローンの拡充。人権・平和・民主主義のための教育。外国語教育。職業教育。オープンユニバーシティ開設。
・青年のための保健政策拡充,薬物規制強化。
・青年の能力開発と雇用拡充。
・青年の社会・政治参加。平和構築・紛争解決への青年参加。
・芸術・文学・文化・スポーツ・演芸への青年参加。
・犯罪・暴力の防止。人身売買取締り。
・環境保護,持続的開発。
・開発における周縁諸集団の平等。

以上は,「国家青年政策2015」や「青年ビジョン2025」に掲げられている政策のほんの一部にすぎない。あまりに抽象的にして網羅的という印象は否めないが,「世界未来政策賞」受賞を励みに,理念列挙にとどめず,それらの具体化へ向けての着実な前進を期待したい。


  ■青年・スポーツ省(HP)/UNDPネパール青年未来構想

*1 “Future Policy Award 2019 crowns eight best policies empowering youth at global summit of parliaments,” The World Future Council
*2 “An Inspiring Future Policy Award Ceremony 2019 Celebrated the World’s Most Impactful Policies Empowering Youth,” The World Future Council, October 21, 2019
*3 “EMPOWERING YOUTH DECENT AND SUSTAINABLE JOBS AND CIVIC AND POLITICAL PARTICIPATION,” FUTURE POLICY AWARD 2019, The World Future Council
*4 “Future Policy Award 2019 crowns eight best policies empowering youth,” UNDP, October 11, 2019
*5 “UNDP NEPAL YOUTH STRATEGY 2018-2022,” UNDP, 2018
*6 “National Youth Policy 2072(2015),” Ministry of Youth and Sports, Nepal Government (Council of Ministers), 2072/6/19 (October 6, 2015)
*7 “Youth Vision – 2025 And Ten-Year Strategic Plan, Ministry of Youth and Sports, Nepal Government (Council of Ministers), 2072/6/19 (October 6, 2015)
*8 “Nepal‘s constitution gets international award,” Republica, October 24, 2019

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/11/07 at 18:59

ネパール憲法,「未来政策賞」受賞(3)

3.ネパール憲法の受賞理由
世界未来会議は,ネパール憲法に未来政策賞を授与した理由を,次のように説明している(*3)。

南アジアの内陸国ネパールは,世界最貧国の一つ。長らく鎖国状態だったが,1950年代から民主化への闘いが始まった。最近になってようやく多党議会制となり王制は廃止された。内戦は2006年,包括和平協定締結をもって終息した。青年たちも,この内戦・民主化闘争に積極的に参加した。

包括和平協定(2006年)と暫定憲法(2007年)は,中央集権国家から連邦制国家への移行を義務づけていた。そして,注目すべきことに,暫定憲法には「国家開発への青年参加政策採用」が規定されていた。

最初の制憲議会選挙では,有権者の51%が35歳以下であった。

2015年成立の現行憲法は,青年をして経済,社会,文化,政治の各分野に参加せしめるための諸規定を置き,また青年の能力開発のための教育,健康,雇用を拡充することを求めている。第51条j(7)は,青年の参加と能力開発のための政策を国家に義務づけ,第18条(3)は平等への権利を定めている。

2015年憲法施行後,青年政策が促進され,制度化もされた。たとえば「国家青年会議(2015)」の設立や,「国家青年政策(2015)」,「青年ビジョン2025」,「戦略的10か年計画(2015)」の制定など。

「ネパール憲法は,歴史的につくり上げられてきた不平等の問題の解決に取り組み,持続可能で豊かな未来をつくりだしていくための包摂的憲法の一つの範例である。これは,健康な環境への権利を定め,青年の能力開発を重視する憲法である。」(*3)

■憲法受賞(世界未来会議HP

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/11/06 at 14:05

ネパール憲法,「未来政策賞」受賞(2)

2.2019年度未来政策賞の選考過程と結果
2019年度の未来政策賞は,春に推薦が始まり,予選の結果,36か国の67政策がノミネートされた。それらにつき最終選考が行われ,8月27日,次の8政策が未来政策賞に選ばれた(*3,5)。

(1)青年の経済的能力向上に寄与する持続可能な職
 金賞=ルワンダ,銀賞=スコットランド(UK),銅賞=南アフリカ
(2)持続可能な開発と平和のための青年の社会・政治参加
 金賞=エストニア,銀賞=ネパール,銅賞=欧州連合
(3)未来構想賞(Vision Awards)
 ロスアンゼルス(USA),セネガル

この選考結果について,A・ワンデル世界未来会議事務局長は,こう述べている。
「今年の未来政策賞は,青年大量失業や青年政治不参加をこれ以上容認できないとして行動することを決断した政治指導者たちにより採択された特に優れた政策に授与された。2019年度未来政策賞受賞政策の担当者たちは,その目標実現の可能性とその方法を示してくれた。世界各地の政策担当の皆さんには,これらの先例を見習い,それぞれの政策を同様の範例たりうるような政策へと高めていっていただきたい!」(*2,3,4)

2019年度未来政策賞の表彰式は10月16日,ベオグラード(セルビア)開催のIPU総会において挙行された。ネパールからはGP・ティミルシナ上院(国民院)議長が出席し,賞を授与された。議長は帰国後の10月23日,首相官邸においてオリ首相に受賞を報告した(*8)。


 ■持続可能な開発目標(UNDP*5)/表彰状授与される上院議長(世界未来会議HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/11/05 at 11:41

カテゴリー: 社会, 経済, 憲法, 政治

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