ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for the ‘教育’ Category

ゴビンダ医師のハンスト闘争(11)

(3)ガウリMEPC委員長の医大ビジネス批判
MEPC委員長のガウリ・カルキ(Gauri Bahadur Karki)は,法律家として様々な委員会に参加し,汚職責任追及を中心に重要な役割を果たしてきた。特に特別裁判所裁判長(2009年3月~2012年12月)であったときは,有力政治家,高級官僚,警察幹部,軍幹部らの汚職解明に取り組み,責任を厳しく追及してきたことで知られている(*1)。

ガウリ・カルキは,2月4日のMEPC報告書提出後,委員長の職を退いたようだが(退任日不明),医学教育問題については,その後も厳しい批判を続けている。医学教育の現状認識についてはゴビンダ医師と基本的には同じであり,いわば「共闘」関係にあるので(実際に両者の関係がどうなのかは不明だが),以下,2018年7月16日付『セトパティ』記事(*12)に基づき,彼の発言要旨を紹介する。

医大経営は金密輸より儲かる。
「金密輸には危険が伴う。投資が必要だし,密輸の金を没収されるリスクもある。ところが,医科大学では,投資なしでも金儲けができる。たとえインフラ不備であっても,政治家に少し金を握らせて医大提携開設認可を取得し,次にネパール医学委員会(NMC)を買収して入学学生定員枠を取得すれば,それだけで,以後,何十億ルピーも掻き集めることが出来る。」

買収は割に合う。
「授業料が1人500万ルピーだとすれば,医大は学生を50人多く入学させれば,それだけで収入が2億5千万ルピー増えることになる。誰でも買収できるのは,それゆえである。」
「医大が何十億ルピーも掻き集められるのは,高度な教育も,有能な教授雇用も,不可欠の設備機器購入も,病院の良好な運営も必要としないからである。その結果,政治家や役人を買収する金は,ふんだんにあることになる。医療分野の腐敗の根本原因は,ここにある。」

NMC汚職
「NMC(ネパール医学委員会)の医大調査には5~7人が行けば十分なのに,18~20人の全スタッフが出向く。調査ではなく,金儲けのために他ならない。」
「こうした不正行為が明らかになったのは,ゴビンダ・KC医師が不正行為廃絶闘争を始めて以降のことである。」

政治家は外国病院に行くな。
「政治家は,ネパール国民を国内開設医大のなすがままにまかせ,自分たちだけ外国に行って治療を受けるべきではない。」

■ガウリ氏ツイッターより

*1 “Gauri says goodbye to SC,” Kathmandu Post, 13 Dec 2012
*2 ”Probe panel summons 20 ex NMC officials for investigation,” Republica, August 4, 2017
*3 “Medical education ordinance sent to president,” educatenepal.com, 2017-10-24
*4 “President enacts Medical Education Ordinance,” Onlinekhabar, Nov 10, 2017
*5 “Probe Commission summons TU, KU officials,” Republica, November 13, 2017
*6 “Medical education probe panel summons officials,” Himalayan, 13 Nov 2017
*7 “No action yet against 43 officials fingered by medical probe panel,” Republica, 1 Jun 2018
*8 “MEC holds first meeting, office to be set up at MoE,” Himalayan, February 06, 2018
*9 “Probe committee suggests reforms in medical education,” Himalayan, February 06, 2018
*10 “Corruption in med education: Govt mum on probe report,” Kathmandu Post, Feb 8, 2018
*11 “MEPC report and the issue of reform in the medical education section,” Review Nepal, 18 Feb 2018
*12 Prashanna Pokharel,“Medical colleges earn more easily: Probe Commission chair Prashanna Pokharel,” Setopati, 16 Jul 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/03 at 07:06

カテゴリー: 健康, 教育

Tagged with , , ,

ゴビンダ医師のハンスト闘争(10)

(2)MEPC報告書の提出
デウバ首相による「医学教育令」制定の3か月弱後,首相任期終了(2018年2月15日)直前の2018年2月4日,「医学教育問題調査委員会(Medical Education Probe Committee [MEPC])が調査報告書をデウバ首相に提出した。

MEPCは,ゴビンダ医師らの要求によりプラチャンダ首相(MC)が2017年4月17日に設置した委員会であり,紛らわしいがMNC(ネパール医学委員会)とは別の組織。

医学教育問題調査委員会(MEPC)
設置目的・権限:医科・歯科大学の開設,授業料,学生数,教職員配置などの調査,および「ネパール医学委員会(Nepal Medical Council)」の運営状況調査。
委員長:ガウリ・B・カルキ(元特別裁判所裁判長[注])。
委 員:ウペンドラ・デブコタ(医師),スルヤ・P・ガウタム(教育省事務次長),ほか数名。
 [注]最高裁判所―上訴裁判所(16)―郡裁判所(75)
    最高裁判所―(他の裁判所)特別裁判所/行政裁判所/労働裁判所
    (ただし連邦制移行に伴い,裁判所組織も改変中。)

このMEPCが2017年8月3日,ネパール医学委員会(NMC)の元委員らを召喚し,医科大学受入学生不正増員容疑で聴取することを決めた。召喚されたのは,アニル・K・ジャー元委員長,AE・アンサリ元副委員長を含む元委員ら20名(*2)。

さらにまたMEPCは,職権乱用調査委員会(CIAA)の専門職員8名も,カトマンズ大学医学部大学院入試に不正関与した容疑で召喚した。

そして11月に入り,医学教育令が制定されると,その直後の11月12日,MEPCはトリブバン大学(TU)とカトマンズ大学(KU)の幹部の召喚を決めた。TU幹部はカトマンズ・ナショナル医科大学設立に不正関与した容疑であり,KU幹部は医大授業料不正値上げの容疑。

召喚された大学幹部
TU:ヒラ・B・マハルジャン元副学長,ティルタ・R・カニヤ副学長,スダ・トリパティ名誉総長(Rector),ディリ・ウプレティ教務職員(Registrar),およびカトマンズ・ナショナル医科大学インフラ監査担当のカルビル・N・シャルマ教授ら他の教職員6名。
KU:ラムカンタ・マカジュ副学長ほか。

さらにこの日,MEPCは,前回の召喚に応じなかったNMC調査委員のシャシ・シャルマ医師も再召喚した。

このようにMEPCが召喚し聴取してきたのは,主にネパール学界,政官界の著名有力者たちであり,ここからだけでもネパールにおける医学教育問題の根深さ,解決の難しさがよく見て取れる(*5,6)。

MEPCは,こうした召喚・聴取に基づき2018年2月4日,デウバ首相に報告書を提出した。その概要は以下の通り。

MEPC報告書概要
・医学分野の改革につき調査し,それに基づき改革を実行せよ。
・医学生たるに必要な能力の確保・維持。
・医科大学学生定員は,NMCが割り当てる。
・学生数過多,授業料過大徴収,教育水準不足の医科大学に対する処分。
・大学,保健省,教育省,NMC各代表からなる委員会を設置し,医大を年2回以上調査。
・不正関与の教職員等43名の適正な処罰。処罰被対象者は,召喚されたTU副学長らであり,在職者は免職。また,医学教育に不当介入したCIAAロックマン・カルキ委員長についても適正な処分を行う。
・連邦医大を設置し,その下に各州3校までの提携医大設置を可能とする。
・医学教育令が実際に施行されるまで,提携医大の学生数は提携元大学が定める。
・医科大学の大学暦の統一。

このような内容の報告書を作成したMEPCは,それをデウバ首相に提出しようとしたが,当初,首相は受け取りを拒んだ。これに対し,ガウリ・カルキMEPC委員長が受け取らないなら郵便で送りつけると迫ったので,仕方なくデウバ首相は2018年2月4日,報告書を受け取り,担当の教育省に回した。ただし,報告書を受け取ったものの,首相はそれを公表せずコメントも一切拒否した。保健医療改革への消極姿勢が如実に表れている(*7,8,9,10,11)。

▼カトマンズ・ナショナル医科大学(同校FBより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/01 at 15:17

カテゴリー: 健康, 教育

Tagged with ,

ゴビンダ医師のハンスト闘争(9)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ
2.ゴビンダ医師ハンスト略年表
3.マテマ委員会報告
 (1)保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)
 (2)「マテマ委員会報告」要旨 [以上前出]

4.医学教育令制定と医学教育問題調査委員会報告
(1)医学教育令の制定
ゴビンダ・KC医師のハンストは,「マテマ委員会報告」提出後は,その速やかな実施が具体的な要求の中心に据えられることになった。

このゴビンダ医師の要求は,デウバ内閣(NC, 2017年6月7日~2018年2月15日)が,その政権末期に「医学教育令2017年」を制定・発布(大統領署名11月11日)したことにより,相当多くの部分が形式的には実現された(*3,*4)。

しかしながら,この「医学教育令」は,改正できず失効した旧医学教育法の代替政令にすぎず,議会で承認されなければ失効するし,大統領によりいつでも撤廃できる(注)。そのためゴビンダ医師は,「医学教育令」の速やかな施行を求める一方,同政令を法的により安定した「医学教育法」として制定することを次の具体的な要求の中心に据え,闘争を継続することになった。

しかしながら,2017年末選挙で大勝し次期政権を担うことになった共産党(UML+MC)はコングレス党以上に保健医療改革には消極的であり,ゴビンダ医師の改革闘争は予断を許さぬ状況になってしまった。

 (注)憲法114条要旨:議会閉会中に対処が必要な事態が生じたときは,大統領が内閣の助言に基づき政令を発布する。政令は法律と同等の効力を持つが,発布後開会の両議会のいずれかで否決されれば,失効する。また,政令は大統領によりいつでも撤廃される。さらにまた,政令は議会が否決せず大統領が撤廃しなくても,議会開会後6日経過すると失効する。

▼MEC医師資格試験合格率(保健省HP)

(http://dohs.gov.np/wp-content/uploads/2017/09/Nepal-Medical-Council.pdf)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/11/30 at 17:11

カテゴリー: 健康, 教育

Tagged with ,

ゴビンダ医師のハンスト闘争(8)

3.マテマ委員会報告
(1)保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)[前出]
(2)「マテマ委員会報告」要旨
1)保健医療制度と医学教育の抜本的見直し。医科大学(医学部)の中央集中の解消。医学部,歯学部,看護学部のカトマンズ盆地内新設のための予備合意書[基本合意書](Lol)は,今後10年間,交付しない。すでに全医大23校のうちの7校がカトマンズ盆地内に立地している。(保健省HP[2018-10-30]によれば,現在の医科大学数は公立4,軍付属1,私立14の計19校。[注])

2)保健医療担当専門機関を設置し,医大開設認可,医大入試,医大付属病院運営等を監督させる。既存の「ネパール医学委員会(NMC)」は機能不全。

3)カトマンズ盆地内では,医科大学は,たとえ準備が進んでいても,新設は認めない。準備中の既存施設等は政府に引き渡す。「マンモハン記念健康科学インスティテュート」,「ナショナル医科大学」,「人民歯科大学」など。

4)大学が予備合意書(Lol)をすでに取得している場合,保健医療コース新設はカトマンズ盆地以外でのみ認められる。

5)医大開設予備合意書を取得し施設整備を終えている場合,その施設は政府に売却することができる。

6)一つの大学が提携(affiliate)できる医大ないし医学部は5校以内(既存医大は除く)。医大(医学部)を持たない大学には,提携医大の新設を認めない。

7)一つの郡に開設できる医大は,一校のみ。

8)提携医大のMBBS(医学士)定員は100人以下,授業料は350万ルピー以下。また,提携歯科大(歯学部)の定員は50人以下,授業料は180万ルピー以下。

9)医師資格試験(NMC実施)合格率が2回連続75%以下の場合,医大認可取り消し。

10)国家は,必要な医大の開設には,税軽減,土地貸与などの助成をすべきだ。

[注]ネパールの医科大学(★公立,☆軍付属,無印は私立)
Tribhuwan University Affiliated (TU)
・Institute of Medicine (IOM), Maharajgunj, Kathmandu ★
・Universal Medical College (UCMS), Bhairahawa, Nepal
・National Medical College (NMC), Birgunj, Nepal
・Janakai Medical College (JMC),Janakpur, Nepal
・Kist Medical College (KISTMCTH), Imadol, Lalitpur
・Chitwan Medical College (CMC), Bharatpur, Chitwan
・Gandaki Medical College (GMCTHRC), Lekhnath-2, Pokhara
・Nepalese Army Institute of Health and Sciences( NAIHS), Kathmandu ☆
Kathmandu University Affiliated (KU)
・College of Medical Sciences (CMS),Bharatpur
・Nepaljung Medical College, Chisapani, Nepaljung
・Kathmandu Medical College (KMC),Sinamangal, Kathmandu
・Nepal Medical College,Jorpati, Kathmandu
・Kathmandu University School of Medical Sciences (KUSMS),Dhulikhel
・Lumbini Medical College,Tansen, Palpa
・Nobel Medical College.Biratnagar
・Manipal Medical College of Medical Sciences (MCOMS),Pokhara
Not affiliated to TU or KU
・B.P. Koirala Institute of Health and Sciences (BPKIHS), Ghopa, Dharan ★
・Patan Academy of Health and Sciences (PAHS),Patan, Lalitpur ★
・National Academy of Medical Sciences (NAMS),Mahaboudha, Kathmandu ★

医科大学の格付け(*8)

*1 चिकित्सा शिक्षासम्बन्धी राष्ट्रिय नीति तर्जुमा उच्चस्तरीय कार्यदलको प्रतिवेदन २०७२ (High-level work report on national policy related to medical education 2072)
*2 “Mathema-led committee submits report,” Republica, 29 Jun 2015
*3 “Mathema committee submits report on new health education policy,” The Himalayan Times, June 29, 2015
*4 “Govt makes public Mathema committee report,” Ekantipur, Aug 4, 2015
*5 “Health Profession Education Commission: Govt picks names for regulatory body,” Kathmandu Post, Sep 18, 2015
*6 “Top Ten recommendation for restructuring ‘Nepals Health Profession Education Policy’,” edusanjal, 2015-07-05
*7 “Health Profession Education Policy sets a precedent for future public policies: Interview Kedar Bhakta Mathema,” Kathmandu Post, 2018-07-09
*8 “Top Medical (MBBS) Colleges of Nepal,” https://edusanjal.com/ranking/top-medical-mbbs-colleges-nepal/

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/10/31 at 16:10

カテゴリー: 健康, 教育

Tagged with , , ,

ゴビンダ医師のハンスト闘争(7)

[前出]ゴビンダ医師のハンスト闘争(1)~(6)

3.マテマ委員会報告
ゴビンダ・KC医師は,保健医療の抜本的改革には「医学教育政策に関する上級委員会報告(マテマ委員会報告)」の実施が不可欠だと考えている。

ゴビンダ医師のハンスト闘争は,トリブバン大学医学部(IoM)人事への政治介入に反対して行った,最初のハンスト(2012年7月5日~8日)から始まる。人事は大きな利権であり,学部長など大学人事を巡っても政治家の介入が絶えなかった。ゴビンダ医師は,そうした政治介入により大学運営がゆがめられるのを阻止するため,大学人事は年功を原則とせよと訴えたのである。この要求は,以後,今回の第15回ハンストまで一貫して最も重要な要求項目の一つとして掲げられてきた。

1年半後の4回目のハンスト(2014年2月8~15日)になると,年功人事要求に加え,医科大学の新設手続き規正と地方開設推進,医学教育委員会(MEC)勧告の実施など,ゴビンダ医師の要求は国家の医学教育・医療制度全般の根本的改革にまで拡大した。

こうしたゴビンダ医師の改革要求に押され,スシラ・コイララ首相(NC,在職2014年2月11日~2015年10月12日)は2014年11月17日,「保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)」を設置し,保健医療専門職教育(HPE)の現状と課題を調査し,報告を求めることにした。

ゴビンダ医師は,この委員会には委員としては参加していないが,マテマ委員長によれば,委員会の求めに応じ意見は述べている。

(1)保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)
設置:2014年11月17日(S・コイララ内閣設置)
報告書提出:「医学教育政策に関する上級委員会報告2072(2015)」2015年6月29日(S・コイララ首相へ提出)
委員長:ケダル・バクタ・マテマ(元トリブバン大学[TU]副学長)(注)
委員:SR・シャルマ(元カトマンズ大学副学長)
委員:マダン・ウパダヤ(元TU医学部長)
委員:RK・アディカリ(元TU医学部長)
委員:B・コイララ(元TU教育病院長)
委員:G・ロハニ(保健省医療局長)
委員(事務局):H・ラムサル(教育省次官)
(注)Kedar Bakta Mathema. 1945年11月25日生。1991~94年トリブバン大学副学長。(ネパール全大学の学長は首相[王制下では国王]。副学長(vice-chancellor) は大学最高責任者であって事実上の学長。)1996~2003年日本,韓国,オーストラリア,ニュージーランド大使歴任。これまでに政府設置の教育,外交等に関する各種委員会委員歴任。
 ■マテマ元TU副学長(同氏FBより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/10/30 at 14:40

ゴビンダ医師のハンスト闘争(6)

2.ゴビンダ医師ハンスト略年表

(2)第15回ハンスト関係略年表
[2014年]
11月17日:スシル・コイララ首相(NC),ゴビンダ・KC医師(以下KCと略記)要求に応えマテマ委員会設立。
[2015年]
06月29日:マテマ委員会,スシル・コイララ首相に報告書(110頁)提出。
[2017年]
04月17日:プラチャンダ首相(CPN-M),医学教育調査委員会(MEPC)設置。
10月23日:デウバ内閣(NC),KC要求に沿う「医学教育令2017」(「医学教育法」代替政令)を閣議決定。(憲114条:政令は内閣助言により大統領発布。次期議会否決か発布後6か月経過で失効。)
11月23日:「医学教育令2017」,バンダリ大統領が署名し成立。
[2018年]
02月04日:MEPC,デウバ首相に報告書提出し,医大認可不正関与43人の処分勧告。
02月15日:2017年末総選挙で大勝したUML-CPN(現NCP)のKP・オリが首相就任
04月26日:「医学教育令2017」,施行期間満了。
04月29日:政府,マイティガル・マンダラでの集会禁止。翌30日からKC支持派逮捕始まる。
05月09日:「医学教育令」,議会が期限延長議決。
06月07日:KC,「6項目要求」。
06月30日:KC,カルナリ州ジュムラで「無期限ハンスト」開始
07月04日:KC,体調悪化でカルナリ保健科学アカデミー(KAHS)救急室収容。
07月05日:「医学教育令」,期間満了。
07月06日:政府,「医学教育令」大幅修正の「医学教育法案」議会登録。NC,「医学教育令」を「医学教育法」として制定することを求める動議提出。
07月07日:医学協会(NMA),3日以内にKC問題への政府回答がなければスト開始と宣言。
07月08日:マイティガル・マンダラでKC支持集会。
07月09日:KC,酸素吸入開始。
07月11日:NMA,病院1時間スト(救急除く)など全国で抗議活動開始。
07月12日:政府,「医学教育法案」議会提出。
07月14日:KC,心拍異常,白血球減少などで意識失うが,KAHSにはICUなし。政府,KCのカトマンズ強制移送検討開始。マイティガル・マンダラでNC中心のKC支持大集会。
07月15日:ジュムラでKC支持デモ拡大。
07月16日:政府側交渉団結成(団長=KR・バラル教育省事務局長)。政府,「医学教育法案」議会提出。
07月17日:州政府,中央政府の意向を受け中央政府にKCカトマンズ移送を要請。KCさらに衰弱,立ち上がれない。心室性期外収縮。心停止の恐れ。
07月19日:政府動員の治安部隊と学生,看護師らがKAHSで衝突,数十名負傷。警官死亡と伝えられ,KCはカトマンズ移送同意(のち警官死亡は虚報と判明。)政府,軍ヘリでKCをカトマンズへ移送。夕方到着後,KCは収容されたトリブバン大学教育病院(TUTH)でハンスト継続。
07月20日:デウバNC党首,TUTHハンスト中のKC訪問。全国公私立医療機関,救急を除きKC支持スト。マイティガル・マンダラでKC支持集会。アムネスティ,ジュムラでの政府実力行使に憂慮表明。
07月21日:市民団体,バネスワルで抗議集会,著名人多数参加。
07月22日:バサンタプルでKC支持集会。主要14メディア編集長,KC訪問し,支持声明発表。KC体調さらに悪化し,危険状態に。
07月23日:UMLとMCの下部組織(各2),KC要求に沿う「9項目要求」に合意。KC支持集会,数百人参加。
07月24日:オリ首相とプラチャンダ共同議長,KB・マテマ,DK・バスコタ医学審議会(MEC)議長と会い,打開策協議。夕方,政府とKC側が教育相で交渉。
07月25日:医療諸機関,外来診療など休止。医師ら,KC支持デモ参加。
07月26日:TUTHで医学部学生,KC支持デモ。夕方,政府とKC,「9項目合意」署名深夜,KCハンスト終了
07月27日:政府,「医学教育法案(修正なし)」と「9項目合意」を議会提出。KC,ICU収容(6日間)。
07月31日:政府,「医学教育法案」の修正案(「9項目合意」に基づき22か所修正),議会登録。
08月7日:KC,退院。
08月11日:KC側交渉団,首相と官邸で交渉開始。


 ■トリブバン大学医学部/ネパール医学審議会

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/10/09 at 14:29

ゴビンダ医師のハンスト闘争(1)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ(1)
ゴビンダ・KC医師(博士,TU教授)が,ネパール保健医療の抜本的改革を求め,15回目のハンストを行った。ハンストは,6月30日カルナリ州ジュムラで開始され,7月26日強制移送されたカトマンズで終了した。27日間にも及ぶゴビンダ医師最長のハンスト。
 *ハンスト(ハンガーストライキ):要求実現のための絶食による非暴力的闘争。

この生命を賭した壮絶な決死のハンストは,保健医療分野の人々を中心に共感を呼び起こし,ゴビンダ支持運動が拡大,結局,オリ政府をしてゴビンダ医師要求をほぼ全面的に受け入れさせることとなった。約束の実行はまだだが,そしてネパールでは約束実行の反故は珍しくないとはいえ,それでも確固たる信念に基づくハンスト闘争の現代における有効性を,ゴビンダ医師のハンストは十二分に実証したといってもよいであろう。

ゴビンダ医師のハンストは,悪政に対し率先して自ら一人敢然と立ち,正義実現のため公然と敢行される非暴力の政治闘争であった。それは,言い換えるなら,ガンジー(ガンディー)の唱えた「サティヤグラハ(सत्याग्रह, 真理要求,真理把持)」に他ならない。ガンジーはネパールではなぜかあまり人気がないが,今回の劇的勝利により,ゴビンダ医師を「ネパールのガンジー」と呼んだり,そのハンストを「サティヤグラハ」として評価する人も出始めた。ゴビンダ医師のハンストは,国内に限定された地域的政治闘争の一つとしてだけではなく,普遍的意義をも持ちうる「サティヤグラハ」としても注目され始めたのである。

■ゴビンダ医師支持FB

谷川昌幸(C)