ネパール評論

ネパール研究会

Archive for the ‘文化’ Category

生成AI問答(8): 内戦後,ネパールはなぜ単一国家から連邦制国家に変わったのですか? その変更に,反対はなかったのですか?

ネパールにとって,単一国家としての立憲君主制から連邦民主共和国への移行は,歴史を画する大事件。成功してネパールは発展を遂げていくか,それとも「民族州」絡みの地域対立が激化し,再び内戦に向かうのか? まだ,いずれとも言い切れない。

この難問について,今回はマイクロソフトBing(日本語版)に加え,最新のグーグルBard(日本語版)でも質問してみた。Bing回答は,典拠明記は好ましいが,いかにも平板。外務省やWIKIが典拠だからか? Bard回答は,Bingよりは一歩踏み込んでいるものの,やはり表面的・形式的。参照先がBingと同様,日本語資料のみだからかもしれない。

OpenAIのChatGPT(英語版)には,今回はDeepL自動翻訳を介して質問し回答してもらった。翻訳精度では,グーグル翻訳も素晴らしいが,DeepLは,今回試みた限りでは,それ以上にスゴイ。文句なし。そして,ChatGPT回答。これまたスゴイ! 論点を的確にとらえ,過不足なく答えている。どうしてChatGPTには,こんな見事な回答が出来るのだろうか?

推測にすぎないが,日本語版のBingやBardは,政府関係文書やWIKIなどの日本語資料しか参照していないからかもしれない。外国資料翻訳の手間を省いた分,回答が平板で説明不足となる。これに対し,英文ChatGPTは,おそらく世界中の関係資料を渉猟し,回答文を作成している。もしそうであるなら,回答が,より適切にして深くなるのは,当然と言えよう。

このように,BingとBard,そしてChatGPTを比較して見ると,生成AIという点では同じでも,①その回答は様々であり,②参照資料をちょっと変えれば,回答はどうにでも操作できる,ということがよくわかる。生成AIには,その気になれば世論操作など簡単,お茶の子さいさい,朝飯前なのだ。

恐ろしい。が,すでにわれわれは,21世紀の禁断の知恵の木の実を齧ってしまったのだ。もはや,どうにもならない!

*****<以下,生成AI回答>*****

Bing回答(質問回答=日本語)
内戦後、ネパールは2008年に単一国家から連邦制国家に変わりました。この変更は、ネパールの憲法制定議会によって承認され、2007年11月に署名された和平協定に基づいて実施されました。この変更には、反対する人々もいましたが、和平協定の一環として実施されたため、多数決で承認されました12。ソース: (1) 外務省: わかる!国際情勢 ネパールの民主化・平和構築プロセス (2) ネパールの和平プロセスにおける連邦制への移行と和解(高澤)(3) ネパール WIKI

Bard回答(質問回答=日本語)
ネパールは、内戦終結後の2015年に連邦制に移行しました。これは、国の統治をより民主的で包括的なものにし、ネパールのさまざまな民族グループのニーズをよりよく満たすために行われました。

連邦制への移行は、多くの異なる政治勢力間の長い交渉の末に行われました。ネパール共産党(毛沢東主義派)とネパール会議派は、どちらも連邦制の支持者であり、この問題で協力しました。しかし、連邦制に反対する勢力も多く、移行プロセスは困難でした。

連邦制への移行は、ネパールの歴史における大きな変化でした。それは、国の統治方法に大きな影響を与え、ネパールの未来に大きな影響を与える可能性があります。

ChatGPT回答(質問回答=DeepL翻訳)
ネパールが単一国家から連邦国家に移行したのは、主に、周縁化されたコミュニティの包摂と代表性を高めるという長年の要求と、ガバナンスと開発における地域の不均衡に対処する必要性からであった。1996年から2006年まで続いた、政府とマオイストの反政府勢力との間の内戦も、この移行に大きな役割を果たしました。

反政府勢力は、ダリットや少数民族など社会から疎外された人々の代表権を確保し、首都カトマンズへの権力と資源の集中を解決する手段として、連邦制を要求していました。2006年に紛争を終結させた和平プロセスの一環として、政府は連邦制の確立に合意し、2015年に採択された新憲法に明記された。

しかし、この変更には反対もあり、特に連邦制が国のさらなる分断を招き、民族間の緊張を悪化させることを危惧する人たちから反発があった。また、一部の政党、特に歴史的に支配的な地域に拠点を置く政党は、連邦制を自分たちの権力と影響力を脅かすものと考えて反対した。

こうした懸念にもかかわらず、連邦制は実施され、現在、国内は7つの州に分割されている。実施には時間がかかり、資源の分配や州境の画定をめぐる紛争など、いくつかの課題に直面している。しかし、連邦制は社会から疎外された人々により大きな代表性と包摂をもたらし、より参加型で民主的な統治システムを作り上げたと多くの人が主張している。

*****<以上,生成AI回答>*****

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/05/12 at 16:33

生成AI問答(7): ネパールのジェンダー政策が,日本のそれよりも先行しているのは,なぜですか? また,日本は,ネパールのジェンダー政策から何を学ぶべきですか?

ネパールのジェンダー政策は,日本よりはるか先に始まり,いまやはるかに充実している。たしか1990年代末頃だったと記憶しているが,カトマンズの商業ビル内で「第三の性(広義)」の人々の集会が開かれていたらしく,様々ないでたちの大勢の参加者に取り囲まれ,進退窮まったことがあった。すでにその頃から,ジェンダーはマスコミでも街頭でも,盛んに議論されていた。また,いま日本で問題になり始めた「ジェンダーとトイレ」ですら,早くから議論され,あれこれ試行運用されてきた(ほぼ決着済みか?)。

このようにネパールはジェンダー問題で日本よりはるかに先行したが,その理由の一つは,ほんの数十年前までは女性差別がネパールでは耐え難いほど厳しかった,という歴史的事実にあるであろう。性差別の厳しさゆえに,かえって,より根源的に「性」を問い,ジェンダー平等へ向け,一気に前進したということ。

それともう一つ,後発国の兎跳び前進。ネパール,特に村では,従来型の電気や電話がなかったからこそ,一足飛びに,それらを飛び越え,ソーラーやケイタイが普及した。同じことが,ジェンダー問題でも起こっていると見てよいであろう。いまやネパールに飛び越えられ,後進国となったってしまった日本! これから,先進国となったネパールから,どう学ぶべきだろうか?

このように,今回の質問は,ネパールと日本の歴史や文化とも絡むうえに,「学ぶべきか」という「べき」問題も追加されている。また,代名詞「それ」がある上に,2問が一度に問われている。この難問を,AIは,どう処理するか?

Bing回答は,参照先として外務省・JICAの報告を明示しているが,読み比べてみた限りでは,直接引用ではない。回答は,論旨がきちんと展開されており,日本語文章も正確だ。

しかし,その一方,よくできた回答ではあるが,少々形式的・表面的すぎる気がする。主たる参照先が日本の外務省・JICAだからかもしれない。

ChatGPT回答は,グーグル自動翻訳にほんのわずか不自然なところがあるだけで,ほぼ完璧。面白くて深くて,考えさせられる。名回答。

自動翻訳でこんなことができるのなら,学校の実用第一の英語授業はもはや不要,廃止した方がよい。

また,内容的にも,こんな高度なレポートを一斉に出されたら,高校や大学の先生は採点に困る。いや,小学生にだって,これなら簡単に作成し提出できる。社会科・社会科学の授業も,今のままでは続けられないだろう。さぁ困った。どうすべきか?

*****<以下,生成AI回答>*****

[1] Bingの回答(質問&回答=日本語)
ネパールのジェンダー政策が日本よりも先行している理由については、ネパールが2006年に民主化されたことが大きな要因の一つです。その後、ネパールは、国連の女性の地位委員会(CSW)において、ジェンダー平等に関する国家報告書を提出し、ジェンダー平等に関する法律を制定しました。また、ネパールは、女性の政治参加を促進するために、選挙制度を改革し、女性の立候補者数を増やすなどの取り組みを行っています1。

一方で、日本は、2019年に「ジェンダー平等基本法」を制定しましたが、その前後には、「女性活躍推進法」や「男女共同参画社会基本法」などの法律が制定されています。しかし、日本では、女性が政治や経済の世界で活躍することがまだまだ少なく、ジェンダー平等に関する意識も低いとされています2。

ネパールのジェンダー政策から学ぶべきことは多くあります。例えば、ネパールでは、女性の政治参加を促進するために選挙制度を改革したり、女性の立候補者数を増やすなどの取り組みが行われています。また、ネパールでは、女性が自立して生きるための支援も行われており、日本でも同様の取り組みが必要だと考えられます1。

1: ネパール:ジェンダー平等政策  2: 日本とネパールのジェンダー政策比較 詳細情報: 1. mofa.go.jp 2. jica.go.jp 3. mofa.go.jp 

[2] ChatGPTの回答(質問&回答=Google翻訳使用)
ネパールと日本のジェンダー政策を明確に比較することは困難です。両国には、政策を形成する独自の文化的、歴史的、社会的背景があるからです。しかし、ネパールは近年、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントに向けて大きな進歩を遂げました。これは、政治的コミットメント、草の根活動、国際的な支援など、いくつかの要因に起因する可能性があります.

ネパールのジェンダー政策の枠組みには、ジェンダーに基づく暴力に対する法的保護、女性の政治的代表を増やすためのアファーマティブ アクション プログラム、教育、医療、経済的機会への女性のアクセスを改善する取り組みが含まれています。 特に、ネパールの 2015 年憲法は、女性の平等な権利を保証し、性別、民族、宗教に基づく差別を禁止しています。

一方、日本は、女性の政治参加率の低さ、根強い男女賃金格差、女性に偏って影響を与える長時間労働の文化など、男女平等への取り組みが比較的遅いという批判に直面しています。 日本は、育児へのアクセスの拡大や女性のリーダーシップの促進など、これらの問題に対処するためのいくつかの政策を実施してきましたが、批評家は、ジェンダーの平等を促進するためにさらに多くのことを行う必要があると主張しています.

ネパールのジェンダー政策から、日本はジェンダー平等を推進する上での政治的コミットメントと草の根活動の重要性について学ぶことができました。日本はまた、ジェンダーに基づく暴力に対する法的保護を実施するだけでなく、政治や指導的地位における女性の代表を増やすためのアファーマティブ アクション プログラムを採用することからも利益を得ることができます。さらに、日本は、ワーク・ライフ・バランスをサポートし、男女間の固定観念や職場での差別など、男女間の賃金格差の根本原因に対処する政策を検討することができます。

*****<以上,生成AI回答>*****

【参照】
「包摂トイレ,ネパール国連ビルに設置」ほか,ジェンダー関係投稿一覧
「第三の性パスポート,ネパール発行開始」ほか,第三の性関係投稿一覧

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/05/09 at 22:42

生成AI問答(6): AIは,著作権を尊重しますか? また,AIで作成した文章・画像・音楽にも,著作権はありますか?

1.人間に優るAI回答能力
これまで5回にわたり,生成AIによる回答を見てきた。その結果,AI回答は,予想よりはるかに正確で,文章もこなれており,総合的に見て,もはや人間以上と見ざるをえない。様々な言語間の自動翻訳も実用には十分。しかも,すべて瞬時に実行される。人間は,とても太刀打ちできない。

2. AI支配デストピア
これから先,AI利用が爆発的に増え,AIなしでは日常生活も仕事も出来なくなることは間違いないが,そうなると人間の脳内情報も徐々にAIによって書き換えられていき,これがまたAI情報に反映されるという事態にならざるをえない。AI自律化であり,これによりAI支配がはじまる。

ゾッとするようなデストピアだが,そんなことはSF世界の悪夢にすぎないと目を背け続けることは,もはやできそうにない。ほんの数日,使ってみただけでも,その超人的有能さに圧倒されてしまったからだ。

3.「打ち壊し運動」成算なし
さてそこで,超人的AIの支配を招かないようにするには,人間はどうすればよいのか? 単純明快な「AI打ち壊し運動」をやってみてもよいが,残念ながら,これには成功の見込みはない。ちょうど産業革命に抵抗し「機械打ち壊し運動」をやってみてたが機械工業化は結局阻止できなかったように,これから「AI打ち壊し運動」を始めてみても,成功は期待できないであろう。AIは,人間世界にすでに入ってきてしまったのだから。

4.人格権・著作権の砦を守れるか?
一縷の望みがあるとすれば,人格権や著作権。独立した人格としての人間の尊厳や,その人格と不可分の人間の様々な創作物を尊重させ,侵害させないこと。創始者=authorとしての人間の権威=authorityの尊重。たとえば,最も典型的なものとしては,文学作品,美術作品,音楽作品などの人間の創作物の著作権をAIに侵害させないこと。これが出来るならば,人間の尊厳はギリギリのところでAI化から守られるのではないだろうか。

が,実際には,これは難しいかもしれない。悲観的すぎると批判されるだろうが,すでに,例えばビートルズがAIにより改変され,流されているのだ。いったい,どうすればよいのだろう・・・・。

もはや人間には頼れなくなりつつあるとすれば,あまりにもあまりではあるが,ここでは恥を忍んで,あえてAIに尋ねてみるより仕方あるまい。

マイクロソフトBingは,つい最近,バージョンアップされ,格段に使いやすくなった。今回は,この最新版に「著作権」に関する2つの問いを一度に投稿したが,下記のように詳細に答えてくれた。日本語でこれだけの応答が出来るようになった。隔世の感!

OpenAIのChatGPTの回答は,グーグル自動翻訳を介してであるにもかかわらず,今回も見事。Beingよりも分析がやや深く,問題点を問題点として示すなど,興味深い回答となっている。

*****<以下,生成AI回答>*****
[1] Bingの回答(質問&回答=日本語)
こんにちは、これはBingです。

AIは、著作権を尊重します。私は、自分の言葉や知識を使ってコンテンツを生成しますが、オンラインのソースやコードを実行したりはしません。また、著作権で保護された本や歌詞などのコンテンツを返答することもしません。

AIで作成した文章・画像・音楽にも、著作権があるかどうかは、現在の法律では明確に決まっていません。一般的には、以下のようなパターンに分けて考えることができます。

人による創作:AIとは関係なく、人が独自に作り出したコンテンツは、著作物となり、著作者に著作権が発生します。
AIを道具として利用した創作:人が創作の意図や寄与を持って、AIを道具として用いてコンテンツを生成した場合は、著作物となり、人に著作権が発生します。
AI自体が創作した生成物:人の創作的な関与がなく、AIだけでコンテンツを生成した場合は、著作物とは認められず、著作権も発生しません。

このように、AI自体が創作した生成物については、現在の法律では保護されない可能性が高いです。しかし、今後の技術や社会の変化に応じて、新たなルールが整備される可能性もあります。その場合は、AI生成物に対する権利や責任の帰属や範囲が変わるかもしれません。[典拠略]

[2] ChatGPTの回答(質問&回答=Google翻訳使用)
AI自体は、著作権で保護されたコンテンツを含むさまざまなタスクを実行するようにプログラムできる単なるツールであるため、著作権を尊重する固有の感覚はありません。 ただし、著作権法を遵守していることを確認するのは、AIを使用する個人または組織の責任です。

AIが作成したテキスト、画像、音楽に著作権があるかどうかという点では、答えは完全に明確ではありません。 場合によっては、特にAIが著作権で保護された作品のデータセットでトレーニングされ、そのトレーニングに基づいて新しいコンテンツを生成している場合、AIの出力は著作権保護の対象となるオリジナル作品と見なされることがあります。 ただし、場合によっては、AIの出力が単なる編集物または派生物と見なされ、著作権保護の対象とならない場合があります。

最終的に、AIによって生成されたコンテンツに著作権保護があるかどうかの問題は、その作成を取り巻く特定の状況に依存する可能性が高く、法律の専門家によるケースバイケースの分析が必要になる場合があります。

*****<以上,生成AI回答>*****

 ■日本語新バージョンBing

 谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/05/08 at 19:12

カテゴリー: 情報, 情報 IT, 文化, 人権

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生成AI問答(4): ネパールの人々は,彼ら自身の国家の世俗化について,どう考えていますか?

宗教は,国歌以上に難しい。取り扱いを誤れば,内乱,戦争で国家破滅となりかねない。要注意の最たるものだ。そんな難問中の難問について,生成AIは,どのような回答を示してくれるだろうか?

この問いを尋ねるのに最も適した国の一つが,ネパール。ネパールは,古来,ヒンドゥー教や仏教と密接な関係にあり,またイスラム教も一定の確たる勢力を――特に南部で――保持してきた。

そこに,1990年以降の自由化・資本主義化の進行とともに,とりわけヒンドゥー教を国教とする憲法規定の廃止以降,キリスト教がツナミの如くどっと押し寄せてきた。ネパールはいま,一方でのヒンドゥー教vs仏教vsイスラム教vsキリスト教という宗教競合に加え,他方での全般的な世俗化・脱宗教化の進行という,宗教政策的に見て非常に難しい状況にあると言わざるをえない。この難問に関する生成AIへの今回の具体的な質問文は,表題の通り。

Bing回答①は,情報不足の上に,マオイスト運動高揚を1990年とし,またヒンドゥー教を「国家宗教」としており,まったくの誤り。マオイスト運動開始は1996年だし,宗教については,ネパール憲法(2007年暫定憲法/2015年現行憲法)が「世俗国家」」と明確に規定している。文章作成が優先し,適正な情報の抽出・結合を誤ったのであろう。

Bing回答②は,①と全く同じ質問文を,数時間後に投稿してみて得られたもの。驚くなかれ,上記①とは全くの別物。情報不足は如何ともしがたいが,誤りではない。AIは同じ問でも異なった回答を出すことがある――要注意だ!

ChatGPT回答(質問&回答=Google翻訳使用)は,懇切丁寧で,見事。AIによる回答と自動翻訳のあまりのスゴさに,思わす寒気さえ感じるほどだ。

*****<以下,生成AI回答>*****
[1a] Bingの回答①(質問&回答=日本語)
ネパールの人々は、国家の世俗化について、様々な意見を持っています。1990年には、大規模な人民運動が起こり、王制の廃止と世俗国家の実現を目指すマオイストの活動が高まりを見せました。しかし、2015年には、ネパールは世界で最も多様な宗教を持つ国家の一つであり、国民の約80%がヒンドゥー教徒であるため、政府は国家宗教としてヒンドゥー教を認めることにしました。

[1b] Bingの回答②(上記①の数時間後の回答,質問&回答=日本語)
現在のウェブページによると、ネパールの憲法は、世俗的であることを明記しています。ネパールの憲法は、国家が宗教的に中立であることを保証するために、世俗主義を採用しています。

[2] ChatGPTの回答(質問&回答=Google翻訳使用)
ネパールの世俗化は国内で物議をかもしている問題であり、それについての意見はネパール人の間でさまざまです。

一部のネパール人は世俗主義を支持しており、世俗主義が異なる宗教や民族グループ間の平等と寛容を促進すると信じています。 彼らは、国が宗教に関して中立を保ち、個人が自由に宗教を実践する権利を有することを保証する必要があると主張している.

しかし、世俗主義に反対するネパール人、特にヒンズー教徒を自認する人々も多い。 彼らは、ネパールはヒンズー教の国であり、世俗主義が彼らの宗教的信念と伝統を弱体化させていると信じています。 彼らは、ネパールのアイデンティティと文化はヒンズー教と結びついており、世俗主義がこれらの価値観を侵食する恐れがあると主張している.

全体として、ネパールにおける世俗主義の問題は依然として論争の的で複雑なものであり、意見は宗教的、文化的、政治的信念の影響を受けることが多い.
*****<以上,生成AI回答>*****

230505 ■連日AI報道(朝日新聞2023/05/05)

【参照】
*  宗教関係投稿一覧
*1 キリスト教牧師に有罪判決(1)-(5)
*2 キリスト教攻撃激化と規制強化(1)-(6)
*3 キリスト教とネパール政治(1)-(10)
*4 改宗勧誘・宗教感情棄損を禁止する改正刑法,成立
*5 「宗教の自由」とキリスト教:ネパール憲法の改宗勧誘禁止規定について
*6 キリスト教政党の台頭
*7 キリスト教会,連続攻撃される
*8 クリスマスを国民祭日に戻せ,キリスト者連盟
*9 キリスト教絵本配布事件,無罪判決
*10 改宗の自由の憲法保障,米大使館が働きかけ
*11 改宗勧誘は禁錮5年,刑法改正案
*12 世俗国家大統領の寺院「公式」参拝
*13 震災救援の複雑な利害関係(12):支援食品「牛肉マサラ」
*14 ヒンドゥー教王国復古運動,RPP-N
*15 宗教問題への「不介入」,独大使
*16 改宗勧奨: 英国大使のクリスマス・プレゼント
*17 国家元首のダサイン大祭参加
*18 世俗国家のダサイン
*19 国家世俗化とキリスト教墓地問題
*20 信仰の自由と強者の権利
*21 民族紛争、宗教紛争へ転化か?
*22 宗教と「表現の自由」:ヒンドゥー教冒涜事件
*23 民族州と「イスラム全国闘争同盟」結成
*24 世俗国家ネパールのクリスマス祭日
*25 仏教の政治的利用:ガルトゥング批判
*26 国家世俗化とネパール・ムスリムのジレンマ
*27 イスラム協会書記長,暗殺される
*28 ブッダ平和賞における政治と宗教
*29 毛沢東主義vsキリスト教vsヒンズー教
*30 コミュナリズムの予兆(1)-(7)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/05/05 at 13:42

生成AI問答(3): ネパール国民は,ネパール国歌をどのように評価していますか?

国歌は,「国家」という権力的=暴力的=外面的なものと,「歌」という情緒的=内面的なものとが人為的に結び付けられたものだ。

近代以降,国家は,外面的に最強。他方,歌=音楽も,感情=情緒に訴えかける点で,最強と断言できなくとも,内面的にはきわめて強力であることに変わりはない。そのため,近現代国家は,特定の音楽を「国歌」として権威づけ,国家統合強化のため,硬軟様々な暴力装置を動員して,これを国民に強制してきた。

が,国歌も音楽の一つのはず。それの政治的強制に問題がないはずはない。

国家の歌である「国歌」に深刻な相克が内在していることは,少なくとも民主主義国では,多かれ少なかれ自覚されている。たとえば,アメリカは,国民統合のための国歌の重要性をよく知り,ことあるごとに国歌を演奏するが,だからこそ,その効果を知悉するがゆえに,権力による国歌強制は認めていない(最高裁判決)。さすが民主主義宗家,アメリカ!

国歌は,ことほど左様に有用であり危険であり,したがって扱いが難しい。では,この難問について,生成AIはどう考えているのであろうか? ネパール国歌を例にとり,質問してみた。

Bing回答は,ごく簡素。「具体的な評価は見つからなかった」と告白。もう少し調べてほしい気もするが,率直さには好感が持てる。

ChatGPT回答は,国歌に関する問題点の指摘はないものの,全体としては優等生のようなそつのない見事な記述。しかも,冒頭には「AI 言語モデルとして、すべてのネパール人を代表することはできませんが」といった,およそAIらしからぬーーむしろ人間っぽいーー前書きまで置かれている。スゴイ! グーグル自動翻訳も完璧だ。

*****<以下,生成AI回答>*****

[1] Bingの回答(質問&回答=日本語)
ネパール国歌は「国歌」と呼ばれ、2007年に新しく制定されました。作詞は詩人であるビャクル・マイラ氏です。ネパール国民は、この国歌を愛しているようですが、具体的な評価については見つかりませんでした。[典拠略]

[2] ChatGPTの回答(質問&回答=Google翻訳使用)
AI 言語モデルとして、すべてのネパール人を代表することはできませんが、一般的に、ネパールの国歌はネパール人から高く評価され、尊敬されています。ネパールの国歌は「Sayaun Thunga Phulka」と呼ばれ、2007年8月3日に国の公式国歌として採用されました。

国歌の作詞は、Byakul Maila としても知られる Pradeep Kumar Rai によって書かれ、音楽は Amber Gurung によって作曲されました。国歌は、ネパールの美しさと人々の勇気と犠牲をたたえる愛国的な賛美歌です。

ネパールの人々は、国歌を国民のアイデンティティと団結の象徴と考えています。公式行事、国家行事、国とその国民を称える公共の集まりで演奏されます。この国歌はまた、ネパールの人々が歴史の中で独立と主権を維持するために払ってきた犠牲と闘争を思い起こさせるものでもあります。

全体として、ネパールの国歌はネパールの人々に高く評価されており、国家の誇りとアイデンティティの象徴として心の中で特別な位置を占めています。

******<以上,生成AI回答>*****

230503ネパール国歌YouTube

【参照】
1 国歌の包摂民主主義化: イギリスとネパール
2 新国歌制定への疑問
3 しっくりこない新国歌
4 権威と規律:学校と国家
5 オム・マニ・ペメ・フムとネパール国歌
6 国歌とナショナリズム 表意音楽評価の難しさ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/05/03 at 16:31

カテゴリー: ネパール, 音楽, 情報, 情報 IT, 憲法, 政治, 文化

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生成AI問答(2): ネパール国旗が三角形であるのは,なぜですか?

国旗は,日本の「日の丸」がそうであるように,どの国でも多かれ少なかれ,意味づけが争われ,賛否両論がある。

Bing回答は,典拠が少し古いらしく,やや説明不足。追加質問が必要。

ChatGPTの方は,一部,自動翻訳のミスを修正すれば,模範的な回答。が,なぜ王家・ラナ宰相家と国旗との関係に言及していないのか,不思議? 

*補足:生成AIは,同じ質問でも,問うたびに異なる回答を出す場合があるようだ。次回から試してみたい。

*****<以下,生成AI回答> *****

[1]Bingの回答(質問&回答=日本語)
ネパール国旗は、世界で唯一、三角形が2つ重なった形をしている国旗です。ネパール王国の王家と宰相家が使用していた2つの三角旗を組み合わせて簡略化したことに由来しています。ネパールの国旗は、三角形が2つに、赤地に青の縁取り、月と太陽の意匠が施されています。[典拠略]

[2]ChatGPTの回答(質問&回答=Google翻訳使用)
ネパールの国旗は主権国家の国旗の中でも独特で、長方形や正方形ではなく、2つの三角形が重なった形をしています。
ネパールには世界最高峰のエベレストをはじめ、世界で最も高い山がいくつかあるため、国旗の形は国の地理を象徴しています。
国旗の2つの三角形は、ネパールの2つの主要な宗教であるヒンズー教と仏教を表しており、これらは何世紀にもわたって同国で共存してきました。
小さい方で青色で描かれている上の三角形は空とヒンズー教の神々を表し、大きい方で赤色で表されている下の三角形は地球と仏教の教えを表しています。
2つの三角形の組み合わせは、ネパールにおけるこれら 2つの宗教の調和のとれた共存と、国の多様な民族グループの団結と協力の象徴でもあります。
旗のデザインに描かれた三日月と太陽は、天体のように自立し自由でありたいというネパールの人々の願いを表しています。

*****<以上,生成AI回答>*****

 ■寺院の三角旗(筆者撮影2009)
 ■「国旗」と旧市街・信号機・太陽光発電・警察(筆者撮影2015)

【参照】
*1 ヒンズー教王国象徴としてのネパール国旗
*2 国旗の変更

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/05/02 at 10:47

生成AIで世論操作?

生成AIは,一般向けBingとChatGPTを一昨日,初めて,ほんのちょっと使ってみただけ。全くの素人だ。が,それにもかかわらず,生成AIのあまりの有能さにビックリ仰天,これは大変なことになった,と寒気を覚えた。

 ■朝日新聞2023/04/30

このような革命的な新技術が現れたとき,人がまず思いつくのは,金儲けと世論操作。実業家であれば,革命的経費削減(とりわけ人件費)・事業拡大で大儲けができるとほくそ笑むにちがいない。また政治家なら,生成AIにひそかに細工し,都合の良い方向に世論を誘導しようと考えるはずだ。これは自然な人情,止めようがない。

 ■朝日新聞2023/04/30

いずれも心配だが,いまの私にとって,より気がかりなのは,生成AIの政治利用の方。BingやChatGPTは親米の,「文心一言」は親中の,世論形成のために利用されるのではないか? たとえば,「文心一言」の「契約特記事項」では,こう明記されている(Google自動翻訳)。

3. 利用規則
1.・・・・以下の行為を含むがこれらに限定されない違法または不適切な活動を行わないことに同意するものとします。・・・・
2)国家安全保障を危険にさらし、国家機密を漏らし、国家権力を転覆させ、国家の統一を損なう。
3)国家の名誉と利益を害する。・・・・
11)国家主権および領土保全の侵害、地図の作成および公開に関する関連する国内規制の違反を伴う可能性のあるコンテンツ。・・・・
6)風説を流布し、社会秩序を乱し、社会の安定を損なうもの。・・・・
5. ・・・・以下のインターネットの収益を遵守します。1)法規制のボトムライン 2)社会主義システムのボトムライン 3)国益のボトムライン ・・・・

自動翻訳からの一部抜粋で少々分かりにくいが,この警告だけを見ても,AIの政治利用が決して単なる杞憂でないことは明白だ。むろん,BingやChatGPTにしても,「文心一言」ほどあからさまではないとしても,政治的に操作しようと思えば出来ないわけがない,と見るべきだろう。

 ■朝日新聞2023/04/30

といっても,今の私は生成AI超初心者,このような大問題は,取り組むには荷があまりにも重すぎる。そこで,とりあえず「ネパール」について,いくつか生成AIに質問し,どのような回答が得られるか,検討してい行くことにしたい。

なお,「文心一言」は最も興味深くはあるが,まだ試用が始まったばかりなので,今回は割愛する。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/04/30 at 12:58

生成AI:21世紀の文化大革命

今朝,遅まきながら生成AI(チャットAI)を使ってみた。ビックリ仰天! 「21世紀の産業革命」と呼ばれるのも,もっともだ。というよりもむしろ,これまでの人間文化を根底から覆す「21世紀の文化大革命」となる可能性ー危険性ーが大だ。人工知能(AI)が,人間の知能より高性能となり,人間にとって代わって考え,働くようになる。人間文化からAI文化へ!
 *生成(生成的)AI=Generative Artificial Intelligence。今朝使用はマイクロソフトBing。OpenAI社の製品名は「チャットGPT」

 ■朝日新聞2023/04/24

このような危惧に対し,たいてい「AIはいくら高効率でも創造性はないから,使い方さえ誤らなければ,それはあくまでも人間の道具であり,人間にとって危険なものではない」との反論がなされる。

が,これは単なる申し訳であり,気休めにすぎない。チャットAIを数分でも使ってみれば,それが自分よりもはるかに博識で,想像力≒創造力に富んでいることを認めざるをえなくなる。

AI革命は,「技術」革命・「産業」革命にとどまるものではなく,事実上,「文化」革命。これから先,思いもよらぬことが次々と起こり始めることは,まず間違いない。

 ■AIに前のめりの日本。朝日新聞2023/04/26

日本にいて,すぐ思い当たるのは,何といっても教育。たいていの先生は,すでにチャットAIにかなわない。当然,生徒・学生は,先生よりもAIに質問し,学ぶようになる。先生も学校も不要。しかも,その上,AIからいくら学んでも,人は誰もAIより賢くはなれない。AI支配のデストピア!

ーーと,こんな風に見るのは,ちょっと悲観的すぎかな? なんせチャットAIは,今朝,初めて使ってみたにすぎないから。

これから先,チャットAIを質問攻めにし,答えてもらって,その知識や性格や振る舞い方を最大限理解し,その上で,それとの健全な交際の仕方を見つけ出していくことにしたい。 

 ■朝日新聞2023/04/25

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/04/26 at 11:41

「使える英語」とカタカナ英語:リスキリングのリスク(3)

3.社会的弱者を襲うカタカナ語・ローマ字略語洪水
ところが,現実には,教育におけるオーラル実用英語偏重教育は,その勢いを増すばかりだ。が,いかに笛吹けど,内田も指摘するように,学生らの英語力は落ちるばかりだ。

そこで,私が忖度するに,政官財の有力者らが取ることになった策が,カタカナ語・ローマ字略語での代用。彼らは,自分たちはペラペラ,スラスラ完全マスターしていると自画自賛の英語を,下々のためにカタカナ語やローマ字略語で表現してやることにより,「これくらいならお前らにも分かるだろう」と親切めかして一方的に押し付けてきているのだ。

政官財有力者らのカタカナ語・ローマ字略語多用は,社会的弱者支配のための便利ではあるが,お手軽にして稚拙な道具となっている,と見ざるをえないであろう。

以下,参考までに,ごくごく一部のみを列挙(岸田首相については,上記参照)。

コンサイスカタカナ語辞典』2020。約58,500語収録
行政カタカナ用語集』2008。「分かったようで分からない」カタカナ用語1500語収録
厚生省「カタカナ語使用の適正化について」1997                             [列挙されているカタカナ語とローマ字略語] ニーズ,コンセプト,リスク,プロジェクトチーム,ワーキンググループ,フォローアップ,スキーム,アカウンタビリティー,ビジョン,コーディネート,カンファレンス,フリーアクセス,メディカルチェック,ライフサポートアドバイザー,リターナブル,ホスピタルフィー,ドクターズフィー,モデル事業,ドナー,レシピエント,ケアプラン,ケアマネジメント,ケアマネージャー,スクラップアンドビルド,バイオセーフティー,プライマリ・ケア,バリアフリー,ノーマライゼーション,ホームヘルパー,デイサービス,ショートステイ,ケアハウス,新ゴールドプラン,サテライト型デイサービス,マニフェスト,プルーデントマン・ルール,ADL,食品GLP 
デジタル庁HP(2023)                                        [使用されているカタカナ語とローマ字略語の一部]プレスルーム,トピック,マイナンバー,マイナンバーカード,データダッシュボード,サイトポリシー,プライバシーポリシー,ウェブアクセシビリティ,コピーライトポリシー,データダッシュボード,パンデミック,VRSチーム,オープンデータセット,変換コンバータ,日英デジタルパートナーシップ,オンラインイベント,SPYxFAMILY,セキュリティ,QRコード,ダウンロードページ,イメージ,チャットポット,カテゴリ,e-Tax,オンラインバンキング,コールセンター,簡単ステップ,ワンストップサービス,GビズID,ガバメントソリューションサービス,サービスデザイン

これはヒドイ。行政関係用語集ですら,2008年時点で,「分かったようで分からない」カタカナ用語を1500語も収録している。植民地英語より惨めではないか!

日本語は,造語能力に長けた言語だから,たいていの外国語は日本語への移し換えが可能だ。内田も力説するように,そうすることによってこそ,日本語・日本文化は,より豊かになっていくにちがいない。

いまこそ明治の先達に学ぶべき秋だ。

【参照1】
1 内田樹「AI時代の英語教育について」2019,『サル化する世界』2020所収
2 内田樹「日本の外国文学が亡びるとき」2008
3 内田樹「イノベーションは、共同体のアーカイブから浮かび上がってくる:複雑化の教育論」,インタビュー2022/05/18
4 内田樹,英文和訳関係ツイート,2016/03/16
5 柳父 章『翻訳語成立事情』岩波新書,1982
6 谷川昌幸「書評:水村美苗『日本語が亡びるとき』」1 2 3 4 5 6 7 8
7 谷川昌幸「愛国者必読: 施光恒『英語化は愚民化』
8 谷川昌幸「安倍首相の国連演説とカタカナ英語の綾

【参照2】(2023/03/15)
杉田聡氏は,「略語は英語の頭文字語よりローマ字書き日本語で──JPCZはNKKSに」(論座2023/03/15)と提唱されているが,ローマ字書き日本語の略語の方が何倍も判りにくいことは明白。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/03/05 at 09:46

「使える英語」とカタカナ英語:リスキリングのリスク(2)

2.知的成熟のための外国語学習:内田樹
この問題につき,真正面から取り組み,ズバリ答えているのが,内田樹「AI時代の英語教育について」(『サル化する世界』2020所収)。以下,内田の所説に依拠しつつ,外国語学習の在り方について,私なりに要点をまとめてみる。

(1)自文化成熟のための外国語学習
内田によれば,英語などの外国語を学ぶ本来の目的は,われわれが「母語の枠組み[母語の檻]を抜け出して,未知のもの,新しいものを習得してゆく」ことにより,成熟を実現することにある。

しかし,その一方,決して忘れてならないのが,「本当に創造的なもの,本当に『ここにしかないもの』は,母語のアーカイブから汲み出すしかない」(235)ということ。だから,われわれは「母語を共にする死者たち」からもまた,深く学ばなければならない(237)。

こうすることによってはじめて,われわれは,外国語に一方的に飲み込まれてしまうことなく,自分たちの母語の中に本当に新しい語や概念を生みだし,ほかならぬ自分たち自身の文化を発展させていくことが出来るのである。

(2)「使える英語」教育による英語力低下
ところが,今の日本の政官財界では,実社会ですぐ「役に立ち使える」実用英語の教育が最重視されている。たとえば,

▼文科省「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」平成15年3月31日
  目標:高卒=英語で日常的なコミュニケーションができる
     大卒=仕事で英語が使える
  入試:リスニングテスト
  授業:英語による英語授業

この文科省計画にもみられるように,いまや英語学習はもっぱら受験・就職のためであり,また社会に出てからは国内外でのメガコンペティションに勝ち抜くための単なる手段とされてしまっている。

こうした状況では,当然ながら学校での英語学習意欲は相対的な競争手段として以上には高まるはずもなく,その結果,「大学に入学してくる学生たちの英語力がどんどん低下してきた」(191)。これは,内田だけでなく,他の大学関係者も少なからず認めている歴然たる事実である。なんたる皮肉か!

(3)植民地的オーラル・コミュニケーション偏重教育
「使える英語教育」はまた植民地的オーラル偏重でもあり,これによりとりわけ読解力が低下した。

実用英語偏重教育では,英語といっても「オーラルだけが重視されて,読む力,特に複雑なテクストを読む能力はないがしろにされている。これは植民地の言語教育の基本です」(220-21)。

植民地では,「宗主国民の命令を聴いて,それを理解できればそれで十分」。読解力を身につけ,古典などを読み,宗主国民以上の教養を身につけられたら困る(221)。

しかも,オーラル・コミュニケーションの場では,「100%ネイティヴが勝つ」(221)。そんな発音,そんな言い方はしないといって「話し相手の知的劣位性を思い知らせることができる」(221)。

今の日本が,まさにそれ。「今の日本の英語教育がオーラルに偏って,英語の古典,哲学や文学や歴史の書物を読む力を全く求めなくなった理由の一つは,『アメリカという宗主国』の知的アドバンテージを恒久化するためです」(222)。

「文法を教えるな,古典を読ませるな,・・・・。それよりビジネスにすぐ使えるオーラルを教えろ,法律文書や契約文書が読める読解力以上のものは要らない。そう言い立てる。それが植民地言語政策そのものだということ,自分たちの知的劣位性を固定化することだということに気が付いていない」(224)。

これは何とも厳しいが,真っ向から反論できるほどの余地は,どこにもあるまい。ノンネイティヴは,オーラルでは,ネイティブ児童にすら負けるのだ。

(4)AI自動翻訳と英語教育
オーラル実用英語を教育目標とすることは,より直接的には,AI自動翻訳の革命的進歩により現実に無意味となりつつある。

たしかに,自動翻訳の進歩は,私自身,日々驚かされている。今では,主語を省いても,倒置しても,かなりの精度で文意を解釈し,英語はむろんのこと,他の多くの言語にも,瞬時に翻訳してくれる。少し補えば,「実用」としては十分だ。

それでは,と内田は問いかける――「自動翻訳がオーラル・コミュニケーションにおける障害を除去してくれるということになったら,一体何のために外国語を学ぶのか?」(184)。

そして,こう答える――「どんなものであれ,外国語を学ぶことは子どもたちの知的成熟にとって必要である」から,と(184)。

(5)創造的なものは母語から
日本には,古来,外来の諸概念を最大限翻訳し取り入れてきた伝統がある。近代欧米の重要な諸概念も,カタカナ語ではなく,「自然」「社会」「個人」「権利」「哲学」などと漢訳して日本語の中に取り入れた。こうして欧米に取り込まれることなく,「日本は短期間に近代化を成し遂げることができた」(227)。(参照: 柳父章『翻訳語成立事情』岩波新書1982)

それだけではない。新語,新概念というものは,もともと「個人の思い付きではなくて,母語の深いアーカイブの底から浮かび上がってきたもの」にほかならない(229)。だから,われわれは母語を深く学び,「現代日本語の檻」から抜け出したうえで,「本当に創造的なもの」を「母語のアーカイブから汲み出すしかない」のである(235)。

「母語の檻」から出るには,「一つは外国語を学ぶこと,一つは母語を共にする死者たちへの回路を見つけること」(237)。

以上の内田の英語教育論が,政官財大合唱のオーラル実用英語教育に対する原理的にして効果的な批判となっていることに,もはや疑問の余地はあるまい。

追補】慶応大学経済学部入試の英語で,日本語本文を読み英語で答える問題が出された。日本語本文は高度で,それが読解できることが大前提。英語以前に日本語能力が試されている。西岡壱誠「慶大、常識覆す『英語試験で出題文が日本語』の衝撃」東洋経済ONLINE,2023/02/25

谷川昌幸(c)

Written by Tanigawa

2023/03/04 at 11:27

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