ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for the ‘旅行’ Category

山に展望台,街に人造動植物:ネパールの景観破壊

ネパールでは,山や丘の上に展望台をつくったり,道路わきや広場に人造動植物モニュメントを設置するのが流行っているという。観光客や買い物客を呼び寄せ,村おこしや街活性化を図るのが目的だろうが,自然・文化景観の観点からの反対も少なくない。

1.いくつかの事例
(1)山上の展望台
▼第1州:イラムの山の上に,予算8千万ルピーで展望台建設予定。
▼第3州:12の山の頂上に,予算1億8千万ルピーで展望台建設予定。
▼ポカラ:「サランコット開発5カ年計画(予算2億9千万ルピー)」で市近郊にケーブルカー,展望台,公園,ヘリポート,博物館,ホテルなどを設置予定。

[批判]
「連邦,州,地方自治体の権力亡者たちが,われわれの苦労して働き納めた税金を,あちこちの山の上に無用な展望台を建てるのに浪費している。彼らのスローガンは,『1つの丘に1つの展望台』。・・・・惨めなカネの浪費というべきか,バカらしい嘲笑のタネというべきか。」(*1)

「サランコットからの景観は比類なきものなのに,1千万ルピーもかけて,そこに展望台をつくるとは,まったく信じがたいことだ。」(*2)

「ネパールの山々は,もともと世界で最も高い山々だ。頂上からの景色は自然の絶景だ。それなのに,そこを20メートルばかり嵩上げすることに何の意味があるのか。そんなものではなく,これらの山々には,公衆トイレ,快適な宿,ゴミ処理施設など,もっと適切なものをつくるべきではないか。」(*1)

211122aKathmandu P, 2021/9/3

(2)コンクリやプラスチックの人造動植物
▼各地の道路わきや広場:コンクリ(コンクリート)やプラスチックで,コブシや沙羅の木,蓮の花,ニンニク,タマネギなどが造られ,設置されている。
▼ウダイプル:コンクリ製のブタ(予算600万ルピー)。
▼モラン郡:世界最大のコンクリ製牝牛

[批判]
「中央政府や地方自治体の役人たちは,『観光振興』を名目に巨額の予算をつけ,交差点や公園にコンクリやプラスチックのレプリカを設置している。」(*3)

「村でも町でも新しいことが流行り始めた。交差点や公園などにコンクリやプラスチックの造形物を設置することだ。」(*3)

211122bonlinekhabar.com, 2021/4/21
(3)万里の長城
カトマンズ北方のヘランブでは,観光振興のため,60kmにも及ぶ巨大な人造壁の建設が計画されている。

[批判]
「コンクリ製の塔や神話上の人物,あるいは石造りの壁などを見に,わざわざ訪ネする観光客がいるとは思われない。」(*1)

2.欧米や日本でも
山上の展望台や広場の人造モニュメントは,ネパールではいま急増し始めたばかりだが,欧米や日本では,はるか以前から設置されてきた。

たとえば,ヨーロッパ・アルプス。幾度かトレッキングに行き,急峻な山岳の迫力や山麓の絵のように美しい光景に魅了されたが,その一方,いたるところにケーブルカー,展望台など人造物が設置され,しかも景観とはそぐわない奇抜なデザインや色も少なくなく,いたく失望させられた。

たとえばモンブラン(モンテビアンコ)には,仏伊両国側から頂上近くまでケーブルカーで登り,そこの展望台から周囲を見回すことが出来る。が,それで何が得られるのか?

ケーブル終点の展望台は標高3777mもの高所! 観光客はすぐ高山病の症状に襲われ,寒さで震え上がる。見えるのは,相対的に――3777mも――低くなってしまった山々。氷河はあっても,山々の風景そのものは平凡。観光客は暖房の利いた軽食店や土産物屋に駆け込み,金を巻き上げられ,早々に,ケーブルカーに駆け戻り,下山することになる。

日本にも,そんな高山観光施設が,いくつもある。

が,山にしても地域にしても,有名なところは,まだましだ。悲惨なのが,そうでないところ。大金をかけ観光施設を設置しても,赤字垂れ流しで維持するか,さもなければ放置・荒廃,あるいは撤去だ。残るは,自然・文化景観の無残な破壊と赤字だけ。

そんなところが,日本中,いたるところにある。

211122dモンブラン・ロープウェイ
3.先進国の景観破壊から学ぶべきこと
先進諸国の環境保護派・景観保護派は,自分たちの,これまでのすさまじい環境・景観破壊には頬かむりして途上国にお説教するきらいがあるが,彼らの主張そのものには耳を傾けるべきところも少なくない。

ネパールの人造構造物による山岳観光開発や地域振興も,いくつかは成功するかもしれないが,他の大部分は失敗し,無残な残骸と負債を残すだけとなるだろう。

先進諸国の失敗から学ぶべきことは,少なくない。

*1 “EDIFICE COMPLEX, We need more health posts, affordable medical care and quality schools. Not more statues of mythical figures, and view towers,” Editorial,Nepali Times,July 26, 2019

*2 “The decline in Nepali public aesthetics; Why are we spending millions on view towers on hilltops, where the view is already worthwhile?,” Kathmandu Post, September 3, 2021

*3 Rabindra Ghimire, “‘More trees’for less greenery: The ‘concrete’ irony in Nepal’s cities,” english.onlinekhabar, April 21, 2021

*4 “Five-year master plan mooted for extensive development of Sarangkot,” Himalayan, Dec 16, 2017

*5 Umesh Pun, “Nepal’s tallest Shiva statue being built in Pokhara, expected to boost religious tourism,” Republica, November 9, 2020

*6 日々のネパール情報
 ▼ネパールの巨大猫|新宿3D猫にネコに負けてないかも!
 ▼ハッティチョウク、ガイダチョウク(象の交差点とサイの交差点)/チトワン・ソウラハ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2021/11/23 at 11:47

紹介:「ネパールのビール」

図書館で『ネパールのビール』というタイトルの本を見かけたので,借りてきて読んでみた。といっても,「ネパールのビール」は,338ページもの大著に収められた多数のエッセイの一つで,ほんの4ページ余にすぎない短編であった。

いささか,あっけにとられたが,「ネパールのビール」そのものは,大著タイトルとして選んで冠されるのももっとな,感動的なーー文芸春秋特集の意を酌むなら「泣かせる」ーーエッセイであった。

▼日本エッセイスト・クラブ編『ベスト・エッセイ集 ネパールのビール』文芸春秋,1991
*初出:吉田直哉「ネパールのビール」,『文芸春秋』1990年1月号(特集・私がいちばん泣いた話)
ネット掲載「ネパールのビール」全文
  ■91年版『ネパールのビール』

1.「ネパールのビール」梗概
著者は,1985(昭60)年夏,テレビ番組撮影(*1)のためドラカ村(*2)に行き,10日ほど滞在した。ドラカ村は海抜1500mで,斜面に家々が散在,人口は4500人。電気,水道,ガスなし。車道もなく,人びとは荷を背負って移動。

そのため,著者らは,車道終点のチャリコットからポーターを雇い,約1時間半かけ機材や食料をドラカ村まで運んでもらった。ビール(瓶ビール)は重いので,諦めた。

*1 NHK衛星第1「NHK特集・ヒマラヤ・ドラカ村でいま」1986年1月15日10:15~11:00
*2 ドラカ村はチャリコットから約4㎞,いまは道路が付き,バス停もある。
  ■チャリコット~ドラカ村(Google)

撮影で大汗をかいたあと,著者が,ビールを冷やして飲みたいなと口にしたのを,村の少年チェトリが聞き,自分がチャリコットから買ってきてあげると申し出た。

チェトリ少年は遠くの小さな村出身で,ドラカ村に下宿して通学。下宿の薄暗い土間で自炊し,そこで勉強もよくしている。

そのチェトリ少年に,著者は夕方お金を渡し,チャリコットまでビールを買いに行ってもらった。少年は,夜の8時ころ,ビール5瓶を背負い戻ってきた。

翌日も,ビールを飲みたくなった著者は,ビール1ダースぶん以上のお金を渡し,買い出しを頼んだ。

ところが,出掛けた少年は,いつになっても帰ってこない。村人や学校の先生に相談すると,そんな大金をあずけたのなら事故ではなく逃げたのだ,といわれた。これを聞き,著者は,大金で子どもの一生を狂わせてしまった,と深く後悔した。

いたたまれない気持ちで過ごした3日目の深夜,少年がヨレヨレ泥まみれで帰ってきた。チャリコットには3本しかなかったので,山を4つ越えたところで7本買い足したが,帰りに,ころんで3本割ってしまったと,べそをかきながら3本の破片を見せ,釣銭を差し出した。

そんなチェトリ少年を抱きしめ,著者は泣き,そして深く反省した。

2.「泣かせる」が特異ではない話
以上が,「ネパールのビール」の概要。たしかに感動的な「泣かせる」話だ。少年が,著者のために買ったのは瓶ビール10本。3本は割れてしまったとはいえ,重い。それらを背負い,山を4つも越え,持ち帰った。3日目の深夜まで,山道を何時間歩いたのか。お駄賃がもらえるとしても,たかがしれている。想像を絶する忍苦!

著者は,あろうことか,そんな少年を疑ってしまった。それだけに,帰ってきた少年を見て,著者が感動して泣き,深く反省したのは,もっともといえよう。

このように,「ネパールのビール」は感動的な泣かせるエッセイだが,そこで描かれているような出来事は,決して特異なものではない。ネパールを訪れたことのある日本人なら,多かれ少なかれ,幾度も同種の体験をしているはずだ。

3.泣くに泣けない話
私自身も,「ネパールのビール」とほぼ同じころ,初めて訪ネしアンナプルナ・トレッキングをしたとき,同じようなことを体験した。

ポカラから乗客鈴生りジープで川沿いをさかのぼり,ダンプス登り口で下車。さあ出発と前を見ると,絶壁のような急登。恐れをなし躊躇していると,たむろしていた地元の人々が次々と声をかけてきたので,人のよさそうな少年の一人にダンプスまでの荷揚げを頼んだ。年齢ははっきりしないが,日本の中学生くらい。小柄だが,重い荷物の大部分を背負ってくれた。日当は驚くほど安く,たしか2,3百円くらい。それでも荷物を担ぎ,断崖のような山道をどんどん登って行った。

身軽になった私は,おとぎの国のような風景をながめ,写真を撮ったりしながら,休み休み登って行った。そんな私を,大きな荷を背負った地元の人たちが次々と追い抜いていく。女性の方が多く,背負っている荷の中にはコーラやビールのビンが何本も見られる。いかにも重そう。上方の村々に運び上げているのだ。

そうこうするうちに,荷物をもち先に行った少年のことが気になりだした。ダンプスの村で約束通り待っていてくれるだろうか? まさか持ち逃げなどしていないだろうな,などと。わずかの手当てしか払っていないのに,こんな心配。われながら情けなかったが,ダンプスに着くと,そこで少年がちゃんと待っていてくれた。「ネパールのビール」の著者のように泣きはしなかったが,私も,大いに反省させられた。

ダンプスで1泊し,さらにランドルンで1泊,そして最終目的地のガンドルンまで登った。この間,道端の茶店やロッジでビン入りのコーラやビールが売られているのを目にしたが,それらを運び上げる地元女性の姿が目に浮かび,どうしても買って飲むことは出来なかった。

ところが,ガンドルンで歩き回り疲れ果てて,夕方,ロッジに戻ると,無性にビールが飲みたくなり,とうとう一本買って飲んでしまった。うまかった! が,それだけに自分のあまりの意思の弱さが情けなく,やりきれない罪の意識にさいなまれることになった。

はるか下方の登り口から,いやひょっとしたらポカラの町から,女性や少年を含む荷揚げの人々が,何時間も,いや時には何日もかけて,背負い運び上げてきた重い瓶ビールや瓶コーラを,町よりは少し高いとはいえ当時の日本人にとっては全く気にならないほど安い値段で買い,一気に飲んでしまってよいものか? 私の一瞬の,のど越しの快は,ネパールの荷揚げの人々の労苦に見合うものなのか? それは,事実上,彼らの人間としての尊厳を無視した傲慢な搾取を意味するのではないのか?

日本人とネパール地方住民との間には,1980年代中頃にはまだ,想像を絶するほどの生活格差があった。当時,ネパールの地方に行くと,日本人は多かれ少なかれ優越感に捉われるのを禁じえず,と同時に,そうした優越感から行動しているのではないかという自己猜疑に取り憑かれ,不安になる。たとえば,日本であれば,15歳の少年に徒歩往復3時間もかかる遠方に夕方ビールを買いに行かせようとは思いもしなかったであろうし,また,小柄な少年にわずか2,3百円のはした金で重い荷物を背負わせ急峻な山道を登らせようともしなかったはずだ。

ここには,ビールを買ってきてくれた少年や荷揚げをしてくれた少年を疑ったことへの反省だけでなく,それらよりも根源的な自己の優越的地位そのものへのどうしようもない罪悪感があるように思われる。泣くに泣けない自責の念。

1980年代中頃のネパールは,訪ネ日本人の多くにとって,他者との関係において自己を改めて見直す試練の場でもあったのである。

  ■ダンプス~ガンドルン(Google)

4.道徳教育教材としての「ネパールのビール」
「ネパールのビール」は,一見,起承転結の明確なエッセイなので,道徳教育の課題文として多くの学校で使用されてきた。対象は主に2年生。たとえば,次のような報告がある。

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埼玉県立総合教育センター 第2学年○組 道徳学習指導案
1 主題名: 誠実な生き方
2 資料名: 「ネパールのビール」 出典( 自分を考える」あかつき)
4 ねらい: 自分で考え、決めたことは誠実に実行し、その結果に責任をもとうとする心情を養う。

安芸高田市立向原中学校 道徳科指導案 第2学年指導者:上田 仁
主題名:人間のすばらしさ(よりよく生きる喜び)
教材名:「ネパールのビール」
筆者とチェトリくんの生き方の違いを対比させることを通して,人間の醜さに気づくと共に,人間の持つ強さや気高さを信じ,人間として誇りある生き方を見いだそうとする道徳的心情を育てる。

岩手県立総合教育センター 第2学年 道徳学習指導案 指導者:伊藤千寿
主題名:信頼感
内容項目:人間の強さと気高さ、生きる喜び
資料名:「ネパールのビール」
人間は信頼に値すると思う相手に対してであっても、状況によっては疑いの気持ちをもってしまうことがある。それは気持ちの弱さとも言えるが、よほど相手を知り尽くしているのでない限りは仕方がないことでもある。しかし、それを超える誠実さに触れることによって、疑ってしまったことを悔いたり、相手が信頼に値する人間であることを再認識したりすることもある。そのような経験を繰り返す中で、自分も弱さをもっていることを認めたうえでそれを乗り越えることのできる可能性を信じられるようになり、そのことがやがて喜びをもって生きていくことにつながると考える。

【参照】西部中学校「道徳の授業~ネパールのビール~」2018年2月28日

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中学2年道徳科の課題文としてであれば,「ネパールのビール」がこのような読み方をされるのも,もっともかもしれない。

5.もう一つの読み方
しかしながら,その一方,人それぞれの考え方や行動は,その人の生まれ育ってきた環境に大きく規定され(存在被拘束性),それが原因で解消の容易ではない誤解や対立が生じることにも目を向けるようにすることが必要であるように思われる。

異文化,異社会,異国家等の間の相互理解や和解は,そう容易ではない。「ネパールのビール」も,よく読めば,それを暗示しているように思われる。これは,永遠の課題と覚悟せざるをえない。

道徳教育では,学習レベルに応じた形で,相互理解の困難さ,その場合の対応の仕方ーー単純明快な解答のない場合の問題への対処の仕方ーーについても議論し,考えを深めていくべきではないだろうか。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2021/08/06 at 10:49

第三の性パスポート,ネパールなどに倣い米でも

アメリカ国務省が6月30日,パスポートの性別欄に「X」を追加すると発表した。「M(男)」でも「F(女)」でもない人びとは,「X」を選択できるようになる。いわば「第三の性パスポート」。今年中に実施の予定。

このような「第三の性パスポート」は,ネパールをはじめ印,濠,加など数か国がすでに採用しており,米政府もそれらの国の「第三の性パスポート」は承認している。
 【参照】第三の性パスポート,ネパール発行開始 性的少数者の権利,先進国ネパールから学べ M・F・X:ネパール「第三の性」旅券発行へ 「第三の性」パスポート,最高裁作成命令

また,米国内でも,20州以上が性別「X」選択可能な身分証明証を発行しているし,控訴裁判所も「X」選択可能パスポートの発行命令を出している。

バイデン政権は,性の多様性容認への内外のこのような流れに掉さし,「史上最多のLGBTQI+を政府関係者に任命」(在日米大使館)したのに続き,このたびは「第三の性パスポート」の採用に踏み切ったのであろう。

それにしても,「性」は,人間のアイデンティティの根源にかかわるだけに,難しい。現在のところ,人びとは,その「性」により,「」または「」だけでなく,「LGBTQI+」としても区分されているらしい。

 L = レスビアン(女性同性愛者)
 G = ゲイ([主に男性」同性愛者)
 B = バイセクシュアル(両性愛者)
 T = トランスジェンダー(性別違和)
 Q = クィア/クエスチョニング(Queer/Questioning,性自認未定ないし不選択)
 I = インターセックス(男女両性身体)
 + = その他の様々な性

あまりにも複雑。正直,よくわからない。「性」は,厳密に定義しようとすればするほど多様となり,したがってそれぞれの「性アイデンティティ」を尊重して人びとを公平に処遇しようとすればするほど社会の仕組みも複雑とならざるをえない。

しかし,そんな方向に突き進めば,早晩,にっちもさっちも行かなくなるのは目に見えている。

そこで,いっそのこと「性」の区分や記述を一切なくしてしまえ,といった極論が出されることになる。もともと「性」など無限に多様なのだから,その多様性を尊重すべきなら,「性」を一切問わないのがもっとも公平ということになる。たとえば,トイレを性ごとに無限に多様化できないのなら,性別を問わない「万人共用トイレ」にしてしまえ,ということ。

が,こうした性区分撤廃論はちゃぶ台返し,問題を振り出しに戻すだけにすぎない。非生産的。われわれとしては,ややこしくて面倒だが,「LGBTQI+」という形でいま提起されている問題に,一つ一つ誠実に取り組み,よりよい解決策を模索していく以外に方法はあるまい。

このような「性」多様化の問題は,何かにつけ外圧で動く日本にとっても他人事では済まされない。たとえば,アメリカは「LGBTQI+の権利を擁護する米国」を掲げ,在日米大使館主催「LGBTQI+の権利向上をめざそう~アメリカと日本をつないで~」などを開催している。

おせっかい,余計なお世話という気もしないではないが,「人権」は,いまや「大砲」以上に強力で有効なアメリカ外交の手段。照準が向けられているのは中国だけではない。日本政府も,いずれ「第三の性パスポート」を発行し,そして,もう一つの「せい=姓」についても「夫婦別姓」法制化という形で多様化せざるをえなくなるだろう。

*1 ANTONY J. BLINKEN(SECRETARY OF STATE), “Proposing Changes to the Department’s Policies on Gender on U.S. Passports and Consular Reports of Birth Abroad,” PRESS STATEMENT, JUNE 30, 2021
*2 在日米国大使館と領事館「LGBTQI+の権利を擁護する米国
*3 “U.S. protects the rights of LGBTQI+ people ,” ShareAmerica -Jun 3, 2021
*4 アメリカ大使館「バイデン政権、史上最多のLGBTQI+を政府関係者に任命
*5 “U.S. to add third gender option to American passports,” nbcnews.com,July 1, 2021
*6 Kate Sosin, Orion Rummler, “U.S. to add ‘X’ gender marker on passports,” June 30, 2021

■インドのパスポート申請書

■ネパールの出入国申請書

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2021/07/04 at 16:44

紹介:「ヒマラヤに呼ばれて」

児童文学作家による「ネパール人との深い交流」の体験を描いた長編ノンフィクション。
 ▼さとう・まきこ「ヒマラヤに呼ばれてーこの世に偶然はないー」ヒカルランド,2018

著者は1991年,43歳のとき,「な~んとなく」ネパールへトレッキングに出かけ,その自然と文化と,そしてとりわけ人に魅了されてしまう。

「ネパールの貧しい少年を母として見守ることになった筆者。マン[上記少年」をはじめとするネパール人との深い交流の中,筆者の生活や価値観は大きく変わっていく」(表紙キャプション)

このようなネパールとの関わり方は,ネパールに出かけたことのある日本人の多くにとって,著者ほど深くはないにせよ,多かれ少なかれ自ら身をもって体験したことであり,したがって本書を読むと,そのことが懐かしく,また時には自責の念に駆られつつ,思い起こされるにちがいない。

私の場合,初めてネパールに行ったのは著者のほんの数年前,ルートも,著者のその後の訪ネの際のものと合わせると重なる部分が多い。

ロイヤルネパール航空(RNA)ーーカトマンズーーポカラーーフェディーーダンプスーーランドルンーーガンドルン

本書を読んでいると,私自身の初の訪ネの際の途方もない当惑と驚きと感動の日々を追体験しているようであった。

(C)谷川昌幸

Written by Tanigawa

2021/06/26 at 17:29

福知山の印ネ料理店

福知山を車で通ったので,駅前のインド・ネパール料理店「ナマステ」に立ち寄り,Bランチを食べてきた。カレー2種,タンドリーチキン(小),ナン(大),ご飯(小),野菜サラダ(小),ラッシーの昼定食で,1050円。

福知山は,この地方の中心商都で,かつてはお城近くの市街に商店が多数立ち並び,たいそう繁盛していたが,いまは見る影もない。旧商店街はシャッター通りとなっている。

「ナマステ」は,それでも駅正面向かいという好立地もあってか,平日午後1時すぎだったのに,そこそこ繁盛していた。高校生グループや,山好きらしいお客さんもいた。

このところ地方へのネパール料理店の進出は目覚ましい。食は文化。村おこし,町おこしの新しい契機の一つとなってくれるのではないだろうか。


 ■インド・ネパール料理店「ナマステ」


 ■福知山駅/福知山城(福知山観光協会HP

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/12/18 at 14:42

カテゴリー: ネパール, 経済, 文化, 旅行

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秋の木曽駒と駒ヶ根

先週,木曽駒ケ岳に行ってきた。ロープウェイで千畳敷(2612m)まで登れるので,頑張れば,2956mの山頂まで日帰りで往復できないことはないが,あいにくの濃霧,千畳敷周辺を散策するにとどめた。

驚いたのは,人の多さ。平日,悪天にもかかわらず,早朝から観光客が押し寄せ,ロープウェイはゴンドラ(定員61人)をピストン運転するも運びきれず,待たねば乗れない。千畳敷でも休憩所は満員電車状態,カール遊歩道はしばしば渋滞。びっくり仰天!

それでも濃霧の高山には特有の趣があり,秋の花々や紅葉を存分に楽しめた。

登山前後は,駒ケ根高原で2泊した。山麓の美しい高原だが,驚いたことに,一部を除き,恐ろしく寂れていた。あれほど観光客が多いのに,大部分は観光バスや自家用車で来て,ゴンドラで山麓・千畳敷を往復し,そのまま,駒ケ根高原は素通りし帰ってしまうらしい。散策に十分値する高原なのに,もったいない。

駒ヶ根で,もう一つ驚いたのは,大きなネパール料理店が2店もあったこと。帰りのバス待ち時間に,ぶらぶら歩いていて,たまたま目にしただけなので,他にもあるかもしれないが,たとえこれら2店だけだとしても,それほど大きな町ではないので,十分注目には値する。ネパールの人々のたくましさには驚かされる。次に来た時には,いずれかのお店に入ってみたいと思っている。


■濃霧の木曽駒登山/駒ケ岳神社付近

■千畳敷のコバイケイソウ


■千畳敷の花々


■駒ケ根高原:バス停


■駒ケ根高原:旧庁舎(洋館)と旧竹村家(重文)

■駒ケ根高原:庭球場の野猿たち

■駒ケ根の街角


■駒ケ根のネパール料理店

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/10/14 at 14:26

カテゴリー: 自然, 旅行

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奄美の自然とその破壊(6)

5.自然破壊の土砂採取
湯湾岳からフォレストポリス(*),マテリヤの滝を経て東シナ海側の大棚に向け最後の峠を大きく回ったとき,愕然とした。
 *フォレストポリス=観光レジャー施設。キャンプ場,グラウンドゴルフ,フィールドアスレチック,バッテリーカー,売店など

美しい多雨林の山々に連なる海側の山が,ひと山丸ごと,山頂付近から下まで丸裸,茶褐色の山肌をさらけ出しているではないか! あまりにも,むごい。しばし呆然,その信じ難い光景を,ながめていた。

しばらくしてわれに返り,少し考えてみた。――とにかく,途方もない量の土砂採取だ。このままでは,この山全体が消えてしまう。奄美では,これまで車で走って見た限りでは,これほど大量の土砂を使っているところは見当たらなかった。いったい,これほど大量の土砂を何のために使うのか?(山からの同様の大量土砂採取は,帰途,名瀬の近くでも目にした。)

そうか,沖縄か! 沖縄は埋立名所,あちこちで土砂が海に大量投入され,空港やら産業用地が造成されている。この山の土砂も,沖縄に運ばれ,埋め立てに使用されてきたに違いない。たとえば,那覇空港(軍民共用)の拡張のために。あるいは,辺野古の米軍基地拡張が本格化すれば,そのジュゴンの海にも,この山の土砂が運ばれ,埋め立てに使われることになるに違いない。いや,すでに辺野古でも使用され始めているかもしれない(未確認)。

土砂採取されている目の前の山は,貴重な動植物が保護されている保護区・保護地域とは地続き。すぐ近く。図上で截然と線を引き,ここからは大規模開発OKというようなことが,許されてよいのだろうか? アマミノクロウサギなど特別に保護されるべき動物たちが行き来し,貴重な植物たちも双方に根付き群生し繁茂しているはずだ。それら,本来一体であるはずの自然の生態系を,人間の都合でバッサリ切り分け,一方を情け容赦なく「開発」してしまう!

自然など,いくら貴重だとされようが,それは建前,人間の欲にはかなわない。軍事や金儲けが,文句なく優先されてしまうのだ。


 ■山頂から削り取られる山

■土砂採取場下の大棚側入口

【参照】辺野古埋め立て用土砂について防衛省に質問ーその回答(福島みずほOFFICIAL SITE,2015.06.16)



■防衛省「福島議員資料要求ご回答」より

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/19 at 14:59

奄美の自然とその破壊(5)

4.マングローブ原生林と亜熱帯多雨林
(1)マングローブ原生林

(2)亜熱帯多雨林
南部内陸側はすぐ山地だ。湯湾岳(694m,奄美群島最高峰)をはじめ,標高からは想像できないほど本格的な山容の山々が連なり,いずれも鬱蒼とした多雨林に覆われている。素人目には自然林としか見えない。

住用マングローブ原生林から宇検村に入り,そこから湯湾岳登山道路を軽レンタカーで登った。細い曲がりくねった急峻な山道を登りきると,湯湾岳展望台への道との分岐点。今回は展望台は割愛し,そこから,さらに草木にトンネルのように覆われた山道を登ったり下ったりしなが北東へ向け進んだ。対向車はおろか,人気は全くない。

あわや遭難かと心細くなったが,周囲は自然の生気に満ち満ちている。九州以北では見たこともないような南国の草木が茂り,色鮮やかな蝶々が舞い,密林からは奇妙な大きな鳴き声(鳥?)が聞こえ,あげくはヘビ(ハブ?)さえ出てきた。神秘的な「マテリヤの滝(マテリア滝)」(奄美語で「日の射す美しい滝」)もある。

散々走り,ようやく展望の利く峠(赤土山展望台)に出ると,そこからは高い山々と深く切れ込んだ広大な多雨林が一望できる。ガイドなしでは探訪困難な「金作原原生林」(前掲写真参照)や,アマミノクロウサギをはじめ貴重な様々な動植物の見られる「特別保護地区」も,この雄大な多雨林の一部である。むろん,指定されているのは一部特定地域だけだが,線引きは人為的なもの,それら保護地区が周囲の未指定地域と有機的に結びつき,孤立しては存立しえないことはいうまでもない。

日本にも,しかもこんな小さな島に,これほど見事な大自然があるとは!

■山中の標識


■赤土山展望台より/同左


■山腹の植生/道路わきのシダ(?)
■マテリヤの滝


■自然保護指定地区(大和村HPより。一部修正・加筆)
=特別保護区 =第1種特別地域 緑線内=第2種特別地域

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/18 at 15:25

奄美の自然とその破壊(4)

4.マングローブ原生林と亜熱帯多雨林
2日目は丸1日あったので,島南部を海岸沿いにほぼ1周してきた。往きは太平洋側を住用町マングローブ原生林まで行き,そこから峠を越え宇検村へ,さらにそこから湯湾岳→フォレストポリス→マテリア滝をへて,東シナ海側の大棚に降りた。そして東シナ海側を北上し,名瀬を経て「ばしゃ山村」へ戻った。

島の北部と南部は,風景から受ける印象がかなり異なる。北部は山地は多いものの開けた感じだが,南部は鬱蒼と茂る亜熱帯多雨林に覆われた山々が連なる。また海岸は,太平洋側と東シナ海側では,全くと言ってよいほど風景が異なる。太平洋側は,荒々しく,隆起サンゴ礁に囲まれた,いかにも南国の島という印象だが,東シナ海側は大きな入江が多く,波静かな穏やかな海岸が多い。

(1)マングローブ原生林
最初に見学したマングローブ原生林は,太平洋側の住用川と役勝川が合流する河口に広がっている。広大なマングローブ原生林で,汽水域の干潟も広く,保護が万全であれば,さらに広がりそうに見えた。

このマングローブ原生林沿いには,大きな「道の駅・マングローブパーク」が開設されている。モダンな「マングローブ館」のほかに,広いグラウンドゴルフ場まで併設されている。

地域の「経済活性化」のためであろうが,どうみてもマングローブ原生林とは調和しない。自然保護と経済開発をどう両立させるか――難しい課題だ。

■マングローブ原生林
■原生林内カヌー・ツアー
■道の駅とゴルフ場(同左HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/14 at 13:11

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奄美の自然とその破壊(3)

3.カトリック信仰の村々
予備学習なしだったので全く知らなかったのだが,奄美にはカトリック教会がたくさんある。カトリックは,ある意味,柔軟であり,伝統文化をうまく取り入れ,地方ごとの特色ある教会をあちこちにつくっている。奄美でも,そうした趣が見て取れる。

奄美のキリスト教は,1891年にパリ外国宣教会フェリエ神父の来島に始まり,以後,各地に教会が建てられ信者も増えていったが,国粋化・軍国化につれ信者迫害が激しくなり,教会施設も破壊されたり事実上没収されたりした。また戦争末期には,空襲を受け,名瀬聖心教会などが破壊された。奄美の教会は,そうした苦難を乗り越え,今日に至っているのである。現在の信者数は人口の6%ほど。ちなみに長崎は4%余。

今回は,それら奄美の教会のうち,通りすがりに目にした大笠利教会,瀬留教会,知名瀬教会の3教会を見学してきた。

いずれも南国奄美らしい趣のある教会で,たまたま来られていた信者さんが教会の由来や現状について親切に説明して下さった。

▼大笠利教会
■礼拝堂
■歴代司祭
■ガスボンベ利用募金箱

▼瀬留教会
 

▼知名瀬教会
■全景
■玄関
■マリア像

▼奄美の教会(名瀬聖心教会HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/14 at 11:09

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