ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for the ‘社会’ Category

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (4)

5.ハニーさんのハンスト:開始から飢餓死まで
ハニーさんが,大村入管センターで最後のハンストを開始し飢餓死するに至った経緯は,入管庁「調査報告書」および関係報道等によれば,おおよそ次の通り。

[2018年06月]4回目の仮放免請求,不許可。
[2019年01月]大村センター診療室での健康診断を拒否。「日本で子どもが生活しており,子どものためにも自ら帰国することを選ぶことはできません」と看守に述べる。
[2019年02月]健康診断拒否。5月の健康診断も拒否。
[2019年05月30日]ハニーさん,看守に,1週間ほど前から摂食していないと述べ,「約10年間自由がありません。仮放免でも強制送還でもいいので,ここから出してください」と訴える。
[2019年05月31日]大村センター診療室での点滴と採血を拒否。外部病院を受診し,脱水のため点滴を受ける。
[2019年06月01-04日]外部病院で診察,拒食による脱水のため点滴を受ける。
[2019年06月05日]所内,外部のいずれでも,治療を受けないと述べる。
[2019年06月14日]経腸栄養剤,一口服用。
[2019年06月17日]拒食を続けると生命が危険と警告されるが,治療拒否。サニーさん「私は自由になりたいだけだ。病気などないから治療は必要ない。」
[2019年06月18日以降]居室内で横臥。拒食,治療拒否続行。体重測定拒否。水分は時折摂取。
[2019年06月24日]《午前8時53分》血圧127(108)/114(82),脈拍54(35)。体重測定拒否。《午前8時54分》点滴,朝食,薬服用のいずれも拒否。水を約20ml飲む。《午後0時54分》息が荒いと看守が報告。《午後1時16分》血圧・体温とも測定不能。その後,心肺蘇生処置実施。《後1時40分》救急車で甲病院搬送。《午後2時11分》甲病院で死亡確認。

体重の変化(身長171cm)
[2018年10月26日]71kg ⇒[2019年5月30日]60.45kg ⇒[6月5日]61.55kg ⇒[6月17日]50.60kg ⇒[6月25日]46.6kg(司法解剖時)

このようにして,サニーさんは,大村センター看守による拒食確認から26日後,実際には拒食はその数日前から始められているとみられるので拒食開始約1か月後に,「飢餓死」してしまった。

この拒食,つまりハンストがいかに過酷なものであったかは,サニーさんの体重が特に大きな持病もないにもかかわらず,ハンスト開始後急減していることだけを見ても明らかである。

サニーさんの身長は171cm,体重は大村センター収容2年余後の2018年10月26日には71kgであった。それがハンストの繰り返しで半年後には60kg余となり,そして2019年6月25日のハンスト死の時には46.6kgに急減していた。

私自身の体験からも,体重急減がつらいことはよくわかる。私は身長162㎝で,体重は長年,約52kgで安定していたが,家族介護の無理がたたって半年ほどで46㎏にまで急減した。わずか10%ほどの減少にしかすぎないのに,体調は著しく悪化,いつ倒れるかわからないような状態になってしまった。

サニーさんの場合,71kgの体重が半年後には46kg余へと,3割以上も激減した。身長171cmだから,ガリガリに痩せてしまっていたのだろう。死が切迫していることは,この外見からだけでも明らかなのに,大村センターは結局,彼の生命を救うことが出来なかったのである。

*1 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」2019年10月
*2 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査結果(概要)
*26 「ハンストのナイジェリア人男性が飢餓死するまで 調査報告書を読んだ医師が解説」dailyshincho, 2019/10/08
*34 野村昌二「体重71キロが47キロに…入管収容者の餓死 外国人に人権ないのか?」AERA,2019/11/12
*35 大橋毅「「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」の検討」,2019/12/28

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/05/29 at 09:42

カテゴリー: 社会, 労働, 人権

Tagged with , ,

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (2)

2.入管施設収容の長期化と「無期限」規定の精神的苦痛
このところの来日外国人の増加・多様化とともに,入管施設(入国管理センター,入管収容所,入国者収容所)に収容される外国人の数も増えてきている。

年月日 被収容者数 長期被収容者数 難民認定申請中
2013年末 914 263 277
2015年末 1003 290 394
2017年末 1351 576 605
2018年6月末 1494 704 604


■被収容者数(長期=6か月以上。入管「退去強制業務について」*4)

入管施設に収容されるのは,不法入国,超過滞在,資格外活動,在留資格取り消しなどで不法滞在として摘発され,収容令書と退去強制令書を出された外国人である。

収容期間は,自主出国または強制送還まで,つまり「無期限」(下図参照)であり,長期に及ぶものも少なくない。とくにサニーさんのように自主出国せず,しかも送還先が受け入れに非協力的な「送還困難国」の場合は,収容は長期化しがちである。

また,これら被収容者の中には,難民申請をしている人も多い。難民については,日本は認定が厳しすぎると批判される一方,就労目的等のための「偽装難民申請」も少なくないとされている。収容長期化問題は,この「偽装難民申請」も絡み,一層複雑化し,解決が難しくなっているのである(*36,37,38)。

■退去強制手続き(*5)

このように「無期限」で収容されると,入管施設内での生活は,極めて厳しい。自由を奪われている上に,職員の対応や健康管理など居住環境も刑務所よりも悪いという。過剰と思われる「制圧」が報道されることも少なくないし,この4月下旬には東京入管収容中のコンゴ出身女性が裸同然で制圧される姿をビデオに撮られ,それを男性職員らに見られたとさえ訴えている(*39,40)。

そうした状況下の被収容者を精神的にさらに追い詰めるのが,国外退去までの無期限収容の規定。様々な事情で国外退去が困難な場合,被収容者には,いつまで収容され続けるのか,まったくわからない。

たとえ仮放免を申請しても,認められることは少ないし,ましてや仮放免に相当しないと判定されてしまえば,重度の傷病など,よほどの事由がなければ認められることはない。しかも,認められ仮放免されても,その事由がなくなったと判断されれば,いつでもすぐ再収容されてしまう。仮放免は,あくまでも「一時的収容停止」にすぎない(*40,41)。

*4 入国管理局「退去強制業務について」平成30年12月
*5 出入国在留管理庁「収容・仮放免に関する現状」令和元年11月25日
*36 難民支援協会HP
*37 二村伸「急増する長期収容」NHK開設室,2019/08/21
*38 望月優大「追い込まれる長期収容外国人」2018/11/05,gendai,simedia.jp
*39 「『みんなで裸を見たと言われた』・・・・入管収容女性が手紙で訴え」毎日新聞HP,2020/05/18
*40 「「2週間だけ仮放免」 繰り返される外国人長期収容 「一瞬息させ、水に沈めるようだ」」毎日新聞,2019/11/12
*41 織田朝日「入管施設でハンストを続ける被収容者を苦しめる「2週間のみの解放」」ハーバー・ビジネス・オンライン,2019/11/01

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/05/27 at 14:18

カテゴリー: 社会, 労働, 人権

Tagged with , , ,

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (1)

1.ハニーさんハンスト死と強制治療の提言
ナイジェリア人男性「サニーさん」(通称,50代)が,長崎県大村入国管理センターにおいて,無期限収容への抗議ハンストにより「飢餓死」したのが2019年6月24日,もうすぐ1周忌を迎える。(入管は用語「ハンスト」に代え「拒食」または「摂食拒否」を使用。)

このサニーさんの「飢餓死」は入管初の「ハンスト死」であったため,しばらくは大きく報道され,出入国在留管理庁(入管,入管庁)も詳細な調査を実施し,その報告書を2019年9月1日に発表した(*1,2)。

しかしながら,抵抗の手段としてのハンスト(ハンガーストライキ)への日本社会の関心は諸外国に比べ高いとはいえず,たとえ関心を示しても「命を取引材料にするのは卑怯だ」とか「本気で死ぬ気もないのに」,「ほんの数日でドクターストップとは笑止千万」,「ハンストはダイエットのため?」といった否定的,冷笑的なものが少なくなかった。

ハニーさんのハンスト死についても,半年もすると報道や論評はほとんど見られなくなった。日本社会は,ハンストにはあまり同情的ではないのである。

この日本社会のハンストへの低関心をバックに,日本政府はハンスト死を阻止しハンストそのものを断念させるための強力な手段をとろうとしている。

日本政府にとって,入管施設被収容者をハンストで死なせてしまうのは失策に違いないし,またそれ以上に,ハンスト死が出身国や他の諸国に知られ,その原因となった日本の入管制度への批判が高まり,ついには現行入管制度の維持が困難となるようなことになってしまっては困る。

そこで日本政府は,入管施設被収容者のハンストに対しては,本人の同意なしに実施される「強制治療(強制的治療)」や「強制栄養(強制的栄養摂取)」をもって対応することを,サニーさんハンスト死を機に再確認したのである。

しかしながら,一般に「治療拒否」を表明している人に「強制治療」や「強制栄養」を実施するのは非人道的とされ,医学倫理上,通常は認められてはいない。ましてや抗議ハンストの場合は,自分の強固な意思で自覚的に拒食(ハンスト)が行われている。そのハンスト者(拒食者)に対し「強制治療」や「強制栄養」を実施し,ハンストを諦めさせようとするのは,他の場合以上に残虐であり非人道的といわざるをえない。そのような政策はとってはならない。

以上のような観点から,以下,サニーさんのハンスト死の経緯と,それ対する入管庁の対応につき,要点をまとめ,検討してみることにする。

■大村入管センター(Google)

*1 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告書」2019年10月
*2 出入国在留管理庁「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査結果(概要)

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2020/05/26 at 17:14

カテゴリー: 社会, 労働, 人権

Tagged with , , , , ,

ネパール中西部大学の意欲的コロナ対策(3)

3.「E大学」化への取り組み
もう一つ注目すべきは,コロナ拡大防止ロックダウンに対応するためのEラーニングと,それと組合せの国際的教育連携の推進。欧米や中国・韓国のようなEラーニング先進国であれば驚くに当たらないが,ネパールの,それも開発の最も遅れた中西部の中規模新設大学での意欲的な取り組みであり,興味深い。

NB・シン学長は4月4日,OERU(Open Education Resource for Universities)との連携協定に調印した。OERUはユネスコ機関の一つであり,世界で41,アジアでは13の大学等が参加している。ネパールでは,Nepal Open Universityにつぎ,2校目。

さらに中西部大学は,オンライン教育の充実を図るため,Turnitinとも契約した(日付不明)。学長は,こう述べている。

「地理的障害,情報不足,電力不足といった様々な困難があるが,われわれは,この大学とこの地方の教育レベルを総合的に引き上げるため,必要な協力関係や技術の向上促進のため努力している。」(“Agreement for cooperation between MU and OERU,” sajhabisaunee.comm, 4 April 2077)

中西部大学の「E大学」化は,コロナ拡大防止ロックダウンにより促進されたことは確かだが,たとえそれがなかったとしても,大学の不便な立地や低開発の現状を考えると,いずれ採らざるをえない戦略であったことは明らかである。

「E大学」化により,中西部大学は瞬時にして世界とつながり,高水準の教育・研究環境を備えることになる。学生や住民への情報機器の普及など,問題は多々あれ,この分野の変化・革新は速い。後発国の技術的優位,一気に出遅れ日本を追い越すことになるかもしれない。

■WORK FROM HOME(youtube, Apr 21)

E教育プログラム(Nepalgatha, Apr 3)

4.地方大学グローバル化の一範例
ネパール中西部大学のコロナ対策は,以上のように,たいへん意欲的なものである。その取り組み姿勢は,グローバル化時代の中小規模地方大学にとって範例の一つたりうるといってもよいであろう。課題は多々あろうが,改革の成功を期待している。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/05/01 at 09:32

コロナ禍のネパール

ネパールでの新型コロナ(コビド19)感染は,いまのところ日本よりもはるかに少ない。

[月日/感染者累計/死者累計]
1月24日/01/00
3月23日/02/00
4月06日/09/00
4月14日/16/00
4月17日/28/00
4月21日/31/00
4月24日/49/00
■Covid-19 Update, Kathmandu Post, Apr 25

それでもネパール政府は強く警戒し,2人目の感染が確認された3月23日にはいち早くロックダウン(全土封鎖)に踏み切った。官庁,商店等は閉じられ,人々の外出は治療や生活必需品購入など,必要な場合のみに制限された。空陸の交通機関も原則休止。このロックダウンは2度更新され,現在も継続されている(当面4月27日までの予定)。

この厳しいロックダウンが始まると,村外へ出稼ぎに出ていた多くの人々が職を失い窮地に陥ることになった。村に帰ろうとしても,国内交通は遮断されている。あるいは同様にロックダウンのインドから帰国しようとしても,国境で止められてしまう。

外国人旅行者も各地で足止めされた。たとえカトマンズまで戻れても,定期便は運休なので,各国政府等が用意した帰国特別便に乗るしかない。それでも乗れれば幸い,カトマンズには帰国を待つ旅行者がまだかなり残っているという。

ネパールが感染者2人の段階で,いち早くロックダウンに踏み切ったのは,なぜか?

SB・プン博士(Dr Sher Bahadur Pun, テク病院[Shukraraj Tropical and Infectious Diseases Hospital]医師,専門:ウィルス学・流行疫学)
「たとえ感染が一人だけであっても,そして症状があろうがなかろうが,村中にパンデミック[感染爆発]を引き起こす危険性は大だ。村には十分な診療施設がないし,村人たちはたとえ少しの熱が出ただけでも医者にかかる必要があるなどということは知ってはいない。・・・・もしコロナウイルスを国境で阻止せず国内に入れてしまえば,われわれは時限爆弾を抱え込むことになってしまうだろう。」(*7)
「政府は対策を考えてはいるが,実際には,どの国の政府の対策もいまのところこのウイルスにたいして完璧ではない。われわれとしては,このウイルスを見逃すことなく補足し封じ込めるべきであり,そうすることによってのみ最悪の事態への備えができるのである。」(*8)
■Hamro Doctor News, Jan 25(Apr 25)

ブラビン・カルキ(ジャーナリスト,Mero Tribune社主)
「ネパール医療の現状は,西洋に比べ非常に貧弱だ。もし感染が急拡大すれば,この国の医療体制では対応できなくなるだろう。ネパールは,この破壊的なウイルスを封じ込めるための対策を強化している。もし移動禁止がもう少し早く発令されていたら,ウィルス拡散防止にはより有効であっただろうという見方もある。政府は,手遅れとなる前に,このヒマラヤの国で起こりうる感染爆発を阻止するため,さらに対策を強化していくべきである。」(*10)
■B. Karki(FB, Mar 10)

このように,ネパールでは感染症専門家や有識者の間では,コロナ・パンデミックへの警戒心が極めて強いが,それでも全土封鎖ロックダウンともなると,とりわけ経済的には大きな犠牲を伴う強硬措置であり,抵抗や反対も少なくはなかった。

ネパール観光年(VNY2020 [Visit Nepal Year 2020])
たとえば,外国人観光客を呼び込むための「ネパール観光年(VNY2020)」の大キャンペーン。東京オリンピックが日本のコロナ対策の遅れを招いたと批判されているように,ネパールでもVNY2020がコロナ対策の初動を遅らせたと批判されている。

ネパールではすでに1月24日,国内初のコロナ感染が確認されていた。ところが,それにもかかわらずネパール観光局(NTB)は2月26日,ネパールにはコロナ感染はないので,旅行キャンセルの必要はないと発表した。これを批判されると,ようやく3月1日になって観光局は3月の外国人向けVNYキャンペーンの休止を発表した。

ネパール政府がVNY2020そのものの中止を決定したのは,全土ロックダウン決定(発表3月23日)とほぼ同じころ,おそらく両者セットだったのであろう。VNY2020事務局の解散も,ロックダウンの4月27日までの延長(4月14日発表)とセットであった。

観光はネパールの基幹産業であり,VNY2020は官民挙げての大事業。それへの大きな期待が,このようにコロナ対策の始動を一時躊躇させたことは確かなようだが,危機が切迫するとネパールは一転,徹底した全土ロックダウンに踏み切り,VNY2020もきっぱり断念してしまった。中途半端な外出自粛要請の「非常事態宣言」にとどまり,オリンピック中止も決断できない日本とは対照的である。
■VNY2020ロゴ/Visit Nepal FB(ロゴ変更後)

SB・プン博士の査問
といっても,むろんコロナ対策のような重大な政策については,どの国でも利害が錯綜し,様々な人々が様々な分野やレベルで反目や主導権争いをする。アメリカのトランプ大統領とクオモNY知事,日本の安倍首相と小池東京都知事,等々。ネパールでは,もっとも大きく報じられたのは保健省とSB・プン博士の対立。

プン博士は,前述のようにウィルス学・熱帯医学が専門で,勤務先は熱帯感染症の基幹病院であるテク病院(1933年開設)。そのプン博士のところに,コロナ感染が拡大し始めると,当然ながら多くのメディアが押し掛け,博士の見解を求めた。博士は,コロナ感染拡大を恐れ,積極的に取材を受け入れ,繰り返しコロナ感染につき説明し,早期対策の必要性を力説した。

ところが,これがネパール保健省やテク病院の一部幹部の怒りを買ったらしい。4月12日,保健省はプン博士に召喚状を送り,コロナ関係情報を不正に漏らした疑いで事情聴取することにした。博士の懲戒解雇もうわさされた。

この保健省によるプン博士召喚問題については,コロナ感染の世界的急拡大ということもあってか,プン博士の方を支持する声が高まり,結局,博士の責任は問われないことになった。

プン博士は4月19日,保健省を訪れ,幹部と会見したのち,プレスリリースを出し,保健省や保健大臣の名誉を傷つけるような報道はすべきではないと要請した。また,保健省訪問も通常業務の一環にすぎないと説明した。これに対し,保健省筋の方も,メディアが騒ぎ立てただけで,実際にはプン博士は保健省の協力を求めたにすぎない,と語った。
■プン博士支持表明(Prof. Khadga KC, FB, Apr 18)

難しい選択
こうしてVNY2020問題もプン博士問題も大事になる前に落着したが,コロナ感染はネパールでも急拡大し始めた。4月24日現在,感染者累計49人。

ネパールでは,平均年齢が先進諸国よりもはるかに若いので,コロナに感染しても相対的には重症化率は低いであろうが,プン博士らが警告しているように住民の医学知識不足や地域医療体制不備を考えると,厳しいロックダウンの継続はやむをえないであろう。むろん,全土ロックダウンは,ダメージの方が耐えがたいほど大きく,可能な部分から緩和していくべきだという意見も根強いのだが。――難しい選択である。
■中西部大学のコロナ対策(同大FB, Apr 18

*1 Dr Sher Bahadur Pun, “Novel coronavirus scare: Boost surveillance at TIA,” Himalayan Times, January 27, 2020
*2 Arpana Adhikari, “ Suspect flu? Visit the doctor,” Rising Nepal, Jan. 29, 2020
*3 Kashish Das Shrestha, “Let’s call off Visit Nepal Year 2020; The Covid-19 outbreak provides a safe exit for Nepal to end this poorly-prepared campaign,” Nepali Times, February 28, 2020
*4 Kunga Hyolmo, “Govt suspends Visit Nepal Year 2020 promotion campaign in foreign countries for time being owing to coronavirus outbreak,” Republica, February 29, 2020
*5 “Weakly enforced quarantine protocols spell trouble,” The Record, March 27, 2020
*6 Manjima Dhakal, “Fewer Patients Visit Fever Clinics For Corona Testing,” Rising Nepal, 28 Mar 2020
*7 Mukesh Pokhrel and Sonia Awale, “Returnees may be taking coronavirus to rural Nepal; With inadequate medical facilities and influx of people, western Nepal could be the next hotspot,” nepali Times, March 31, 2020
*8 Arun Budhathoki, “Nepal May Escape the Coronavirus but Not the Crash; The remote mountain country has only five confirmed coronavirus cases,” Foreign Policy, March 31, 2020,
*9 “COVID-19 Threat: Nepal Government Cancels ‘Visit Nepal 2020’; The government has also decided to dissolve VNY Secretariat from April 13, 2020,” Nepali Sansar, 1 Apr 2020
*10 Brabim Karki, “Nepal Extends Ongoing Lockdown to Combat COVID–19, Nepal’s poor stand to be hard hit by the freeze on economic activity,” The Diplomat, April 07, 2020
*11 Anil Giri, “Coronavirus lockdown to continue until April 27, border closed until situation improves in India,” Kathmandu Post, April 14
*12 “Dr Sher Bahadur Pun leaked vital information: Health Ministry,” Republica, April 18, 2020
*13 “When Dr Pun became the face in media, others at Teku Hospital were not happy,” Republica, April 18, 2020
*14 Arjun Poudel, “A day after Covid-19 cases double, Health Ministry goes after frontline doctor for critical comments, The ministry has summoned Dr Sher Bahadur Pun, a virologist at the Sukraraj Hospital, for a clarification over his public statements on the Covid-19 pandemic,” Kathmandu Post, April 18, 2020
*15 Vivek Rai, “Health Ministry seeks explanation from infectious disease expert at Teku Dr Pun, Some have not liked that I am seen at the forefront: Dr Pun,” Kathmandu Post, April 18, 2020
*16 “Ministry urges everyone against misleading publicity on Dr Pun,” Merolagani, Apr 19, 2020
*17 “People urged not to indulge in smear campaign,” Himalayan Times, April 20, 2020

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/04/25 at 17:16

カテゴリー: 社会, 健康

Tagged with , , ,

「陽春」の丹後:天橋立とネパール料理店

新年早々,所用で丹後の村に行ってきた。以前だと,この時期,厳寒で積雪も多かったが,地球温暖化のせいか,最近は,そのようなことはほとんどなくなった。この正月も暖かく,村の田畑に積雪なし。驚いたことに,民家の石垣に生えたユリらしき植物が満開の花をつけていた。
■石垣のユリ(?)

陽気に誘われ村の名所「大内峠」に行き,「股のぞき」をすると,日本三景の一つ「天橋立」が,まるで春霞に包まれたかのように,ぼんやりと中空に浮かんでいるのが望まれた。右手の高峰,鬼の住む大江山(832m)にさえ積雪なし。

5日には,近くの町のインド・ネパール料理店に行ってきた。小さな町だが,メニューを工夫し頑張っている。丹後の文化も,大きく変わりつつあるようだ。

■天橋立

■ネパール料理店

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/01/08 at 17:31

老老介護(17):蟻地獄に落ち込む前に

老老介護には様々な困難があるが,最も深刻なものの一つが,介護者の精神的・身体的疲労の蓄積の結果,介護者自身が介護の蟻地獄に落ち込んでしまうことだ。

老老介護は,介護される側も介護する側も,ともに高齢者。しかも,老化は両者ともに不可逆的に進行する。介護負担が日々重くなる一方なのに,それに反比例し,介護者の介護能力は落ちていく。

この状況では,介護者が介護を続けようと頑張れば頑張るほど,介護者には必然的に疲労が増大し蓄積していく。そして,疲労が蓄積すればそれだけ介護能力が落ちるので,介護者はさらに頑張ろうと無理をする・・・・。まさに悪循環,底無しの老老介護の蟻地獄だ。

この11月中旬,福井で71歳の妻が自分一人で介護してきた義理の父(93歳,要支援2)と母(95歳,要介護1)と夫(70歳,足不自由)の3人を殺害してしまった事件も,おそらくそうした老老介護による精神的・身体的疲労の蓄積の結果,引き起こされてしまった惨事であろう。

この妻は,3年ほど前から働きながら3人の介護をしてきた。もともと明るくて優しく,家族の世話をよくする「よい嫁」であったという。その妻による介護は,老老介護である上に,1人で3人をも介護する多重介護であった。その老老多重介護が,彼女にとって,「よい嫁」であろうとすればするほど,いかに過酷なものとならざるをえなかったか,まったくもって察するに余りある。同情を禁じ得ない。
*福井新聞「敦賀3遺体、夫殺害容疑で妻を逮捕」(11月18日),「敦賀高齢3遺体、介護の苦労漏らす」(11月18日),「敦賀殺人容疑の妻、介護うつ状態か」(12月6日)

これと比べ,私の母介護は,はるかに楽である。適当に手を抜き,息抜きをし,続けてきた。しかし,それでも,はっきりとは自覚はしていなくても,私自身の老化進行もあって,疲労は蓄積してきているようだ。

たとえば,このブログ。以前は毎日のように投稿していたのに,徐々に減少し,最近はせいぜい月数本となってしまった。関係情報を集め,読み,分析し,文章にまとめることが難しくなってきた。

といっても,私の場合,自由時間が極端に少なくなったわけではない。時間は,いまのところ,まだそこそこにはある。が,時間はあっても,介護のためそれが不規則に分断され,集中して何かをすることが出来なくなってしまった。そのため,イライラが募り,あせればあせるほど悪循環,それだけますます集中できない。これはブログ投稿だけでなく,他のことについても,多かれ少なかれ言えることである。

この状況は,身体よりも先に精神の疲労をもたらす。そして,それが少しずつ,だが着実に,蓄積していくと,眠る時間はあっても,実際にはよく眠れなくなる。そして,安眠できなければ,それは身体の不調をもたらし,不可避的に身体的な疲労をも蓄積させていくことになる。

私の場合,このような精神的・身体的疲労の蓄積は,いまのところ,まだそれほど深刻ではない(と自己診断している)。が,楽観は禁物,老老介護の底無しの蟻地獄に落ち込む前に,何か良い打開策を見つけたいと考えている。うまくいくとよいのだが・・・・。

[参照]厚生労働省「グラフでみる世帯の状況 平成30年国民生活基礎調査(平成28年)の結果から
▼要介護者等の年齢階級別にみた同居している主な介護者の年齢階級別構成割合

▼年齢別にみた同居の主な介護者と要介護者等の割合の年次推移

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/12/10 at 18:14

カテゴリー: 社会, 健康

Tagged with ,