ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for the ‘経済’ Category

奄美の自然とその破壊(6)

5.自然破壊の土砂採取
湯湾岳からフォレストポリス(*),マテリヤの滝を経て東シナ海側の大棚に向け最後の峠を大きく回ったとき,愕然とした。
 *フォレストポリス=観光レジャー施設。キャンプ場,グラウンドゴルフ,フィールドアスレチック,バッテリーカー,売店など

美しい多雨林の山々に連なる海側の山が,ひと山丸ごと,山頂付近から下まで丸裸,茶褐色の山肌をさらけ出しているではないか! あまりにも,むごい。しばし呆然,その信じ難い光景を,ながめていた。

しばらくしてわれに返り,少し考えてみた。――とにかく,途方もない量の土砂採取だ。このままでは,この山全体が消えてしまう。奄美では,これまで車で走って見た限りでは,これほど大量の土砂を使っているところは見当たらなかった。いったい,これほど大量の土砂を何のために使うのか?(山からの同様の大量土砂採取は,帰途,名瀬の近くでも目にした。)

そうか,沖縄か! 沖縄は埋立名所,あちこちで土砂が海に大量投入され,空港やら産業用地が造成されている。この山の土砂も,沖縄に運ばれ,埋め立てに使用されてきたに違いない。たとえば,那覇空港(軍民共用)の拡張のために。あるいは,辺野古の米軍基地拡張が本格化すれば,そのジュゴンの海にも,この山の土砂が運ばれ,埋め立てに使われることになるに違いない。いや,すでに辺野古でも使用され始めているかもしれない(未確認)。

土砂採取されている目の前の山は,貴重な動植物が保護されている保護区・保護地域とは地続き。すぐ近く。図上で截然と線を引き,ここからは大規模開発OKというようなことが,許されてよいのだろうか? アマミノクロウサギなど特別に保護されるべき動物たちが行き来し,貴重な植物たちも双方に根付き群生し繁茂しているはずだ。それら,本来一体であるはずの自然の生態系を,人間の都合でバッサリ切り分け,一方を情け容赦なく「開発」してしまう!

自然など,いくら貴重だとされようが,それは建前,人間の欲にはかなわない。軍事や金儲けが,文句なく優先されてしまうのだ。


 ■山頂から削り取られる山

■土砂採取場下の大棚側入口

【参照】辺野古埋め立て用土砂について防衛省に質問ーその回答(福島みずほOFFICIAL SITE,2015.06.16)



■防衛省「福島議員資料要求ご回答」より

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/19 at 14:59

奄美の自然とその破壊(4)

4.マングローブ原生林と亜熱帯多雨林
2日目は丸1日あったので,島南部を海岸沿いにほぼ1周してきた。往きは太平洋側を住用町マングローブ原生林まで行き,そこから峠を越え宇検村へ,さらにそこから湯湾岳→フォレストポリス→マテリア滝をへて,東シナ海側の大棚に降りた。そして東シナ海側を北上し,名瀬を経て「ばしゃ山村」へ戻った。

島の北部と南部は,風景から受ける印象がかなり異なる。北部は山地は多いものの開けた感じだが,南部は鬱蒼と茂る亜熱帯多雨林に覆われた山々が連なる。また海岸は,太平洋側と東シナ海側では,全くと言ってよいほど風景が異なる。太平洋側は,荒々しく,隆起サンゴ礁に囲まれた,いかにも南国の島という印象だが,東シナ海側は大きな入江が多く,波静かな穏やかな海岸が多い。

(1)マングローブ原生林
最初に見学したマングローブ原生林は,太平洋側の住用川と役勝川が合流する河口に広がっている。広大なマングローブ原生林で,汽水域の干潟も広く,保護が万全であれば,さらに広がりそうに見えた。

このマングローブ原生林沿いには,大きな「道の駅・マングローブパーク」が開設されている。モダンな「マングローブ館」のほかに,広いグラウンドゴルフ場まで併設されている。

地域の「経済活性化」のためであろうが,どうみてもマングローブ原生林とは調和しない。自然保護と経済開発をどう両立させるか――難しい課題だ。

■マングローブ原生林
■原生林内カヌー・ツアー
■道の駅とゴルフ場(同左HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/14 at 13:11

カテゴリー: 経済, 自然, 旅行

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ネパールとAI

「AI化社会の近未来」につき日頃感じていることを数回に分け投稿したところで,ではネパールはどうかが気になり,少しネット情報をのぞいてみた(*3,10)。

ネパールは,後発国の技術的・制度的優位が見られる典型的な国の一つである。日本より先取的であったもの,であるものが,いくつもある。たとえば――
・電気乗合自動車・・・・当初は早すぎて失敗。目下,再挑戦中。
・家庭用ソーラー発電・蓄電システム・・・・主に照明,小型家電用。
・ソーラー発電・蓄電街灯・・・・都市部で一気に普及。
・ケータイ・・・・格安型急普及。現在のスマホ普及率52%(15~65歳)で南アジア1位(*9)。
・性の多様性の公認・・・・第三の性パスポートなど。
・包摂民主主義の制度化・・・男女や,様々な民族,文化,地域,家計などの包摂のため議席,公務員職,各種委員等を比例配分。

これらの最新の機器や制度が,ネパールでは既存のものの不備のゆえ,一足飛びに取り入れられていった。まさしく後発国の技術的・制度的優位。では,AI(Artificial Intelligence人工知能)はどうか?

AIについても,ネパールでは注目され,導入が始まっている。カトマンズの「ナウロ・レストラン」では,ネパール語と英語を解するネパール製ロボットが接客用に使用されている。南アジア初のロボット・レストラン。製造元のパーイラ・テクノロジーは,このロボットを世界に向け売り出す予定とのこと(*8,10)。

接客用AIロボットは,SBI銀行でも使用されている(*8)。

AI関係セミナーも,セミナー大国ネパールのこと,もちろん活発に開催されている。たとえば,UNDPはセミナー「公共サービスのためのテクノロジー」(カトマンズ,2018年3月21日)を開催,ここには世界最新ロボット「ソフィア」も出席し,スピーチをした(*6,7)。

このように,ネパールがAI化に関心をもつのは,ネパール経済が国内産業にせよ出稼ぎにせよ人間労働に依存する比率が高いからだ。そうした人間労働は,真っ先にAIロボットに置き換えられてしまう。

「2016年世界銀行開発報告は,自動化による失業は高所得国より低・中所得国の方が高くなる,とみている。」(*2)

逆にいえば,AI化すれば,先進国より途上国の方が効果は大きいということになる。ネパールがAIに注目するのは当然といえよう(*1)。

「ネパールも[AI導入で]利益が得られる。特に,農業,保健衛生,資源供給,交通,電力など。・・・・すでにAI分野で事業を行っている私企業がネパールにもあるが,いままでのところAIはまだ十分有効には活用されていない。・・・・為政者は,デジタル・ネパール実現のためのデジタル技術の使用に関する具体的なプランを,早急につくるべきだ。」(*3)

*1 Omkar Shrestha, “Artificial Intelligence, The Fear of Job Losses – Real or Imaginary? ,” Spot Light, June 10, 2019
*2 Rubin Ghimire, “Nepal’s Future in Artificial Intelligence,” TechLekh, August 8, 2019
*3 Ashes Timsina, “Artificial Intelligence (AI) and it’s impact in Nepal, What impact can AI make in a developing country like Nepal?,” Nepali Telecom, Mar 6, 2019
*4 GP Acharya, “Impacts of Artificial Intelligence in Foreign Policy,” Nepal Foreign Affairs, 11 July, 2019
*5 “Will robots replace journalists?,” Gufa Talk Series: Artificial Intelligence and Journalism in Nepal, Media Foudation, Feb 23, 2019
*6 “World‟s most advanced robot Sophia to address conference in Nepal,” The Himalayan Times, March 20, 2018
*7 “Sophia the social humanoid says Namastey, Dhanyabad,” The Himalayan Times, March 21, 2018
*8 “Made in Nepal robots are serving food at this Kathmandu restaurant,” India Today, August 25, 2018
*9 “Policy on artificial intelligence,” Kathmandu Post, April 28, 2019
*10 “Made-in-Nepal service robots eye global market,” New China, 2018-08-26

nepal.ai

Nepal’s First and Biggest AI Expo 2019

paailatechnology.com

Bazaarmandu(YouTube)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/08/27 at 18:00

カテゴリー: 社会, 経済, 情報 IT

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晩春の山村:大江山中腹

丹後の村に帰る途中,絶好の好天に誘われ,大江山(832m)越えの,これまで通ったことのない別の谷沿いの山道を車で登ってみた。

すでに4月21日,下界では桜はほぼ終わり,緑が濃くなり始めていた。ところが,大江山の谷へ西から少し入ると,そこはまだ春たけなわ,桜や野辺の花々が一面に咲き乱れ,まるで別天地!

大江山は,信州の山々のように高くも峻険でもないが,以前は曲がりくねった狭い山道しかなく,峠越えは至難の業だった。それでも,人々は沢沿いに山頂近くまで開墾し,平和に暮らしていた。

その大江山の生活インフラも,この数十年で見覚ましく改善された。特に目立つのが道路。いつも利用する国道176号線は,拡幅・直線化され,長いトンネルが開通し,谷をまたぐ立派な高架橋もかけられた。冬には,融雪・凍結防止の散水装置さえ作動する。建設費,維持費はいかほどかと心配しつつも,この高速道路並みの無料国道を便利に利用させていただいている。

今回入った別の谷の地方道は,この176号線とは比較にならないが,それでも拡幅され,車の通行には何の不便もなかった。

日本の道路は,この谷沿いだけでなく,どこでも,いまやたいてい舗装されている。こんな細い田んぼ道でも,こんな人里離れた山奥の小道でさえ,とビックリするほど舗装されつくしている。

道路だけではない。山腹の田畑も耕地整理され,格段に耕作しやすくなっている。大型農機を入れ,効率的に農作業ができる。

しかし,それにもかかわらず,この地方でも空家や廃屋が目に付く。道路や農地のインフラ整備だけでは,過疎化を押しとどめることは出来ないようだ。いったい,どうすればよいのだろうか?


■標識と白い花/野の花


■古民家と桜/廃屋と新緑の山


■耕地整理された田/防獣フェンスで囲われた畑と桜


■防獣フェンスと古民家/古民家と新緑の山

■花桃と舗装道路(上方176号線)
(注)田畑や住宅の庭などには,猪,鹿,猿,熊などの侵入を防ぐため,かなり頑丈な柵が張り巡らされている。費用がかさむが,それでも侵入は防止しきれない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/05/25 at 11:33

カテゴリー: 社会, 経済, 自然, 農業, 旅行

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アルジュンさん取調中死亡事件,続報

アルジュンさん取調中死亡事件の続報が,Business Insider Japan(2019年3月29日)に掲載されている。

・小島寛明「【衝撃映像入手】16人で1人取り押さえ手足拘束した警察。検察取り調べ中にネパール人男性死亡」Business Insider Japan, Mar. 29, 2019

アルジュン・バハドゥル・シンさん(死亡時39歳)は,ネパールから料理人として来日,ネパール料理店で働いていたが,2017年2月頃失職,ホームレス状態になった。同年3月13日,他人名義クレジットカード所持などを理由に新宿署に連行され,14日逮捕された。

翌15日朝,アルジュンさんは留置場で暴れたとして十数名で取り押さえられ,戒具で身体を強く拘束,そのまま検察に送られた。ところが検察取り調べ中,体調に異変が生じたため午前11時頃戒具を外したところ,彼は午後3時前,急死してしまった。

アルジュンさんの妻は2018年7月26日,不当な強制的拘束により夫を死に至らしめた業務上過失致死の疑いで新宿署に刑事告訴した。また翌27日には,注意義務違反を理由に東京都を相手に慰謝料を求める訴えを東京地裁に提出した。

この事件の上記3月29日付続報には,アルジュンさん取り押さえ,戒具拘束の状況を記録した東京都提出証拠映像が添付されている。タイトル通り,衝撃的な映像だ。
⇒⇒【衝撃映像】取り調べ中にネパール人はなぜ死んだ。留置場で何が起きたのか

アルジュンさんはなぜ逮捕後,取調中に死亡したのか? 外国人の,いやひいては日本人自身の生命権をはじめとする基本的人権を守るためにも,裁判を通してアルジュンさん死亡の真相が,あますところなく徹底的に解明されるべきである。

▼戒具拘束されるアルジュンさん(東京都提出証拠映像,YouTube
 

【参照】
・小島寛明「ネパール人男性はなぜ死んだ。「移民」はいないが外国人労働者に頼る日本といびつな入管制度」Business Insider Japan, Sep. 12, 2018
・「手錠で拘束されたネパール人、検察の取調べ中に突然死…妻「真実知りたい」と提訴」弁護士ドットコム,2018年07月27日
・SAKURA MURAKAMI, “Wife of Nepalese man who died during interrogation sues state,” Japan Times, Jul 27, 2018
・小島寛明「東京地検の取り調べ中に死亡のネパール人、遺族が検察官ら告訴」,Business Insider Japan, Jul. 26, 201

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/04/10 at 16:35

ホームページ転居

ホームページ版「ネパール評論」は,これまでヤフージオシティーズにおいていたが,ヤフーが3月末サービス終了を決めたので,やむなく「スターサーバー」に転居した。

IT素人のため,あれこれやってみて,なんとか既存データだけは新居に運び込んだが,リンクなどがちゃんと機能するかどうかは,まだ不明。試行錯誤,少しずつやってみるつもり。

それにしても,ネット事業は,摩訶不思議。転居先は使用料無料の2Gコース。私のホームページでは動画も音声も使用しないので,2Gもあれば容量は十分。しかも広告すら表示されない! これで採算がとれるのだろうか? 

いずれにせよ,このようなネット・サービスが利用できるのは,IT素人にとっては,まことにはありがたい。隔世の感。多謝!

▼転居先 http://pax.starfree.jp/ 

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2019/01/30 at 18:21

ゴビンダ医師のハンスト闘争(2)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ(2)
それにしても,なぜいまハンストなのか? ネパールは民主化し,最高水準の民主的な2015年憲法も制定され施行されているのではないか?

ゴビンダ医師のハンストは,直接的にはネパールの保健医療分野の不正を告発し抜本的な改革を要求するものだが,それは同時に,その不正を容認し助長しているネパール民主主義の現状に対する真っ向からの異議申し立てともなっている。

ネパールの民主化は,マオイスト人民戦争(1996-2006年)後,急激に進み,2008年には王制が廃止され連邦共和制となり,そして2015年にはその成果を法的に確定する2015年憲法が制定された。この現行2015年憲法は,国民の権利と民主主義を詳細に規定しており,これによりネパールは少なくとも制度的には世界最高水準の民主国の一つとなった。

しかし,制度はできても,その運用には相当の経験と努力が必要である。ネパールの場合,前近代的・半封建的王制から21世紀的包摂民主主義体制に一気に飛躍したため,人権と民主主義の経験が乏しく,そのため様々な前近代的因習や慣行が根深く残る一方,他方では現代的な市場経済や自由競争社会の論理が有力者によりご都合主義的に利用され始めている。国民各人に保障されるはずの自由や権利は,実際には旧来の,あるいは新興の富者や強者のものとして利用され,そしてそれが民主主義の名により正当化され保護される。憲法規定の民主主義は,富者や強者が,彼ら独占のメディアや彼らの意を体する議会等の統治諸機関を通して国民を教化し,操作し,動員し,かくして彼らの特殊利益に奉仕させるための格好の手段となりつつある。現代型の「民主的専制」といってもよいであろう。


■ネパール憲法2072(2015)/代議院(下院)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/09/30 at 15:02