ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for the ‘議会’ Category

連邦議会と州議会,11月26日ダブル選挙

デウバ内閣は8月21日,連邦議会と州議会の選挙を11月26日(日)に実施することを決めた。連邦議会選挙は,憲法296条により,2018年1月21日までの実施が義務づけられている。

しかしながら,連邦議会と州議会の選挙を同時に実施することは大変だし,その前には対立抗争で延期されている第2州の地方選挙(9月18日投票)も実施しなければならない。

それに加えて,議会は8月21日,マデシらが要求してきた憲法改正を,政府が選挙日を決定したあとで否決してしまった。

先行き不安。稔と祭りの秋のダブル,いや正確にはトリプル選挙となるのだろうか?

 ■WIKIより(2017-03-10)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/22 at 12:11

カテゴリー: 選挙, 議会, 憲法

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ネパール地方選における女性の大躍進

ネパール地方選は,第1次(5月14日投票)と第2次(6月28日投票)が実施され,残るは第3次(第2州対象,9月18日投票予定)のみとなった。これまでのところ,選挙は,多少の混乱はあったが予想以上に順調に行われ,全体として野党UMLがやや優勢であるものの,NC=MC連立政権の存続を脅かすほどではない(*3, *4)。

この地方選で最も注目されるのは,政党の勝ち負けよりも,むしろ女性の大躍進である。全体の正確な数字はまだ明らかになっていないが,第1次選挙では当選者の約40%が女性となった模様である。

これは,ネパールがつい最近まで女性差別の最も大きい国の一つとされてきたことを考えると,驚異的な変化である。どのようにして,地方政治への女性の進出は可能となったのであろうか?

直接の最大の要因は,選挙制度の抜本的大改正である。国政選挙では,新憲法制定の結果,すでに女性議員比率約30%となっているが,ここでは地方選挙制度の概要を見ておこう。

ネパールの地方政府(地方自治体)は,IFES「ネパールの選挙:2017年地方選挙」(*1)によれば,次のような構成になっている。(現在制度改変中であり,以下は上記資料データによる。)

郡――市/村――区
 ・郡(जिल्ला) 75
 ・市(नगरपालिका) 264
   大都市(महानगरपालिका) 28万人以上
   中都市(उप-नगरपालिका) 15万人以上
     市(नगरपालिका)  2万人以上
 ・村(गाउँपालिका) 481
 ・区(वार्ड) 各市/各村ごとに5~33
代表の構成
 ・区:区長1,議員4を選挙選出
 ・市/村:市長・副市長/村長・副村長を選挙選出
      議会は市内/村内の各区の代表(区長・区議員)により構成
 ・郡:郡議会は各市/各村の市長・副市長/村長・副村長により構成
    郡行政委員会(定数9)は郡議会議員から選出

代表選出方法
 各有権者は,次の7ポストにつき,1枚の投票用紙で投票(印を付け投票)
  市長/村長 1
  副市長/副村長 1
  区長 1
  女性区議員 1
  ダリット区議員 1
  一般区議員 2

女性候補と女性留保ポスト
 ・区選挙立候補者5人のうち2人は女性で,かつその1人はダリット
 ・市長/村長と副市長/副村長の両方に候補者を出す場合,いずれか一方は女性
 ・郡行政委員会の委員長と副委員長の両方に候補者を出す場合,いずれか一方は女性
 ・女性留保議席:市議会5,村議会4,郡行政委員会(定数9)3

投票用紙(カトマンズ用*3)
  

以上がネパール地方選挙制度の概略だが,国政選挙と同様,包摂民主主義に則っているため,要約困難なほど複雑だ(誤りがあれば,ご指摘ください)。日本でも運用困難かもしれない,これほどややこしい方法による選挙が,さして大きな混乱もなく実施できたことは,正直,たいへんな驚きである(*2)。

それはともあれ,こうした女性のためのクォータ制や留保制により,ネパールの地方自治へ女性が大量進出,ポストの40%を占めるに至ったことはまぎれもない事実。女性は副市長/副村長の方に回され,市長や村長はまだ少ないという批判もあるが,それは候補者選択の際の党内民主主義の向上に俟つべきかもしれない。

このようにネパールの政治制度改革は目覚ましい。いくつかの点で,ネパールは今や日本を追い越し,はるか先を行っている。そうした点については,日本は,謙虚に頭を垂れ,教えを乞うべきであろう。

▼バンダリ大統領(左)とマガル国会議長(右)(大統領府HP)
  

【参照】「議会と政府における女性」英下院図書館,2017年7月12日(*1)
 ・女性大統領(2017年3月現在):ネパール,スイス,台湾ほか11か国
 ・女性議長(2017年6月1日現在):ネパール,オーストリア,ベルギー,デンマークほか55か国
 ・国会女性議員比率(193国,2017年6月1日現在)
  1 ルワンダ61%,6 スウェーデン44%,12 ノルウェー40%,47 ネパール30%,161 サモア10%,164 日本9%,167 コンゴ9%,170ブータン9%,178 イラン6%,190 カタール0%

*1 International Foundation for Electoral Systems, “Elections in Nepal: 2017 Local Elections,” May 10, 2017
*2 百党斉放のネパール地方選挙
*3 地方選:2大政党善戦と選挙運動の変化
*4 地方選,3回に分けて実施

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/10 at 09:54

カテゴリー: 選挙, 行政, 議会, 人権

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プラチャンダ首相,TVで辞意表明

プラチャンダ(プシュパ・カマル・ダハル)首相が5月24日,テレビ番組で辞意を表明した。前日(23日)の議会で表明する予定だったが,タライ自治体増に反対する第2党UMLの抵抗で議会が開けなかったため,テレビで直接国民に辞意を伝えることになったのだそうだ。

今回のこの首相交代には,いつもの劇的な要素がまるでない。ビジネスライク。昨年8月,第1党のNC(コングレス党)と第3党のMC(ネパール共産党マオイストセンター)が政策協定を結び連立政権を発足させることになったとき,首相は地方選まではMC,そのあとはNCとする紳士協定を結んだ。今回の首相交代は,その取り決めによるもの。(首相交代が6月14日後期地方選の前か後かはまだ未定。)

しかし,それにしてもあまりにも実務的。乱闘や首相不在長期化は困るが,そうかといって政党の打算見え見えの首相交代にはシラケてしまう。政党都合による首相職のたらい回し。報道も地味。

プラチャンダMC議長から首相職を回されるのは,NCのデウバ党首。タライ紛争に対するカトマンズ中央政府の姿勢がどうなるか,特に注目される。なお,駐日ネパール大使のプラチバ・ラナさんは,デウバ党首の義母。(参照:駐日ネ大使候補プラチバ・ラナさん,議会委員会が承認) 


 ■プラチャンダ議長(2013年2月党大会ポスター)/ デウバ党首FB(5月26日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/05/26 at 17:22

カテゴリー: 議会, 政党

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得票率3%以上&議席1以上,全国政党の要件

立法議会は3月22日,5月地方選のための改正政党法を可決したが,その中には,全国政党の要件を,比例制で3%以上の得票がありかつ議会に1議席以上を有すること,とする規定が含まれている。いわゆる阻止条項つき選挙制(election threshold)の採用である。

この阻止条項採用が,政府与党やUMLの大政党としての党利党略によるものであることは言うまでもないが,その一方,包摂民主主義選挙の弊害が拡大し,その修正を余儀なくされた結果であることもまた否定できない事実である。

これまでの2回の制憲議会選挙では,包摂民主主義の理念に基づく比例制と社会諸集団クォータ制を採用したため,百数十もの政党が候補を立て,30以上の政党が実際に議会に議席を得た。その結果,選挙は複雑にして煩雑となり経費も著しく増大した。また,この包摂主義選挙により登場した小政党の多くは,国民を代表する公党というよりはむしろ身内政党・コネ政党であり,議会では利権配分による多数派工作の格好の標的とされてきた。議会政治は,混乱し停滞。現状は,包摂主義の現実が効率的な議会制民主主義を蚕食しているといった状況らしい。

今回の阻止条項採用には,このように,政府与党やUMLの思惑のほかに,それなりの理由もあるのだが,小政党の側は当然,猛反発,阻止条項は憲法の包摂民主主義理念に反し,憲法の保障する政党の自由と権利を不当に制限するものだとして,各地で激しい反対運動を繰り広げている。

たしかに,選挙制における阻止条項は本質的に小政党の切り捨て条項であり,論理的には,少数派の包摂を大原則とする2015年憲法の包摂主義の理念には反している。しかしながら,民主主義国でありながら阻止条項を置いている国は少なくない。たとえば次のような国々:
  5%=独,台湾,ニュージーランド
  4%=ノルウェー,スウェーデン
  3%=伊,韓
したがって,阻止条項を置くことが,即,反民主的ということにはならない。政治は実践であり,包摂民主主義を原則とするにせよ,現実政治の場では,他の諸要因をも考慮し,より望ましい現実的な包摂制度の在り方を探り,それを用いることにせざるを得ない。ネパールも,紆余曲折はあれ,結局はそのような方向に向かって前進していくのではあるまいか。

■2013年選挙比例区投票用紙サンプル

*1 “One FPTP seat, 3 pc PR votes necessary to get recognition as nat’l party,” Kathmandu Post, 22 Mar 2017
*2 “Fringe parties boycott House to protest threshold provisions,” Kathmandu Post, 22 Mar 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/25 at 18:34

RPP党則から「ヒンドゥー国家」と「君主制」を削除,選管

ネパール選挙管理委員会(EC)が3月17日,5月地方選のための政党登録にあたって,国民民主党(RPP)の党則から,同党のもっとも根本的な基本理念たる「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」の部分を削除した。報道からは,具体的な削除文言や削除手続きは分からないが,RPPは長い歴史を持ち,現在議会第4党,そのれっきとした公党の党則を,選管がいわば「検閲」したのだ。大胆な,恐るべき権力行使!

選管のナレンドラ・ダハール委員長は,RPP党則からの「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」の文言削除につき,それらは憲法の定める「世俗国家」と「共和制」に反しているし,また憲法は政党が国民間の憎悪を煽ったり国家の安全を脅かしたりすることを禁じてもいるから,同党党則からそれらの文言を削除したのだと説明している(*4)。

たしかに,ネパール憲法は「第29編 政党に関する規定」において,次のように定めている(関係部分要旨)。
 第269条 政党の結成,登録および活動
 (2)政党は,選管に「政党名」を登録する。
 (3)政党は,党則(党規約),会計報告書,およびその他法律に定める文書を選管に提出する。
 (4)政党登録の要件。(a)政党の党則や党規約は民主的でなければならない。
 (5)政党の名称,目的,シンボルおよび旗が,この国の宗教的ないし共同体的統一を損なうか,または対立をもたらす恐れがあるときは,その政党は登録されない。
 
これらの憲法規定を見ると,もし選管が「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」の党則記載を理由としてRPPの政党登録を拒否したとしても,それには全く根拠がないというわけでもなさそうだ。しかしながら,報道によれば,今回,選管は政党登録拒否ではなく,RPP党則の中のそれらの文言を一方的に削除したらしい。

RPPは,この選管のやり方に猛反発,選管の行為を違憲として最高裁に訴える一方,選管本部前に押しかけ激しい抗議活動を展開した。

RPPのカマル・タパ党首は,党則からの「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」の削除は党から魂を抜くようなものだと述べ,もしこのような党則削除が許されるのなら,UML,マオイストなど多くの共産党系諸政党の党則からも憲法原理に反する「共産主義」の規定を削除すべきだが,選管にそんなことができるのか,と皮肉を込め鋭く反撃している。(*5)

また,モハン・シュレスタRPP広報委員も,こう批判している。「選管には政治問題を論評する権利はない。憲法は政党が政策を訴えることを禁じてはいない。憲法は表現の自由を保障している。」もし「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」を訴えることができないのなら,RPPが選挙に出ることは無意味だ。「選管は,地方選挙の無意味化を企んでいるのではないか。」(*4)

RPPのこのような選管批判は,もっともである。「ヒンドゥー国家」や「立憲君主制」が国益にかなうと信じる政党が,それらを党の政策理念として掲げて選挙を戦い,主権者たる国民の審判を仰ぐことは,政治的行為であり,政党に当然許されてしかるべきである。民主主義は国家理念をめぐる自由な政治闘争を認めている。もしネパール憲法がそのような政治的自由をすら許容せず,異論の行政的権力的排除を求めているのであれば,憲法のそのような規定,あるいは憲法規定のそのような解釈は,民主的とはいえないであろう。

*1 “EC removes ‘Hindu state’, ‘monarchy’ from RPP’s statute,” Republica, March 17, 2017
*2 “RPP to move SC against EC’s decision,” Kathmandu Post, Mar 18, 2017
*3 “EC’s decision may affect local poll: DPM Thapa,” Kathmandu Post,Mar 18, 2017
*4 “EC removes Hindu state, monarchy from RPP’s statute,” The Himalayan Times, March 18, 2017
*5 “Election Commission robbed us of our soul, says Kamal Thapa,” The Himalayan Times , March 18, 2017
*6 “RPP to seek “constitutional remedy” to protect charter RPP to seek “constitutional remedy” to protect charter,” The Himalayan Times, March 18, 2017
*7 “Police fire tear gas during RPP protest,” Kathmandu Post, Mar 20, 2017
*8 “DPM Thapa stages sit-in outside EC’s office, Thapa’s participation comes after police used force to clear RPP protesters,” Kathmandu Post, Mar 20, 2017

■RPP・HPより 

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2017/03/21 at 19:00

内閣2ポストをRPPに,プラチャンダ首相

プラチャンダ首相が3月9日,RPP(国民民主党)に内閣2ポストを割り当てた。
 ・副首相,連邦問題・地方開発担当大臣=カマル・タパRPP議長
 ・文化観光交通担当大臣=ディルナト・ギリRPP院内幹事長

プラチャンダ首相は,5月14日地方選を予定通り実施するため,憲法改正を迫られており,そのための議会多数派工作の一環としてRPPを閣内に取り込んだのだ。

しかしながら,プラチャンダ首相のこの多数派工作が成功するかどうかは微妙だ。マデシ諸派の要求に近い形で憲法改正を図れば,王党派ナショナリストのRPPは政府支持をすぐ撤回するだろうし,また野党の共和派ナショナリストUMLも反政府運動をさらに強化するだろう。逆に,憲法改正を断念したりRPPやUMLの要求に近い形で改正を図れば,今度はマデシ諸派が反政府に回る。

憲法は,民主的に硬ければ硬いほど,政府は手を縛られ,二進も三進もいかなくなる。とりわけ国家再構築途上の途上国においては。ネパールの内閣は,包摂的多数派工作のため,いまや閣僚45人にまで巨大化した。副首相3人! それでも,改憲に必要な議会三分の二の確保はおぼつかないのだ。

■RPP・HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/14 at 19:31

地方を744地区に区割り

プラチャンダ内閣は3月5日,地方再構築委員会(LLRC)提出の地方区割(local unit)案を修正のうえ採択した。

LLRCは当初,地方を719地区に区割する案を提出したが,マデシ諸党がこれに激しく反発,5月地方選挙ボイコットを宣言したため,プラチャンダ内閣は,第2州を中心にさらに25地区を追加して全国を744地区に区割することにした。この閣議決定は公報掲載をもって施行される。([3月15日追記]マハ・ナガル4,ウパ・ナガル13,ナガル246,ガウン481,計744)

▼閣議決定された地方区割(区割追加郡のみ)
  郡  LLRC案⇒閣議決定
 サプタリ 12⇒17
 シラハ 12⇒17
 ダヌサ 13⇒17
 マホタリ 14⇒15
 サルラヒ 16⇒17
 ラウタハト 15⇒16
 バラ 13⇒15
 カトマンズ 9⇒11
 マナン 3⇒4
 バジャン 11⇒12

5月14日投票のための区割追加とはいえ,いかにも泥縄。しかも,線引きの基準として人口を第一にすることにはそれなりの根拠がある半面,人為的設計主義となるおそれが多分にある。地域の伝統や文化は,この地方区割にどの程度反映されるのであろうか?

 ■WIKIより(2017-03-10)

*1 “Govt okays taskforce proposal for 744 local units,” Republica, 5 Mar, 2017
*2 “Govt brings bill for delineation of electoral constituencies,” Republica, 9 Mar, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/10 at 15:15

カテゴリー: 選挙, 行政, 議会, 憲法

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