ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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核禁止条約,率先してネパール署名

核兵器禁止条約署名式が9月20日,国連本部で開催され,ネパールはKB・マハラ副首相兼外相がこれに署名した。BR・パウダル報道官「これは核廃絶へ向けての意義ある一歩前進だ。」

南アジアでは,他にバングラデッシュも署名したが,インド,パキスタン,スリランカは署名していない。

日本は,唯一の被爆国であり,北朝鮮の核開発に猛反対しているにもかかわらず,この条約の意義を頭から否定し,条約交渉にすら参加せず,むろん署名はしていない。

印中二大核保有国に挟まれたネパールは,率先して条約に署名した。こんなところも,日本はネパールから学ぶべきだろう。

■国連HP

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/09/21 at 20:00

カテゴリー: 軍事, 平和

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中印ドクラム紛争:中立堅持のネパールと印支持の日本

アジアの核保有二大国,中国とインドが,ドクラム(ドカラム)高原問題で対立,軍を派遣して至近距離で対峙,緊張が高まっている(*13)。

1.ドクラム領有権問題
両軍が対峙しているドクラム(洞郎)は,中国(チベット)・インド(シッキム)・ブータンの国境が複雑に入り組む高原地域(標高約3千m)にあり,インドとブータンがブータン領だと主張しているのにたいし,中国は中国領だと主張している。グーグル地図が国境を実線ではなく破線で画している部分もあるように,この地域の領土問題は複雑だ。


 ■グーグル地図,赤印ドクラム高原付近[地図差替8月29日]

2.道路建設をめぐり中印が対立
このドクラムで,中国人民解放軍が道路建設を始めたのに対し,インドは6月16日,軍を派遣,以後,人民解放軍と至近距離(約100m)でにらみ合っている。いまのところ両軍の兵力は約300人。

この問題につき,インド側は,この地域の領有権はブータンにあり,そこでの道路建設は力による現状変更であり,ブータンとインドに重大な脅威を及ぼすものであって,断じて認められないと主張している。これに対し中国側は,自国領土内で道路建設をしているのであり,インドは直ちに軍を引くべきだと反論している。いまのところ両国とも譲る気配を全く見せず,国境をめぐる両国関係は,1962年中印紛争以降,最悪の状態になっているという。

3.中立堅持のネパール
この中印ドクラム紛争に対し,ネパールは,いずれの国にも組しない中立の立場をとっている。

ネパールは,新憲法制定をめぐりインドと対立,非公式ながら5か月(2015年9月~16年2月)にも及ぶ事実上の国境経済封鎖の制裁を受けた。その反動もあって,歴代ネパール政権は中国に接近,いまやネ中関係は以前とは比較にならないほど緊密になっている。

8月中旬には,汪洋副首相が訪ネ,ネパール側が「一つの中国」支持を確認し「一帯一路」推進協力を表明したのに対し,中国側は対ネ投資拡大,石油・ガス資源調査,道路・鉄道建設など広範な支援を約束した。ネパールにとって,中国はいまやインドにとって代わりうる可能性のある隣の大国となりつつあるのである。

しかし,たとえそうだとしても,いまドクラム紛争につき中国支持を明言することは,ネパールにとって得策ではない。ネパールは,長年にわたりインド勢力圏内にあり,国土の三方をインドに囲まれ,物資の大半をいまなおインド経由で受け取っている。この現状を考え合わせると,ドクラム紛争について一気に中国支持に回るのはリスクが大きすぎる。結局,両国との交渉力を拡大できる「中立」の立場を表明するのが,いまのネパールの国益には最もかなうということになったのであろう(*3)。すでに8月初旬,KB・マハラ外相が,ドクラム問題ではネパールはいずれの隣国をも支持しないと述べ,中立の立場を明らかにしている(*3)。

この中印対立激化をバックに,いまデウバ首相が訪印している(公式訪問8月23~27日)。ネパール側が対印交渉の好機とみていることは疑いない。他方,インド側がネパールに圧力をかけ,何らかの形で印支持に回らせたいと考えていることにも疑いはない。

しかしながら,インド側は,非公式経済封鎖の「失敗」を教訓に,印ネ首脳会談(8月23,24日)では,あからさまにドクラム問題を持ち出し,デウバ首相に踏み絵を踏ませることはしなかった。会談後の共同声明でも,「両国は,その領土を,相手国を害するいかなる活動にも使用させないことを再確認した」と述べるにとどめた(*2)。親印派とみられているデウバ首相が,インド側招待の意をくみ行動してくれることを期待してのことであろう。

むろん,首脳会談以外の場では,当然ながら,ドクラム問題へのネパールの対応に関心が集まった。しかし,そうした場でも,デウバ首相はインド支持を明言しなかった。たとえば,「インド基金」主催の会(8月24日)において,デウバ首相はこう答えている。

「われわれは中国と極めて良好な関係をもち,中国とのいかなる問題にも直面していない。・・・・そのことにつき,インドは全く懸念するに及ばない。もちろん,いかなるときも,ネパールは国土を反印活動に利用させはしない。」(*4)

中国は,ネパール政府のこうした対印外交努力を評価し,習近平主席の訪ネ(9月中旬予定)をもって報いようとしている。

4.インド支持へ前のめりの日本
ドクラム紛争につき,「中立」堅持のネパールとは対照的に,日本は世界に先駆け,インド支持の立場を表明した。インド各紙はこれを絶賛,平松駐印大使(駐ブータン大使兼任)の発言を詳細に伝えている。

たとえば,ヒンドゥスタン・タイムズは,平松大使が8月17日の会見で次のように語ったと伝えている。

<ヒンドゥスタン・タイムズの取材(8月17日)に対し,平松大使はこう答えた。「ドクラムはブータンと中国との係争地であり,両国は国境交渉をしている,とわれわれは理解している・・・・。また,インドはブータンと協定を結んでおり,これに基づきインド軍はこの地域に派遣された,ともわれわれは理解している。」/平松大使は,ドクラムの現状を力により一方的に変えるべきではない,と語った。/日本は,ドクラム紛争につき,明確に見解を述べた最初の大国である。(*9)>

また,インディアン・エクスプレスのS・ロイも,こう述べている。<インド政府筋はこう語った。「国際社会の主要メンバーが“中立”の立場をとる中で,日本がインド支持を表明したことは,インドの立場を強くしてくれるものだ。」(*7)

このような日本称賛記事は,インド他紙にも多数みられる。そして,その際,ほぼ例外なく言及されるのが,尖閣問題である。たとえば:

Prabhash K. Dutta (*11)
日本はインドを「全面的に支持」している。「もしドクラムでの中国の行為が許されるなら,東シナ海の尖閣を失うことになる,と東京は考えているからだ。」

Geeta Mohan(*12)
日本は,中国膨張主義と対峙しており,他のどの国よりもインドの立場をよく理解している。ブータンとの関係も深い。だから日本は「インドとブータンへの明確な支持」を外交チャネルを通して表明したのだ。

このように日本のインド支持はインドを喜ばせているが,当然,中国はそれに激しく反発している。華春蛍報道官は,こう批判した。

「駐印日本大使は,(軍事的対峙につき)インドを本気で支持するつもりのようだ。彼に対しては,事実関係を確認することなく,でたらめなことをいうべきではない,と忠告しておく。・・・・ドクラムには領土問題はない。国境は両国(インドと中国)により確定され承認されている。・・・・現状を不法に変えようとしているのは,インドであって,中国ではない。」

日本は,このような中国の激しい反発を押して,インド支持を貫くのか? 安倍首相の訪印は9月中旬の予定。インドで,日本国首相がどのような発言をするか,これも注目されるところである。

【参照】(8月28日追加)
安倍首相訪印の狙いは?(人民網日本語版2017年08月23日)
 インドの各メディアは18日、「ドクラム対峙問題で日本がインドを支持」と誇示した。この2カ月でついにインドが「主要国」の支持を得たことを証明するものだ。だが同日遅く、時事通信は、平松賢司駐印大使が「インド支持」を表明したとの見方を在インド日本大使館が否定したと報じた。
 「中国とインドの国境問題は中印両国の事だ」。北京大学の姜景奎南アジア研究センター長は「南アジア諸国と他の西側国がいずれも『一方の側につかない』中、日本はじっとしていられず、先駆けて傾斜を示した。たとえ後で釈明しても、安倍内閣がインドに公然と良い顔を見せていることは隠せない」と語る。

 ■在ブータン日本大使館HP

●ドクラム対峙,終了(8月29日追加)
印中は8月28日,ドクラム軍事対峙の終了に合意,直ちに印軍は撤退した。中国の道路建設も停止された模様だが,中国軍は引き続きこの地方の軍パトロールを継続する。中国にとっては,要するに,道路建設の(たぶん一時的)中断にすぎないということか?。
 
*1 Om Astha Rai, “Deuba, Delhi and Doklam,” Nepali Times, 25-31 August 2017
*2 “Nepal, India issue joint statement, ink 8-pt deal (with full text),” Republica, August 25, 2017
*3 Prabhash K Dutta, “Doklam standoff continues, India and China jostle to win over Nepal,” India Today, August 24, 2017
*4 Suhasini Haidar & Kallol Bhattacherjee, “On Doklam, Nepal walks a tightrope,” The Hindu, AUGUST 24, 2017
*5 “Nepal’s Non-Aligned Stand On Doklam Issue,” http://businessworld.in/, 24-08-2017
*6 Narayani Basu, “What the India-China Doklam Standoff Means for Nepal,” The Diplomat, July 19, 2017
*7 Shubhajit Roy, “India-China standoff at Doklam: Japan throws weight behind India and Bhutan, says no side should try to change status quo by force,” Indian Express, August 19, 2017
*8 “China rebukes Japan for comment on Doklam,” Times of India, Aug 19, 2017
*9 Jayanth Jacob, “Doklam standoff: Japan signals support to India over border row with China,” Hindustan Times, Aug 18, 2017
*10 Sutirtho Patranobis, “Doklam standoff: China dismisses Japan’s support for India,” Hindustan Times, Aug 18, 2017
*11 DuttaPrabhash, “Why Japan lent support to India against China over Doklam standoff,” India Today, August 18, 2017
*12 Geeta Mohan, “Doklam standoff: Japan backs India, says no one must use unilateral force in bid to change status quo,” India Today, August 18, 2017
*13 「中国はインドと争ってでもチベットから南下したい」,北の国から猫と二人で想う事,http://blog.livedoor.jp/nappi11/archives/4812343.html

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/27 at 19:19

京都の米軍基地(109):ミサイル攻撃避難広報の空念仏

京丹後市は,米軍経ケ岬通信所の司令官交代とほぼ同じころ,7月号広報(6月23日発行)に「弾道ミサイル落下時の行動について」を掲載した。これは,内閣官房「国民保護ポータルサイト」のものをほぼそのまま転載したに過ぎないが,それでも米軍Xバンドレーダー基地があるがためミサイル攻撃の危険性を切実に感じ始めた京丹後市民にとっては,見過ごすことのできない気になる通知であった。

といっても,このミサイル攻撃対処広報は,噴飯もの。焼夷弾に防空頭巾と塵叩き,戦車に竹槍で戦えと教え訓練した日本軍国主義の臣民教化を彷彿とさせる。

▼弾道ミサイル落下時の行動について(京丹後市広報7月号)
 

あれあれ,どこまで本気!? 竹槍よりもはるかに非現実的。核弾頭は無論のこと,通常爆弾弾頭であっても,こんな対策でミサイル攻撃に対抗できるわけがない。しかも丹後は人口密度の低い農漁村・山村地帯。山腹に芋穴はあっても,地下街などない。

もし本気でミサイル攻撃に備えるつもりなら,堅固な核シェルター(非常食完備の空気清浄機付き地下壕)を丹後各地に必要数建設すべきだ。これなら,多少の犠牲軽減効果を期待できる。

ところが,東京の政府には,そのような多少とも現実的なミサイル攻撃対策を進めるつもりは,毛頭ない。彼らは,自分たちの宣伝する国民のミサイル攻撃対処策が全くの画餅であり空念仏であることを百も承知の上で,それを別の意図をもって広報しているのだ。

それは,軍国主義時代と同様,国民の危機感をあおり,世論を統一・動員し,挙国一致で軍事大国化を推進していくことにある。この意味では,内閣官房のミサイル攻撃対処広報は,きわめて現実的であり有効。特に京丹後市では,米軍Xバンドレーダーを誘致したがため他の地域以上にミサイル攻撃の危険性が高く,したがってそれだけこの対処広報の効果も大きくなるわけだ。

このようにみてくると,内閣官房や京丹後市役所に脅され,国防意識高揚に動員されていくのは,市民自身の安全にとって何の益にもならないことは明白だ。

最善の策は,そもそもの脅威の元である米軍基地を撤去させること。そして,それが実現するまでは,次善の策として,各戸に一つ,隣組ごとに一つ,田畑や山林や海岸の要所ごとに一つ,強力堅固な核シェルターを全額国費でもって建設,運営,維持させること。

米軍基地を押し付けた東京の政府には,この程度の経費負担は当然である。東京やワシントンを守るためのXバンドレーダー基地を押し付けておきながら,住民には「ミサイルが飛んで来たらすぐ逃げましょう!」といった空念仏を唱えさせて済ますのは,あまりにも卑怯だ。

▼地域シェルター(『ライフ』表紙)/4人用シェルター(アマゾン好評発売中)
 

【参考】核シェルター普及率(人口当たり)
 スイス100%,ノルウェー98%,アメリカ82%,イギリス67%,日本0.02%

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/08 at 09:48

京都の米軍基地(108):司令官交代で秘密主義へ?

米軍経ケ岬通信所の司令官が6月26日,サラ・カルデナス大佐からアントン・マクダフィー(Anton McDuffie)大尉に交代した。司令官交代式は,米軍御用達セントラーレ・ホテル京丹後の結婚式場付近で催行。

通信所初代司令官のオルブライト少佐はサービス精神旺盛なネアカ軍人だったし,二代目のカルデナス少佐もネット上にかなりの情報があり催事にもよく顔を出していた。ところが,三代目のマクダフィー大尉については,ネット上にもほとんど情報がない。毎日新聞は,皮肉交じりに,こう報道した。

「米軍経ケ岬通信所・・・・の司令官が26日付で交代することとなり、現司令官のカルデナス少佐と次期司令官のマクダフィー大尉が16日、・・・・府庁を訪れ、山田啓二知事にあいさつした。・・・・面会は米軍側の要望で冒頭を除き非公開とされた。府総務調整課の説明では、カルデナス司令官から「大変お世話になりました」との言葉があったが、マクダフィー次期司令官は終始沈黙。Xバンドレーダーの騒音解消のための商用電力導入と、米軍人・軍属が関係する交通事故が相次いでいることを念頭に交通安全の徹底を、山田知事が要請したが、米軍側から回答はなかったという。」(毎日新聞2017年6月17日,強調引用者)

「米軍経ケ岬通信所・・・・の新司令官、マクダフィー大尉は22日、京丹後市の三崎政直市長を訪ねて着任のあいさつをした。・・・・懇談は冒頭の写真撮影だけで非公開で行われ、三崎市長は市民の安全・安心のための取り組みを要請したという。」(毎日新聞2017年6月23日,強調引用者)

米軍はいよいよ本領発揮,アメリカ・ファースト,極秘任務遂行のため,秘密の底にむけ潜航し始めたのではないか。

▼司令官交代式(セントラーレ・ホテル京丹後,6月26日)


 *最初の写真Fliker: The 94th AADDC,最後の写真ウエストポイント士官学校HP,他は米軍通信所FBより。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/07 at 14:36

カテゴリー: 軍事

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京都の米軍基地(107):イースターで子供の米軍馴致

今年もまた,京丹後進駐米軍がイースターを利用して子供たちを洗脳し,その成果をあっけらかんと世界に向け宣伝している。米国国益のためなら,アジア辺境地の「無邪気な子供たち」のプライバシーなど,はなから問題にならない。

EASTER EGG HUNT」4月15日
(1)会場:京丹後文化会館 主催:米陸軍経ケ岬通信所 共催:京丹後市国際交流協会
(2)会場:道の駅てんきてんき丹後 主催:米陸軍経ケ岬通信所

招待されたのは,3歳から12歳までの子供たち。会場では,軍人,軍属ら米軍関係者が,おやつ付きで楽しく遊んでくれる。こんなことを繰り返せば,子供たちはごく自然に米軍に馴れ親しんでいく。そして,数年,おそくとも十数年もすれば,彼らは親米軍の日本国有権者となるわけだ。

一般に英米は,総合的な長期戦略に長けている。京丹後での米軍馴致作戦も,その典型だ。一見迂遠に見えるが,結局はそれが,米国防衛のための日本国土利用を,より安定的・効率的とし,そしてまた,より安上がりとするのだ。

さらにもう一つ注意すべきは,イースター(復活祭)は宗教儀式でもあるということ。もともとの起源は定かではないが,一般にイースターは「イエス・キリスト復活記念日」とされ,世界各地のキリスト教会で特別なイースター礼拝が執り行われている。

「EASTER EGG HUNT」は,そのキリスト教儀式としてのイースターを祝う祭事。それを米軍と京丹後市国際交流協会が共同で開催し,そこに地域の子供たちを招く。京丹後市国際交流協会には京丹後市から「運営補助金」や「事業補助金」が出されているから(今年度補助金額不明),「EASTER EGG HUNT」は直接的あるいは間接的に公金補助を受けていることになる。

このように,米軍と京丹後市は,基地運用開始からわずか2年余にして,はやズブズブの関係,市役所は米軍奉仕にこれ努めている。日本は,わざわざミサイルなどぶち込まなくても,こうして半植民地化できる。安上がり。感謝されさえする。もって範とすべし。


 ■ゲームとお菓子と英語と米軍(宣伝ポスター)/京丹後市国際交流協会FB(子供の顔消去)

谷川昌幸(C)

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2017/04/27 at 19:42

中ネ共同軍事訓練の地政学的意味

ネパール国軍と中国人民解放軍が,カトマンズの「パラ軍学校」において,初の共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」(4月16~25日)を実施している。これは,ネパールをインド勢力圏内の一小国とする伝統的な見方からすると,驚くべき新たな事態とみてよいであろう。(参照:ネ中共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」

そのことを中国政府側から明快に分析し,その意義を高く評価しているのが,『環球時報』のこの記事:
 ▼Liu Zongyi, “Indian Worry Over China-Nepal Drill Outdated,” Global Times, 21 Apr 2017
著者のLiu Zongyi氏は上海国際問題研究院の上席研究員。以下,この記事の概要を紹介する。

—– —– —– —– —–

「サガルマータの友好2017」は,テロ対策と災害救助を目的とする中国とネパールの共同軍事訓練である。ネパールは,中国と緊密な経済関係を持つに至り,「一帯一路」への参加も希望している。それには,テロ対策を進め,「この地域の安全と安定」を図ることが不可欠だ。また,ネパールは地震など災害多発国であり,災害救助訓練も必要だ。

この共同軍事訓練は,こうした目的を持つものであり,当初,大隊規模での実施を予定していたが,インドの対ネ圧力により,「パラ軍学校」での小規模な訓練となってしまった。が,たとえそうであっても,この共同訓練には大きな意義がある。

インドはこれまで,冷戦的な地政学的観点から,ネパールやブータンを「自国の勢力圏内」におき,「中国との間の緩衝地帯」として利用してきた。そして,ナショナリズムが高揚し,モディ首相が就任すると,インドは「対中強硬策」をとり,「中国が南アジアやインド洋沿いの国々と経済協力を進めることを警戒し,中国の影響力を押し返そうとしてきた」。

ネパールは,そのようなインドに「政治的,経済的,文化的など様々な面で依存してきた」。そのため「ネパール人の多くが,シッキムのように,自分たちも国家としての独立を失うのではないかと恐れてきた」。

そのネパールにとって,「この共同軍事訓練は,中ネ二国間関係が政治的・経済的・文化的なものから,軍事的防衛の領域にまで拡大したこと」,あるいは「ネパールが大国間バランス外交に向け前進したこと」を意味する。さらにまた,「中国との共同軍事訓練は,ネパール国内の民族的分離主義を抑止することにも役立つ」。

中国は,中国‐ネパール‐インドの三国間関係につき,明確な立場をとっている。中国は,ネパールが中国とインドの架け橋となることを願っている。中国‐ネパール‐インド経済回廊を前進させることにより,これら三国すべての発展を加速できる。インドが中国とネパールの協力をどう見るにせよ,中国とネパールとの協力は,両国民の利益となるものであり,拡大し続けるであろう。

—– —– —– —– —–

以上が,Liu Zongyi上席研究員の『環球時報』掲載記事の要旨。中ネ共同軍事訓練をバックに唱えられているにせよ,議論それ自体は,まったくもって正論である。ネパールが独立を堅持し,もって中印の架け橋になるとは,ネパール政府が以前から繰り返し唱えてきたネパール外交の表向きの基本方針だし,中ネ印の平和的経済発展にも反対のしようがない。

たしかに,新たな「正義と平和」は,新たな強者の側にある。ネパールは,昇竜・中国に導かれ,インドの勢力圏から脱出し,相対的により独立した「中印のバランサー」ないし「中印の架け橋」へと向かうのであろうか?


■ネ中共同軍事訓練(国軍HP)/一帯一路(Xinhua Finance Agency HP)

谷川昌幸(C)

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2017/04/25 at 19:10

カテゴリー: インド, ネパール, 経済, 軍事, 外交, 中国

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ネ中共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」

ネパール国軍と中国人民解放軍が,国軍パラ訓練校(マハラジガンジ)において,初の共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」作戦を開始した。4月16~25日実施の予定。

ネパールは,軍事的には,これまでインドや英米との関係が深かった。ところが最近,中国が急接近,資金的にも教育訓練でも中国援助が急増している。その結果,ネパール国軍の中に,有力な親中派が形成され始めたという。

中国は2002年,バングラディシュと防衛協力協定を締結し,武器も供給し始めた。そのような関係を,ネパールやスリランカとも構築したいと中国は考えているという。そうなれば,パキスタンはすでに軍事的に中国と密接な関係にあるので,インドを封じ込めつつ「一帯一路(OBOR)」を実現するという中国の野望は,大きく前進することになるであろう。

【参照】
・2008年:中国,ネパール国軍に対し260万ドルの援助約束。
・2011年:中国,ネパール国軍に対し777万ドルの援助約束。
・2013年6月:中国,武装警察隊訓練校開設のため36億ルピー援助表明。
・2017年3月:対ネ投資会議において,中国が83億ドル(ネパールGDPの40%相当)のインフラ投資表明。
・2017年3月23-25日:中国国防大臣ら軍関係幹部がスリランカ訪問を終え,訪ネ。大統領,首相,国防大臣らと会談。共同軍事訓練について協議。中国側,ネパール国軍に対し3千2百万ドル援助を表明。
・2017年3月27日:中国,訪中したプラチャンダ首相に5月地方選援助(1億3千6百万ルピー)を表明。
・2017年4月16~25日:ネパール・中国共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」

*1 “Nepal-China Joint Military Training Commences,” Nepalese Army HP (n.d.)
*2 “10-day Nepal, China joint army drill starts today,” Kathmandu Post, Apr 16, 2017
*3 Anil Giri, “Nepal-China joint military drill begins,” Hindustan Times, Apr 16, 2017
*4 Nihar R Nayak, “China’s growing military ties with Nepal,” The Institute for Defence Studies and Analyses HP, March 31, 2017

 ■ネ中共同軍事訓練(国軍HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/04/18 at 18:14

カテゴリー: インド, ネパール, 軍事, 中国

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