ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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連邦制,希望から失望へ(1)

ネパールは2008年5月,制憲議会初会議において賛成560,反対4の圧倒的多数をもって王制を廃止し,連邦制の共和国となることを宣言した。「ネパールは,・・・・連邦民主共和国である」(2007年暫定憲法4(1)条[2008年5月29日改正])

この連邦制規定は,現行2015年憲法4(1)条に,そのまま継承されている。連邦制が,現代ネパールの最も基本的な国家理念の一つであることは明白である。

連邦制は,長年にわたる封建的中央集権支配への反発が強かっただけに,ネパールでは期待が極めて大きかった。西洋諸国を中心に国際社会も,民族やカーストあるいは地域,すなわち様々なアイデンティティを持つ社会集団に対する積年の根深い差別を解決できる制度として,連邦制の導入を物心両面で強力に支援した。

こうして,ネパールにおける連邦制は,社会集団の独自性や集団としての権利を特に強調する「アイデンティティ連邦制(identity federalism; identity-based federalism)」の側面が極めて強いものとなった。ネパールの人々は,その連邦制に政治の抜本的改革への希望を託したのである。

ところが,ここにきて,こうした連邦制評価やそれへの期待に対する批判が目に付き始めた。連邦制は,ネパール政治改革の特効薬であるどころか,むしろ逆に,混乱と浪費の根源であり,よくて実現不可能な観念論,悪くするとネパール国家を破滅させかねないというのである。

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■2015年憲法の州区分(Wikimedia Commons) / NEFINポスター(同HPより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/25 at 20:32

カテゴリー: 憲法, 民族

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包摂トイレ,ネパール国連ビルに設置

国連開発計画(UNDP)ツイッター(8月24日)によれば,ネパール国連ビル内に初の「全ジェンダー用トイレ(All Gender Restroom)」が設置され,にぎにぎしく開所式が執り行われた。「このトイレは,ジェンダーの意識や外見にかかわりなく,だれでも使用できます。」

すべてのジェンダーとは,全ジェンダー包摂的ということ。つまり「包摂トイレ」の開設なのだ。さすが包摂民主主義を国是とするネパール!!

国連が誇らしげに宣伝するだけに,包摂トイレは最新・最先端であり,まだ呼称も確定していない。ここでは,とりあえず「包摂トイレ(inclusive toilet)」としておく。
[包摂トイレの呼称例]
  Inclusive toilet
  Gender-inclusive toilet
  Gender-neutral toilet
  Gender-open toilet
  Unisex toilet

160825a160825c160825b■UNDPツイッター8月24日

1.欧米の包摂トイレ
包摂トイレは,ジェンダー意識の高まりとともに要望が強くなり,大学,公共施設,飲食店などに広まり始めた。

トイレが「男用」「女用」だけでは,LGBTなど男女以外の様々な性(ジェンダー)の人が安心して用を足すことが出来ない場合が少なくない。これは身近な切実な問題である。

そこで,英国では,トイレを「女」,「男」,「gender-neutral」「disabled」などと,いくつかに区別して設置し始めている(*2)。

アメリカでは,自分のジェンダーのトイレを使う権利が法的に認められ始めた。たとえば,「ニューヨーク市人権法(New York City Human Rights Law)によれば,人々は自分のアイデンティティに適合する単一性別トイレ(single-sex toilet)を使うことが出来る。」(*1)

大学では設置がかなり進んでいる。バーナード・カレッジは,「ジェンダー包摂トイレ」と表示し,「皆さんが誰でも安心して(in peace)おしっこできるようにしています」と広報した。(*1)

イリノイ州立大学では,「全ジェンダー・トイレ」と表示し,「誰でも,ジェンダー,ジェンダーのアイデンティティ,ジェンダーの外見にかかわりなく,このトイレを使用できます」と説明している。(*1)

街ではスターバックスが「全ジェンダー・トイレ」の設置を進めているし,ワシントンDCのあるレストランはトイレを「男用」「女用」「その他全員用」に区別しているという。(*1)

2.ネパールの包摂トイレ
ネパールでは,2007年に「第三の性」が公認され,そして2012年3月,ブルーダイヤモンド・ソサエティがネパールガンジに「gender-neutral toilet」を設置した。これがネパール初の包摂トイレとされている(*3)。

以後,バルディアなど何カ所かに包摂トイレが設置されたというが,私はまだ実物は見ていない(*4)。おそらく,いまのところそれほど普及はしておらず,だからこそUNDPが国連ビル内包摂トイレ設置をツイッターで宣伝することにもなったのだろう。

こうした動きに対しては,ネパールではトイレそのものさえまだ普及していないのに,といった批判の声が上がりそうだ。近代以前の無トイレ社会と,近代以後の包摂トイレ社会――この両極端の共存が,いかにもネパールらしい。

3.性の近代以前・近代・近代以後
欧米やネパールの「性とトイレ」論争を見ていると,近代以後が近代以前に先祖返りしているような気がしてならない。

現代のジェンダー闘争は,性アイデンティティの覚醒・強化,ジェンダーごとの権利獲得へと展開してきた。ジェンダー・アイデンティティ政治である。

ところが,ジェンダーは,LGBTなどというものの,実際には無数にある。そのそれぞれのジェンダーが,ジェンダー・アイデンティティをたてに権利要求を突き付ければ,社会は実際には維持できなくなってしまう。

トイレのような簡単な構造物ですら,ジェンダーごとの設置は困難。そのため,gender-neutral, gender-open, all-gender, unisexなどといったトイレを設置せざるを得なくなった。要するに,どのジェンダーであれ,このトイレでおしっこしてもよいですよ,ということ。これはトイレにおけるジェンダー識別の放棄に他ならない。

これは,近代化以前の日本の湯屋や温泉と,性の扱いにおいて,よく似ている。湯屋のことはよく知らないが,温泉は,つい最近まで東北や山陰には混浴がたくさんあった。いまでも山間部には残っているはずだ。私自身,そうした混浴温泉にいくつか入ったことがあるが,そこでは老若男女の差異にかかわりなく,皆ごく自然に温泉を楽しんでいた。

Gender-inclusive Onsen! これは,まちがいなく近代以前だが,少なくとも外見的には,近代以後が向かいつつあるところでもあるような気がしてならない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/08/26 at 16:23

「実」より「名」,プラチャンダの連邦制提案

マオイストのプラチャンダ議長が10月15日,民族名結合の州名とするのであれば,10州以下の連邦制でもよい,と語った(Republica,15 Oct)。2013年11月の制憲議会選挙では,マオイストは12州を提案していた。

141015 ■マオイスト12州案(प्रतिबद्धता पत्र)

連邦制は,いうまでもなく新憲法制定への最大の懸案の一つ。連邦を構成する州の数が少なければ,州区画が大きくなり,民族/カーストごとの州をつくれず,相対的多数派の民族/カーストの力が大きくなる。州名も多数派民族/カーストの名前か,民族/カーストとは無関係の,たとえばコングレス提案の「東州」とか「西州」といった民族/カースト中立州名になるであろう。この場合,前者はいうまでもなく,後者であっても,現実政治においては多数派民族/カーストが実際にはヘゲモニーを握ることになる。

世間では,名前など符号にすぎないとか,「名」より「実」だなどいわれることも少なくないが,実際には「名」が「実」を左右する。夫婦同一姓強制への固執がそうだし,会社合併で「三菱東京UFJ」とか「三井住友」のように旧会社名継承にこだわるのも,「名」が「実」を規定すると信じられているからである。その意味では「名」は「実」より重要だ。

ネパール連邦制の議論において,プラチャンダが,州名を複数の民族/カーストの名を結合したものにするなら,州の数は10以下でもよいと述べ,コングレス党の6~7州案に大きく歩み寄ったのも,とりあえずは「実」を捨てるふりをして「名」を取る作戦だろう。被抑圧諸民族/カーストの権利実現をスローガンとして民主化運動を闘ってきたのだから,彼らのメンツ(名前)だけはつぶさないでやってくださいね,と情に訴える高等作戦。

もともとネパールでは,どの民族/カーストであれ,単独で独自の州をつくることは困難なのだから,結合名の州という提案は少数派民族/カーストにも受け入れられやすいものだ。そして,「名」を取れば,いずれ「実」をも取れるという希望も,少数派民族/カーストはもつことができるであろう。さすが策士,プラチャンダ!

しかし,果たして,それでうまくいくのであろうか? 結合名にするとして,では実際に,民族/カーストの名をどう結合するのか。プラチャンダは「キラト-ルンビニ-コシ州」といった例を出しているが,本当にこの程度で済むのだろうか? 

日本には,「三井住友海上あいおい生命」といった長~い社名や「損保ジャパン日本興亜」といった珍妙な社名があるが,いくら長くても珍妙でも丸く収まっているのであれば,それはそれでよい。

しかし,ネパール連邦制は,もっとはるかにやっかいだ。西洋諸国が焚き付けた民族アイデンティティ政治は,民族/カースト名をいくつ連結してみても,とうてい丸く収まりそうにはない。パンドラの箱を開けたツケは,ここでも地元住民に付け回されることになるのであろう。

[参照]火だるまのバタライ博士: マオイスト14州案

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/10/15 at 20:15

制憲議会選挙2013(36):比例制-2

5.当選者名簿の作成
比例制獲得議席数の選管発表後,各党は,拘束式候補者名簿掲載候補者の中から,「党中央執行委員会」において獲得議席数に見合う数の当選者を選考して当選者名簿を作成し,それを選管に提出する[7(7)]。

この当選者名簿が選挙令の包摂規定に適合していない場合は,3日以内に訂正し,再提出する。ただし,各社会集団につき,10%以内の過不足は認められる。しかし,それでもなお規定に適合していない場合は,選管は,その党提出当選者リストを選挙令の包摂規定に適合しているものとみなす[7(8)-(12)]。

以上が,比例制当選者の選考方法らしい。「らしい」というのは,選挙令のこの部分,つまり第7条(7)-(12)は,何回読んでもよく分からないから。ネパール法実務家であれば分かるのだろうが,私にはお手上げ。だから,上記は,たぶん,そのような意味だろうというにすぎない。もし間違っていたら,後日訂正する。

6.当選者名簿:コングレス党の場合
当選者名簿の選管提出期限は,2013年12月30日。各党とも当選者選考でもめにもめたが,たとえば大勝し第一党となったコングレス党(NC)は,下記のような当選者名簿を作成し選管に提出した。

 ▼NC比例制当選者の社会集団別配分
  獲得議席数:91[100%]
  ・女性:46[50.5%]
  ・周縁的民族/先住民族:34(女17)[37.4%]
  ・マデシ:26(女13)[28.6%]
  ・ダリット:12(女6)[13.2%]
  ・後進地域:3(女2)[2.2%]
  ・カス・アーリア他:30(女15)[33.0%]

この社会集団別割当は,後進地域はやや少ないが,それを除けば選挙令の規定にほぼ適合している。

こうした社会集団別割当,ないしクォータ制が,根深い政治的・社会的差別の是正に大きな効果を発揮することはいうまでもない。たとえば,女性50.5%やダリット13.2%などは,人民戦争以前であれば夢のような考えられない数字であろう。日本でも,女性の力を本気で活用したいのであれば,ネパールに学び,議員定数の半分を女性とすべきであろう。

しかし,その一方,ネパールの包摂的比例制には問題も多い。たとえば,NC青年指導者ガガン・タパらによると,コイララ議長とデウバ幹部は比例制議席を5:4ないし6:4で山分けする密約を結んでいたという。事実,ほぼその通り,獲得議席91がコイララ派に55,デウバ派に36配分された。また,地域的にみると,25郡がゼロであるにもかかわらず,ヤダブ大統領やB・ニディの地元ダヌサ郡8,コイララ議長地元バンケ郡5,ポウデル副議長地元タナフ郡3となっている(ekantipur & Republica, 31 Dec.2013)。

身内優遇も相変わらず。デウバ幹部の妻アルズ・ラナ・デウバやコイララ一族のスジャータ・コイララなどが比例制から選出されている。

包摂的クォータ制は,構造的差別是正に有効な反面,議員選出過程が複雑となり,それだけ不透明となりやすい。また,アイデンティティ政治の危険性もつきまとう。この点については,別に論じる。

▼コングレス党比例制候補者・当選者
(候補者名簿番号-候補者名-[当選者名簿番号] 赤字=当選者

1 Chitra Lekha Yadav [1]
2 Gopal Man Shrestha [2]
3  Kul Bahadur Gurung [3]
4 Lila Koirala [4]
5 Dil Bahadur Gharti [5]
6 Narendra Bikram Nembang [6]
7 Pradeep Giri [7]
8 Gyanendra Bahadur Karki [8]
9 Minendra Prasad Rijal [9]
10 Prakash Sharan Mahat [10]
11 Man Bahadur Bishwakarma [11]
12 Sujata Koirala [12]
13 Manmohan Bhattarai [13]
14 Mahalaxmi Upadhyay Dina [14]
15 Anandaprasad Dhungana [15]
16 Suryaman Gurung [16]
17 Kamala Panta [17]
18 Ambika Basnet [18]
19 Dhanraj Gurung [19]
20 Mahendra Yadav [20]
21 Surendraraj Pandey
22 Ratna Sherchan [21]
23 Min Bahadur Bishwakarma [22]
24 Badri Prasad Pandey [23]
25 Jeevan Pariyar [24]
26 Ishwari Neupane [25]
27 Sita Gurung [26]
28 Kavita Kumari Sardar [28]
29 Minakshi Jha [28]
30 Sujata Pariyar [29]
31 Rajan Prasad Panta
32 Kumari Laxmi Rai [30]
33 Mina Subba
34 Baburam Rana
35 Chinkaji Shrestha [31]
36 Ram Chandra Pokhrel [32]
37 Sukraraj Sharma
38 Ashok Koirala [33]
39 Laxman Bahadur Basnet
40 Shivaraj Joshi
41 Jeet Bahadur Puri
42 Narayan Prasad Koirala
43 Ganesh Prasad Bimali [34]
44 Harihar Acharya (Birahi)
45 Shyam Kumar Ghimire
46 Jagadishwar Narsingh KC [35]
47 Haribol Bhattarai
48 Narayan Prasad Gaudel
49 Sunil Rana
50 Tarani Datta Chataut [36]
51 Madhu Prasad Acharya
52 Tilak Bahadur Rana Bhat
53 Rameshwor Prasad Khanal
54 Yadunath Khanal
55 Yubaraj Sharma
56 Bharat Bahadur Khadka [37]
57 Shanker Prasad Pandey
58 Krishnalal Sapkota
59 Jagannath Paudel
60 Kedarnath Koirala
61 Mohan Gyawali
62 Shankar Giri
63 Dhruba Wagle [38]
64 Chandra Bahadur KC
65 Baldev Bohara [39]
66 Mohan Raj Malla
67 Keshav Prasad Bhattarai
68 Lalit Adhikari
69 Mangal Bahadur Shahi
70 Giriraj Gautam
71 Krishna Singh Nayak
72 Sunil Kumar Bhandari
73 Narendra Bahadur Singh
74 Arjun Kumar Pokhrel
75 Dharmaraj Neupane
76 Jagat Prasad Joshi
77 Khuma Prasad Aryal
78 Rama Paudel (Guragain)
79 Krishna Kumari Paudel (Khatiwada)
80 Taradevi Bhurtel
81 Sarita Prasain [40]
82 Rukmini Devi Koirala
83 Shanta Rijal
84 Tulasa Acharya
85 Madhu Shahi Thakuri [41]
86 Kalyani Devi Rijal
87 Ambika Subedi
88 Laxmi Thapa
89 Kamala Thapa
90 Bijula Kumari Barma
91 Bishnu Devi Pudasaini
92 Dhan Kumari Khatiwada
93 Srijana Adhikari
94 Sushila Dhakal (Acharya)
95 Saroj Malla
96 Rama Aryal
97 Anita Devkota [42]
98 Kiran Koirala
99 Juna Kumari Dani
100 Rita Shahi [43]
101 Mithu Malla [44]
102 Parbati Chand
103 Leela Kumari Nepal
104 Chandra Devi Joshi [45]
105 Maina Karki
106 Dr Arzoo Rana Deuba [46]
107 Dipsikha Sharma Dhakal [47]
108 Uma Regmi
109 Dr Dila Sangraula
110 Omkala Gautam
111 Rama Koirala Poudel
112 Sheela Sharma Khadka [48]
113 Kalpana Devi Chokhal
114 Saraswoti Aryal Tiwari
115 Amrita Shahi
116 Nirmala Chhetri
117 Prasis Mahara
118 Narayani Rayamajhi
119 Urmila Nepal
120 Manju Khand
121 Parbati Devi Jaishi
122 Divyaswori Shah
123 Karobati Danuwarni
124 Ramkumari Malahin
125 Mukta Kumari Yadav [49]
126 Sangeeta Mandal Dhanuk [50]
127 Saraswoti Giri
128 Basmati Devi Giri
129 Kaushar Shah [51]
130 Anju Singh Chaudhary
131 Jamila Miya
132 Malati Devi Srivastav
133 Rashmi Thakur [52]
134 Mohammadi Siddiki
135 Lakhi Kumari Ganesh
136 Sarwat Ara Khatun Haluwaini [53]
137 Prameswori Pathak
138 Richa Dwebedi
139 Rekha Kaur Prasain
140 Saroj Kumari Yadav
141 Jibachhi Kumari Yadav
142 Mamata Srivastav
143 Laxmina Devi Rauniyar
144 Munni Kumari Gupta
145 Geeta Kumari Yadav
146 Tapeswori Devi Yadav
147 Surya Mati Upadhya
148 Fulkaliya Kurmini
149 Nagina Yadav
150 Kunti Kumari Yadav
151 Saraswoti Devi Harijan
152 Kunti Pasin
153 Mira Kumari Nepali
154 Prameela Devi Das [54]
155 Kumari Devi Musahar
156 Mohani Safi
157 Shyam Devi Pasman
158 Usha Gurung [55]
159 Krishna Amatya
160 Maji Gurung (Akala Gurung)
161 Sarita Gurung
162 Rajya Laxmi Shrestha [56]
163 Chandra Laxmi Tamrakar
164 Man Kumari Gurung
165 Saraswoti Bajimaya [57]
166 Pushpala Lama [58]
167 Dhan Kumari Thapa
168 Devaki Shrestha
169 Anu Gurung
170 Bishnu Kumari Limbu (Dahal)
171 Renuka Kaucha
172 Jeevan Dangol
173 Binda Devi Ale Rana [59]
174 Kusum Devi thapa
175 Uma Thapa
176 Deepak Roka Magar
177 Hari Prabha Khadgi
178 Hari Maya Gurung
179 Hira Gurung
180 Anjana Tamli [60]
181 Chandra Maya Limbu
182 Hema Laxmi Rai
183 Yamuna Devi Shrestha
184 Subarna Jwarchan [61]
185 Urmila Thapa
186 Anjani Shrestha [62]
187 Leela Subba
188 Lalita Kingring Magar
189 Lalitkala Gurung
190 Mahendra Kumari Limbu [63]
191 Rajani Amatya Jonchhe
192 Bijaya Shrestha KC
193 Manorama Sherchan
194 Maya Rai
195 Om Devi Malla Joshi [64]
196 Sunayana Palikhe Shrestha
197 Chiude Lama
198 Tika Kumari Budha
199 Sita Shrestha
200 Sita Kumari Rana
201 Bharati Gurung
202 Radha Ghale
203 Rekha Gurung
204 Kalpana Sop [65]
205 Bimala Nepali
206 Asha BK [66]
207 Rajan Bishwakarma
208 Kopila BK
209 Rupa BK
210 Nani Maya Neopali
211 Kopila Bohara
212 Laxmi Pariyar Sewa
213 Bishnu Maya Pariyar [67]
214 Radhika Bhujel
215 Uma Kumari Badi
216 Fulawati Rajbansi
217 Malati Devi Chaudhary
218 Namita Kumari Chaudhary
219 Pati Tharuin
220 Sabitri Devi Chaudhary [68]
221 Pampha Dhimal
222 Pepi Tharuni
223 Saraswati Chaudhary
224 Bhoteni Devi Khawas [69]
225 Laxmi Devi Bhandari [70]
226 Ganga Devi Chaudhary
227 Sundari Devi haruni
228 Dhamendra Bikram Nembang
229 Bikemndra Kumar Limbu
230 Dinesh Rai
231 Srawan Kumar Rai
232 Mohan Kumar Rai [71]
233 Pratap Singh Lama
234 Dhruva Shrestha
235 Dil Man Pakhrin [72]
236 Ourna Bahadur Tamang
237 Mohan Kumar Singh Mathema
238 Hira Lal Tandukar
239 Ananda Raj Joshi
240 Hari Prasad Shrestha
241 Pramod Kumar Shrestha
242 Raj Kumar Nakarmi
243 Dinbandhu Shrestha
244 Kalyan Kumar Gurung
245 Durga Bahadur Ranamagar
246 Amar Singh Pun [73]
247 Jhul Bahadur Aley [74]
248 Gajendra Bahadur Aley
249 Tama Bahadure Daire
250 Bhim Bahadur Dura
251 Rabindra Raj Shrestha
252 Lal Kaji Gurung
253 Dibya Mani Rajbhandari
254 Tek Prasad Gurung
255 Chandra Dwaj Gurung
256 Indra Bahadur Gurung
257 Jeevgan Prem Shrestha
258 Manohar Narayan Shrestha [75]
259 Angelu Sherpa
260 Pradip Kumar Sunuwar
261 Thal Kumar Linkha
262 Ravi Prakash Rai
263 Ganesh Bahadur Thapa (Magar)
264 Nabin CXHitrtakar
265 Raju Shrestha
266 Meena Kumari Srivastava
267 Arjun Kumar Shrestha
268 Lal Bahadur Ghale [76]
269 Buddha Lama
270 Kawel Bahadur Lama (Tamang)
271 Tsering Kapne Lama
272 Bhusandwaj Rajalwat
273 Kadga Bahadur Basyal [77]
274 Man Bahadur Nepali
275 Jayaram Tamata
276 Bijul Kumar BK Dulal
277 Lilman Damai
278 Karnabir Kami
279 Shiva Narayan Gangai
280 Ranjit Karna [78]
281 Amiya Kumar Yadav [79]
282 Bhola Pajiyar
283 Upendra Prasad Chaudhary
284 Harishanker Mishra
285 Upendra Prasad Kushwaha
286 Ram Shrestha Prasad Shah
287 Abdul Kalam Musalman
288 Lal Babu Singh Bhuinyar [80]
289 Matrika Prasad Yadav
290 Mukinath Yadav
291 Badshah Kurmi [81]
292 Abdul Hameed Siddiqui [82]
293 Rijwan Ahmed Shah
294 Dr Suresh Kumar Kanaudiya
295 Dharmendra Jha
296 Shashi Kanta Agrawal
297 Mahesh Kumar Jaju
298 Medani Mahato Dhanuk Mandal
299 Amrit Lal Rajbansi [83]
300 Ghuran Majhi
301 Birendra Kumar Majhi
302 Shanti Devi Chaudhary [84]
303 Mohan Chaudhary
304 Lahuram Tharu
305 Buddhi Sagar Chaudhary [85]
306 Smriti Narayan Chaudhary
307 Haresh Prasad Mahato [86]
308 Om Prakash Sharma
309 Narendra Prasad Mishra
310 Sheikh Rasheed Ali
311 Om Prakash
312 Kishori Shah
313 Mukhtar Ahmed [87]
314 Bhagirath Kumar Poddar
315 Rakesh Kumar Singh
316 Bashishta Narayan Prasad Kurmi
317 Basi Ullah Musalman
318 Dilli Bahadur Chaudhary [88]
319 Pyare Lal Rana [89]
320 Ramasamajha Chaudhary
321 Shyam Lal Rana Tharu
322 Bhagwati Prasad Tharu
323 Som Prasad Chaudhary
324 Ram Sundar Maharaf
325 Surya Dev Das Urao
326 Bangali Hajara Dusad
327 Maikulal Balmiki [90]
328 Sita Mijar
329 Padma Singh BK
330 Lok Bahadur Biswokarma
331 Narbhan Kami [91]
332 Bir Bahadur Sunar
333 Shambhu Hajara Dusad
334 Dharmandra Paswan
335 Ram Baran Paswan

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/10 at 18:21

制憲議会選挙2013(28):反対投票の権利

制憲議会選挙では,バイダ派(CPN-M)を中心とする33党連合が,選挙実施に反対する一方,次善の策として,「反対投票(negative voting)」を認めよ,と要求していた。選挙に出ている政党や候補者に対し,「反対」の票を投ずる権利だ。この「反対投票」の要求は,結局,拒否され,33党連合は選挙拒否に回った。

1.ネパール最高裁「反対投票」実施命令
ところが,この「反対投票」問題は,NGO「反テロ・反汚職キャンペーン」が最高裁に「公益訴訟」の形で訴え,その判決が1月5日,下された。

原告NGOは,「反対投票」を認めない現行選挙制度は,暫定憲法前文,公民権法,世界人権宣言第19条・21条(3),市民的及び政治的権利に関する国際規約第1条に反する。それゆえ現行制度を改正し,反対投票を認めるべきだ,と訴えた。

この訴えに対し,最高裁(K・シュレスタ判事,P・ワスティ判事)は,反対投票の権利を認める判決を下した。報道によれば,判決要旨は下記の通り(Himalayan Times & Nepalnews.com,5 Jan)。

現行選挙制度では,有権者は「最悪の候補者の中から一番ましな者」を選択することしかできない場合がある。「反対投票」制度を採用すれば,有権者は,立候補者全員か,あるいは特定の候補者のいずれかに対し,「反対」の意思表示ができる。

「反対投票」は有権者の権利であり,これにより有権者は腐敗やテロの防止の観点から,好ましくない立候補者の当選を防止できる。政府・選管は,次の選挙(国政・地方)から,反対投票を実施すべきである。

これは原告NGOの全面勝訴だ。しかも,この判決はNK・ウプレティ選管委員長にも歓迎された。彼は,選挙法を改正し,「反対投票」を採用したいと語っている。

140107b 140107c
 ■ネパール最高裁/選挙管理委員会

2.インド最高裁「反対投票」実施命令
「反対投票」は,すでにかなりの国で,何らかの形で採用されている:米(ネバダ州),仏,ベルギー,スウェーデン,スペイン,フィンランド,ギリシャ,ブラジル,チリ,ウクライナ,コロンビア,バングラデッシュなど。(日本でも議論が始まっている。) そして,それに加えて,ネパール最高裁判決に大きな影響を与えたのが,インド最高裁の「反対投票」実施命令判決である。

インド最高裁は9月27日,選挙管理委員会に対し,「反対投票」の採用を命令した。判決によれば,立候補者を拒否する権利は言論・表現の自由の一部であり,またこの「反対投票」は有権者の政治参加意欲を高めることにもなる。「民主主義の生存には,適切な国政を担う最善の人々を選ぶことが不可欠だ。」「多くの有権者がNOTA(None Of The Above 投票すべき候補者なし)に投票すれば,それは政党に対し,よりよい候補者を選択させる圧力になる。反対投票は選挙を制度的・体系的に変えていくだろう。」(Times of India & The Hindu, 27 Sep,2013)

このインド最高裁判決を,ネパール最高裁判決はほぼ踏襲している。

140107a ■インド最高裁

3.「反対投票」の危険性
しかし,繰り返し述べてきたように,ネパールの選挙制度は,現行でも極めて複雑であり,莫大な金と時間を消費する。現行制度でも運用し切れてはいない。それなのに,さらに複雑な制度を追加しようとする。なぜか?

大義名分は,もちろん人々の多様な意見の正確な代表。しかも,最新ピカピカだから,導入への援助も期待できる。腐敗した政党や政治家は困るかもしれないが,それをのぞけば,誰も損はしない。

が,そんな虫のいい話は絶対にない。 「反対投票」を追加すれば,選挙にますます金と時間がかかり,選挙破産となりかねない。外国が無際限に援助してくれればよいが,それは期待できないし,そもそも時間の援助は無理だ。

そして,もっと根本的な問題は,「反対投票」だから,当然,選挙は対抗相手を蹴落とすための運動に傾き,罵詈雑言,ヘイトスピーチのたぐいが激化する。しかも,ネパールはいま包摂参加・アイデンティティ政治バンザイの世相だ。これで社会が分解しなければ,奇跡といわざるをえない。

むろん,ネパールはまだ共同体的秩序が健在であり,すぐには社会分解とはならないだろうが,新製品には初期不良がつきもの,欧米諸国や日本に十分習熟運転させてから慎重に取り入れても遅くはあるまい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/01/07 at 17:16

制憲議会選挙2013(22):アイデンティティの市場競争へ

いまはやりの多文化主義によれば,人びとは「個人」として尊重されるのではなく,所属集団の一員として尊重される。裸の自由・平等・独立の個人は虚構(fiction)であり,すべての人はその人格を帰属集団文化(言語など)の中で形成するのだから,人権の尊重とは,すべての人をその人格において,つまりそのアイデンティティ(自分を自分と考えるその在り方)において,尊重することである,というわけである。

たしかに,近代個人主義は,自由・平等・独立の個人といっても,それはあくまでもフィクションにすぎず,実際には言語や宗教など文化によりその態度や行動は決定される。だから,自由・平等・独立の諸個人に一人一票民主主義で意思決定させたら,結局は,多数文化の専制となってしまうわけだ。この理屈はよく分かる。

しかし,多文化主義的集団主義で問題解決か,というと,ことはそう簡単ではない。多文化主義の依拠する人びとのアイデンティティは,多元的・多層的・重複的であり,常に変化・流動し,新しいものも次々と出現する,という特有の難しさがある。

その多種多様で変転きわまりなき集団アイデンティティの相互関係をどう調整し,それぞれの権利をどう尊重するか? また,それぞれの集団内の少数派の権利をどう守るか? これらは,いずれも原理的で,かつ実際的な難問である。

さらに,集団アイデンティティの尊重を唱える多文化主義的集団主義は,多言語主義が実証しつつあるように,アイデンティティ諸集団を自由競争市場に引き出す結果になりかねない。すなわち,「集団」としての権利が保障されたのだから,あとは市場で自由に競争せよ,というわけだ。

しかし,少数民族言語がネパール語に,ネパール語が英語に敗退しつつあるように,集団自体も,強大集団と弱小集団が競争すれば,いくら集団の権利が保障されていようが,弱小集団は敗退し,いずれ消滅か博物館行きとならざるをえない。それを免れるためには,少数派集団は,内に向けては集団内少数派の抑圧,外に向けてはアイデンティティ闘争強化を図らざるを得ないことになる。過激なアイデンティティ政治への転落である。

と,そんな観点から,今回の制憲議会選挙を見ると,多文化主義的集団主義は,既存諸集団をいったん解放し,これにより精神的文化的武装解除を行い,しかるのち均質な大社会――グローバル資本主義社会――に吸収同化するための巧妙な策略ではないか,という疑念をますます禁じ得なくなった。

制憲議会選挙実施が発表されると,選出議席601(小選挙区制240,比例制335,指名制26)に対し,150前後もの政党が選挙参加を表明した。その後,選管への正式登録は130党となった。このうち比例制参加は122党,候補者総数10709人。小選挙区への立候補者数は6128人。いずれもたいへんな数であり,弱小途上国ネパールにとって,選管,警察,軍隊などの経費だけでも,負担はきわめて重い。

下図ABは,キルティプルでY氏からいただいた投票用紙サンプルのコピー。Aは比例制,Bは小選挙区制カトマンズ第10区。いずれの用紙にも,コングレスの「樹」欄に,すでに「卍」の投票マークが印刷されている。コングレスが,投票日前に配布したものだろう。

カトマンズ第10選挙区は,有権者数62573人。プラチャンダ議長が落選した選挙区だ。投票用紙は,見ての通り,ABとも巨大。比例制は122党,小選挙区制でも39党(39人)。このようなものが全国240選挙区ごとに用意されている。これでは有権者や地域社会の精神的負担は重いし,また選挙経費は,選挙運動費(合法・非合法,直接・間接)も含めると途方もない額となり,ネパール国民に重くのしかかる。これが,多文化主義的集団主義,つまりはアイデンティティ政治の目に見える大きな成果の一つなのだ。

ところが,それだけの負担を強いながら,今回選挙では,女性や少数派諸民族・諸集団の当選者数は激減しそうな形勢だ。小選挙区の女性当選者数は,前回30人に対し,今回はわずか10人(4%)。マデシも有力者多数が落選し大きく後退した。比例制(335)と指名制(26)で多少は増えるだろうが,それでも女性や少数派諸集団の大幅後退は避けられそうにない。

なぜ,このようなことになってしまったのか? 諸言語の解放が,結局,ネパール語や英語帝国主義への隷従となりつつあるのと同じようなことが,被抑圧諸集団の解放についても政治の場で始まりつつあるのではないだろうか。

131202a 131202b
 ■投票用紙サンプル(コングレス欄卍印付): (A)比例制用/(B)カトマンズ第10選挙区用

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/12/02 at 16:30

プラチャンダの政治センス:「連邦民主共和国同盟」結成

プラチャンダは,現在のネパールでは,ダントツの政治センスを持つ本物のカリスマである。

1.カリスマ政治家としてのプラチャンダ
首相就任後,直ちに「王様ベッド」を首相公邸に搬入させたこと,ルンビニ開発で米中要人や国連事務総長を手玉にとったこと,息子にエベレストを征服させ山頂に赤旗を立てさせたこと――これらすべてが,プラチャンダの政治センスの良さ,カリスマとしての資質をよく示している。

人民は,ネアカのプラチャンダを英雄として愛しており,その証拠に,大金・小金を湯水のごとく使おうが,息子が不倫・逃亡しようが,彼に失脚の兆しは無い。

プラチャンダ非難をしているのは,民衆ではなく,ひがみっぽい小物政治家・知識人である。民衆は,英雄が好きなのだ。

2.民族/ジャーティの政治的制御
その政治家プラチャンダは,他の誰よりも,民族/ジャーティのもつ破壊力を熟知している。人民戦争を勝利させ王制を打倒したのは,プロレタリア「階級」ではなく,被抑圧「民族/ジャーティ」である。

しかし,その一方,民族/ジャーティ帰属意識は非合理的なものであり,日常的な合理的制御は困難である。このこともプラチャンダはよく知っている。民族アイデンティティは破壊には使えても建設には使えない――この洞察をふまえ,プラチャンダはその政治的手腕により民族/ジャーティを政治的に巧妙に利用しつつ,マオイスト革命を前進させようとしているのだ。

3.両面作戦の力わざ
最近のプラチャンダの政策は,多民族(多アイデンティティ)州をにおわせることによりコングレス党と統一共産党に制憲議会選挙実施への譲歩を迫り,これが十分功を奏さないとみると,単一民族(単一アイデンティティ)州に比重を移し,両党の被抑圧民族/ジャーティ派に揺さぶりをかけるという両面作戦である。

難しい両面作戦だが,それを力わざで統合できるのが,プラチャンダのカリスマたるゆえんである。

4.戦略としての連邦共和国同盟
プラチャンダが8月13日結成し自ら議長となった「連邦共和国同盟」も,この両面作戦のなかの一戦略である。

この「同盟」結成により最も大きな衝撃を受けているのが統一共産党。ライ副議長は離党し,ジャナジャーティ(少数民族)のための新党結成を予定。他にも,離党を考えている単一民族(単一アイデンティティ)州主義者は少なくない。あるいは,離党ではなく,残留し,単一民族州のための党内闘争を強化していこうと考えている幹部も少なくない。(ekantipur,16-17 Aug)

そうしたなか,最も注目されるのが,バイダCPN-M議長だ。もし彼が「連邦共和国同盟」に参加することになれば,プラチャンダ議長の完勝ということになる。

プラチャンダは,単一民族(アイデンティティ)州など,実現不可能であることをよく知っている。よくわかった上で,その強力なエネルギーを政敵の破壊に利用しようとしているのだ。

こんな恐ろしく危険なことを平然と仕掛けることができるのは,彼が偉大な政治的カリスマだからである。

(参照)Anurag Acharya, “In the name of peace and constitution,” Nepali Times, 16 Aug.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/08/17 at 14:49