ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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イタリアの旅(15):アルプスの十字架

アルプスの山頂や難所には十字架が立てられているところが多い。日本の山でも,たとえば富士山,御嶽山,立山などに神仏が祭られているのとよく似ている。宗教は異なれ,人は,鋭鋒や巨岩などに人知を超えた力の働きを感じ,おそれ,その力の主に加護を求めるものらしい。

ローマ時代の遺跡で知られるアオスタからバスで1時間ほどのところのコーニュ(Cogne)にも,そうした十字架がいくつか立てられている。

コーニュは,やや観光地化されているが,それでも古い村の趣を残す美しい村だ。バス停からほんの数分歩くと,谷間一面の牧草地の向こうにイタリア最高峰グラン・パラディーゾ(4061m)を望むことのできる広場につく。その正面に十字架と水場がある。

そこから村の中を山に向かって10分ほど歩くとゴンドラ乗り場があり,これでグラン・パラディーゾ前山の2100m付近まで登る。そこから登山道を30~40分登ると,切り立った尾根筋に出る。この尾根のグラン・パラディーゾ側は,氷河に削られたのであろう,垂直以上のゾォーとするような絶壁となっている。

その絶壁の上に,十字架が立てられている。造物主の偉大な業を,村人たちはここにも認めたからであろう。

●アオスタのローマ遺跡

●コーニュ

 ▲村の教会/グラン・パラディーゾと十字架


 ▲水場/吐水口

●ゴンドラ駅上の登山道からの展望

 ▲グラン・パラディーゾ/尾根筋の絶壁


 ▲絶壁上の十字架

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/04 at 16:55

キリスト教政党の台頭

ネパールでは,国家世俗化によりキリスト教会が勢力を拡大し,政治の世界にも進出し始めた。すでに政党もいくつか結成され,2013年制憲議会選挙では,「覚醒党(जनजागरण पार्टी [awareness] Party)」が1議席獲得した。党の本拠はラリトプルで,党シンボルは懐中電灯。

昨日(5月14日)の地方選挙(前期)では,この覚醒党を中心に,キリスト教会系4党が選挙協力に向け協議した。
 ・覚醒党(選管登録済,2017年3月10日現在)
 ・Rastriya Mukti Andolan Party(選管登録済,同上)
 ・People’s Party(選管登録申請中,同上)
 ・PA Christian Party(選管登録申請中,同上)

カトリック系「アジアニュース(www.asianews.it)」(2017年3月17日)によれば,この4党協議では,次のような意見が出された。
ロクマニ・ダカール(覚醒党党首)
「選挙を通してイエス・キリストのことを伝えたい。そうすれば,イエスの名で全有権者に訴えることができる。」
ジャヤワンタ・B・シャハ(Rastriya Mukti Andolan Party党首,4党協議代表)
「[選挙協力実現に向け残るのは]4党連合を誰が代表するかということと,選挙に出る政党の名称とシンボルを何にするかということだけだ。」(「アジアニュース」によれば,十字架とキリストの名を党名と党シンボルに配することを選管に打診中。)

この3月の4党協議は,結局,うまくいかなかったようだが,それにしてもキリスト教会系政党が,ここまで大っぴらにキリスト教を前面に出して選挙出馬を考えるとは,まったくもって隔世の感を禁じ得ない。

こうした宗教団体の政治活動について,現行2015年憲法は,微妙な規定を置いている。
第269条 政党の結成,登録および活動
(1)政党結成の自由  (2)選管への政党登録
(3)政党登録要件 (a)党則が民主的,(b)党役員の定期的選挙選出,(c)党役員の包摂性
(5)党名,党目標,党章および党旗がネパールの宗教的および社会的統一を損なわないこと,また国家の分裂を招かないこと

この憲法規定に,キリスト教会系諸政党は抵触しないのか? 前述のように,すでに2政党は選管登録されている。覚醒党は,懐中電灯で照らし,「目覚めよ!」と訴え,制憲議会に1議席を獲得した。しかし,前述の4党協議で出されたように,十字架を掲げキリストの教えを選挙で訴えるとなると,どうか?

ネパールには牛をシンボルとする有力なヒンドゥー教政党があり選挙でもヒンドゥー国家復帰を訴えているのだから,論理的にはキリスト教政党が選挙でキリスト教国家建設を説いてもよいことになる。矛盾はない。

しかし,こうした行き方には大きな問題がある。もし,これが認められるなら,政治は宗教対立の場と化し,ネパールは際限のない宗教紛争の泥沼に陥る。これまで,キリスト教が不当に抑圧されてきたことは事実だが,だからといって無原則に宗教を政治に持ち込むべきではない。それは,あまりにも危険である。ここはやはり,原理原則に立ち戻るべきであろう――政教分離の。

▼覚醒党FB

 ■FB表紙/2013年選挙用。政党シンボルにマンジ印をつけ投票(2017年4月2日付FB投稿)

▼地方選への覚醒党立候補(選管HPより)

 ■ラリトプル/バクタプル(赤印)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/05/15 at 16:48

キリスト教会,連続攻撃される

ネパールのキリスト教会が,2回連続して攻撃された。いずれも犯人は不明。

4月16日午後,「ネパール全国キリスト教連合(FNCN)」のサントシュ・カドカ書記が,ラリトプル・マンバワンのFNCN集会所開催のイースター集会に参加し,帰宅しようと会場を出て100mほど行ったところで,何者かに銃で腰付近を撃たれ重傷を負った。FNCNはプロテスタント教会の統括団体。

その2日後の4月18日午前3時ころ,今度はラリトプル・ドビガートの被昇天教会(Assumption Church)が,何者かの集団に放火された。教会西入口付近と聖職者住居の一部が焼け,バイク2台と車1台が全焼した。この被昇天教会は,ネパール最大のカトリック教会で,2009年には礼拝中を爆破され,3人が死亡している(*3,*4)。

今回狙われたのはプロテスタントとカトリックであり,犯人も具体的な攻撃目的も不明だが,宗派にかかわりなくキリスト教そのものが攻撃目標にされたとみるべきであろう。5月中旬の地方選との関係は,不明。


 ■被昇天教会/放火された住居と車輌(同教会FB)

*1 “Christian Federation concemns shooting of its member,” Kathmandu Post, 19 Apr 2017
*2 “Arson attack at the Catholic Church just after office secretary of Christian federation was shot,” nepalchurch.com, 20 apr 2017
*3 コミュナリズムの予兆(5)
*4 コミュナリズムの予兆(6)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/04/26 at 12:21

活気あふれるベトナム

ベトナムのホーチミン(サイゴン)に行ってきた。3泊4日の激安観光旅行にすぎないが,それでも現地に行くと,そこ特有の雰囲気が体感され,興味深い。

ホーチミンやその周辺には,商業ビル,マンション(集合住宅),工場など,巨大な建物が多数みられ,建設中のものも少なくない。街は活気に満ち,デパート,専門店,スーパー(ファミマなど)から商店や露店まで,どこも繁盛しているように見えた。

街は,繁華街はむろんのこと路地裏でも,見た限りでは整然とし,人々も勤勉で,バイク運転を除けば,温和で親切であった。

これが,あの悲惨な戦争から,ほんの半世紀足らずの社会主義国,ベトナムとは,とうてい信じられない。もしこの第一印象が全くの的外れでないなら,ベトナムは今後,急速に発展していくのではないかと思われる。

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■謹賀新年2017年(大聖堂裏)/高層ビルと国旗

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■中央郵便局正面/局内のホーチミン

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■戦争証跡博物館/下町の教会

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■美しい街とゴミ箱

170112f■バイクで子供送迎

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/01/13 at 16:27

クリスマスを国民祭日に,泥縄決定

ネパール政府は24日,キリスト教会からの圧力に押され,翌25日のクリスマスを「国民祭日(国家祭日)」とすると発表した。キリスト教会にとってはありがたいクリスマス・プレゼントだが,それにしても何ともみっともない泥縄の朝令暮改か!

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■Republica,24 Dec. / バブラム・バタライNS党首ツイッター(12月25日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/24 at 23:23

カテゴリー: 宗教, 憲法

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クリスマスを国民祭日に戻せ,キリスト者連盟

ネパールでは,クリスマスは,世俗国家宣言後,全国民的な「国民祭日(国家祭日)」とされていたが,ナショナリスト対外硬オリ内閣が2016年4月2日,これを取り消し,キリスト教徒公務員だけの祭日に格下げしてしまった。(参照:クリスマスを国民祭日から削除:内務省

ビクラム暦2073年祝祭日(「ネパールの空の下」)
 [祝祭日の種類]ネパール政府を中心に、全国的に休日となる祝祭日/女性だけ休日となる祝祭日/カトマンズ盆地だけ休日となる祝祭日/公務員だけの休日/教育機関だけの休日
 12月25日 クリスマス(キリスト教徒公務員休日)

この格下げにキリスト教会は激しく反発し,政府に対し,以前と同じ「国民祭日」に戻すことを要求している。ネパールのクリスマスは,華々しい実利主義商戦のチャンスであると同時に,重苦しい政治的宗教闘争の季節でもあるのである。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/17 at 18:01

カテゴリー: 宗教, 憲法

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タルーのキリスト教改宗も急増

ネパールでは,キリスト教は,クリスマス商戦用には大歓迎だが,本来の宗教としては,昨日も指摘したように,まだ強く警戒されている。タルーのキリスト教改宗に関するこの記事も,その一例。

▼Devendra Basnet, “Conversion to Christianity high among Dang Tharus,” Republica, 14 Dec. 2015.

記事によれば,ダン郡のタルー居住地域では,人民戦争終了以降,キリスト教徒が急増している。そのため,タルー社会の規範が守られなくなり,伝統的な文化や儀式の維持が困難になりつつある。

キリスト教布教は,タルー長老らによれば,ポスターを貼り教会へ誘う,カネや外国援助で釣る,など。むろん,これらの非難は繰り返し用いられてきた常套句だが,少なくとも伝統的社会の側からは,そのようなものと見えるのだろう。

開発格差,経済格差の大きいところでは,神々の争いもカネ絡み,利権絡みと見られる。難しい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/16 at 20:43

カテゴリー: 宗教

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