ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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紹介:寺田鎮子著『ネパール文化探検』

これまでに発表されたネパール関係論文を1冊にまとめたもの。いずれも,綿密な現地調査に裏付けられた手堅い論文だが,記述は平易であり,特別な予備知識がなくても,よく理解でき,面白く,興味が尽きない。非売品だが,ネパールやこの分野に関心をお持ちの方に,是非お薦めしたい好著だ。

寺田鎮子著『ネパール文化探検』177+5頁,2014年6月30日刊,非売品
 まえがき
 第1章 ネパールの生き神・クマリ
 第2章 ネパール宗教マンダラ
 第3章 ネパールの女神の大祭-ダサインの考察
 第4章 ネパールの面と儀礼
 第5章 ネパールの伝説と祭り
 第6章 ネパールの柱祭りと王権
 第7章 ネパールの柱祭り
 付 録 暦とカレンダー/ネパールの民話の世界/ポピューラー音楽の現在

140821

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/08/21 at 16:50

カテゴリー: 文化,

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クマリの世俗化,そして失業

谷川昌幸(C)

国家の世俗化は,護国諸宗教の没落であり,神々の失業である。マオイスト革命が近代革命たるゆえんだ。

クマリも当然,神性を奪われ,世俗的見世物に落ちぶれるのがいやなら,失業するしかない。8月18日,最高裁がクマリ公益訴訟の判決を出した。それによれば,「クマリが,子供の権利条約の保障する子供の権利を否定されるべき根拠は,歴史的文書にも宗教的文書にもない」のであり,したがってクマリには他の子供たちと同様の教育の自由,行動の自由,食事の自由などが認められるべきだ,という。これは原告プンデビ・マハルジャンの主張通りである。

kumari80819「生き神様クマリ」で稼ぐ観光局

草木も判事もマオイストになびく。マオイズムからすれば,これは当然の判決であり,これでプラチャンダ首相のインドラ祭参加,クマリ拝跪はなくなった。最高裁がお墨付きを与えたのだ。めでたい。(注)

(注)インドラ祭参加は、実際には、形式的国家元首の「大統領」ということになろう。この場合、プラチャンダ首相は、政教分離の矢面に立つことをまぬかれる。その代わり、大統領が「国王」に接近する。どちらにせよ、難しい選択だ。 (2008.8.21追加)

世俗化の影響は,クマリにとどまらない。他の護国諸宗教は,これから衰退に向かう。神々の大量失業時代だ。失業して怒るのは神も同じだが,怒ると,人間より怖い。

しかし,これはすべての神々の没落,失業ではない。封建的な古い神々に替わり,近代的な新しい神々が登場する。その頭目がマモン神だ。ミスコンを司るのも,このマモン神。

さて,そこでマオイストはどうするか? 封建的,反人権的なクマリ神は,たぶん見捨てるだろう。しかし,マモン神までつれなくできるだろうか? 共産主義はツチとカマでマモン神を退治するはずだったが,もしミスコンに拝跪するようであれば,看板に偽りあり,ということになる。これは見物だ。

* nepalnews.com, Aug.19; eKantipur, Aug.19.

Written by Tanigawa

2008/08/19 at 19:49

カテゴリー: 宗教, 憲法, 文化

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