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京都の米軍基地(34):イルカ軍団,丹後半島近海来襲
イルカが,500頭の大群をなし,京丹後市の丹後半島近海を遊弋しているのが目撃された(4月2日付読売ほか)。いうまでもなく,米軍Xバンドレーダー部隊の先遣隊だ。要厳戒! [イルカ500頭回遊(NNN)]
1.経ヶ岬をイルカ聖域に
米欧イルカ人道主義派によれば,イルカは知能が高く,人間の考えや気持ちをよく察知し行動できるそうだ。とすれば,イルカ社会では,ケネディ駐日大使がイルカの権利擁護に尽力し,また丹後半島にXバンドレーダーを設置する計画であることも,すでに知れ渡っているにちがいない。
そこで,イルカたちは考えたのだ。丹後半島近海に行けば,イルカの生存権は守られる。万が一,地元漁民が攻撃を仕掛けてきても,すぐケネディ大使らが非難の声をあげ,イルカ人道派も押しかけ,イルカを守ってくれるはずだ,と。
しかも,丹後半島周辺海域は,ブリなど高級魚の好漁場。イルカのエサとなる魚はたくさんいる――他の魚類はバカだから喰われて当然,生存権はない。思う存分食べ,イルカ仲間を増やし,丹後半島沖をイルカ聖域とすることも夢ではない。
2.イルカの米国益貢献
これは大恩ある米国に報いることにもなる。イルカは大量の魚を食う。しばらくすると丹後半島近海の魚は激減する。そうなれば,漁師たちは漁ができず,廃業に追い込まれる。こうして漁師がいなくなれば,電磁波やら温排水といったXバンドレーダー反対の理由もなくなる。
さらにまた,日本漁業が衰退すれば,日本人の食習慣が肉食中心に変化し,米国産の牛肉や畜産用飼料の対日輸出が増加し,米国益に大きく貢献する。したがって,イルカ人道主義派に保護され,丹後半島近海の魚を食い尽くすことは,米国の大恩に報いることになるのだ。
3.壱岐イルカ事件の教訓
まさかと思われる方は,「壱岐イルカ事件(1980)」を思い出していただきたい。イルカ被害に耐えかねた壱岐漁民が捕獲のためイルカを追い込んでいた網を,イルカ人道主義者の米国人が切断し,数百頭を逃がした。彼は逮捕・起訴されたが,執行猶予が付き,実質的にはイルカ人道主義が勝利した。その後,壱岐ではイルカ捕獲は断念され,水族館で「人道的」に飼育されるようにさえなった。
壱岐で勝利したイルカ軍団は,北上し,今度は丹後半島近海を攻撃目標と定めた(*)。ここで心すべきは,イルカ軍団が丹後漁民を攻撃し始めても,米国政府は絶対に漁民は守らないということ。米国政府は,イルカ人道主義を国益のため利用しており,漁民の味方など端から念頭にないからだ。(* イルカ軍団は,3月下旬には宮津湾内,4月9日には伊根湾内に深く侵入し魚を追っているのが目撃された。京都新聞4月10日)
4.イルカ人道主義と米軍国主義との共犯関係
丹後半島近海にイルカ軍団が布陣し,経ヶ岬に米軍Xバンドレーダー基地ができたら,どうなるか?
イルカは,ブリなど高級魚を食い散らす。たまらず漁民がイルカ駆除を始めようものなら,たちまちイルカ人道主義者がやってきて,彼らを攻撃する。そして,ケネディ大使だけでなく,おそらく駐留米軍人・軍属らも,何らかの形で漁民攻撃に加勢するだろう。イルカ人道主義は,米軍国主義と共犯関係にあるのだ。
5.アングロサクソン偽善のしたたかさ
ちょっと冷静に考えれば,イルカ人道主義がいかにトンドモナイ偽善であり屁理屈であるかは明白だが,その無茶苦茶,無理難題をまるで「正義」であるかのように筋道を立て,巧妙に世界を丸め込んでしまうのが,西洋,とくにアングロサクソンの凄いところだ。この卓越した偽善能力は,彼ら自身も認めている周知の事実だ。たとえば,バーナード・ショーは,『運命の人』において,ナポレオンに次のように語らせている。
▼BERNARD SHAW, THE MAN OF DESTINY,1898
NAPOLEON. That accounts for it. The English are a nation of shopkeepers. Now I understand why you’ve beaten me.
LADY. Oh, I haven’t beaten you. And I’m not English.
NAPOLEON. Yes, you are――English to the backbone. Listen to me: I will explain the English to you.
LADY (eagerly). Do. [….]
NAPOLEON. No, because the English are a race apart. No Englishman is too low to have scruples: no Englishman is high enough to be free from their tyranny. But every Englishman is born with a certain miraculous power that makes him master of the world. When he wants a thing, he never tells himself that he wants it. He waits patiently until there comes into his mind, no one knows how, a burning conviction that it is his moral and religious duty to conquer those who have got the thing he wants. Then he becomes irresistible. Like the aristocrat, he does what pleases him and grabs what he wants: like the shopkeeper, he pursues his purpose with the industry and steadfastness that come from strong religious conviction and deep sense of moral responsibility. He is never at a loss for an effective moral attitude. As the great champion of freedom and national independence, he conquers and annexes half the world, and calls it Colonization. When he wants a new market for his adulterated Manchester goods, he sends a missionary to teach the natives the gospel of peace. The natives kill the missionary: he flies to arms in defence of Christianity; fights for it; conquers for it; and takes the market as a reward from heaven. In defence of his island shores, he puts a chaplain on board his ship; nails a flag with a cross on it to his top-gallant mast; and sails to the ends of the earth, sinking, burning and destroying all who dispute the empire of the seas with him. He boasts that a slave is free the moment his foot touches British soil; and he sells the children of his poor at six years of age to work under the lash in his factories for sixteen hours a day. He makes two revolutions, and then declares war on our one in the name of law and order. There is nothing so bad or so good that you will not find Englishmen doing it; but you will never find an Englishman in the wrong. He does everything on principle. He fights you on patriotic principles; he robs you on business principles; he enslaves you on imperial principles; he bullies you on manly principles; he supports his king on loyal principles, and cuts off his king’s head on republican principles. His watchword is always duty; and he never forgets that the nation which lets its duty get on the opposite side to its interest is lost.He――
▼近衛文麿による要旨引用(『英米本位の平和を排す』1918)
曾てバーナード・ショウは其「運命と人」の中に於てナポレオンの口を藉りて英国精神を批評せしめて曰く「英国人は自己の欲望を表すに当り道徳的宗教的感情を以てする事に妙を得たり。しかも自己の野心を神聖化して発表したる上は何処迄も其目的を貫徹するの決断力を有す。強盗掠奪を敢てしながらいかなる場合にも道徳的口実を失わず、自由と独立を宣伝しながら殖民地の名の下に天下の半を割いて其利益を壟断しつゝあり」と。ショウの言う所稍奇矯に過ぐと雖、英国殖民史を読む者は此言の少くも半面の真理を穿てるものなることを首肯すべし。
このショーの自国民認識は,歴史的事実に適合しており,正確無比である。さすが,イギリス人!(アイルランド出身だから,なおさらかもしれないが。)これに比べたら,私のイルカ人道主義批判など,大甘,足下にも及ばない。アングロサクソン政治の凄さは,平気で肉を切らせ,結局は,相手の骨を断ち,シャブリ尽くすところにある。これにどう対抗すべきか?
6.偽善には偽善をもって
これは難しい。偽善はケシカランといって偽善との真っ正面からの闘いから降りてしまい,本音の「日本人本位」に逃げ込み,独善に陥り,「日本人の正当なる生存権」のためには戦いも辞さずなどと空威張りし始めたら,負けである。
政治では,建前や偽善は,独善に陥りやすい本音や赤誠よりも大切だ。アングロサクソン型偽善には,それ以上の普遍性をもつように見える建前,それ以上にもっともらしく見える偽善でもって対抗し,世界世論の支持を獲得する以外に勝利する方法はない。
イルカ問題も同じこと。イルカ人道主義が偽善であることは明白だが,これに感情的に反発し,日本特殊論や「日本人本位」に逃げ込み,立てこもってしまっては,丹後半島とその近海は,イルカ軍団と米軍基地に席巻されてしまうだろう。すでに丹後半島には,Xバンドレーダーだけでなく,オスプレーなど,他の米軍最新兵器をも配備する計画があると報道され始めている。
この1月,グアムに行ってきた。広大な米軍基地を背景にイルカ・ウオッチ! 楽しかった。
■ソレダッド砦(スペイン統治時代)/ウマタック湾とサン・ディオニシオ教会(マゼラン上陸・略奪地)。砦からはイルカの群れが湾内にまで入り込んでいるのが見えた。平地,良港は米軍が占領・使用。写真撮影:2014-01-30
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(32):捨て石としての沖縄・グアム・京丹後
京丹後・経ヶ岬へのXバンドレーダー配備が,米軍再編,特に沖縄海兵隊グアム移転と連動していることはいうまでもない。京丹後は,米国の対中「封じ込め」監視戦略の中にガッチリ組み込まれてしまった。
中山市長が,いくらお得意のお念仏,日本「国益」を唱えようが,米国はそんなものは馬耳東風,蚊の鳴声ですらない。丹後の命運は,米軍基地受け入れにより米国の手中に落ちてしまったのだ。
1.中国・北朝鮮監視のためのXバンドレーダー網
米国は,中国・北朝鮮監視のため,東南アジアにXバンドレーダー網を構築する。ウォールストリートジャーナル(2012年8月23日)によると,Xバンドレーダー設置は,車力(既設),京丹後(建設中),そしてフィリピンの予定。きれいにな中国監視網だ。
こうした戦略に基づき,2012年9月17日には,パネッタ国防長官が訪日し,日本側とXバンドレーダー配備について協議した。設置目的は,抵抗の少ない北朝鮮ミサイルからの防衛とされた。
2013年2月には安倍首相が訪米し,日米首脳会談(22日)において重要な合意を交わした。
・オバマ大統領の訪日
・集団的自衛権の検討
・ガイドラインの見直し
・米軍再編促進と沖縄負担の軽減
・宇宙・サーバー分野での協力
・Xバンドレーダーの配備
「両首脳は,北朝鮮の核・ミサイル活動も踏まえ,弾道ミサイル防衛協力を進め,米軍のTPY-2レーダーを我が国に追加配備する方針で一致した。」(日米首脳会談(概要)
京都の米軍基地は,安倍訪米の手土産の一つだったのだ。以下,事態は次のように展開する。
▼2013年3月4日:ヘーゲル国防長官が,北朝鮮の脅威に対抗するため,グアムに最新鋭迎撃ミサイルシステムを配備すると発表。
▼2013年3月21日:朝鮮人民軍最高司令部,グアム米軍基地は北朝鮮の「精密照準爆撃の射程内にある」と発表(CNN)。
▼2013年12月19日:米上院,在沖海兵隊グアム移転費8600万ドル,Xバンドレーダー京丹後設置費1500万ドル可決。ちなみに,海兵隊グアム移転総経費86億ドル,そのうち日本負担28億ドル。
このように,Xバンドレーダーの京丹後配備は,大きくは米軍の対中戦略の一環であり,より直接的には在沖海兵隊移転先グアム基地の北朝鮮ミサイルからの防衛が主目的である。
以前にも述べたように,当初日本側は,Xバンドレーダーの対馬か佐賀県内への設置を希望した。しかし,これでは位置的にグアム・ハワイ防衛には適さないので,米側は能登半島か丹後半島を要求した。AFPはじめ多くの通信社が,米政府筋の情報として,「Xバンドレーダー配備地は,グアムやハワイに向かう北朝鮮ミサイルは日本の西部または中部を飛ぶと想定されるので,そこ(京丹後)が選定された」と伝えている。京丹後・経ヶ岬のXバンドレーダーは,グアム・ハワイ米軍基地の防衛を,当面の主目的としている。
これは,米軍にとっては,最も合理的な選択だ。在沖海兵隊が移動し,ますます重要性を増すグアム基地。もし仮に北朝鮮がグアム基地攻撃を試みるなら,真っ先に経ヶ岬Xバンドレーダー基地を攻撃する。この攻撃情報は瞬時にグアム基地に届くであろうから,米軍には迎撃のための幾ばくかの時間的余裕ができる。いかにも米国らしい冷徹な合理的計算。京丹後は米国の弾よけ,捨て石。日本「国益」のためですらない。「米国益」のための滅私奉公なのだ。
というわけで,沖縄海兵隊の移転先(沖縄負担の押しつけ先)にして京丹後の滅私奉公先たるグアム米軍基地を見に行ってきた。
■グアム基地(宜野湾市「グアム米軍基地視察報告」2007年8月13日)
2.軍事基地用「植民地」としてのグアム
グアムは近い。3時間余で着く。淡路島くらいの小さな島で,人口約17万人。チャモロ人37%,フィリピン系26%,他のアジア系11%,白人7%(2013年)。そのうち,約10%(1万7千人)が米軍関係者。
グアムは,政治的には,米国の「未編入領土(Unincorporated Territory)」。自治政府をもつが,米国大統領の選挙権も米国議会での議決権もない。「準州」などとも呼ばれるが,事実上,植民地である。
産業は,観光約7割,基地関係約3割。失業率12-13%。通貨は米ドル。物価は,地元住民向けスーパーでも非常に高い。公用語は英語とチャモロ語。
島の約1/3が米軍基地。特に平地は米軍が使用している。また,良港は海軍が使用。アメリカは土地収用の権利を持つ。沖縄と比べても,米軍基地負担ははるかに重い。
3.自然破壊
グアムに着いて,まず驚いたのは,あまりにもすさまじい自然破壊。南太平洋の珊瑚礁に囲まれた小島であり,本来なら南海の美しい別天地のはずだ。ところが,めぼしい海岸や丘の上は,観光資本により乱開発され,見てくれだけの安普請ホテルや張りぼてリゾート施設が林立している。街中は,いかにもといった土産物店や飲食店ばかり。お人好し某国観光客からぼったくり,稼ぐだけ稼いだら,ハイさようなら,醜い廃虚を残して撤退するつもりだろう。
4.文化破壊
文化破壊もすさまじい。16世紀半ば,スペインが植民地とし,伝統的チャロモ文化を弾圧し,カトリック布教を強行した。19世紀末,米西戦争で勝利したアメリカがスペインに取って代わった。アメリカは,チャロモ語辞書を焚書にし,チャロモ語使用を処罰をもって禁止した。太平洋戦争が始まると,日本軍の侵略を受け,グアムは「大宮島」と改名され,米軍に奪還されるまで日本軍国支配下に置かれた。
文化は奥深いものであり,よそ者一見客には本当のところはすぐには分からないが,少なくとも見た限りでは,はっきりそれと分かる生活の場における伝統文化は見当たらなかった。
5.天皇制国家と横井さんの平凡の悲惨
グアムに行って次に衝撃を受けたのは,横井庄一さんの,あまりにも悲惨な地下壕潜伏生活。横井さんは戦死とされ,靖国神社に祀られたが,実際には,島南部の小川(タロホホ川)上流域に地下壕を掘り,1972年に発見されるまで28年間も隠れ住んでいた。
これが筆舌に尽くしがたいほど悲惨なのは,万事すべてが平凡であって,どこを見ても劇的・英雄的ではないこと。横井さんの地下壕付近は,遠望で見る限り,うっそうたるジャングルではない。小高い山や丘に灌木や草が生え,小川が流れているだけ。近くには村もある。ごくごくありふれた平凡な土地。
人跡未踏のジャングルなら,あるいは深山幽谷や絶海の孤島なら,それだけで劇的,英雄的たりうる。ところが,タロホホ川付近は,ごくありふれた土地。そんな平々凡々たる土地に,横井さんは28年間も地下壕で隠れ住んでいた。
お国のため,神国「国益」のために戦った兵士をこのような惨めな生活に追い込む天皇制国家,日本軍国主義のあまりの非情,残酷さ。横井さんは,平凡に徹したからこそ,28年間も隠れ住むことができた。その意味で,つまり平凡に徹しえたという意味で横井さんは非凡であったが,それは非人間的非凡を強いた日本軍国主義の免責にも,ましてやその顕彰にも利用されるべきでは,断じてない。
横井さんの地下壕生活それ自体は平凡であり,したがって観光資源になるはずもないが,なんと驚くなかれ横井さんの地下壕から少し離れたところのテーマパーク(タロホホの滝)に「横井洞穴(Yokoi Cave)」がつくられ,観光名所となっている。むろんニセモノだが,そのあまりの安易,軽薄に涙せざるをえなかった。
しかも,横井さんの28年間の隠れ家地下壕生活については,その非人間的平凡さへの強制をこそ直視すべきなのに,それをせず,国家のために戦い抜いた英雄としての利用があちこちに見られる。商売目的であれ政治目的であれ,そのような横井さんの利用は,彼の人間としての尊厳を根底から否定するものといわざるをえない。
■「横井洞穴」付近(Google)/「横井洞穴」/同左説明版(2014-1-30)
6.住民監視の米軍基地
そして,最後に,米軍基地の不気味さ。島内一周観光バスは,「横井洞穴」から北部の「南太平洋戦没慰霊記念公園」に向かう。
この「公園」近くは,広大な米軍基地だが,バスはむろん公道を走り,樹林帯の向こうの基地はまったく見えない。近くには巨大スーパーや様々な事業所もあり,多くの車が走っている。一見,ごく普通の街。その風景を見ながら,女性ガイドさんが恐ろしい体験を話してくれた。
もう何年も前のことだそうだが,ガイドさんがその付近を通ったとき,何気なく写真を撮ったら,米兵がすっ飛んできて,あっという間にカメラを取り上げられ,取り調べを受けたのだそうだ。ガイドさんによると,その付近には,信号機の横など,あちこちに監視カメラがあり,常時監視されているのだという。それを聞き,周辺を見回したが,「撮影禁止」とか「監視カメラ作動中」といった標識は,どこにも見当たらなかった。おそらく住民にとっては常識であり,自己規制が習い性となっているのだろう。
「見られないで見る」,これこそ監視の極意であり常道。巨大な基地の島グアムでは,常時監視されていると考えた方がよいだろう。グアム入管では,両手の指紋を入念に,徹底的に採取される。監視カメラと顔識別装置などにパスポート情報,指紋などを組み合わせれば,島内での人々の動きはすべて把握できる。スッポンポンで街を歩き回っているようなもの。
7.京丹後も監視社会に
経ヶ岬に米軍基地ができたら,京丹後もグアムのような監視社会にされてしまうだろう。経ヶ岬は丹後半島の先端にある。ここに通ずる道路は,国道1本のみ。東と西の道路のどこかに監視カメラを設置すれば,通行人の監視は容易。監視カメラで撮影したナンバープレートや顔写真を,文字読み取り機や顔識別装置で分析し他の個人情報と自動照合すれば,その人物が何者か瞬時に識別できる。
むろん,よそ者(stranger)や要注意人物を割り出すには,付近住民すべての情報が必要だから,住民の個人情報は,ことごとく収集され,日々,更新されると考えるべきだろう。というよりもむしろ,そのような作業はすでに着手されていると覚悟すべきかもしれない。
8.「国益」呪文の危険性
グアムの米軍は,グアム住民を守るため,広大な土地や良港を占拠し駐留しているわけではない。軍事基地さえなければ,北朝鮮がグアムを攻撃目標にすることは絶対にない。これは自明の理。同様に,沖縄米軍が,沖縄の人々を守るために,沖縄に駐留しているわけでもない。これも自明の理。とすれば,当然,経ヶ岬に進駐する米軍が,京丹後の人々を守ることを目的としていないことも,自明の理。
中山市長の「国益」は,この自明の理を住民に見せないための呪文にすぎない。それは,イワシの頭と大差ない代物だが,いったんかかってしまうと,一巻の終わり。京丹後がはるか彼方のワシントンや東京の捨て石となり滅私奉公するのが,京丹後の当然の義務であり誇りである,と感じられるようになってしまう。
振り込め詐欺より悪質だ。「国益」の呪文には,いくら巧妙にはやし立てられようとも,いっさい耳を貸さないのが賢明だ。
谷川昌幸(C)
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