ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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情報過多ネパール:語るに語れず

ゴビンダ・KC医師(博士,TU教授)の第15回ハンスト(6月30日〜7月26日)に興味を持ち,ここで紹介したいと思っているが,あまりの情報量,とても追いきれず,目下,立ち往生。

ほんの十数年前,インターネットが普及する以前は,ネパールは外国人にとって情報過少であった。逆説的だが,情報が少なければ,ネパールについて述べるのは容易。何らかの方法でネパール情報を手にすれば,それをネタに話したり書いたりすることができた。

ところが,いまやネパール情報はネット上にあふれている。何を言っても,何を書いても,たいていのことはすでにネットに掲載されている。新発見,新解釈と思っても,要するにそれは知らないだけ,ネット世界の検索を怠っているだけのことかもしれない。このネット情報化時代にあっては,自らの無知と怠惰をさらけ出す結果となるかもしれないという覚悟なくしては,およそ何かを書き,あるいは話すことはできないであろう。

本もまた,このネット情報化社会では,愛玩鑑賞用は別として,もはや不要となった。以前は,ネパールなど外国に行くときは,事前に本や地図帳でその国のことを調べ,そのうちの何冊かを重くはあったが持って旅に出かけた。が,いまや旅行先のことは何でもネットに掲載されている。小さなスマホ一台あれば,旅行に限らず,生活に必要な情報はどのようなものであれ,いつでもどこでも,はるかに効率的にネットから手に入る。もはや本など印刷物はいらないのだ。ネット上での再説も屋上屋,不要だ!

いやはや,困った時代になったものだ。ゴビンダ医師のサティアグラハ(真理把持)闘争には大いに関心がある。時代閉塞状況に陥りつつある日本のわれわれにとって,そこには学ぶべきものが多々あるように思われる。むろん,そう思うのは私の無知と怠惰のせいかもしれない。いっそのこと,ゴビンダ医師のサティアグラハ闘争について,私的備忘録風に,思うところを書いてみることにするか。

▼ネパールにおけるインターネット急拡大

 *Nepal Internet Usersより作成(http://www.internetlivestats.com/internet-users/nepal/)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/09/19 at 18:21

最高裁長官解任のネパール,首相無答責の日本(1)

ネパールは,民主主義の運用においても,いくつかの点で日本を追い抜き始めた。その一例が,この3月14日のネパール最高裁長官解任。日本が,あたかも首相無答責であるかのように森友学園国有地売却問題における安倍首相の政治責任を棚上げし,責めをあげて首相夫妻らの意向を「忖度」したとされる財務省関係諸機関に押し付け,問題の早期幕引きを図ろうとしているのと好対照だ。

1.ネパール最高裁長官の解任
ネパールでは,憲法設置機関たる「司法委員会(न्याय परिषद Judicial Council)」が訴えに基づきパラジュリ(पराजुली)最高裁長官の資格審査を実施し,3月14日パ長官に対し司法委員会事務局長名をもって法定停年超過を通告,これによりパ長官は長官資格を喪失した。事実上の解任である(正式解任は3月18日付)。

 ■パラジュリ最高裁長官(最高裁HPより)

パラジュリ最高裁長官については,ゴビンダ・KC医師が2018年1月,トリブバン大学医学部長解任無効判決批判の中で,その不適格性を厳しく指摘していた。
 *ゴビンダ医師の市民的抵抗,医学部長解任事件最高裁判決に対して(1) (2) (3) (4)

不適格の理由はいくつか挙げられているが,最も明確なのは年齢詐称。パラジュリ長官自身は1953年4月28日生まれ(満64歳)だと主張し,彼の市民登録証にもそう記載されているが,ゴビンダ医師によると,これは虚偽であり,実際には2017年アサド月(6~7月)に彼は65歳に達しているという。もしこれが事実なら,最高裁判事の停年は憲法131条で満65歳と定められているので,パ長官はすでに停年を超えており,その事実だけでも彼は長官資格を有しないことになる。

このパラジュリ長官年齢詐称問題は各紙が報じたが,特に詳しいのはカンチプル系メディア。AFP記事(3月14日)からの孫引きだが,カンチプルはパ長官が出生日を5通り持ち使い分けてきたという。

このゴビンダ医師やカンチプルによるパラジュリ長官年齢詐称告発に対し,パ長官側は彼らを法廷侮辱の罪で告発し,その裁判を長官自らが指揮しようと画策してきた。

しかしながら,この問題は,結局,司法委員会に持ち込まれることになった。司法委員会の委員長も最高裁長官であり,審議がどう進められたのか気になるところだが,審議状況についての報道は全くない。常識的には,パ長官は当事者であり,審議の場からは外されていたと見てよいであろう。

いずれにせよ,司法委員会は3月14日,事務局長名で委員会決定を大統領,首相,最高裁,法務省等に伝えた。同委員会は,パラジュリ長官の出生日を結局1952年8月5日と認定し,すでに憲法規定停年を超過しているので彼は最高裁長官資格を有しないと通告したのである。

パラジュリ長官は司法委員会決定を不当とし,職務継続をバンダリ大統領やオリ首相に訴えたが,大統領も首相もこれを退けた。また最高裁内でも,法廷侮辱事件担当判事数名がパ長官指揮に従うことを拒否した。さらに弁護士会もパ長官に退職勧告を突き付けた。

事ここに至って,ようやくパラジュリ長官は3月15日,バンダリ大統領に辞職を願いで,辞任した。事実上,憲法設置機関の司法委員会による解任である。

本件のような年齢詐称は先進諸国では考えにくいが,1950年代のネパールではまだ住民登録が未整備で,そのころ生まれたパラジュリ長官のような人々の年齢確認は困難な場合が少なくない。したがって,パ長官側にもそれなりの言い分はあったのであろうが,ネパール現体制は司法委員会の判断を尊重し彼を解任した。

ネパール最高裁長官は日本の最高裁長官よりはるかに強大な権限を持つが,少なくとも今回のパ長官解任にあたっては,忖度のようなものは見られなかった。

*1 RAJNEESH BHANDARI, “Nepal’s Chief Justice Sacked After He Is Accused of Faking Date of Birth,” New York Times, MARCH 14, 2018
*2 “Nepal Chief Justice sacked for faked date of birth,” AFP, 14 Mar 2018
*3 “Judicial Council relieves CJ Parajuli of his duties, Apex court’s senior-most Justice Deepak Raj Joshi set to take charge,” Kathmandu Post, Mar 15, 2018
*4 “Parajuli loses chief justice job,” Himalayan, March 14, 2018
*5 “8 SC justices boycott bench to pressure CJ,” Republica, March 14, 2018
*6 “Joshee takes over as Parajuli quits,” Kathmandu Post, Mar 16, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/03/23 at 15:56

ゴビンダ医師の市民的抵抗,医学部長解任事件最高裁判決に対して(4)

5.「5項目合意」とハンスト終了
最高裁法廷(P・バンダリ判事とBK・シュレスタ判事)は1月10日,ゴビンダ医師の陳述聴取後,保釈金なしで彼を保釈した。一方,パラジュリ最高裁長官については,市民登録証とSLC資格の調査を命令した。ゴビンダ医師の次の出廷は,2月20日の予定。

保釈後,ゴビンダ医師は政府側(D・ボハラ保健大臣ほか)と交渉,1月12日夜,合意に達し,両者は「5項目合意」に署名した。

5項目合意(1月12日)
(1)「医学教育委員会」を組織するための準備委員会を7日以内に設立。
(2)JP・アグラワル医師はトリブバン大学(TU)医学部長の職にそのまま留まる。
(3)TU医学部に権限を戻すために必要なTU役員会を開催。
(4)TU教育病院改革に必要な予算の計上。
(5)ゴビンダ医師のハンスト終了。

この10日の最高裁決定と12日の「5項目合意」をみると,パラジュリ最高裁長官の辞任ないし解任については何も述べていないが,他の重要な点ではゴビンダ医師の要求が大幅に認められていることがわかる。自らの命をかけハンストで抗議したゴビンダ医師の「市民的抵抗」の勝利といってよいだろう。

しかしながら,ネパールでは,ここからが難しい。合意が成立しても,それが誠実に実行されない場合が少なくないからだ。ゴビンダ医師も,パラジュリ長官が辞任しなければハンストを再開する,と警告している。近く発足するであろう左派連合政府が,この問題とどう取り組むか,注目されるところである。

 ■D・ボハラ保健大臣(保健省HP)

参照資料
* “Police Arrests Dr KC on Charge Of Contempt Of Court,” New Spotlight Online, Jan. 9, 2018
* “Dr KC begins hunger strike demanding resignation of CJ Parajuli,” Republica, Jan 8, 2018
* “Dr KC warns of 14th hunger strike demanding authentication of HPE ordinance, Gives 7-day ultimatum to prez,” Kathmandu Post, Nov 6, 2017
* “Dr KC begins 14th hunger strike Demands resignation of Chief Justice Gopal Parajuli,” Kathmandu Post, Jan 8, 2018
* “Contemptible actions – Supreme Court acted harshly in ordering arrest of Dr KC who was only exercising right to protest,” Editorial, Kathmandu Post, Jan 10, 2018
* “Leaders express their solidarity,” Kathmandu Post, Jan 10, 2018
* “Will continue hunger strike till chief justice resigns: Dr KC,” Kathmandu Post, Jan 10, 2018
* “Protesters demand Nepal Chief Justice’s resignation,” Outlook, 09 JANUARY 2018
* “Nepal Medical Association demands immediate release of Dr KC,” Kathmandu Post, Jan 9, 2018
* “Leaders support Dr KC while major parties keep mum,” Republica, Jan 10, 2018
* “Dr Govinda KC says will continue hunger strike,” Himalayan Times, Jan 12, 2018
* “Govinda KC’s charges,” Nepali Times, 12-18 Jan 2018
* “Dr KC continues his fast, Says struggle goes on until remaining demands for reforms in medical education are met – The SC ordered his release on a general date in a contempt of court case on Wednesday, while calling for an investigation into the authenticity CJ Parajuli’s papers,” Kathmandu Post, Jan 12, 2018
* “I assure that the court will be made justice imparting body: Dr KC,” Kathmandu Post, Jan 13, 2018
* “Nepal Bar Association defends CJ Gopal Parajuli, urges Dr Govinda KC to end fast,” Onlinekhabar, Jan 12 2018
* “Bar unhappy with Dr KC’s protest, urges him to end hunger strike,” Kathmandu Post, Jan 12, 2018
* “I don’t need to display my credentials out in the road: CJ,” Republica, Jan 13, 2018
* “Dr KC ends 14th fast-unto-death protest after agreement with govt,” Himalayan Times, Jan 13, 2018
* “Dr KC ends hunger strike following 5-point deal with govt,” Kathmandu Post, Jan 13, 2018
* Baburam Bhattarai, “Struggle for reforms” Republica, Jan 15, 2018
* “Dr KC ends 14th hunger strike ‘Another fast if Chief Justice Parajuli does not resign’,” Kathmandu Post, Jan 14, 2018
* “Dr Govinda KC released without bail,” Kathmandu Post, Jan 10, 2018
* “A written reply furnished by Dr KC to the Supreme Court on Tuesday,” Kathmandu Post, Jan 10, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/23 at 15:04

ゴビンダ医師の市民的抵抗,医学部長解任事件最高裁判決に対して(3)

4.市民的抵抗としてのゴビンダ医師ハンスト
(1)ハンスト支持
ゴビンダ医師が今回のハンストで訴えていることについては,賛成し支持する声が圧倒的に多い。

主要3党は,党としてではないが,幹部がそれぞれパラジュリ最高裁長官を批判し,ゴビンダ医師支持を表明した。またナヤシャクティ(新しい力)党のバブラム・バタライ(元首相)も,長文コメント「改革の闘い」(1月15日付リパブリカ)を発表,ゴビンダ医師の司法改革要求は全く法廷侮辱には当たらないと述べ,彼を全面的に支持した。なにかにつけ不仲のネパール諸党がこれほど意見の一致をみるのは,珍しい。

新聞各紙も,ニュアンスの違いはあれ,ゴビンダ医師の主張を支持している。「カトマンズ・ポスト」は1月10日付社説「見下げ果てた行為:最高裁は抗議の権利を行使したにすぎないKC医師の逮捕を命令した」において,次のように述べている。

「KC医師は,強く求められてきた医学教育改革のために,命がけで繰り返し闘ってきた。その平和を愛し腐敗と闘う改革の闘士が留置され,法廷侮辱容疑で法廷に引き出された。なんたるお粗末な決定か。」

(2)ハンスト反対
政界も市民社会もゴビンダ医師支持が圧倒的多数なのに対し,いわば身内の法曹社会は意見が割れている。

ゴビンダ医師支持の法律家も少なくないが,代表的法曹組織の「ネパール法律家協会(NBA[Nepal Bar Association])」は,法廷陳述後のゴビンダ医師釈放(後述)は歓迎しつつも,彼の最高裁攻撃の方法については,許されないと批判する。

NBAによれば,ゴビンダ医師は,最高裁長官に対し不適切な言葉で人格攻撃をし,ハンストで脅し,司法を混乱させている。ハンストはやめ,憲法の定める「司法委員会」などを通し問題は解決されるべきだ。「独立した司法の尊厳は守られなければならない」(“Bar unhappy with Dr KC’s protest, urges him to end hunger strike,” Kathmandu Post, 20 Jan 2018)。

このNBAの反対にも一理はある。憲法は第101(2)条で連邦代議院による最高裁長官弾劾を,また第153条では「司法委員会」による裁判官の資格審査や腐敗および職権乱用の調査・裁判を認めている。法治国家では,これが裁判官の責任を問う通常の法手続きであることに間違いはない。

しかしながら,もしこの裁判官弾劾手続きが,憲法の規定通り機能しない場合,市民はどうすればよいのか?

(3)市民的抵抗としてのハンスト
こうした場合,国家社会の構成員たる市民には,市民として悪政に抵抗する権利,すなわち「市民的抵抗(civil disobedience)」の権利がある。

ネパールでは,現行2015年憲法が世界最高水準の民主的司法制度を定めているが,残念ながら実際にはまだそれが規定通り運用されない場合が少なくない。今回のゴビンダ医師法廷侮辱事件裁判も,その典型である。

ゴビンダ医師は,パラジュリ最高裁長官の行為を職権乱用と確信し,自らの市民としての良心に基づき一人でハンストを行い,憲法の認める言論の自由を行使して長官を批判し辞任を要求した。

もしかりに彼のこの行為のある部分が法の定める異議申し立て手続きに形式的には反しているとしても,それは市民的抵抗として,近現代社会では正当な(legitimate)行為と認められるはずである。

ゴビンダ医師自身が,1月9日の法廷において,こう述べている。「私は,法廷侮辱罪のことはよくわきまえている。職務を正しく遂行する裁判官を尊敬してもいる。しかし,不当な判決を下し誤った行為をする裁判官に反論するのは,決して法廷侮辱には当たらない。それこそが,法廷を尊重することに他ならないのだ。」(“Dr KC: Criticism of controversial judgement not contempt of court,” Kathmandu Post, 10 Jan 2018)

ゴビンダ医師は,裁判官や判決の批判は法廷侮辱ではない,あくまでも合法的ないし合憲的行為だ,とここでは弁明している。これは「市民的抵抗」を根拠とする主張ではない。

しかしながら,ゴビンダ医師の対最高裁長官ハンスト闘争は,たとえ形式的には罪に問われようが正義のために命をかけて闘いぬく,それが市民としての義務であり,またそれこそが司法を本来の姿に戻すことになるという固い信念に基づくものだ。これは「市民的抵抗」に他ならない。

(4)「市民的抵抗」嫌いの市民的抵抗
「市民的抵抗」は,ガンジーが唱え実践したことで知られているが,なぜかネパールでは人気がない。ネパールはガンジー嫌い? インド嫌いが高じて「市民的抵抗」嫌いになってしまったのか? ここのところは,いまのところよくわからないが,いずれにせよネパールの政治や学界において真正面から「市民的抵抗」が掲げられ,あるいは議論されることは,少ない。

ところが,実際には,内容的には「市民的抵抗」に他ならない闘争が,各地で繰り返し行われてきた。「市民的抵抗」だらけ。これは,市民の諸権利が形式的に合法的な手段では守られないことが少なくなかったからである。形式的合法性(legality)よりもむしろ実質的正当性(legitimacy)に訴える。日常茶飯事だったから,あえて「市民的抵抗」として理論化する必要がなかったのかもしれない。

そのネパールで「2015年憲法」が制定された。民主的な法制度や政治制度を定めた世界最高水準の憲法。その憲法に基づき2017年には連邦,州,市町村の選挙も実施された。形式的合法性のための諸制度は,ほぼ実現された。

ネパールの次の課題は,この形式的合法性により実質的正当性を実現していくこと。憲法の実践ないし具体化。

この2015年憲法体制の下で,皮肉なことに,憲法と現実との矛盾は,むしろ以前以上に鮮明となるであろう。形式的合法性だけに依拠していては,実質的正当性が確保できない事例の先鋭化。そうした場合,闘いの理論的根拠として,「市民的抵抗」が要請されることになるであろう。ガンジーはどうも,インドは嫌い,などと言ってはいられない。

その現代ネパールにおける「市民的抵抗」の範例の一つとして,ゴビンダ医師の抗議ハンストは位置づけられてよいであろう。

 
■敵をも愛したガンジー/巨大ガンジー像の前で学ぶ学生と教師(ニューデリー,2010年3月撮影)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/22 at 14:55

ゴビンダ医師との合意ほご,プラチャンダ首相

プラチャンダ内閣が,ゴビンダ・KC医師に約束した医学教育改革の約束を,合意署名3日後に反故にした。政治家の約束,鴻毛の如し。

プラチャンダ内閣は,医療制度・医学教育改革を要求してハンスト(10回目)を続けていたゴビンダ医師に対し,要求に沿う改革への努力を約束し,ハンストを止めさせた。その合意の中でも最も重要な約束の一つが,「『国家医科教育法』成立まで,医科カレッジのTU提携(affiliation)を認可しない」というもの。(10回目ハンスト11月13日~12月4日。参照:ゴビンダ医師,ハンスト終了

ところが,報道によれば,プラチャンダ首相はゴビンダ医師との協議を進めながら,他方では教育省を通して「ネパール医学委員会(NMC)」に圧力をかけ,私立病院・医科カレッジのB&C Medical College Teaching Hospital and Research Centreのために,TU提携を認めさせようとしてきた。提携認定手続きは,ゴビンダ医師ハンスト中の11月24日頃から進められ,月末までにはNMCが予備調査をほぼ終了,12月2日にはB&CのMBBS(医科学士)教育適格性を認める報告書を教育省に提出した。もし教育省がこの報告書に基づきTU提携を認定すれば,B&Cはトリブバン大学医学部やカトマンズ大学との提携が可能となり,MBBS課程を開設できる。TU提携認定は,私立医科カレッジにとって決定的に重要な資格要件なのである。

B&Cは,2015年3月,マオイスト幹部の一人を中心とする私財25億ルピーの出資により,ジャパ郡ビルタモドに開設された。メチ・ゾーン最大の病院であり,700ベッド。開院式にはプラチャンダ議長が出席し,主賓として除幕をとり行った。他党有力者も出席していたが,設立の経緯を見れば,マオイスト系とみてよいだろう。そのB&CのTU提携認定を,マオイスト議長たるプラチャンダ首相が政治的圧力をかけ強引に押し進めようとしている。

ゴビンダ医師は,当然ながら,このB&CのTU提携認定に真っ向から反対し,ハンスト再開を考えている。もし再開されれば,11回目のハンストとなる。

161209a161209b(B&Cホームページより)

*1 “Govt flouts deal it reached with Dr KC,” Kathmandu Post, Dec 8, 2016
*2 “Govt breaches deal with Dr KC, allows affiliation to B & C College,” Republica, December 7, 2016
*3 “Govt forces NMC to issue letter to MoE,” Republica, December 7, 2016
*4 “700-bed hospital opens in Birtamod,” Kathmandu Post, Mar 2, 2015

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/11 at 10:24