ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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カナク・ディグジト氏,CIAAが逮捕

権力乱用調査委員会(CIAA)が4月22日,カナク・マニ・ディグジド氏を権力乱用による不正蓄財の容疑で逮捕した。カナク氏は,サジャ・ヤタヤタ交通(1962年設立)会長であり,また著名なジャーナリスト(ヒマールメディア共同発行者),人権活動家でもある。

CIAAは,カナク氏とその家族の内外の銀行口座や所有不動産等を調査し,その概要を発表した。それによれば,彼らの所有財産は確かに巨額だが,その財産がどのようにして形成され,どこに権力乱用などの不正があったかは,まだ明らかにされていない。

このカナク氏逮捕に対しては,内外のメディア関係者や人権団体などが,いち早く抗議の声を上げ始めた。

逮捕されたカナク氏は,体調悪化(心臓病,高血圧)のため,23日午前,ビール病院に移送され,入院した。[未完,詳細後述]

160424a■サジャ・ヤタヤタHPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/24 at 09:56

Republica vs Nepal National

ネパールのネットメディアには不思議な習性がある。何の予告も案内もせず,ある日突然アドレスを変更,アクセス不能となる。継続して読みたければ,自分で新アドレスを探さねばならない。ちょっと予告しておけばよいのに,それをしないのが,いかにもネパール流。不思議な,読者無視の慣習だ。

今回は,ネパール大手メディアの一つで,International New York Timesと連携しているRepublica(My Republica)。突然のリンク切れで,アクセスできなくなってしまった。あちこち探し,新アドレスを見つけたが,また切れた。新聞そのものは発行しているようだが,こんな不親切では信用失墜,ネット版の読者に見放されてしまう。

これとは対照的にサービス精神旺盛なのが,中国系やオセアニア系,あるいはキリスト教会系。幾度か紹介した中国日報(China Daily)は,無償配布に加えて,奨学金さえ出し,サービスとイメージアップにこれ努めている。参照:中国日報

オーストラリアMidwest Radio NetworkのNepal Nationalも,なかなか使い勝手が良い。ニュース選択センスがよいし,画面もすっきりしていて読みやすい。参照:Nepal National

また,キリスト教会系ニュースメディア,たとえばローマカトリック教会のAsianews.itも,当然ながら立場が明確であり,たいへん興味深い。参照:Asianews.it

Asianews.itの中国語版発信趣旨説明によると,中国の大学ではキリスト教への関心が高い。中国通信制大学の調査(詳細不明)では,北京の学生の61.5%がキリスト教に関心を持ち信者になりたいと願っているという(本当かなぁ?)。だから,Asianews.itは,中国語版をネット配信しているのだそうだ。

Asianews.itのネパール向けニュースページも,おそらく,これと同じ趣旨で配信されているのだろう。そして,このAsianews.itのキリスト教関係記事は,上述のNepal Nationalにも転載されている。オセアニアないし西洋の人々にはネパールのキリスト教関係記事への関心が高い,また,ネパールの人々にもキリスト教への関心を高めてほしい,とNepal Nationalが考えているからにちがいない。

こうしたことを念頭において今週のネパリタイムズ(3-9 Apr,#752)を見ると,なかなか興味深い。中国日報(China Daily)の広告が出ているのは言うまでもない。そして,記事としては,「ネパール人,しかるのちにカトリック教徒」が目に付く。

150405 ■ネパリタイムズ記事

このネパリタイムズ記事によれば,キリスト教徒は,2011年全国人口調査で375,699人,全国キリスト教連盟発表で250万人,そのうちカトリックは8,000人。カトリックはまだ少数派だが,キリスト教徒総数はかなり増加している。

記事によれば,信徒であっても,様々な軋轢を恐れ隠れている人々(いわばネパール版「隠れキリシタン」)もいるし,逆に受洗していなくても教会行事には参加する人もいる。こうした状況を考え合わせると,信徒250万人というのも,あながち誇張ではないだろうし,もしそうだとすると,キリスト教はすでに相当の大勢力になっているとみてよいであろう。

Asianews.itは,こうしたネパールの状況をよく見据え,ネパールニュースを発信し,Nepal Nationalはそのキリスト教会系ニュースを転載しているのだろう。

このように,中国系やオセアニア系,あるいはキリスト教会系メディアは,それぞれの得意な方法で,読者へのサービスに余念がない。これに比べ,ネパールメディアは,まだまだ知識身分の特権意識が抜けきらない。「恩恵を恵んでやるぞ」といった上から目線。これでは「士族の商法」,自由競争市場では早晩淘汰されてしまうであろう。

【追加2015-04-08】
Republicaは,HP再構築が完了したらしく,再び接続できるようになった。が,他のネパールメディアと同様,依然として垢抜けせず,読みにくい。
【訂正補足2015-04-09】
Nepal NationalはAsianews.itの記事の転載をしているだけでした。上記のように訂正補足します。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/06 at 13:31

Nepalnews.com,新規記事掲載停止

ネパール最古参ネットニュースの Nepalnews.com が,突然,ニュース新規掲載停止を発表した。事実上のサイト運用停止。マーカンタイル社のサンジブ・バンダリ会長は,その理由をこう述べている。

マーカンタイル社は,1994年にマーカンタイル・コミュニケーション社を設立してネットサービスを開始し,2000年にはネパール初のネット・ニュースサイトを開設した。しかし,ネット報道は,マーカンタイル社の主事業ではなく,業績も思わしくないので,この事業は停止することにした。

ライバルのEkantipur(Jan.11)によれば,Nepalnews.comのスタッフ18人は解雇の見込み。彼らは,「ネパール・ジャーナリスト連盟(FNJ)」に訴え,停止撤回を求め交渉するようだが,先行き不明。

Nepalnews.comは,私も当初から大いに利用させていただいた。最近は,トップページの改訂が少なく,他社に比べ見劣りしていたことは事実。どうしたのかなぁ,と不審に思っていたが,まさかサービス停止とは。残念だ。

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/12 at 18:04

カテゴリー: 情報 IT, 文化

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朝日の「おわび」チラシ

朝日新聞が,9月18日朝刊に「おわび」チラシを入れた。危機管理ゼロ。朝日誤報をめぐる問題の本質がまったく見えていない。ジャーナリズム失格。

朝日「おわび」チラシは,おそらく購読急減にあわてた販売店からの強い要求で配布されることになったのだろう。チラシという形式もさることながら,文面も極めて形式的であり,「出しましたよ」の官僚主義的アリバイ文書にすぎない。

しかも「朝日新聞社」名義で出しているにもかかわらず,肝心要の日付が一切ない。日付なしの文書が歴史的検証に耐えうると,朝日新聞は考えているのだろうか? それとも,販売店が勝手に作成し配布した急場しのぎの「わび状」にすぎないのか?

朝日は,チラシで詫びるといった場当たり的で軽薄姑息なことはせず,紙面で堂々と,自社の考えを述べるべきだ。報道に誤報はつきもの。きちんと対応すれば,信頼失墜には陥らない。

そして,「常識」と「良識」の高級紙としての節を曲げることなく,問題の本質に大胆に,勇気を持って鋭く切り込む記事を書く努力をしていただきたい。

「売らんかな」のセンセーショナリズムと,数歩遅れの権力追従と,そして,その場しのぎの形式主義・官僚主義を払拭しないと,朝日新聞は本物のジャーナリズムを求める本物の読者から見放されてしまうだろう。

[参照]朝日の変調と変節

 
ご愛読者のみなさまへ深くおわび申し上げます

謹啓

 初秋の候、朝日新聞のご愛読者のみなさまにおかれましてはご清栄のこととお喜び申し上げます。いつも朝日新聞をお読みいただき、ありがとうございます。心からお礼申し上げます。
 ご存知のように弊社の「慰安婦問題特集」「池上彰さんのコラム『新聞ななめ読み』」「福島第一原発事故に関する吉田調書の記事」をめぐる問題で、たいへんなご心配をおかけするとともに、紙面に対するみなさまの信頼を損ねる結果となり、ご迷惑をおかけいたしました。深くおわびいたします。申し訳ございませんでした。

 このたびの件を反省し、弊社は、まず社内で「信頼回復と再生のための委員会」を立ち上げ、取材・報道上の問題点を早急に点検・検証し、紙面づくりにいかしてまいります。慰安婦報道につきましては社外の有識者による第三者委員会を新設します。過去の記事の作成や訂正に至る経緯、今回の特集記事の妥当性、朝日新聞の記事が国際社会に与えた影響などについて検証いたします。また、吉田調書につきましては、誤った記事がもたらした影響などについて、従来からある弊社第三者機関の「報道と人権委員会」に審理をお願いしました。朝日新聞社外の目でも厳しくご審議をいただき、その結果は随時紙面でお知らせいたします。

 朝日新聞社は、今回の一連の事態を大きな教訓として胸に刻みます。さまざまなご意見やご批判に謙虚に耳を傾け、初心に帰って、みなさまの信頼を回復できるように、社員一丸となって精進してまいります。今後も、紙面と弊社の取り組みを厳しく見守っていただきますよう、切にお願い申し上げます。

 これからますます秋が深まります。どうぞご自愛のうえお過ごし下さいますようお祈り申し上げます。

敬白

朝日新聞社

                                 
140918 ■朝日折り込みチラシ(9月18日)                       

谷川昌幸(C)

       

Written by Tanigawa

2014/09/18 at 10:30

カテゴリー: 文化

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朝日の変調と変節

高級紙・朝日新聞は,育ちがよく,修羅場経験が少なく,危機管理が出来ていないらしい。誤報はジャーナリズムにつきものなのに,従軍慰安婦記事,原発事故吉田調書記事など,疑問が出された自社記事の検証,訂正,謝罪が中途半端で,後手,後手,見るも無惨な有様だ。

朝日変調の兆しは,かなり前から見られた。共通するのは,”売らんかな”の軽薄なセンセーショナリズムだ。たとえば,
 ▼血液型政治家判断、朝日の本性
  血液型性格判断,朝日はB型
  天声人語の血液型性格論
  血液型優生学を粉砕せよ
  朝日の血液型優生学
  カースト差別より危険な血液型差別
 ▼朝日と佐野氏の優生思想:「ハシシタ 奴の本性」の危険性 [注]ハシシタ関連記事は「週刊朝日」
  肉体文学としての「ハシシタ 奴の本性」 
  ゴシップで売る朝日と佐野眞一氏の名前
  佐野氏の執筆責任放棄と朝日の表紙かくし

 ■本性丸出しの週刊誌表紙

また,変節と断罪せざるをえないのは,「社説21」(2007年5月)とそれ以降の一連の自衛隊海外派兵翼賛記事。
 ▼海外派兵を煽る朝日社説
  良心的兵役拒否国家から地球貢献国家へ:朝日の変節
  集団的自衛権: 9条のたが外し,先鞭は朝日
  朝日社説の陸自スーダン派兵論
  スーダン派兵で権益確保:朝日社説の含意
  南スーダン陸自交戦寸前,朝日記事の危険な含意
  自衛艦をソマリア沖に派遣せよ,朝日社説

朝日新聞は,これらの変調・変節などを除けば良識的ジャーナリズムであり,その存在は日本にとって貴重だ。朝日が読者離れで経営危機に陥り破産しても,独立派の良識的言論は毎日新聞が継承するであろうが,たとえそうであっても全国紙一社ではあまりにも心許ない。

朝日には,誤報はきちんと紙面で検証,訂正,謝罪する覚悟を固めた上で,「常識」と「良識」を堅持し,勇気を持って真実に切り込んでいただきたいと願っている。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/09/12 at 12:11

カテゴリー: 文化

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集団的自衛権閣議決定:ネパールの報道(2)

集団的自衛権閣議決定についてのネパールの報道は,AFP,Reuters,BBCなど欧米系配信と,新華社,中国日報など中国系配信がほぼ同量だが,目立つのはやはり派手な中国系配信記事だ。ネパールの人々は,中国メディアあるいは中国系専門家の目を通して日本イメージを形成しつつある,といってよいだろう。

1.劉強「世界平和を守れ」
ネパールの最有力紙「カトマンズ・ポスト」が7月2日,掲載したのは,劉強「世界平和を守れ」。著者のことはまったく知らないが,中国寄りとはいえ,全体としてはバランスのとれたよい記事だ。要旨は以下の通り。
 ▼Liu Qiang,”Maintaining world peace,” Kathmandu Post,2 Jul.2014.The author is director of International Security Research Center, affiliated to PLA International Relations University.

米国は,米日安全保障条約が中国領・釣魚島にも適用されると明言しているので,中日武力衝突となれば,米国参戦となり,これはこの地域全体にとって破滅的な結果をもたらすだろう。

現在の中日関係は,120年前の中日戦争(日清戦争)前夜のようだ。が,当時と現在とでは,状況がまったく異なる。中国は経済的にも軍事的にも強くなり,諸外国とも協力し,地域の安全保障を構築できるようになった。

ところが,日本は,最近,攻撃的な軍事戦略をとり,軍事力を増強する一方,憲法による自衛隊の制約を取り払ってしまった。といっても,平和主義が抑圧されてしまったわけではなく,むしろ支持拡大の兆しさえ見られる。だから,日本国政府は,かつてのような露骨な軍国主義政策をとるわけにもいかないのだ。

米国は,米日安保を唱えつつも,中国との経済関係を強化しており,したがって日本が対中戦争に向かうのを阻止することは間違いない。一線を越えないよう,米国は東京に圧力をかけるであろう。

世界諸国は,積極的安全保障のために協力し,世界平和の実現・維持を図るべきだ。

以上が,劉強氏の記事要旨。イラストでは,米国は日本側にいるが,あいだには断崖がある。なかなか意味深。よい記事だ。

140705 ■カトマンズポスト挿絵

2.中国日報「日本はパンドラの箱を開けた」
もう一つ注目すべきは,ABCテレビ-ネパールの中国日報記事(無署名,7月2日付)。ABCテレビの放送やネット記事がどの程度の影響力を持っているかはよく分からないが,新華社や中国日報など中国メディア配信記事は,他にもあふれているので,一つの事例として読んでみることにする。要旨は以下の通り。
 ▼”Japan opens Pandora’s box”(China Daily),2 Jul.2014,http://www.abctvnepal.com.np/japan-opens-pandoras-box/#.U7SynPl_ssA

安倍内閣は,集団的自衛権禁止解除と専守防衛撤回により憲法第9条の戦争放棄を骨抜きにしてしまった。冒険主義者・安倍とその右傾自民党の政治的大勝。憲法の改正を迂回し,再解釈することによって,これをやってのけたのだ。

これは,日本の国民と国家に大きな危険をもたらすであろう。日本の安全保障は,格段に複雑でかつ困難なものになった。また,安倍の歴史修正主義も,到底受け入れがたいものだ。

安倍は,平和への「積極的」貢献を唱えているが,実際には,「平和と安全の破壊者」であり,近隣で紛争を引き起こしている。

安倍は,日本を普通の軍隊を持つ普通の国にしようとしているが,いままで,なぜそうできなかったのか,その理由を見ようとはしない。安倍らにみられるような,執拗な歴史修正の企みこそが,普通の国になることを日本に許さなかった,そもそもの理由に他ならないのだ。

安倍は,日本国憲法の再解釈をさらに拡大するかもしれない。集団的自衛権閣議決定は,日本,東アジア,そして世界全体に向け,パンドラの箱を開けることになってしまったのである。

以上が中国日報記事要旨。かなり露骨で中国政府寄りだが,基本的には間違ってはいない。

3.「平和」理念の現実性
中国はもともと文の国であり,しかもいまや金と力の国でもある。その中国が,「平和」の旗印を掲げ,世界世論形成に本気で取り組み始めたら,日本など到底太刀打ちできはしない。政治においては,建前は本音以上にものをいう。

日本国民にとっては,ここが頑張りどころ,憲法第9条の非武装・非戦を死守し,「平和」の旗印を中国以上に高く掲げ続けるのが,実際には現実的であり,賢明である。「平和」の理念を堅持する真の現実主義に立つ勇気がもてず,空威張りの「観念的現実主義」に酔いしれ猪突猛進,無思慮に「パンドラの箱」を開けてしまえば,オシマイ。「剣をとる者はみな,剣で滅びる。」

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/05 at 16:22

京都の米軍基地(42):観点曖昧な朝日記事

朝日新聞(大阪版)が,5月10日付朝刊社会面に,「米軍基地 波立つ集落」という大きな記事を掲載している。小見出しは――
 「Xバンドレーダー 京丹後に配備」
 「地元容認 不安の声も」
 「北朝鮮のミサイル警戒」

朝日らしくお上品に「不安の声」を紹介しているが,全体として緊張感がなく,観点がはっきりしない。毎日放送や京都新聞が鋭く追及しているので,仕方なく社会面で――政治面でなく――おつきあいしておいたといったところ。

たしかに,スペース的にはかなり大きい。が,そこからはジャーナリズムらしい明確で鋭い「問題意識」は感じ取れない。だから肝心の「配備の狙い」も,北朝鮮ミサイルを探知し「撃ち落とす」ためなどと,日米当局の説明に沿って無批判に紹介されているにすぎない。

これでは,よくて連休後ネタ切れの穴埋め,悪くすると,地元の「不安の声」を寛容に報道させたという権力のアリバイつくりに加担することにさえなってしまうであろう。

 140510

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/10 at 19:44