ネパール評論 Nepal Review

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軽い日本,重い中国

ネパールにとって,日本はますます軽く,中国はますます重くなってきた。たとえば,先日の,ほぼ同時期の木原誠二外務副大臣(Vice-Minister,外務大臣政務官)の訪ネと,バブラム・バタライUCPN-M幹部の訪中の扱い。

1.木原外務副大臣の訪ネ報道
木原外務副大臣の訪ネ(5月7-8日)は,2012年4月の玄葉外務大臣訪ネ以来の日本要人の訪ネであったが,ネパール各紙の扱いはごく控え目であり,ほとんど注目されなかった。

木原副大臣は,大統領,首相,外務大臣などネパール側要人と会談した。また,日本援助事業を視察し,社会・経済開発支援,民主化支援などの継続も確認した。ところが,新聞は,こう報道している。

「(日本大使館の)浜田氏によれば,副大臣は,今回の訪ネにおいて,いかなる二国間援助の約束も,いかなる事業計画への署名もしないという。」(Himalayan, 6 May)

冷めている。あまり期待はされていない。しかも,各紙は,木原副大臣が,ネパールに対し,次期国連安保理非常任理事国選挙において日本を支持することを要請したとも伝えている。つまり,木原副大臣の訪ネは安保理選挙運動のためだ,と見透かされているのだ。

この情況では,ネパールの1票は期待できないのではないか? かつて(2000年8月),日本の安保理入りへの支持を得るため森首相がわざわざ訪ネしたにもかかわらず,ネパールは日本に1票を入れず,中国に恩を売った。ましてや今回は,中国がちょっと動けば,日本への1票は期待薄であろう。

ネパールは,もはや日本をそれほど必要とはしていない。

2.バブラム・バタライUCPN-M幹部の訪中
対照的に,中ネ関係はますます重要となりつつある。両国要人の相互訪問も日常化している。たとえば,木原副大臣訪ネと前後して,バブラム・バタライUCPN-M幹部が訪中した。

バタライ氏は,今回の党大会(5月7日閉会)で中央委員会から離脱し,現在は無役。ところが,その無役のバタライ氏が一私人として家族を連れ訪中すると,中国政府は,要人の公式訪問と同等以上の処遇をもって応えた。

バタライ氏の今回の訪中は,実に興味深いものだ。5月7日,ラサ経由で成都着。成都には,数名の中国共産党要人がわざわざ北京からやってきて,バタライ氏と会談した。共産党四川省書記や成都市長も彼と会談した。

翌8日,バタライ氏はラサに戻り,中国政府要人と会談し,シガツェに移り,そこで1泊。さらに次は,中国政府の手配により,チベット最西部のマナサロワールに行っている(詳細不明)。

この間の一連の会談において,中国側はバタライ氏に対し,チベット問題での協力を要請した。これに対し,バタライ氏は中国側にこう請した。

「ネパールは,中印間の強靱な架け橋となりうる。チベット鉄道をインドにまで延伸し,南北道路をコシ川,ガンダキ川,カルナリ川沿いに建設すべきだ。また,中国はインドと協力してネパールの水力発電事業を推進すべきだ。」(Republica, 8 May)

バタライ氏の発言は,中国に対する要請ではあるが,これは中国側のネパールに対する要請でもある。ネ中両国の利害は,大きく見ると,いまのところ多くの点で一致している。

この観点から,今回のバタライ氏の旅程は実に興味深い。これはどう見ても,単なる私的旅行ではない。政治臭プンプンの,生臭い政治目的旅行といってよいであろう。

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 ■=カトマンズ,A=ラサ,B=成都,C=シガツェ,D=マナサロワール(Google)

*Republica,7-8 May; Ekantipur,8 May,; Himalayan, 6-7 May; Nepalnews.com, 8 May

谷川昌幸(C)

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2014/05/12 at 09:02

チベット難民に警告,ゴータム内相

ゴータム副首相兼内相は3月22日(土),「全国人権基金(HURFON)」年次大会において,チベット難民に対し,反中国活動をしないよう強く警告した(Nepalnews, 22 Mar)。

この3月10日は「チベット蜂起」55周年記念日であった。ネパール警察は,約900人の制服・私服警官を動員し,ボダナートなど重点地区を中心に警戒してきた。焼身抗議に備え,毛布と消化器を準備しているという。

それでも,3月10日には,小規模ながら,「自由チベット」デモが行われた。拘束されたのは,中国大使館付近5人,スワヤンブー付近4人,ポカラ1人など,10数人。チベット難民の抗議活動は,例年よりも少なかった(Republica & Ekantipur, 10 Mar)。

140324 ■中ネ航空協定改定:カトマンズ2014年2月24日(中国大使館HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/24 at 14:11

カテゴリー: 外交, 中国, 人権

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青蔵鉄道:シガツェ10月開通,ネパール延伸へ

1.新華社の報道
中国は青蔵鉄道の建設を進め,2006年7月,上海-ラサ間(1956km)を開通させた。さらにラサから先,シガツェまでの延伸が,この10月までに完成し,営業を開始するという(新華社3月6日)。

ラサ-シガツェ間は253km,高所で難工事であったはずなのに,2010年着工からわずか4年で完成,中国の強い意思と,圧倒的な底力を見せつけた。ラサ-シガツェ間の列車は120km/hで運行され,2時間で着く。

シガツェは,パンチェン・ラマが住むタシルンポ寺があり,チベット仏教の聖地の一つ。そこに青蔵鉄道が乗り入れる。新華社記事によれば,タシルンポ寺のあるラマ僧はこう語っている。「信心深いチベット人すべての願いは,ラサとシガツェの仏様に礼拝することだ。この鉄道は,その巡礼の旅を安全で快適なものにしてくれる。」

中国は,すでにラサ博物館に次ぐ規模の「シガツェ博物館」を開館(2010年6月)し,また「シガツェ平和空港」も開港(2010年10月)している。さらにそれらに加え,青蔵鉄道が10月までに完成する。新華社記事は,チベットの発展に寄与するとして,それらを高く評価している。

140307b ■A=ラサ,B=シガツェ,C=カトマンズ(Google)

140307c140307e
■上海-チベット鉄道/タシルンポ寺(中国チベット鉄道旅行HP)

2.インド・メディアの報道
この青蔵鉄道延伸は,インドでも主要メディアが大きく報道した。むろん,新華社とは対照的に,中国進出への警戒が記事の基調となっている。

「中国は,シッキムのインド国境近くのシガツェまでチベット鉄道路線を延伸したが,これは,兵員と武器を遠隔ヒマラヤ地域で容易に移動させる戦略的能力を,中国軍に与えることになるであろう。」(The Times of India, 6 Mar)

「中国新華社ニュースは,上海-チベット鉄道がチベット・シガツェのパンチェン・ラマの本拠に達することを,その政治的意義を力説しつつ,報道した。」(The Times of India, 6 Mar)

「中国は,チベットで交通インフラの拡充を進めてきたが,これは,中国軍の国境への移動を容易とし,北京を戦略的に有利にするものではないかという懸念が,インドでは高まっている。」(The Times of India, 6 Mar)

「鉄道延伸発表は,中国政府支援の第11代パンチェン・ラマたるギェンツェン・ノルブが全人代開会式に出席しているとき,行われた。・・・・ノルブの選出には疑義が出された。・・・・ダライ・ラマが承認し選出された[先代の]ゲンドゥン・チューキ・ニマは,選出後,行方不明となった。中国政府が拘束しているとみられている。」(The Hindu, 6 Mar)

「中国は,鉄道をシガツェからネパール国境まで延伸する予定。さらに中国側は,建設費を援助し鉄道をネパール国内にまで延伸しようと考えているが,これまでのところ,カトマンズ[ネパール政府]は,インドに配慮し,中国提案には慎重な態度をとっている。」(The Hindu, 6 Mar)

このようにインド側は中国の鉄路南下を警戒しているのだが,しかし,インド側はインド側で鉄路を南方からネパール国内に着々と伸ばしている。インドからすれば,それとこれは話が別らしい。というのも,インドはネパールを勢力圏内と考えており,そこへの中国の進出は侵出であり,インドの脅威に他ならないと感じているからである。
 ▼中国は軍事援助,インドは鉄道建設
 ▼青蔵鉄道のルンビニ延伸計画

3.ヤムイモは生き残れるか
ネパールは,建国以来,「二巨石間のヤムイモ(Yam between Two Boulders)」と呼ばれてきた。印中二大国に挟まれ,それを宿命として引き受け,生存を図らざるをえない。

一方におけるグローバル化と他方における中国超大国化。この地政学的激変の中,ネパールは二つの巨石に押しつぶされ,磨り潰されて吸収されてしまうことなく,一つの独立国家として生き残ることが出来るのであろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/07 at 17:58

米のネパール援助削減と中国の援助戦略

アメリカ国務省発表によれば,米国の対ネパール予算は2015年度も削減される(Himalayan, 5 Mar)。
  2012年度: 87.749百万ドル
  2013年度: 87.079
  2014年度: 79.700
  2015年度: 76.630

140306b ■援助発表(米大使館HP)

対照的に,中国は,はっきりした数字は分からないが,ネパール向け援助や投資を拡大している。
 ▼中国は軍事援助,インドは鉄道建設
 ▼中ネ軍事協力,さらに強化
 ▼印中の対ネ軍事援助合戦

たとえば,2013年6月署名の協定によれば,中国は次のような援助を行う(Zeenews,25 Jun. 2013)。
 (1)武装警察(準軍隊)学校建設:36億ルピー
 (2)カトマンズ環状道路改良:40億ルピー
 (3)制憲議会選挙(選挙管理委員会)支援:1億5千万ルピー
なかなかバランスのとれた目の付け所のよい援助だ。

このような中国のネパール進出は,ネパールの地政学的位置を変えつつある。サランシュ・シーガルは,中国の対ネパール政策の戦略性に注目する。(Saransh Sehgal,”China Expands into Himalayan Neighbor Nepal,” Defense Review Asia, Dec ’13-Jan ’14, 2013

彼によれば,中国の対ネ直接投資は2007~2011年で倍増した。中国の関心は幅広く,軍事援助,道路建設,通信網整備,インフラ建設,食糧援助,水力発電などから文化の分野にまで及んでいる。孔子学院は各地に開設され,中国語授業はすでに70校以上で開始された。ルンビニ総合開発も計画されている。

そうした援助の中でも彼が特に注目するのが,チベット・ネパール間の道路と鉄道の建設。これらが開通すれば,ネパールの地政学的位置は激変するという。

中国の急速な超大国化とともに,アジアのパワーバランスは,特に周辺地域で大きく変化しつつある。この変化への対応は,日本にとっても難しいが,それ以上にネパールにとっては難しい課題となるであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/06 at 20:00

焼身抗議死報道の自己規制

ボダナートの仏塔の側で8月6日,チベット僧カルマ・ゲトゥン・ギャンツォさん(39歳)が焼身抗議死(焼身自殺)を遂げた。ボダナートで3人目。(生死不明を含め焼身抗議総数126人)

カルマさんは,チベットで僧侶となったが,下半身麻痺となり,政府圧力により僧院追放,各地を巡礼し,ネパールを経てダラムサラに亡命していた(中原一博「ダラムサラ通信」8月9日参照)。

周知のように,ネパール政府は,「一つの中国」政策を支持し,ネパール国土を反中国活動に使用させないと繰り返し約束している。いまでは「一つの中国」を宣言してからでないと,中国側とのいかなる会合も始まらない有様だ。

ネパール政府は,こうした反中国活動取り締まり要求に応え,ボダナートなど,チベット系住民の多い地区に警官多数を配備し,さらにハイテク監視カメラ34台を設置した。

主たる監視対象はチベット系だろうが,カメラに人種差別なし。日本人でも挙動不審であれば,マークされる。当然,某国にも筒抜けだろう。ヒッピーのよき時代は今や昔。ボダナートで某国に監視され,アメリカンクラブ付近で某々国に監視され・・・・。

自由チベット運動に対しては,こうしたハードな取り締まりに加え,最近ではソフトな規制も始めているようだ。各メディア(8-9日)の記事タイトルはこうなっている。

AP「チベット僧,中国に抗議し焼身自殺」
ekantipur「僧,焼身自殺」
nepalnews.com「チベット人,ボーダで焼身自殺」
Nepali Times「また焼身自殺」
Himalayan「チベット僧,自分に火をつけ死亡」
新華社(英文)「ネパールの身元不明焼身自殺者は身体障害者だった:地元住民」

APと新華社が両極にあり,他のネパール・メディアがその中間に位置する。ネパール・メディアは,記事内容も,ほとんどが警察発表通り(後日,多少補足修正された)。自己規制しているのだろう。

興味深いのが,新華社。記事はやたら詳しく,しかも一定の方向性をもっている。カルマさんは,焼身のため200ルピーでバターランプを買った(他メディアでは100-150ルピー)。動機については,マノジ警察DSPの説明――「政治的動機か否か,また自殺か焼身抗議か,これから調査したい」――をそのまま掲載している。タイトルで,身体障害を苦に自殺したと暗示し,それをこのマノジ警察SDP説明で補強しているのだ。

このところ中国の情報収集・発信能力の強化は,目を見張るばかりだ。ネパールでも,すでにネパールのメディア自身が「新華社によれば・・・・」などと,中国情報源を利用し始めている。日本でも,中国メディアを介したネパール情報が急増し始めた。

さすが中国は大国,要所を押さえ,勢力拡大を図っている。かつて宗教は民衆のアヘンだったが,現代では情報こそが,いわば「民衆のアヘン」。情報を制するものが,世界を制する。(尖閣も竹島も,情報報道戦では,日本劣勢。内弁慶日本の悲哀を感じざるを得ない。)

130810
 ■新華社日本語版(2013.5.27)。元首相のプラチャンダ,MK・ネパール,B・バタライが「中国夢」絶賛

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/08/10 at 10:00

中ネ軍事協力,さらに強化

人民日報(7月24日)など各紙報道によれば,ネパール国軍ラナ総監は,1週間の公式訪問において,中国人民解放軍の房峰輝総参謀長(中央軍事委員会委員)らと会談し,両国間の軍事協力促進で合意した。

中国はすでに2011年,770万ドルの対ネ軍事援助を約束。今回は,その着実な実行とともに,両国軍幹部の交流や将兵教育訓練協力の促進が約束された。

ネパール側は,「一つの中国」支持と,ネパールにおける「反中国活動」取締りを約束し,中国側はこれを高く評価した。

これを見ても分かるように,中国は外交巧者。最近の日本も,軍事ではなく外交で中国に負けていると反省すべきだろう。

130728
 ■米中「接近」(PLA Daily)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/07/28 at 15:26

カテゴリー: 軍事, 外交, 中国

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中国の対ネパール政策:消極的関与から積極的関与へ

1.対ネパール政策の転換
中国は,この数年で,対ネパール政策を大きく転換した。以前は,ネルー・周恩来合意により,ネパールはインド勢力圏内とされ,中国はチベットに重大な影響がないかぎりネパールに積極的には関与してこなかった。必要最低限度の消極的関与といってもよいだろう。

ところが,マオイスト人民戦争終結(2006年)の前後から,中国は対ネパール政策を転換,積極的に関与し,影響力の拡大を図り始めた。

 130530a ■中国大使館HP

2.駐ネパール中国大使の交代
中国の対ネ政策の転換は,駐ネ中国大使の交代からも見て取れる。

2008年11月着任の邱国洪大使(大阪総領事から転任)は,dnaindia(Mar18)によれば,ネパール国内のチベット解放運動への対応がまずく,任期途中で本国へ召還されてしまった。これに対し,2011年6月着任の楊厚蘭大使はチベット解放運動対策を評価され,中国にとってはより重要なミャンマーへ大使として栄転したという。

その後任として2013年2月に着任した現大使,呉春太(Wu Chuntai)氏は,その経歴からして,注目される。呉大使は,外務省に入り,トルコ,北アイルランド,香港勤務を経て外国安全局副局長(Deputy Director General of the Department of External Security)となる。主に情報対策,在外中国人保護,そしてチベット,新疆,台湾の安全保障を担当してきた。

この呉春太氏の大使任命は,ネパールにおけるチベット解放運動対策強化のためと見てよいであろう。

 130530 ■呉春太大使(中国大使館HP)

3.チベット解放運動取締り
呉大使は,着任後すぐ(3月11日),ヤダブ大統領と会見し,チベット解放運動規制の言質をとりつけた。

新華社(3月12日)によれば,ヤダブ大統領は「中国援助の継続を期待している」と述べ,「一つの中国政策を支持すると繰り返し,ネパール・中国国境の警備に万全を図る」と約束した。これに対し呉大使は,「われわれの重大国益へのネパールの支持を中国は高く評価し感謝する」と応えた。着任早々,大成果である。

3月15日には,ギミレ副首相(兼内相・外相)を訪問。ギミレ副首相は「われわれは一つの中国政策を支持しており,隣国への反対運動にわが国を利用させることはない」と呉大使に約束した。

プラチャンダUCPN-M議長とは4月18日に会見し,次のような発言を引き出した。「カトマンズのチベット難民のチベット解放運動を規制し,反中国運動をやめさせる。・・・・両国の安定と国民統合を,宗教の自由や人権の名をもって攻撃させはしない」(asianews, David Wood, contactmagazine, Apr23)。

4.親中派の育成
中国の積極的関与政策の遂行には,政官財学など,各界各層での親中国派の育成が不可欠となる。この戦略に沿って,呉大使は着任早々,精力的にネパール要人と接触している。一部紹介する。
 3月11日:ヤダブ大統領に信任状を提出し,会談 / MK・シュレスタ前副首相兼外相(UCPN副議長)と会談
 3月12日:プラチャンダUCPN議長と会談
 3月15日:ギミレ外相と会談 / カナルUML議長と会談
 3月28日:ネパール産業会議(CNI)出席
 3月29日:RC・ポウデルNC副党首と会談
 4月 3日:ネパール商工会議所(FNCCI)訪問
 4月11日:MK・ネパールUML幹部と会談
 4月12日:中国教育展出席。M・ポウデル教育大臣同席 / 中国研究センター訪問
 4月15日:カトマンズ大学孔子学院訪問
 4月22日:スシル・コイララNC議長と会談

他方,ネパール要人の中国招待も相次いでいる。
 4月14-20日:プラチャンダUCPN議長。習主席と会談(4月18日)
 6月4~9日頃:GS・ラナ軍総監(CoAS)
 6月第2週:カナルUML議長
 日程未定:スシル・コイララNC議長 / バブラム・バタライ前首相(UCPN副議長) / ヒシラ・ヤミUCPN中央委員

中国は,制憲議会選挙前にネパール要人を片っ端から招待し,親中派を育成し,選挙後の新体制への影響力拡大を狙っているのだ。

また,留学生受け入れも増大している。新華社(5月12日)によると,2012年度の中国受け入れ留学生32万人,そのうちネパール人は3千人(中国政府奨学生100人)だという。

中国政府は,ネパール人留学生をさらに増やすため,中国教育展なども開催している。この5月12日の教育展には,中国13大学が参加し,開会式には呉大使とM・ポウデル教育大臣が出席した。

中国政府は,カトマンズ大学に孔子学院を開設し,また中国語教師を多数派遣するなど,明確な戦略に基づき,教育文化外交を展開している。その結果,ネパール人学生の関心は,これまでのインド留学から中国留学へとシフトし始めたという(Rajesh Joshi, BBC Asia, May8)。

5.開発援助の2目的
中国は,すでにネパール開発援助を激増させている。
 ・西セティ(750MW)事業,2012年契約
 ・上部タマコシ事業(456MW)
 ・アルニコ道路(カトマンズ―コダリ)改良事業
 ・Shaphrubesi-Kerng改良事業(10年で完成予定)
 ・他に,ポカラ空港,カトマンズ環状道路,カトマンズ―Chakrapath道路など,進行中,計画中のものがいくつもある。

こうした対ネ開発援助の最大の目的は,いうまでもなくチベット対策である。The Times of India(May12)によれば,中国大使館員はフムラ,ムスタンなど,北部国境地域を定期的に訪れ,治安調査をし,地方当局との関係強化を図っている。北部15郡への援助を増やし,特に警察署の改善・強化を支援しているという。

対ネ開発援助のもう一つの狙いは,南アジアへの南下の通路とすること。このことは,中国がチベット―ネパール間の道路・鉄道建設に繰り返し言及していることを見ても明らかだ。たとえば,呉大使もカナルUML議長との会談の際(3月15日),鉄道のネパール延伸を打診している。

6.ネパールの4Sとプラチャンダ
こうした中国のネパール関与において重要な役割を果たしていると思われるのが,プラチャンダUCPN議長だ。

呉大使は,ネパールの4Sをあちこちで称賛している。Smile(笑顔),Sun(美しい自然),Sagarmatha(エベレスト),Siddhartha Gautam(仏陀)。(サガルマータを省き,3Sとされるときもある。)孔子学院では,「ネパール=中国観光交流計画」に触れ,「中国政府はネパールの観光インフラ整備に関心を持っている」とし,特にポカラとルンビニの観光開発の重要性を指摘した。PATA Nepalは,2015年の中国人観光客を21万5千人と見込んでいる。

中国のネパール観光開発は本気であり,もしそうだとすると,プラチャンダの「ルンビニ大開発」も単なるホラ話ではないことになる。ルンビニ国際空港が建設され,鉄道でラサ―カトマンズ―ルンビニが直結されることになるかもしれない。

プラチャンダは,アジア太平洋交流協力基金(APECF)の副議長(副代表)だ。議長(代表)のXiao Wunan氏は,習主席に近い人物といわれている。ルンビニ大開発には,仏教徒を取り込み,チベット解放運動に対抗させる狙いも見え隠れする。

Dnaindia(May18)は,こう書いている。「特にプラチャンダUCPN-M議長の政治力増大とともに,中国の影響力はネパール中に急拡大してきた。」

――以上の議論は,インド・西洋の情報源もあり,偏りがあるかもしれないが,それでも中国の対ネパール政策が積極的関与へと変化してきたことはまず間違いないと見てよいであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/05/30 at 23:50