ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Posts Tagged ‘ネルー

ネルーを訴えよ,ロイの反撃

アルンダティ・ロイは,セミナー”Azadi–the Only Way”(Delhi, 21 Oct 2010)において,「カシミールがインドの本来的部分であったことは一度もない」「カシミールはインドからのazaadi(自由)が必要だ」と語ったため,反インド扇動罪(sedition)容疑で訴えられている。この発言は人々の間の敵意を煽っているというのだ。

ロイ発言の詳細な内容は,後日紹介するとして,ロイの魅力は何といっても,そのあふれるばかりの機知とユーモアだ。セミナーで発言を求められたとき,聴衆に向かってロイはこう話し始めた。

ロイ: 皆さん,靴を投げたい人は,いますぐ投げて下さいネ・・・・・
会場から: 私たちはもっと上品だよ・・・・・等々
ロイ: あぁ,それなら結構,安心しました。お上品も時によりけれどもですけれどもネ。え~と,それでは・・・・・

「靴投げ」は,もちろん侵略地イラクの記者会見で靴を投げつけられたブッシュ元大統領を皮肉ったもので,これによりロイはこれからの話がインド体制派の「靴投げ」を招きかねない「過激な」ものになることを予告したのだ。うまい。

また,このAzadiスピーチが予想通り体制派からの「靴投げ」を招き,デリー裁判所がFIR受理を命令すると,ロイは「ネルーもまた訴えるべきだ」(Outlook India, 28 Nov)を発表し,ロイとまったく同じことを,より過激な表現で繰り返し明言したネルーの言葉を抜粋し,反撃した。

ネルーの発言
「争いのある領土や州の帰属は人々の意思により決定されるべきであり,われらはこの立場を堅持する。」(31 Oct 1947)
「カシミールのことはそこの人々が決定すべきだ,とわれわれは宣言した。」(2 Nov 1947)
「カシミール帰属は,住民投票で決定されるべきだ,と私は繰り返し表明してきた。」(21 Nov 1947)
他に同趣旨の発言11例を引用。

攻撃に対して攻撃者側に反撃させる。実にうまい。まめだ。こんな魅力的な「過激派」を敵に回して闘うのは,体制派には大変だろう。インド進出(侵出)に躍起の日本企業が,再びロイの厳しい批判の俎上にのせられるのも時間の問題である。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/12/08 at 11:09

カテゴリー: インド, 民族

Tagged with , , ,

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。