ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(18)

6.第15回ハンスト
(1)なぜジュムラでハンストか?(前出)

(2)決死のハンスト(i)
ゴビンダ医師はハンストのためジュムラに行ったが,彼の場合,ハンストはハンストでもそれは,これまでと同様,死を覚悟した「決死のハンスト・死のハンスト(hunger strike unto death, fast unto death)」であった。

ハンストにはいくつかの方法があるが,大別すれば,おおよそ次のように区分できるであろう。
・期間:決死(unto death),無期限,期間限定
・飲食:完全絶食,水のみ,水と食塩,水・食塩・栄養液等
・治療:完全拒否,酸素吸入のみ,ブドウ糖液等の投与,救命治療全般

ゴビンダ医師の今回のハンストは,どのような方法で行われたのか? この点については,これまでと同様,あまり詳細には報じられていないが,期間が無期限の「決死のハンスト」であったことは明白である。飲食は,水と食塩のみ。治療は,酸素吸入は受けていたが,ブドウ糖液の注射は拒否した。非常に厳しい過酷なハンストといってよいだろう。

そのためハンストに入ると,ゴビンダ医師の体調は急激に悪化した。体重減少,血圧低下,血糖値低下,白血球減少,血中マグネシウム低下,筋肉けいれん,嘔吐感,胸の痛み,心室性期外収縮,立ち上がり困難,発声困難,昏睡,そして心停止の恐れ・・・・。

この経過がメディアで刻々と伝えられると,ゴビンダ支持が全国に拡大,政府はついに7月26日,ゴビンダ医師の要求をほぼ受け入れ,彼はハンストを終了,一歩手前のところで死をかろうじて免れた(経過は後述)。

■ゴビンダ医師ハンスト(ゴビンダ教授連帯FB,2018年7月5日)

*1 Devendra Basnet/DB Budha, “Dr KC’s condition deteriorating,” Republica, July 9, 2018
*2 Devendra Basnet/DB Budha, “Dr KC refuses medication,” Republica, July 10, 2018
*3 Devendra Basnet/DB Budha, “Dr KC losing consciousness,” Republica, July 14, 2018
*4 Devendra Basnet/DB Budha, “Docs prepare to place Dr KC on ventilator,” Republica, July 16, 2018
*5 “Dr KC diagnosed with hypocalcemia,” Republica July 17, 2018
*6 “Dr KC agrees to checkup at mother’s request,” Republica, July 24, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/02/09 at 16:19

ゴビンダ医師のハンスト闘争(17)

6.第15回ハンスト
(1)なぜジュムラでハンストか?
ゴビンダ・KC医師(博士,TU教授)は,オリ内閣に対し,政府提出「医学教育法案」を撤回させ,「医学教育令2017年」の継承発展たる「医学教育法」を制定させるため,カルナリ州のジュムラ(人口約10万人)に行き,そこでハンストを決行することにした。15回目のハンスト。

それにしてもなぜ,ハンストのため,わざわざ遠隔地ジュムラまで行かなければならないのか? ゴビンダ医師は,こう説明している(“Dr KC to start 15th fast unto death from today, in Jumla,” Republica, 29 Jun 2018)。

「私は次のハンストをジュムラで開始することにしたが,それは私の闘いがつねに庶民のためのものだからである。地方の人々は基礎医療さえ保障されていないのに,与党有力者らは都市部を優先し,医療の営利事業化により巨利をむさぼろうとしている。」

「カルナリ保健科学アカデミー(KAHS)は2007年開設だが,医学士(MBBS)課程はまだ開設されていない(注)。共産党幹部は選挙の時は票のため人々に耳触りの良いことをいうが,選挙が終われば,人々のことなどどうでもよく,彼等との約束などきれいさっぱり忘れてしまった。だからこそ,私は政府が無視してきたここ,カルナリ[のジュムラ]において,人々と共にありたいと思うのだ。」
(注)KAHSは『暫定憲法2007年』のもとで制憲議会が開設。現在の根拠法はKarnali Academy of Health Sciences Act, 2068 (2011)


■KAHS(FBより)/カルナリ州ジュムラ郡

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/01/25 at 16:44

ゴビンダ医師のハンスト闘争(1)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ(1)
ゴビンダ・KC医師(博士,TU教授)が,ネパール保健医療の抜本的改革を求め,15回目のハンストを行った。ハンストは,6月30日カルナリ州ジュムラで開始され,7月26日強制移送されたカトマンズで終了した。27日間にも及ぶゴビンダ医師最長のハンスト。
 *ハンスト(ハンガーストライキ):要求実現のための絶食による非暴力的闘争。

この生命を賭した壮絶な決死のハンストは,保健医療分野の人々を中心に共感を呼び起こし,ゴビンダ支持運動が拡大,結局,オリ政府をしてゴビンダ医師要求をほぼ全面的に受け入れさせることとなった。約束の実行はまだだが,そしてネパールでは約束実行の反故は珍しくないとはいえ,それでも確固たる信念に基づくハンスト闘争の現代における有効性を,ゴビンダ医師のハンストは十二分に実証したといってもよいであろう。

ゴビンダ医師のハンストは,悪政に対し率先して自ら一人敢然と立ち,正義実現のため公然と敢行される非暴力の政治闘争であった。それは,言い換えるなら,ガンジー(ガンディー)の唱えた「サティヤグラハ(सत्याग्रह, 真理要求,真理把持)」に他ならない。ガンジーはネパールではなぜかあまり人気がないが,今回の劇的勝利により,ゴビンダ医師を「ネパールのガンジー」と呼んだり,そのハンストを「サティヤグラハ」として評価する人も出始めた。ゴビンダ医師のハンストは,国内に限定された地域的政治闘争の一つとしてだけではなく,普遍的意義をも持ちうる「サティヤグラハ」としても注目され始めたのである。

■ゴビンダ医師支持FB

谷川昌幸(C)