ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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キリスト教攻撃激化と規制強化(5)

4.キリスト教布教に対する批判
ネパールのキリスト教に関する記事は,英語メディアでは,圧倒的にキリスト教会側からのものが多い。また,欧米近現代の人権・民主主義は,先述のようにキリスト教と不可分の関係にあるので,人権・民主主義推進の立場からの発言も,多かれ少なかれキリスト教に好意的なものが多い。したがってネパールの宗教問題の現状をより公平にみるには,キリスト教批判の側の言い分も見ておく必要がある。

ネパールにおけるキリスト教批判に共通するのは,一言でいえば,キリスト教は貧困な途上国ネパールにおいて,圧倒的に強大な欧米先進国の政治力・経済力をバックに,「宗教の自由」を「強者の権利」として行使している,という主張である。キリスト教は,金銭や物品,医療,教育,海外留学など様々な利益や権益を与えることにより,ネパールの人々を引き寄せて釣り上げ(lure),キリスト教に改宗させている,という批判である。これは,ことあるごとに繰り返されるキリスト教非難の常套句だが,根拠がないこともなく,ネパールでは相当の説得力を持っている。このことについては,これまでに幾度か言及したことがあるので,それらを参照されたい。
 参照:キリスト教とネパール政治 

ここでは,一つだけ,5月7日付「リパブリカ」掲載の長文署名記事,ディベンドラ・バスネット「『熱心な』キリスト教宣教師の標的とされた人々,声を上げる」(*1)を紹介する。著者はダン郡在住のジャーナリスト。にわかには信じがたい部分もあるが,大手メディア掲載記事だし,地方ではこんなことでさえあるのかもしれない。
 *1 Devendra Basnet, “Targets of ‘zealous’ Christian missionaries speak up,” Republica, 7 May 2018

<以下,記事要旨>
ダン郡の人々によれば,キリスト教への強制改宗がこの十年ほど前から激化してきた。“主イエス”の名に恥ずべきようなことですら,行われている。たとえば,ラマヒ住民ガンガ・カドカの場合。彼女は,こう証言している。

「自宅を掃除し,外で休んでいるときでした。女の人がやってきて,目の前で何ら躊躇することなく軒下の土間に小便をしたのです。家にも軒下の土間にも牛糞を塗ったところでした。そこに小便をされたので,あまりのことにびっくりし,深く傷つけられました。」
 (注)伝統的民家では,神聖な牛の糞を粘土に混ぜ,壁や床に塗る。牛糞には殺菌・防虫効果もあるとされる。

ガンガはヒンズー教徒であり,軒下に小便をしたのはネパール人キリスト教徒で,外国人(性別不明)を一人連れてきていた。驚いたガンガが小便をやめさせようとすると,「二人は,この小便は神の僕の一人から出たものだから,これでこの家は浄化された,と私に言いました」。

ガンガは怒り,近くの教会に行き牧師に抗議したが,牧師は謝りはしたものの,穏便に済ませてほしいといっただけだった。

どうして,このようなことになったのか? ガンガ・カドカには,スニルという名の末男がいる。4年前,彼はヒンズー教徒女性と結婚したが,その嫁は,結婚後,外国人キリスト教徒の執拗な勧誘によりキリスト教に改宗してしまった。改宗後,嫁は夫のスニルも改宗するよう迫ったため,夫婦の間でいさかいが絶えなくなった。2017年,スニルは事故で大怪我をしたとして入院したが,ガンガによれば,本当は改宗でもめ,妻がスニルを殴ったのだという。警察もそれを認め妻を逮捕したが,幼い子供がいるので,ガンガが頼み込み,嫁を釈放してもらった。ところが,その後もスニルは嫁といさかいが絶えず,とうとう根負けしたのか,彼も改宗してしまった。そのため,ガンガはスニルと会うことを断念した。「死ぬまで顔も見たくない,と息子には告げました。」ガンガとキリスト教の関係は,軒下に小便をされるときまでに,このような状態になっていたのである。
<以上,記事要旨>

■キリスト教関係書籍もかなり出版されている。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/08/11 at 17:42

キリスト教攻撃激化と規制強化(3)

2.教会施設の破壊攻撃
この4月以降,教会の建物への爆弾投入や放火が,前掲の表記載のように,頻発している。これらの教会攻撃で,いまのところ人的被害はないが,建物や備品には相当の損害が出ている。警察は,そのいくつかについて,ビプラブ(NB・チャンド)派共産党の犯行と疑っているが,当局は捜査に消極的であり,解明は進んでいない。(*2)

一方,教会側は,攻撃が連続的で全国に及んでいることから,ヒンズー右派によるものとみている。ヒンズー右派はいま「キリスト教改宗を警戒せよ」キャンペーンを展開しており,これが支持を拡大している。「ネパールの教会に対するこれらの攻撃は散発的なものではなく,キリスト教社会に対する計画的・組織的な攻撃に他ならないのに,政府は何も対応しようとはしない。」(BP・カナル牧師)(*3)

そうした中,著名な教会指導者が白昼,襲撃される事件が起きた。7月31日付「モーニングスター・ニューズ」記事によれば,7月19日午後2時頃,カトマンズの目抜き通りの喫茶店で,「ネパール全国クリスチャン連盟(FNCN)」書記長のサガル・バイズ牧師(ブダニルカンタ「グレースビクトリ教会」主任牧師)が男数人に突然襲撃され,滅多打ちにされた。彼らは,「お前の教会も他の教会もすべて爆破し,お前ら教会指導者をみな殺してやる」と言い残し,逃走した。

この襲撃は,記事によれば,この数か月のキリスト教への敵意の高まりの中で発生した。バイズ牧師は,「ネパールでは,毎日のように,こうした事件が起きている」にもかかわらず,政府がキリスト教徒の権利を守るに必要な対策をとらないため,ヒンズー右派諸組織がそのスキを突きキリスト教攻撃を激化させている,と見ている。(*8)

■カトマンズの主要教会(Google, 2018/08/07)


■FNCN FB(2018/08/08)/バイズ牧師襲撃(*8)

*2 “Four more churches attacked in Nepal,” Sight(World Watch Monitor), 17 May 2018
*3 “6 Christians Arrested, 4 Churches Attacked, Bombed in Nepal,” Christian Today, 7 June 2018
*8 “Assault on Christian Leader in Nepal Reflects Growing Threat,” Morning Star News, 31 July 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/08/08 at 17:02

カテゴリー: 宗教, 人権

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キリスト教攻撃激化と規制強化(1)

ネパールでは,ネパール共産党(NCP)政権成立以後,特に3月以降,キリスト教に対する攻撃が激化し,規制も強化されてきた。教会施設の破壊,信者の逮捕や国外退去処分などが,あいついでいる。

ネパールの宗教別人口は,国勢調査(2011年)によればヒンズー(ヒンドゥー)教81.3%,仏教9%,イスラム教4.4%,キリスト教1.4%,その他3.9%であり,キリスト教はごくわずかの少数派だが,これは意図的過小評価であり,実際には3~7%もいるとさえいわれている。いずれが正しいか,にわかには判断できないが,いずれにせよキリスト教徒がネパールにおいて急増し,教会関係者の間ではネパールが「世界でキリスト教徒増加率の最も高い国」の一つとして注目されていることは事実である。

この春以降のキリスト教規制強化や攻撃激化が,諸状況を考え合わせるなら,キリスト教徒のこの急増と関係していると見て,まず間違いないであろう。そこで,以下,報道記事に基づき,この数か月のキリスト教規制強化・攻撃激化につき概略を紹介する。なお,キリスト教系メディアが多かれ少なかれ教会側から報道していることは,言うまでもない。また,参考のため,ヒンズー社会の側からのキリスト教布教活動批判記事の要旨も付記しておく。

 ▼キリスト教取締りと教会攻撃
03.22 女性キリスト教徒,宗教感情毀損容疑で逮捕。
04.28 カトリック教会(バンケ郡)放火。
04.30 改宗強要容疑でキリスト教徒2名逮捕(チトワン郡)。
05.04 キリスト教徒を自宅で逮捕。容疑不明。
05.08 女性キリスト教徒3名,買収による改宗勧誘容疑で逮捕。
05.09 聖歌を路上で歌ったキリスト教徒逮捕。
05.10 ヘブロン教会(パンチタル郡)放火。
05.10 エマニュエル教会(ドティ郡)放火。
05.11 エマニュエル教会(カンチャンプル郡)放火。
05.13 マヒマ教会(カイラリ郡),爆破。
05.19 キリスト教系孤児院閉鎖,事務長逮捕。
05.19 キリスト教徒2名,宗教感情毀損容疑で逮捕(モラン郡)。
06.15 女性キリスト教徒,布教中に逮捕。
07.06 外国人キリスト教徒夫妻,教会活動を理由に国外退去処分。
07.19 「ネパール全国クリスチャン連盟」書記長,襲撃(カトマンズ)。
 (注)一部,日付異同や重複があるかもしれない。


■Converge(12/28/2015)/Open Doors Australia(08/05/2018)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/08/05 at 18:05

カテゴリー: 宗教

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