Posts Tagged ‘プライバシー’
OneDriveか外付けHDか?
マイクロソフトがOneDriveを喧伝するので,つい魔が差し,インストールしてしまった。
まさに一瞬のこと,パソコンのファイル構成が根本から勝手に変更されてしまった。しかも,ホームページ用ファイルについては,リンクまで書き換えられた(他ソフト介在かもしれないが)。もう,お手上げ。
パソコンは全くの素人で,だからこそもっとも単純明快なファイル構成にしてきた。大切なファイルは,外付けハードディスクにその都度保存。手間はかかるが,ファイル構成や所在がすぐ分かり,混乱はなかった。
ところが,OneDriveをインストールし同期させたとたん,大混乱,どのファイルが,どこにあるやら,見当もつかなくなった。
これは大変と,OneDriveとの同期を切断したが,どうやら元には戻らないらしい。これまで使用してきた外付けハードディスクですら,同期切断状態では認識困難になってしまった。
素人の希望的観測にすぎないが,OneDriveとの同期を切断したまま使用し続ければ,そのうち少しずつファイル構成が同期以前の状態に自動修正されていくのかもしれない。が,たとえそうだとしても,不便この上ない。
このところの情報技術の進歩は,OneDriveに見られるように,目覚ましい。便利になった反面,素人には,情報がたとえ自分のものであっても自分ではコントロールしきれなくなってきた。先日も,10年以上,いや多分20年位前の知人のデータが,「お友だちでは?」と画面に出てきて,びっくり仰天。インターネット上か,ネット接続の誰かのパソコンに保存されていて,何かのきっかけで蘇り,私に通知されたのだろう。本人は知る由もない。
いまや,人間関係だけでなく,読書や趣味や衣食住の好みなど,たいていのことは,ネットの方が,本人よりも,よく知っている。そんな時代になったのだ。
このネット時代に,外付けの独立ハードディスクに情報保存し続ける人は,石貨をため込む現代の古代人と見られても致し方あるまい。やれやれ。

(c) 谷川昌幸
AI化社会の近未来(2)
1.AIの自律化と人間支配
AI(Artificial Intelligence人工知能)の発達は日進月歩,いまや大抵のことは人間よりも効率的に情報収集し,分析し,的確に判断を下しうる。いずれ人間がAIを道具として使うのではなく,AIが人間を分析し,人間に働きかけ,人間を操作する,つまり人間を使う時代が来るであろう。ほんの少し前までであれば,SF夢物語にしかすぎなかったようなことが,いまや正夢になろうとしている。
(1)近代社会の大前提としての自立的個人
われわれ人間は,とりわけ近代以降,一人一人がそれぞれ独自の自我をもち,自己を意識し,最終的には自分が自分のことを決定する自由な行為主体であると信じてきた。日本国憲法も,そうした近代的個人の存在を大前提として,「すべて国民は,個人として尊重される」(13条)と規定している。
われわれは,最終的には自分の意思で決定し約束して(「契約の自由」),様々な人間関係をつくり運用する。夫婦,各種団体,会社,組合そして国家など,近代的であればあるほど個人の主体的な自由と責任を当然の前提として組織され,運用されている。
われわれは,この主体的な自由を行使し,その結果への責任を果たすため,情報収集(学習)し,比較分析し,評価する。そして,その学習し分析評価した結果に基づき,われわれは,自分にとって最善と考える選択肢を選び,それを実行し,その結果への責任を引き受ける。
むろん,そのような主体的自由の行使や責任の引き受けは容易なことではなく,それゆえ「自由からの逃走」が多かれ少なかれ現実には生じる。が,たとえそうであったとしても,近代社会がわれわれを本質的には自由な行為主体と認め,「個人として尊重」することを大前提として組織され運用されてきたことは,紛れもない事実である。
(2)AIによる情報収集と人間支配
ところが,最近のAIの驚異的な性能向上により,この自立的主体的個人の大前提が,たとえ建前としてであれ維持し続けることが困難となり始めた。<様々な情報の学習や分析評価は,個々人本人よりもAIの方がはるかに迅速かつ的確に行う。自分自身のことも,本人よりAIの方がよく知っている。いや,自分の自我と信じているものそれ自体でさえ,すでにAIにより形成され,コントロールされている。> ――もしこのような状態になってしまえば,人々を自由な行為主体とみなし「個人として尊重」せよと言ってみても,それは無意味である。そんな「主体的個人」など,もはやどこにも存在しないからだ。
われわれは,すでにグローバル情報化社会の中で生きており,いたるところで個人情報を取られている。情報に関し国境はもはや無意味。世界中の公私様々な機関が,絶え間なく情報を収集し,蓄積し,いまやその量は誰にも確認できないほど膨大な量に達しているはずだ。
しかも,そうした現代における個人情報収集は,情報を取られる本人が全く,あるいはほとんど意識していない場合が少なくない。たとえば日々の買い物,スマホ位置情報,ネット利用など。あるいは,現在ではすでに監視カメラがいたるところに設置されており,顔認証システムと組み合わせると,本人にほとんど気づかれることなく個々人を特定し,その行動を逐一記録保存することさえ可能だ。いやそれどころか,表情等の分析により個々人の感情,ひいては心の中の動きですら読み取り記録保存できるようになるであろう。自宅の「スマート化」(常時ネット接続自宅管理)や,常時ネット接続により体温・血圧・心拍数等の自動計測・管理ができる「スマート時計」を身に着けるのは,自ら個人情報を放棄しているようなものだ。グローバル情報化社会では,人は丸裸,プライバシーはなくなる。
AIは,われわれ人間自身ではもはや到底不可能となった,このような膨大な情報の迅速な収集・分析・評価を行う。「知は力だ」とすると,われわれ自身はもはや無力であり,AIの指示に従い,行動せざるをえない。そこには,自由な行為責任主体たる個人,尊厳を認められるべき個人は,存在しない。
このAIは,むろん人間がつくり出し,運用を始めたものである。しかし,AIが「機械学習」,「深層学習」など,高度な「自動学習 」を始めると,その情報収集・分析能力は人知を超え,AIそのものがブラックボックス化する。そして,AIがブラックボックス化すると,AIがなぜそのような判定をしたのか,どのようにしてそのような結論に達したのか,その根拠が知りえなくなる。それを知ろうとすれば,われわれ自身がAI以上に迅速かつ的確な情報収集・分析能力を持っていなければならないからだ。
アメーバのように無限に拡大し,複雑化し,不眠不休で超高速で働き続けるAI――人間に勝ち目はない。自動学習AIの事実上の自律(自立)と,そのAIによる人間支配!
谷川昌幸(C)
AI化社会の近未来(1)
このところ心身ともに絶不調,ブログも休眠状態だ。介護疲れかと思っていたが,どうもそれだけではなさそうなので,仕方なく先日,十数年ぶりに健康診断を受けてきた。3週間後,もう一度受け,結果を聞くことになっている。といっても,荒療治はイヤなので,結果を知ってもどうしようもないのだが,そこは意志薄弱,健康診断くらいはと,つい受診してしまった次第。
何もする気がしないので,涼みに近くの小さな図書館に行き,ボケーとしていたら,ふと『AIと憲法』(*)という本が目についた。借りて帰り読み進めると,加速度的に進むAI化が私たちのの生活にもたらす様々な変化とそれに伴う諸問題が,主に憲法学の観点から具体例を挙げつつ分かりやすく分析されており,大変興味深く,改めてこの問題について考えることの重要性を再確認させられた。
以下は,本書『AIと憲法』に触発され,日頃AI化について私自身が感じていることを,思いつくままに列挙したもの。目下,絶不調のため単なる思い込みや論証不足の部分などがあるかもしれないが,ご容赦願いたい。
*山本龍彦編著『AIと憲法』日本経済新聞出版社,2018
AIと憲法問題/AIと個人の尊重、プライバシー/AIと自己決定原理/AIと経済秩序/AIと人格/AIと教育制度/AIと民主主義/AIと選挙制度/AIと裁判/AIと刑事法/
「参照」
・日本経済新聞「AIと憲法 山本龍彦編著 未来の人格・人権概念を問う」
・朝日新聞「(社説)AI時代の憲法 いま論ずべきは何なのか」
谷川昌幸(C)
ゴビンダ医師のハンスト闘争(24)
6.第15回ハンスト
(6)決死のハンスト(v)
④強制摂食:いくつかの事例 A. 西洋近世・近代の奴隷と病人 B. イギリス
C. アメリカ もう一方の人権と民主主義の国,米国では,いまでも強制摂食が合憲・合法とされ,刑務所や収容所でしばしば実施されている。
米国では,自己決定権ないし「独りでいる権利」が「プライバシー権」として広く認められているが,そこには「自殺の権利」までは含まれてはいない(末期患者尊厳死は別問題)。また,国家には秩序維持の権利義務があり,そのために必要な場合にはプライバシー権の一部を制限することが出来る。ハンストをする権利は,そうした制限可能な権利の一つであり,必要な場合には,ハンスト死防止のための強制摂食が認められるとされている。
米国刑務所での強制摂食としては,早くには1917年,ニューヨークの刑務所内でハンストをした女性産児制限主義者に対し,実施された。以後,強制摂食は継続され,たとえばコロラド州の刑務所では,2001~2007年に,少なくとも900回の強制摂食が実施されたという。そこでは2014年にも,ハンストをした8~9人に対し,強制摂食が行われている。(*5)
さらにウィスコンシン州の刑務所では2016年,ハンストの3人に対し強制摂食が実施された(*15)。米国では,州により扱いは異なるが,刑務所での強制摂食はマニュアル化されているとみてよいであろう。
米国の強制摂食として最も悪名高いのが,米軍グアンタナモ収容所(キューバ)でのもの。グアンタナモでは,早くも2001年1月からハンストが始まり,最多の時は150人余がそれに参加した。このハンストについては,2013年までは報告されているが,それ以降は情報不開示となったため詳細不明。
グアンタナモ収容所は,いわば治外法権であり,収容者の扱いは残虐を極めた。ハンストにも,当然のように強制摂食が実施された。ここでは死ぬことは許されない。人間の最後の自由,死ぬ権利さえ奪われている。「核軍縮キャンペーン(CND)」は,2005年大会において,次のような緊急決議をしている。「大会は,グアンタナモの200人以上の拘留者によるハンストが摂食と鎮痛剤の強制により長期化し8週目に入っていることを懸念をもって指摘する。」
米国で,いま最も問題にされているのは,急増する難民・移民希望者に対する収容所や拘置所での強制摂食である。「移民関税局(ICE)」は,食事9回拒否でハンストと認定し,裁判所の許可の下,強制摂食を行っているという。
「ICEは,収容所収容者の生命を守り,収容所の秩序を維持していく。・・・・ハンストを行う収容者に対しては,その健康と安全のため,ICEは食物と水の摂取をきちんと見届けている。収容者のハンストが,生命あるいは健康にとって危険かどうかは,医療担当者が常に監視している。」(*1)
この2019年1月には,ICEテキサス収容所が,ハンストをしているインドとキューバからの難民申請者30人のうちの6人に対し,裁判所の許可を得て強制摂食をした。彼らは鼻から出血し,耐えがたい苦痛を訴えている(*8)。
■ICE強制摂食抗議デモ(NYT, 2019/01/31)/グアンタナモ強制摂食(Graphic News, 2013/05/01)
D. ロシア ロシアの刑務所では,ハンストに対し強制摂食が行われている。テロ等の罪で収監されたウクライナ人映画監督オレグ・センツォフは2018年5月から抗議ハンストを続けたが,この強制摂食を避けるため同年10月6日,ハンストをやめざるをえなかった。
E. 北朝鮮 北朝鮮教化所は2018年夏,看守に対する抗議ハンストを行った収監者2人に対し,ホースを口に入れ強制摂食させた。
F. イスラエル イスラエル議会は2015年,ハンストで抵抗するパレスチナ人収監者に対する強制摂食を合法化した。
■イスラエル議会強制摂食法制定(The Telegraph, 2015/07/30)
G. インド インドの人権活動家で「鉄の女」とも称されるイロム・ミャルミラが2000年,インド軍による住民虐殺に抗議しハンストを開始したのに対し,インド政府はチューブによる強制摂食を始めた。彼女は,これに耐え16年間もハンストを続けたが,闘争方針を変え州議会選挙に出て闘うため2016年8月9日,ハンストを終了した。
■Burning Bright: Irom Sharmila(Penguin, 2009)/シャルミラ-ハンスト10年目(Facebook, 2011/09/19)
*1 BURKE, GARANCE, “UN: US force-feeding immigrants may breach torture agreement,” AP,
*2 Burke, Garance and Martha Mendoza, “U.S. immigration officials are force-feeding detainees who’ve been refusing food at Texas centre,” AP, January 31, 2019
*3 DAUGHERTY,OWEN, “UN says US force-feeding detained immigrants may violate torture convention,” The Hill, 02/07/2019
*4 Greenberg, Joel K., “Hunger Striking Prisoners: The Constitutionality of Force-Feeding,” Fordham Law Review, Volume 51, Issue 4 Article 7, 1983
*5 Hsieh, Steven, “Colorado’s Federal Supermax Prison Is Force-Feeding Inmates on Hunger Strike: Solitary Watch reports that eight to nine prisoners are taking part in the strike, held at the federal government’s highest-security prison” The Nation, Feb 27, 2014
*6 Long, Clara “ICE Force-feeding Immigrant Detainees on Hunger Strike: Force-feeding is Cruel, Inhuman and Degrading,” Human Rights Watch, February 1, 2019
*7 Miller, Ian, A History of Force Feeding: Hunger Strikes, Prisons and Medical Ethics, 1909–1974, Springer Nature, 2016
*8 Stevens, Matt, “ICE Force-Feeds Detainees Who Are on Hunger Strike,” New York Times, Jan. 31, 2019
*9 “1910 Liverpool, Force-Feeding: The suffering of a suffragette,” Lapham’s Quarterly
*10 “Cartoon depicting force-feeding from The Daily Herald: Illustration depicts Asquith force-feeding an imprisoned suffragette,” British Library
*11 “Force-feeding,” Wikipedia
*12 “Force-feeding in English jails – a hidden history,” The University of Manchester, 5 Nov 2015
*13 “Force-feeding at Guantanamo Bay,” Graphic News, 05/01/2013
*14 “Prison officials force-feed inmates on hunger strike against solitary confinement,” RT, 29 Jun, 2016
谷川昌幸(C)
監視カメラの警察使用,朝日が肯定的に報道(2)
朝日新聞は,大阪版夕刊に前述の記事を掲載した3日後の2月19日,今度は総合ページに大野博人編集委員のコラム「日曜に想う」を掲載した。タイトルは「『安全のため』奪われる自由」。これは,夕刊記事とは全く対照的な内容であり,その意味では,朝日新聞はバランスがとれている。
大野委員はこのコラムにおいて,オリバー・ストーン監督映画「スノーデン」や思想家ツベタン・トドロフ著『屈服しない者たち』を引照しつつ,「安全のため」という口実を認めることが,特に現代において,いかに危険かを鋭く指摘している。
≪[映画「スノーデン」において]「たいていの米国人は自由より安全を望んでいる」と米情報機関の幹部が話す。・・・・自分も監視されている,どこで何を見られているか分からない,丸裸にされている――。・・・・テロ対策という当初の目的からはみ出して,政治権力の監視活動はどこまでも暴走する。「安全のため」という口実を人々が受け入れ続ける限り。≫
≪トドロフ氏によると,政治権力が市民監視にのめり込むのは「すべてを知ることは,すべての権力を握ることにつながる」と考えるから。また,だれかが自分を監視しているとつねに意識する社会では,人と人との間の信頼が消滅するとも指摘する。人々が連帯しない社会。それこそ権力が思いどおりにしやすい社会である。」≫
≪政治家が声高に「安全のため」を語るとき,本当は自らの権力強化のためではないのか。「安全のため」なら仕方がないと思ったとたん,からめ取られているのかもしれない。なぜなら,あなたも私も普通の市民の大半は監視する側ではなく,監視される側になるのだから。≫
ここで大野委員は,権力による監視への警戒を訴えている。たしかに,それはそのとおりであり,その重要性はいくら強調しても強調のし過ぎではない。しかし,現代における行動監視の恐ろしさは,権力による監視が万人による監視とあい手を携えて進行し始めたところにあるのではないか?
いまでは,情報技術の革命的進歩により,行動監視は一般市民でも容易に実行できるようになった。小学生程度の知識と技術があれば,お小遣い程度の費用で,いつでも,どこでも他人の行動を簡単に監視できる。万人による万人の監視社会――その夢が今まさに実現しつつあるのだ。
谷川昌幸(C)
監視カメラの警察使用,朝日が肯定的に報道(1)
朝日新聞(大阪版夕刊2月16日)が,監視カメラ記録映像の警察捜査利用に好意的な記事を1面に大きく掲載している。見出しは次の通り。
防犯カメラ 捜査の目に
大阪府警,自治体と異例の協定
映像入手 事前連絡は不要
夜間の初動に効果的
これらの見出しだけで,記事の趣旨は明確だ。記事によれば,大阪府内の自治体設置または設置補助の監視カメラは1万9944台(2016年3月末)。その記録映像を,大阪府警は,必要な時には事前連絡なしに自由に引き出し,見ることが出来るのだそうだ。
この記事には,専門家2氏のコメントも付されているが,いずれもごく短く,検証の仕組みや法整備を求めてはいても,警察による自治体設置・補助監視カメラの使用そのものを否定するものではない。朝日お得意の,公平のみせかけためのエクスキューズのようにみえる。
大阪圏の街頭監視カメラは,これまで幾度か指摘してきたように,急速に増大している。その記録映像を警察が,事実上,自由に使えるとなれば,市民は可能的には常に警察に監視されていることになる。しかも,顔(身体)自動識別技術の革命的進歩により,映像の個々人を瞬時に特定し,その行動を記録し追跡できるのだ。
むろん大部分の人は「善良な市民」であり,警察が彼らすべてを常時監視することはない。しかし,問題はむしろ,この「可能的監視」そのものにある。警察が事前連絡すらなく監視カメラ映像を利用できるとなれば,市民すべてが,警察により,いつ,どこで見られ,記録され,追跡されているか分からない,という状況に置かれる。
ここには,もはやプライバシーはなく,プライバシーを前提とする個人の自由も権利もない。われわれは,自分たちの自由や権利を守るため国家をつくり,個々人の安全保障のための権力行使を国家諸機関に信託した。ところが,いまや国家諸機関が「国民の安全」のために個々人のプライバシーを奪い,自由や権利を否定しようとしているのだ。
ブラックユーモアのようだが,いまや大朝日ですら,大真面目に,万人監視カメラの効用を一面トップで大々的に報道するに至った。もはや「隠れて生きる自由」は取り戻せないのではないか?
谷川昌幸(C)
免許証暗証番号,百害あって一利なし
運転免許証の暗証番号は,百害あって一利なし,いや正確には今では「百害」もないほど無用。「無用」こそが最大の害。巨額の導入費用無駄遣いには目をつむるから,直ちに廃止すべきだ。
この件については,5年前の免許証更新時に詳述した。(参照: 危険なIC免許証,暗証番号の無効化を) その時は,たしか暗証番号を「0110 0110」と登録し,免許証交付後ただちに「1100 1100」と3回入力し,無効化した。
その後5年間,暗証番号無効化免許証を使用してきたが,同乗高齢者のシートベルト着用義務違反のときも,先日の免許証更新のときも,何の問題もなかった。というわけで,今回の更新免許証も,交付後ただちに誤番号を3回入力し無効化した。
【補足】 暗証番号の設定は不要:大阪府警
警察は,つい先日まで暗証番号本人認証をあれほど熱心に積極的に推進してきたのに,いまや様変わり,“暗証番号は設定しなくてもよい”と説明し,さらに設定のメリットは事実上“ほとんどない”と開き直っている。以下,何事も本音で知られる大阪府警の公式説明。
▼大阪府警 ICカード運転免許証に関すること
Q4 運転免許証をICカード化するメリットは何ですか。
A4 主なメリットとしては、2つあります。
1つは、運転免許証の偽造・変造の防止です。・・・・ もう1つは、運転免許証の券面に本籍を記載しないことで、国民のプライバシー保護に配慮します。本籍は、ICチップに記録され、申請時に設定した暗証番号をICチップを読み取る機器に入力しなければ読み取ることはできません。[引用者注:「本籍」自体には何の意味もない。移転自由。]
Q7 暗証番号は必ず設定しなければならないのですか。また、暗証番号を設定しない場合は、どうなるのですか。
A7 暗証番号は、必ず設定しなければならないというものではありません。しかし、設定しない場合は、ICチップの中の個人情報を他人に読み取られるおそれがありますので、できるだけ設定するようにしてください。[引用者注:担当者以外は読み取れないよう設定すれば済むこと。]
Q8 暗証番号を忘れた場合に、何か不都合はありますか。
A8 運転免許の更新、再交付等の手続きに支障はありません。・・・・
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(87): 米軍・自衛隊・監視カメラ
住民監視カメラがまた増設されたらしい。これは,既設カメラから,ほんの百数十メートルしか離れていない三叉路のもの。新設ピカピカ。さぞかし鮮明な画像が得られることだろう。(既設カメラとは設置主体・目的が別かもしれないが,盗撮され利用されることに違いはない。)京丹後は,先述の沖縄「海洋博公園」万人監視体制に近くなってきた。
もう一つ驚いたのが,「エルモ(駐留軍等労働者労務管理機構)」。米軍基地を誘致したおかげで,自衛隊関係業務に加え,独立の事務所を構えなければならないほどの米軍基地関係業務が地元に落ち始めたのだ。
まずはメシ。生活の平穏やプライバシーなど,地方搾取でヌクヌク暮らす都市住民の既得権にすぎない。文句あるなら,地方移住してみよ!
谷川昌幸(C)
マイナンバーはゼアナンバー,頻繁変更を
1.米語帝国主義への積極的従属
「マイナンバーのお知らせ」が届いた。売国的にして噴飯もの。表紙を見ると,文章中の主要単語はすべて敵性言語たる米語を日本語読みし,カタカナ表記したものだ。
■マイナンバー,カード,メリット,コンビニ,サービス,セキュリティ,システム
日本語は,これらの宗主国言語の隙間を埋める補助言語として,お情けで使用されているに過ぎない。米語帝国主義への日本語の卑屈にして「積極的(proactive)」な従属。(参照:英語帝国主義 日本語が滅びるとき)
2.ゼアナンバーとしてのマイナンバー
周知のように,日本政府は,本音をごまかすとき,好んでカタカナ米語を使用する。政府や政治家のカタカナ米語を見聞きしたときは,まず眉に唾をつけ,なぜ日本語を使用しないのか,その隠された意図を探るべきである。マイナンバーもその典型。
マイナンバーは「私の番号」ではなく,カタカナ米語に正確に翻訳すれば,「ゼアナンバー(彼らの番号)」である。ゼイ(彼ら)が,ゼアのメリット(利益・利便)のため国民にナンバー(番号)を割り振った。だから,その本質は「ゼアナンバー」。
このゼアナンバーは,いずれコンビニエンス(利便)とセキュリティ(安全・治安)のため官民の各種サービス(業務)とリンク(連結)され,このままでは国民はもはやゼアナンバー・カード(彼らの番号札)なくしては一日たりとも生きてはいけなくなるであろう。
しかも,この彼らの言う「マイナンバー」は,12桁もある。とうてい,覚えられない。が,そうかといって,個人番号付きの「マイナンバーカード」をつくり,持ち歩けば,危険きわまりいない。さて,どうすべきか?
3.コロコロ頻繁変更
マイナンバーは本質的にゼアナンバーだから,マイ(私)のものではなく,私には不要。通知カードはすぐ破り捨てるべきだ。ゼイが必要とするときは,ゼイ(市役所など)に問い合わせれば,それで済む。そうすれば,万が一,悪用されても,その責任はすべて私ではなくゼイ,あるいはマイナンバー利用企業等の側にあることになる。
あるいは,それでも不安なら,すぐナンバー変更を申請すればよい。たとえば,
・他人に見聞きされたかもしれないとき。
・勤務先等のナンバー管理に不安を感じたとき。
・金融機関,通販,小売業者など,民間企業に漏れていると感じたとき。
・ネットに漏れているのではと感じたとき。
・監視カメラ映像と関連付けされていると感じたとき。
・その他,不安を感じたとき。
マイナンバーは本質的にゼアナンバーだから,管理責任はあげて政府にある。そして,国民には,少しでも不安を感じたら,いつでもナンバー変更を申請し,変更させる自由=権利がある。コロコロと変えてよいマイナンバー!
そもそも現代のこの情報化社会において,マイナンバーのような便利な「個人識別番号」が漏れ,利用され,流用され,悪用もされるであろうことは,火を見るよりも明らかだ。だとしたら,国民としては,自分の番号をコロコロ変える以外に,取り得るよい自衛手段は他にはないであろう。
なお,以上のことは,内閣府HPや様々な報道から導き出した一つの仮説にすぎず,まだ実証はされていません。真偽のほどは,それぞれ各自で,慎重に検証し,ご確認ください。
【参照】内閣官房「社会保障・税番号制度とは」(赤強調引用者)
Q2-5 マイナンバー(個人番号)は希望すれば自由に変更することができますか?
A2-5 マイナンバーは原則として生涯同じ番号を使い続けていただき、自由に変更することはできません。ただし、マイナンバーが漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められる場合に限り、本人の申請又は市町村長の職権により変更することができます。(2014年6月回答)
Q4-1-1 民間事業者もマイナンバー(個人番号)を取り扱うのですか?
A4-1-1 民間事業者でも、従業員やその扶養家族のマイナンバーを取得し、給与所得の源泉徴収票や社会保険の被保険者資格取得届などに記載して、行政機関などに提出する必要があります。また、証券会社や保険会社が作成する支払調書、原稿料の支払調書などにもマイナンバーを記載する必要があります。(2014年6月回答)
Q4-1-3 マイナンバー(個人番号)を使って、従業員や顧客の情報を管理することはできますか?
A4-1-3 ・・・・法律や条例で定められた手続き以外の事務でも、個人番号カードを身分証明書として顧客の本人確認を行うことができますが、その場合は、個人番号カードの裏面に記載されたマイナンバーを書き写したり、コピーを取ったりすることはできません。(2014年6月回答)
Q4-1-4 マイナンバー(個人番号)を取り扱う業務の委託や再委託はできますか?
A4-1-4 マイナンバーを取り扱う業務の全部又は一部を委託することは可能です。また、委託を受けた者は、委託を行った者の許諾を受けた場合に限り、その業務の全部又は一部を再委託することができます。 ・・・・(2014年6月回答)
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(71):基地補助金で住民監視カメラ
1.監視カメラ予算と設置場所
京丹後市は,基地補助金(米軍基地配置に伴う再編交付金)による監視カメラの設置を進めている。
▼平成26年度経ヶ岬関連補助金等執行状況・再編交付金(平成27年2月27日現在)
住民の生活の安全の向上に関する事業:
駅舎駐輪場防犯カメラ設置事業 防犯カメラ設置工 8基
宇川地区防犯カメラ設置事業 防犯カメラ設置工 7基
幹線道路等防犯カメラ設置 防犯カメラ設置工 7基
▼平成26年追加補正予算・再編交付金活用事業
漁港防犯カメラ設置事業 3カ所(詳細不明)
防犯カメラ設置事業 駅駐輪場(詳細不明)
▼設置場所
駅駐輪場:京丹後大宮駅(1),峰山駅(2),網野駅(1),夕日ヶ浦木津温泉駅(1),小天橋駅(1),かぶと山駅(1),久美浜駅(1)
道路:消防本部入口(1),大宮織物ホール(1),木津防災資機材備蓄倉庫付近(1),丹後市民局(1),宇川小学校正門(1),黒部駐在所付近(1),消防久美浜分署入口(1)
漁港:袖志漁港(3),尾和港(1),中浜漁港(3)
■防犯カメラ・派出所増設(広報・きょうたんご,2015年5月号)
2.住民監視
これらの監視カメラは,すでに設置済みの他の多くのカメラとも連携し,京丹後全域を常時監視するために使用される。
監視対象は,こそ泥や痴漢なども含まれはするが,最も重要なのは,いうまでもなく反基地活動家であり,そしていわゆる「テロリスト」や「過激派」である。
「ぼくは,こそ泥や痴漢ではなく,ましてやテロリストでも過激派でも絶対にないから,監視カメラがあっても平気だ」と,多くの人は思うかもしれないが,実際には決してそうではない。
監視カメラは,過激派やテロリストを識別するため,住民全員をことごとく記録しデータベース化する。今すぐではなくとも,イザとなれば,必ずそうする。そうしなければ,過激派やテロリストは識別できないからだ。
3.テロリスト監視に無力
ところが,プロのテロリストや過激派は,監視カメラの存在を当然の前提として行動する。監視カメラで捕まるようなマヌケなテロリストや過激派は,アマチュアだ。
このことは,監視カメラ設置者の側にもよく分かっている。それなのに,なぜ大量に設置するのか?
4.良識的多数派住民の監視
監視カメラ設置の本当のねらいは,基地に不安を感じている良識的多数派住民だ。
民主主義総本家のアメリカが最も恐れているのが,基地周辺の住民。住民多数が反対したら,民主主義防衛を錦の御旗にする米軍は,基地設置の倫理的・政治的正統性を失い,基地の維持運営が困難になってしまう。米軍は,良識的多数派住民の「左傾化」を恐れている。
そこで米軍は,忠犬ハチ公の日本政府に良識的多数派住民を監視させ,彼らの「左傾化」を防止させるわけだ。自分の手は汚さない,高潔な民主主義国アメリカ!
プロのテロリストや過激派には,監視カメラなど屁の突っ張りにもならない。他方,「国益」第一の市長やその同調者らにも,監視は苦にならない。なぜなら,彼らは「見る権力の側」であり,その意味では「見られて困る」ところがどこにもないからだ。
監視カメラによる監視の対象は,したがって米軍基地に不安を感じている良識的多数派住民,あるいは基地反対署名に応じたり反対集会に参加したりする基地に批判的な一般市民ということにならざるをえない。
監視カメラは,こうした人々に見せるためにある。見ていることを見せるための監視カメラ。そして,ときには,ちょっと目立つ活動家の「事情聴取」や「逮捕」のためのネタ提供。
たぶん,「監視カメラは規則に則り厳正に運用し,目的外の使用は絶対に行わない」,「映像保存は2週間,期限後は完全消去する」などと言っているであろうが,こんな口約束は全く信用できない。すでに世間では監視カメラ映像の流用は日常茶飯事だし,そもそも最高法規の憲法ですら守らない人物が首相をやっているお国柄だ。信用せよというほうが,どだい無理な注文なのだ。
5.米軍の「安心・安全」のための監視カメラ
京丹後における警察や監視カメラの大増強は,米軍とその下働きたる日本政府の「安心・安全」のため。
そもそも米軍基地さえなければ,このような警察や監視カメラの大増強は全く必要なかった。監視カメラが基地補助金で設置されていることが,何よりの証拠だ。
【参考】
大江山(国道176号線)の監視カメラ。これらは福知山市域にあり,基地補助金事業ではない。気象ないし交通監視が表向きの目的だろうが,人や車もむろん写る。
谷川昌幸(C)
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