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京都の米軍基地(66): 米軍幹部,続々来訪

京丹後の米軍基地へ,米軍幹部が入れ替わり立ち替わり視察に来ている。最近(日時不明*)も,「宇宙ミサイル防衛軍」マン司令官(中将)がやってきて,基地内外を視察した。(* 米軍広報は,マーシャル諸島クェゼリン米軍基地の視察後,3月12日,グアムと日本へ向け出発と発表しているので,京丹後視察はその数日後であろう。)

「宇宙ミサイル防衛軍(Space and Missile Defense Command [SMDC])」とは名前からしておどろおどろしく,SF未来戦争を思わせる。米軍の中でも,この分野では由緒正しき最先端重要部隊なのであろう。

司令官のマン中将がどのような地位の方かは,軍のことはよく知らないので,想像するしかないが,胸の記章を見ただけでも,かなりエライ方だと見てまちがいあるまい。そんな米軍の幹部が,はるばる丹後半島くんだりまで来てくださる。これはたいへんなことだ。

一方,お隣の日本側はといえば,空自分屯基地の第35警戒中隊にすぎない。記念撮影でも,どう見ても釣り合いがとれていない。米軍がこれほど重視しているのだから,日本政府も経ヶ岬基地を大幅に拡張し,宇宙戦争に対処しうる最先端拠点軍事基地とすべきだろう。

ウワサでは,すでに日本側も空自基地の拡張を始めているそうだ。さすが積極的平和主義の日本国,イケイケドンドン,米国になど負けてはいない。

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 ■空自分屯基地記念撮影。マン司令官右隣が第35警戒隊長

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 ■マン司令官/胸の記章

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 ■宇宙ミサイル防衛軍章/第35警戒中隊章

[追加2015-03-21]大統領夫人,経ヶ岬駐留米兵激励
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 ■ミシェル・オバマ米大統領夫人,第14ミサイル防衛中隊の米兵らを激励。伊丹空港,3月20日。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/03/20 at 19:31

京都の米軍基地(64):兵器と兵員のプレゼンス強化

1.兵器プレゼンスの強化
B・マクガリー「日本におけるミサイル防衛プレゼンスの強化」によれば,経ケ岬は米軍にとって理想的な位置にある。なぜなら――

「ハワイやグアムを標的とする北朝鮮の短距離・中距離ミサイルは,この地域の上を飛ぶであろうからだ。」

京丹後へのXバンドレーダ(TPY-2)配備の目的が,ハワイ・グアム防衛であることは常識だが,こうあっけらかんと説明されると,拍子抜けしてしまう。まちがいなくハワイ・グアム以前に,某国ミサイルは,ミサイル防衛プレゼンスを強化された京丹後に降り注ぐ。が,そんなことは,米軍は眼中にはない。

2.兵員プレゼンスの強化
レーダー配備が兵器プレゼンス強化の手段だとすれば,米軍人・軍属配備は,人的プレゼンス強化のためだ。地元・京丹後は,プレゼント付きのプレゼンスは大歓迎,官民あげて,米軍人・軍属のプレゼンス強化に協力している。

これもまた,北の某国に向けたプレゼンテーションであることは,いうまでもない。プレゼント付きのプレゼンスのプレゼンテーション! 見るも微笑ましい光景だ。ささいな物損事故の二つや三つ,プレゼンなしでも,どうということはない。めでたし,めでたし。

150120■第14中隊FB

[参照]
Brendan McGarry,”U.S. Bolsters Missile-Defense Presence in Japan,” Dod Buzz Com, 2014-12-26
米軍交通事故を少なく公表 防衛省、京都のレーダー基地周辺」京都新聞1月20日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/20 at 16:38

京都の米軍基地(56):進駐軍と首長と子供

京丹後市に,米軍「第14ミサイル防衛隊」が,本格的な進駐を開始した。米国は,いうまでもなく「民主主義の平和(Democratic Peace)」の旗手であり,世界「人権」の守護者である。進駐にあたっても,当然,「平和」と「人権」を掲げ,民心の掌握を図る。

それには,何といっても,首長と子供。首長と笑顔で握手し,優しく子供の手を取り語りかける。わが自衛隊も海外派兵先で同じことをしているが,いかんせん付け焼き刃,不自然でぎこちない(下記参照)。やはり本家はアメリカ。年季が入っている。とてもかなわない。

アメリカは,物心両面において,日本をはるかに凌駕している。その世界最強国に治外法権の軍事基地を差し出し軍隊の進駐を許せば,何が起こるか? 

まずは,米国お得意の情報・諜報作戦に完敗,地元世論は手もなく米軍に転んでしまうであろう。

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 ■米軍人(と警察署長?)と市長 /基地司令官(?)と市長 (第14ミサイル防衛隊FB,9月30日)

141009b  ■米軍人と子供(同上,9月30日。子供の顔は引用者消去)

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 ■銃撃訓練(同上,9月20日。場所不明)

【参照】子供利用の稚拙さ:政治家・陸自・サッカー

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/10/09 at 09:48

京都の米軍基地(52):福島質問への政府答弁

安倍首相が,福島みずほ参議院議員提出の質問書(6月20日)に対する答弁書(6月27日)を提出した。要点は以下の通り。

「Xバンド・レーダー・システムの我が国への追加配備は、我が国に飛来する弾道ミサイル情報の確度及び同時追尾能力を更に向上させ、弾道ミサイル防衛により万全を期する必要性を踏まえたもの」

「弾道ミサイル防衛システムは、・・・・専ら防御的なものである。・・・・「・・・・軍拡競争を煽ることにつながる」との御指摘は当たらない・・・・。」

「工事着工日の情報を含め、米側との具体的なやり取りについては、相手国との信頼関係もあり、お答えを差し控えたい。」

「Xバンド・レーダー・システムの出力等の詳細については、米軍の能力に関わるものであることから米国は公表しておらず、防衛省としても公表を差し控えている。・・・・必要に応じて同システムの周囲に立入禁止区域を設定する・・・・。」

⇒⇒答弁書第一七七号,またはWld-peace資料室

これが,「国益」やそのための「軍事秘密」の正体だ。米軍とその下働き日本政府には,地元住民の自由や権利を守るつもりは,毛頭ない。辺境丹後は,ワシントンと東京の「安全と利益」のための安上がりの捨て石にしかすぎない。

福島みずほ議員は8日,経ヶ岬の米軍基地建設現場を視察し,9日には府庁でXバンドレーダー設置反対を申し入れている。

140710 ■福島議員ツイッター

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/10 at 11:09

京都の米軍基地(46):「奥丹」から産軍共同体最前線へ

経ヶ岬米軍基地の造成工事に着手したのは「ミライト・テクノロジーズ・アクティJV」。いずれの会社もまったく知らなかったが,そこはインターネット,おおよそのことはすぐわかった。

 140607b ■BMD整備構想(防衛省HP)

1.ミライト・テクノロジーズ
本社は大阪で,ミライト・ホールディングス(本社:東京)の100%子会社。親会社ミライト・ホールディングスの主要株主(金融関係除く):住友電工19.7%,住友電設3.0%,従業員持株会1.8%。

主要事業:ICT,通信設備,環境,グローバル(ネットワークインフラ等),総合設備
米軍関係事業
  2012年11月02日 厚木基地スタジアム工事 $2,291.066.
  2013年08月13日 厚木基地設備補修 $515.755.

これらの工事はいずれもそれほど大きくはないが,「社長ブログ」では,前者について「この工事は、当社土木事業本部の現場代理人が非常に高い品質の施工管理を行ったとして、SPRING FORUM 2013 26 Aprilにて『最優秀施工品質管理者表彰』を受賞した工事です」と特筆し紹介されている。(SPRING FORUMの詳細不明)

戦前と同様,軍需貢献が,技術と信用の高さの宣伝として利用され始めたようだ。

140607g ■ミライト・テクノロジーズHP

2.ミライト・テクノロジーズとAFCEA
このミライト・テクノロジーズには,LinkedIn(6月7日閲覧)によれば,John Antista氏がVice President of Global Sales & New Business Developmentとして在職されている。部署名,職名の日本訳は不明。とりあえず副部長としておく。

アンティスタ氏は,情報通信関係を中心に業績を上げられているが,その一つが米軍関係。彼自身,こう説明されている。

US Military  
Established and led the organization that deploys large-scale networks on behalf of the US Military in Japan.
Wins in 2013: became General Dynamics primary supplier of services for NETCENTS related network expansion at USAF bases throughout Japan, including Misawa and Kadena, creating new revenue in excess of $11 M; became AT&T’s primary integration partner in Japan for CTS US Army related projects.(www.linkedin.com/pub/john-antista/4a/a20/118/ja)

さらに興味深いことに,アンティスタ氏には,「AFCEA東京奨学会」の副会長としての業績もある。

The Armed Forces Communications and Electronics Association (AFCEA)は,1946年設立の米系NPO。情報,通信,インテリジェンス,安全保障の専門能力向上が活動目的だそうだが,いまのところ具体的にはよく分からない。設立・運営の中心は米軍・米経済界の歴代有力者らだから,米国産軍共同体系のNPOといってもよいだろう。日本にも,沖縄と東京に支部がある。

140607e ■東京支部 AFCEA Tokyo Chapter 171
世界でも有数のプロフェショナル集団であるAFCEAには、4カ国で延べ3万3千人を超える政治・軍事・産業界からの会員が在籍しております。30カ国で約135の支部が有り、高い倫理観とイベント品質が優れている事が広く認識されています。
優良団体と認証されているAFCEAでは、政府の最高指導者・産業界のリーダー・軍事専門家等を代表とし、政府と産業界との橋渡しをしております。(http://tokyo.afceachapter.org/?language=ja)

140607f ■沖縄支部 The Okinawa Chapter
Chartered in 1974. The Okinawa AFCEA Chapter accomplishes the mission of AFCEA International and brings together communications and intelligence professionals from the island’s military, civilian, and industry sectors. It’s a great way to gain not only a joint perspective but an international one too.(http://okiafcea.com/

ミライト・テクノロジーズ社のアンティスタ副部長は,このAFCEAの東京奨学金部門の副会長もされているのだ。事実とすればたいへん興味深いが,以上は,いずれもネット情報にすぎず,評価をするにはもう少し詳しく調べてみる必要がある。

140607d ■AFCEA FB

3.関西経済同友会の防衛産業育成要請
このようにミライト・テクノロジーズ社は軍需とかなり関係がありそうだが,これは同社に限られたことではない。同社をはじめ関西企業が軍需への期待を高めていることは,関西経済同友会の提言「新しい時代の日本の防衛のあり方~日本版国家安全保障会議(JNSC)の早期創設とサイバー防衛態勢の構築を求める~」(2013年5月)をみると,よく分かる。

この提言は,同会「安全保障委員会」がまとめたものだが,そこにはミライト・テクノロジーズも副委員長1名とスタッフ1名を出している。提言の概要は以下の通り。(赤字強調は引用者)

「国家および地域の安定の確保は、円滑な経済活動の基盤であり、経済人は安全保障問題により高い関心を持たなければならない。関西経済同友会では、先ず国民全体が『自分の国は自分で守る』という安全保障に対する意識を持つことが重要だと繰り返し唱えてきた。現在の情勢を踏まえ、以下6項目について提言する。
 ①集団的自衛権の政府解釈を変更すべき ・・・・
 ②「自衛隊海外派遣恒久法」の成立を急ぐべき ・・・・
 ③武器輸出三原則等の弾力的運用を 政府は安全保障上欠かせない国内の防衛産業の維持・育成という視点と日米安全保障体制への寄与という視点を優先し、武器輸出三原則の一層の弾力化を検討してもらいたい。
 ④海洋国家日本に相応しい態勢を整備すべき ・・・・
 ⑤日本版の国家安全保障会議(JNSC)の早期創設を ・・・・
 ⑥サイバー攻撃への対応強化を ・・・・」

これは,安倍首相の「積極的平和主義」そのものであり,したがって強力な安倍政権の成立・継続は,関西企業にとっては願ってもない神風ということになる。

というのも,関西は,家電,繊維,家庭用品などの地場主要産業が急激に衰退し,倒産か,さもなければ生き残りのため本社を東京に,工場は海外へと移転しており,お先真っ暗,もはや防衛産業(軍需産業)にでもすがるしかないような苦境に陥っているからである。

140607a ■航空宇宙工業会「戦闘機の生産技術基盤」(2000年6月)

4.安倍応援団としての産軍共同体
むろん,日本企業の軍需依存は,他の主要諸国に比べ,まだ大きくはない。三菱重工10%,川崎重工6%,三菱電機2.4%,富士重工2.4%,IHI2.4%,NEC1.6%(2008年,wiki)。

しかし,これだけ円安になっても輸出が伸びないのは,もはや日本で従来のような製品を製造しても競争力がなく輸出できないからに他ならない。関西企業の苦境は,多かれ少なかれ,他の地域の企業にも当てはまる。

そこで,関西経済同友会の提言を借りるなら,「防衛産業の維持・育成」「武器輸出三原則の弾力化」が求められるようになったわけだ。

安倍首相は,日本経済界のこのような期待を背にしている。産軍共同体の応援といってもよい。これは手強い。

140607c ■鈴木英夫「岐路に立つ我が国の防衛産業」(RIETI,2013年1月)

5.最先端の経ヶ岬
経ヶ岬は,これまで「奥丹の後進地」であったが,Xバンドレーダー基地のおかげで一躍,日米安保の最前線,日米産軍共同体の最先端モデル地域となった。

Xバンドレーダーは本当に有効か? 迎撃ミサイルの当たる確率(撃墜確率)はどのくらいか? そんなことは,産軍共同体にとっては,どうでもよいことだ。「当たる(はずだ)」と想定することにより,莫大なカネが軍需産業に流れ,産軍共同体は潤い,大きく育っていく。そして,それを基盤に「積極的平和主義」政党も支持を拡大し,政権は安定する。

万事めでたし。反対の理由など,どこにもない。

谷川昌幸(C)

京都の米軍基地(20):北朝鮮ミサイルはレトリック

京都府と京丹後市が受け入れ表明した米軍Xバンドレーダーは,先に指摘したように,戦略的には中国が対象だ。北朝鮮ミサイルは,戦術的ターゲットにすぎず,いわば口実。
  [参照]京都の米軍基地(17):真のターゲットは中国か?

中国の外務省報道官も,京都府知事と京丹後市長の受け入れ表明を受け,「北朝鮮の核ミサイルの脅威を理由に,一方的にミサイル防衛システムを構築」しようとしており,これは「グローバル戦略のバランスにもマイナス」だ,と米日政府を非難した(共同&読売9月23日)。中国側からすれば,当然の反応だろう。この米日非難は別として,経ヶ岬Xバンドレーダーの戦略的ターゲットが中国だということそれ自体は,日本人以外の一般常識からすれば,至極当然の自明の事実である。

それでも,こんなことを言うと,非国民・売国奴だと某チャンネルあたりで罵倒されかねないが,日本の常識は世界の非常識,当事者のアメリカ自身,中国政府と基本的には同じことを言っているということを,われわれ日本人は見落としてはなるまい。

張り子の虎・米帝国主義の代弁者たるWall Street Journal(Aug.23)によると,米政府は,中国に対抗するため,アジア・ミサイル防衛体制の大幅拡充に乗り出した。特に,中国の対艦ミサイルは,射程1500kmに及ぶものもあり,大きな脅威となっている。S.ヒルドレス米議会調査局ミサイル防衛専門官も,こう明言している。
  「(ミサイル防衛の)レトリックの焦点は北朝鮮
  「現実問題として,われわれはもっと長期的な視点から部屋の中のゾウを見ている。つまり中国だ。」(ibid)

米国は,このアジア戦略に沿ってXバンドレーダーを日本南部の島とフィリピンに配備する計画だった(ibid)。しかし,先述のように,沖縄周辺も九州・山口地域も露骨すぎたため,少し北東にずらし,京の都の西北,丹後に配備することにしたのだ。お公家さんの古都なら,あでやかな衣の下にレーダーの頭くらいは隠せると計算したにちがいない。

京都に住むのは世故に長けた(worldly-wise)都人。このような見え透いた小手先の小細工や悪玉安全パイ=北朝鮮を利用した世論操作にコロリとだまされるような,ウブな人びとではないはずだ。米本国ですら常識になっていることを隠し,米日産軍共同体を儲けさせるため,伝統と文化の古都・京都を人身御供に差し出すような愚かなことは止めるべきだ。まだ間に合う。

130924 (Google)
■米軍Xバンドレーダー基地:車力(配備済),経ヶ岬(受入表明済),フィリピン(配備予定,場所未定)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/09/24 at 15:12

京都の米軍基地(17):真のターゲットは中国か?

京丹後市経ヶ岬配備予定の米軍Xバンドレーダーは,もっぱら北朝鮮ミサイル警戒が目的と説明されているが,本当は,むしろ中国が対象ではないか?

1.日米防衛相会談
日本への2機目のXバンドレーダー配備が表明されたのは,2012年9月17日のパネッタ国防長官と森本防衛大臣との共同記者会見においてであった。

パネッタ長官:「米国と日本は将来的に2機目のTPY-2の監視レーダーの日本配備に関して、調整を始めました。これによりまして、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威から日本を守り、前方展開している米軍にも資するものであります。そして、米国本土を北朝鮮のミサイルの脅威から防衛する能力を共有させる上で効果的になります。」(日米防衛相共同記者会見概要,平成24年9月17日)

この段階ではまだ配備場所への言及はないが,目的については,北朝鮮ミサイルの脅威から日本,前方展開米軍そして米国本土を守るためと繰り返し述べている。

この説明は分かりやすい。が,国際政治の常識に従えば,あまりにもストレートな説明には,たいてい隠された真の目的が裏に潜んでいる。そもそも北朝鮮警戒なら,すでに青森県車力にXバンドレーダーが配備されている。あえて経ヶ岬に配備するまでもない。
 [参照]
 日米防衛相共同記者会見概要(2012年9月17日)
 日米防衛相共同記者会見概要(2013年4月30日) 
 Hagel: U.S. Bolstering Missile Defense(Mar.15,2013)
 防衛省「TPY-2レーダー(Xバンドレーダー)の配備について皆様の疑問にお答えします」(2013年4月)
    130903

2.方便としての北朝鮮ミサイル
経ヶ岬配備Xバンドレーダーは,戦略的には,むしろ中国をターゲットとしていると見た方がよいだろう。これは決して突飛な思いつきではない。共同記者会見の席で,米側記者が次のように質問している。

「森本大臣への質問でありますけれども、XバンドTPY-2のレーダーの配備はどの場所がいいと思いますか。また、パネッタ長官に対してですが、今仰ったのは、元々その目的は北朝鮮からの脅威に対するものだと言われたわけでありますが、過去において中国側の方からミサイルディフェンスがこの地域においてあることに反対意見を表明しております。今、この時期において、レーダーの再配備を発表するのは、いわゆるこの地域全体において、とりわけ日本と中国との尖閣諸島等の問題の緊張緩和をさせる上でむしろ良くないのではないでしょうか。」(同上)

さすが米国記者,鋭い。森本大臣もパネッタ長官も,この質問に対し,北朝鮮ミサイルが対象だと型どおりの回答で済ませてしまった。日本人記者からの追加質問なし。情けない。こんな有様では,日本ジャーナリズムは二流といわれても致し方あるまい。

むろん,北朝鮮ミサイルの脅威があることは事実だが,こと経ヶ岬Xバンドレーダーについては,それは真の――戦略的にはより重要な――配備目的をカムフラージュし,国民世論を煽り,地元住民を沈黙させるための方便の意味合いの方がはるかに大きい。今の日本で,「北朝鮮」ほど好都合で強力無比のジョーカーはない。

3.中国の反発
これに対し,中国は,経ヶ岬Xバンドレーダーを脅威と受け取り,激しく反発している。

チャイナネット(2012年9月18日)は,外国メディアを次のように引用している。「同レーダーは日本の南部に設置されるが,沖縄ではない」(AP)。「ミサイル防衛の他に,これらのレーダーは船舶の活動を正確に追跡することが可能だ。」(ワシントン・ポスト)。

つまり,チャイナネットは,Xバンドレーダーはもともと中国,とくに沿岸近海の監視が主目的だということを,米側情報により示しているのだ。

新華社(2012年9月18日)もまた,ロシア外務省の「日本への2機目の対ミサイル・レーダー配備は,アジア太平洋地域における米ミサイル防衛能力を大幅に増強することになる」という声明を引用し,その攻撃的性格を非難している。

こうした中国側の反応は,米英メディアも,きちんと伝えている。
▼C.Cheney(World Politics Review, Sep.18,2012):「パネッタは中国対象ではないと述べたが,北京は[Xバンドレーダー配備]発表に怒りを表明した。」
▼J.Logan(ibid):中国は,「それ[Xバンドレーダー配備]を反中国と見なすであろう」。「これをいま配備する最大の危険は,日中のナショナリズムと敵愾心を激しく高揚させることにある。」
▼New York Times(Sep.17,2012):中国政府幹部は,Xバンドレーダーは中国をもターゲットにしていると感じている。それは,中国の核抑止力の弱体化をもたらす。そして,日本をより攻撃的とするだろう。
▼BBC(Sep.17,2012):「中国は,この地域におけるミサイル防衛能力強化を中国自身の戦略への潜在的脅威と見ている。」
▼Washington Times(Sep.17,2012):日本配備Xバンドレーダーは,中国沿岸を守る対艦ミサイルをも探知可能であり,その配備により米海軍に対する中国近海の海域防衛力が無力化されるであろう。
Radar sent to Japan can track anti-ship missiles: Deterring N. Korea is stated goal, but China likely wary, By Shaun Waterman, The Washington Times, Sep.17,2012
 130901

4.極東の緊張と先制攻撃の危険性
欧米メディアが心配するように,経ヶ岬Xバンドレーダーは,戦略的には,むしろ中国がターゲットである。チャイナネットも指摘するように,もともと配備先は「日本の南部」が想定されており,のちには芦屋基地(福岡県)や見島分屯基地(山口県)が有力候補地とされた(産経,2013年2月24日)。

南の島々は無論のこと,福岡や山口でも,モロに中国が探知範囲に入り,さすがに日米当局ともこれは無理と判断し,少し北東の経ヶ岬にもってきたのだろう。北朝鮮ミサイルの脅威は,むろんある。それは間違いないが,にもかかわらず,それはむしろめくらまし,本当の戦略的な狙いは中国であろう。

Xバンドレーダーは米軍のものとはいえ,海外メディアが懸念するように,盾の強化が日本をより攻撃的とすることは間違いない。しかも,最近では,防衛名目の先制攻撃があからさまに唱えられ始めた。しかし,日本側に先制攻撃の可能性があると北朝鮮や中国が想定するようになれば,当然,先方から先制攻撃を仕掛けられる危険性も大きくなる。これは悪循環。決して日本の安全にはならない。

Xバンドレーダーは,どう考えても,日本の安全には役立たない。反骨・京都の沽券にかけても,日米「死の商人」を太らせるだけのXバンドレーダーなど,断固,拒否すべきだろう。
 (注)レイセオン社製「AN/TPYレーダー一式」の米ミサイル防衛庁契約価格(2007年2月)=2億1200万ドル(約21,200,000,000円);同改良型(2007年7月)=3億400万ドル(約30,400,000,000円)http://www.globalsecurity.org/space/systems/an-tpy-2.htm

谷川昌幸(C)