ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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中国と韓国,ネパールでも元気

報道によれば,2013年の訪ネ中国人が11万3千人に達した(Ekantipur,26 Aug)。「文化・旅行・航空省」の統計とあわせて比較すると,次のようになる。

 ネパール入国外国人(空欄はデータなし)

  2001  2012  2013 
 印 64,320(17.8%)  165,815(20.6%)   180,974
 中  8,738(2.4%)  71,861(8.9%)  113,173
 米  32,052(8.9%)  48,985(6.1%)  47,355
 英  33,533(9.3%)  41,294(5.1%)  35,668
 日  28,830(8.0%)  28,642(3.6%)   —
 韓  —  26,004   —

(NEPAL TOURISM STATISTICS 2012; Ekantipur,2014-8-26)

日本や米英などは,この十年ほど,訪ネ者総数にあまり変化はないが,中国人は激増している。韓国人は2001年の数字はないが,やはり激増は間違いあるまい。もう10年前,1990年頃と比較すると,対比はさらに顕著となるであろう。その結果,日本や米英の訪ネ外国人総数に占める比率は大きく低下した。

興味深いのは,ルンビニ訪問者。中国と韓国は,堂々の上位4位,5位。特に中国人のルンビニ訪問は激増している。ルンビニに,中国がチベットからの鉄道延伸を提案し,韓国が国際空港建設を提案するのも,もっともである。

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 ■Travel Trend of Foreigner to Lumbini, 2013 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/08/27 at 18:14

カテゴリー: インド, 旅行, 中国

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仏陀空港拡張工事,6月末開始予定

バイラワのゴータマ・ブッダ(仏陀)空港の拡張工事が6月末から始まりそうだ(Ekantipur, 5 May)。

事業費9千万ドル。アジア開発銀行から3千万ドル,OPEC国際開発基金から1.5千万ドルの融資を受ける予定。現行1500mの滑走路が3000mに拡張され,国際線の離発着が可能となる。2017年運用開始予定。

拡張工事への応札は,中国5社,スペイン系2社。ここでも中国は元気だ。

この空港拡張については,ルンビニまで20kmということもあり,観光振興が事業目的として強調されている。しかし,タライは広大な平地であり,しかも大市場インドのすぐ近くだ。観光よりもむしろ産業立地としての方が魅力的だ。

仏陀空港が拡張され国際線の離発着が始まれば,カトマンズ(TIA)やポカラ(国際空港新設予定)は敬遠され,タライの産業化が急速に進むのではないだろうか。

 140506 ■仏陀空港拡張予想図(Ekantipur, 10 Jul. 2013)

[参照]ルンビニ  タライ 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/06 at 22:40

カテゴリー: 経済, 旅行

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ルンビニ開発、了解覚書に署名・成立

中国主導のルンビニ開発計画の了解覚書(MoU)が11月7日、署名・成立した。中国側はAPECF(アジア太平洋相互協力基金)、ネパール側はLDSC(ルンビニ開発調整委員会)[ないしLDNDC=ルンビニ開発国家指導委員会]。LDSC議長はいうまでもなく、プラチャンダ(プスパカマル・ダハール)統一共産党毛沢東派(UCPN-M)議長だ。
 ▼ルンビニ開発

計画では、ルンビニ国際平和都市建設に30億ドル投資する予定。途方もない大計画だが、政治的にも経済的にも成算はありそうだ。

政治的には、中国と、この開発計画に深く関与している米国で、インドを牽制する意味合いがある。

国際政治は複雑怪奇で、米国は中国と対立しつつも、対印では手を結ぶ。一方、対中では、米国はインドと組む。そして、そこにプラチャンダのネパールが利用されつつ、漁夫の利をねらう。おそらく各国情報機関も関与しているであろう。素人にはうかがい知れない、国際政治の伏魔殿である。

経済的には、投資が始まれば、将来性は甚大だ。ルンビニ付近は、開発余地が十二分にあり、隣にインドの巨大人口・巨大市場、中国とも道路と鉄道とで結ぶ計画がある。ここに国際空港ができると、チトワン、ポカラも含め、一大観光地、巨大商工業地が出来上がる。

そこに目をつけた中国は、さすが抜け目がない。成功すれば、プラチャンダも大富豪となり、マオイスト革命などきれいさっぱり忘却してしまうだろう。

しかし、問題はインド。国境沿いの、目と鼻の先に、中国・米国のなにやら怪しげな機関も関与していると噂の開発計画を黙認するかどうか? その気になれば、インドはいつでもこんな計画など、ぶち壊すことができるだろう。


 ■朝霧に浮かぶ摩天楼。カトマンズ開発も急ピッチ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/09 at 10:30

カテゴリー: 経済, 外交, 中国

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エベレストに赤旗,マオイストの快挙

エベレストを征服し,赤旗を立て,世界最高峰の高みから世界マオイスト革命を指導する,というのがネパール毛沢東主義派の立党以来の目標だった。その念願が,5月26日,ついに達成された。

英雄プラチャンダ議長の名代,プラチャンダJr(プラカシ・ダハール)を中心とする総勢15人のマオイスト登山隊が,「ルンビニ=エベレスト平和行進2012」を掲げ,エベレスト登頂に成功したのだ。

マオイスト登山隊は,「ルンビニの土」とネパール国旗・マオイスト党旗をもって登頂した。ブルジョア反動メディアは報道していないが,おそらく山頂で国旗と赤旗(党旗)を掲げ,「ルンビニの土」つまり「仏舎利」を奉納したのではないだろうか。国家と党と仏陀! さすがマオイストは偉大だ。

少々残念なのは,時期がいささか悪かったこと。本来なら,マオイスト主導下に新憲法が制定され,ルンビニでは国連事務総長をはじめ世界の著名指導者多数を招き「仏前平和祭典」が賑々しく開催されているはずであった。ところが,無念なことに,反動勢力に妨害され,いずれも水泡に帰し,ネパールは目下,大混乱,戒厳令か国家解体かの瀬戸際にある。せっかくの登頂が,台無しにされてしまった。

しかし,そこはマオイスト,この逆境だからこそ,エベレスト登頂の意義もあろうというもの。世界最高峰に党旗をたて,マオイスト革命を訴えかける。さすがイデオロギー政党,健気なものだ。こうした不屈の信念があったからこそ,王制打倒,封建制解体,カースト・ジャナジャーティ差別撤廃,女性蔑視禁止などの偉大な目標が多数達成されたのだ。

マオイスト設立の頃,エベレストに赤旗を立てることを党是に組み込んだのが誰であったかは定かではないが,こうした無邪気な,しかしそれだけに人心を巧みに捉えることができるスローガンを思いついたのは,おそらくプラチャンダであろう。

自分の息子に「赤旗」と「仏舎利(ルンビニの土)」を持たせ,エベレスト山頂から「マオイスト革命」と「平和」を世界に向かって訴えかけさせる。こんな奇想天外な,愉快な大事業をやれるのは,われらが英雄プラチャンダ以外にはありえない。

プラチャンダの道(Prachanda Path)」は,エベレストの高みに達した。プラチャンダ議長,万歳!

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/05/27 at 19:39

カテゴリー: マオイスト

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プラチャンダご令息のエベレスト計画,頓挫

プラチャンダ議長のご令息プラカシ氏が,他のマオイスト同志10人と「ルンビニ・サガルマタ平和隊2012」を組織し,エベレスト(サガルマタ)登頂を目指すことになった。世界最高峰に赤旗がひるがえるのは壮観であり,はるか下界にルンビニのパン国連事務総長見下ろす,というその心意気は諒としたい。さすが,英雄プラチャンダ議長のご令息だけのことはある。

マオイスト政府も,この登山計画を高く評価し2千万ルピーの国費支援をすることにした。ネパールの「輝ける道」(「プラチャンダの道 Prachada Path」ともいう)がエベレストに達する記念すべき事業だから,これも当然だ。

ところが,どこにでも了見の狭い小人はいるもので,プラカシ登山隊への国費支出に対し,ねたみ,ひがみタラタラ,NC,UMLなどから文句が噴出した。また,栄光登山から外された身内のYCLからも,恨み節が聞かれ始めた。

NC系学生団体NSUにいたっては,いやがらせに支援キャンペーンをやり,2千万ルピーを集め,登山隊に寄付するという。まるで,漫画のような抗議運動だ。

もし登山隊の先頭に立つのがプラチャンダご本人なら,そんなひがみ,ねたみなど意に介さず,NSUが2千万ルピーくれるというのなら,「はい,ありがとう」といって受け取り,国費2千万ルピーと合わせ,豪勢にエベレスト登山をするだろう。豪華であればあるほど,箔がつく。

この「世界に輝けるネパール」を目指すプラチャンダ人民王に対し,首相のバブラム氏は、有能ではあるが,民草の1人にしかすぎない。ちまちま世俗的な心配をし,公用車にはネパール国産ムスタン車を使用,国連出張にもエコノミーを利用する。しかし,小国首相(実質的元首)がエコノミーを使用したら,貧乏くさく,惨めなだけだ。お金が無いのだな,おかわいそうに,と同情を引くだけ。

これに対し,エベレストに赤旗を立て,矮小資本主義諸国を見下ろし,国連をもひれ伏させることを目指すのがプラチャンダ登山隊――希有壮大,夢がある。2千万ルピーくらい,安いものだ。

ところが,残念ながら,登山隊を実際に率いるのはプラカシ人民皇太子。世間の批判にたじろぎ,たちまち腰砕け,国費2千万ルピーを辞退してしまった。こりゃダメだ。登山はするであろうが,私費と国費では重さが違う。そこのところが,人民皇太子には分かっていない。が,2代目だから仕方ないだろう。

■”Govt decision to aid Dahal son’s Everest team draws flak,” ekantipur,MAR 16
■”Dahal son’s Everest team to get crores,” 2012-03-17,HIMALAYAN NEWS SERVICE
■”Frugal PM Gives Rs 20m For Maoist Everest Bid,” myrepublica.com, March 17
■Binod Ghimire,”Country outraged by ‘birth of new princelings’,” ekantipur,MAR 18
■”NSU collects symbolic donation for Dahal’s son,” ekantipur,2012-03-18 04:35
■”Dahal’s son to reject govt’s aid,” ekantipur, MAR 18

谷川昌幸(C)

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2012/03/19 at 10:51

訪ネは正当,国連弁解

クルチャンドラ・ゴータム氏の手厳しい批判がこたえたのか,国連側が必死になって弁解している。
  ■”Peace process Ban’s key agenda,” ekantipur, 2012-3-15

記事によると,パン国連事務総長の4月末訪ネの主目的は,和平促進だ。国連は,2006年以来,ネパール和平を支援し,2011年のUNMIN撤退後も,関与し続けてきた。

「パンはルンビニのためだけに来ると考える人がいるとすれば,それは事実に反する。」

国連はかなり怒っている。そりゃそうだ。ゴータム氏の批判は,正確に急所を衝いているからだ。

小国ネパールが,国連や中国,韓国を相手に,堂々と論戦を挑む。立派なものだ。ネパール外交からも学ぶべきものは多い。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/15 at 10:07

カテゴリー: 外交, 平和

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パン事務総長の訪ネ批判:ゴータム元国連事務次長補

パン国連事務総長の4月末ルンビニ訪問について,元国連事務次長補(Assistant Secretary-General)のクルチャンドラ・ゴータム氏が,厳しく批判している。ゴータム氏は,ユニセフ元副事務局長でもあり,ネパール国連外交の代表的人物。
 ■Kul Chandra Gautam,”Wrong visit at the wrong time,The questionable wisdom of Ban Ki-moon’s proposed visit to Lumbini,” Nepali Times, March 12, 2012

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ゴータム氏の訪ネ反対理由は,人民戦争の決着もつかず,新憲法もできていないのに,時期尚早ということ。人民戦争中の人道犯罪や人権侵害については,誰1人責任を問われていない。それどころか,マオイストはつぎつぎと高位要職に就き,すべて免訴・免責にしようとしている。

国連も情けない。UNMINは無能として追い出され,今度は高等人権弁務官事務所も追い出されようとしている。そしていま,「ルンビニ国際会議・議長」のエサで,パン事務総長がプラチャンダ議長に釣られようとしている。

プラチャンダ議長は,1万5千の死者と無数の犠牲者を生み出した人民戦争の張本人だ。しかも,まだ暴力革命路線を放棄してはいない。

「国連事務総長が,神聖な仏陀生誕地で開催される国際会議において,血染めの手を恥じることのないマオイスト指導者とともに共同議長を務めるとは,なんたる皮肉か。・・・・聖地の国際会議で国連事務総長が共同議長を務めるのは,平和を願うネパール人ばかりか世界中の多くの仏教徒に対する許しがたい冒涜である。」

それに,「アジア太平洋協力交流基金(APECF)」や「国連工業開発機関(UNIDO)北京事務所」も怪しい。もしパン事務総長が訪ネするというのなら,次の3条件を満たしてからだ。
 (1)マオイストとプラチャンダ議長に暴力放棄を確約させること。
 (2)人道犯罪,人権侵害の罪を問わないような「真実和解委員会」を拒否すること。
 (3)マオイスト戦闘員の統合・復帰を完了すること。

もしこれらの3条件が満たされるなら訪ネもよいが,だめなら,訪ネをキャンセルするか,少なくとも3条件を明言すべきである。

このクルチャンドラ・ゴータム氏の批判は,正論である。私もそう思う。しかし,プラチャンダ議長の偉さは,そのような正論は分かった上で,力と金の現実の流れを読み,それを利用して事態を思う方向へ動かそうとしている点にある。

おそらくパン事務総長も,利用されることは十分に分かった上で,利用するプラチャンダを利用して和平を実現させようとしているのだろう。

そして,プラチャンダ議長は,利用されることが分かった上で利用されようとしているパン事務総長を利用して自分の描く和平を実現しようとしているのだろう。ひょっとすると,大物ゴータム氏に正論を吐かせているのは,プラチャンダ議長かもしれない。

いやはや,ネパール政治はスゴイ。ステーツマンシップのモデルとして研究する価値は十分にある。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/14 at 13:46