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セピア色のネパール(2)
カトマンズ盆地の古都が好きになった理由の一つが,レンガ敷き路地。下の写真は1993年8月のものだが,これらを見ると,通路はレンガ敷きだ。広いバス道路以外は,まだ多くがレンガ敷きだったのだ。
レンガ敷き路地は情緒があり大好きだが,自動車が進入し始めると,あっという間に傷み,コンクリートかアスファルトに変えられてしまう。いまのキルティプルがその好例。あと2,3年もすれば,レンガ敷き通路はほとんどなくなってしまうであろう。
また,1993年の写真を見ると,カトマンズ盆地でもまだ裸足の人がかなりいたことがわかる。まだ,裸足でも危険ではなかったのだ。私自身,村では裸足で走り回っていた。いま,そんなことをすれば,すぐ怪我をする。裸足が野蛮というのは,文明病患者の偏見に過ぎない。
谷川昌幸(C)
田園に降り立つ神
2012年11月9日午後,キルティプール西方,バルクー川をさかのぼり,サラスワティ寺/マハデブ寺付近の茶店の外で茶をすすり,何となく田園風景を眺めていた。風もなくポカポカ,快適な小春日和。
ちょうど稲の取り入れ。あちこちで稲刈り,脱穀,稲藁たばねが行われている。稲作以外の田畑や空き地には,菜の花,マリゴールド,ブーゲンビリア,ラルパテなど,花々が咲き乱れている。その向こうには,「秋霞」にぼんやりと,煉瓦工場の煙突が浮かんでいる。幻想的な田園風景。
と,そのとき突然,何の前触れもなく,目の前の田圃で農作業をする女性二人のそばから,稲藁がふぁふゎと浮き上がり,頭上付近を舞い,やがて空高く飛び去っていった。女性たちはあっけにとられ,呆然と,ただ眺めるだけ。これは神風だ! 稲の収穫をご覧になった神が,田圃に降り立ち,農民を祝福し,再び天空へと舞い上られたにちがいない。
いまどき,こんなことを言うと,「非科学的」,「神がかり」などとバカにされるだろうが,小春日和の幻想的な田園風景の中に神を見ない者こそ,不幸である。局地的な小さな上昇気流が発生した――そんな「科学的」説明には,何のリアリティもない。
谷川昌幸(C)
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