ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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インド総選挙とネパールと中国

インド総選挙(開票5月16日)で,BJP(人民党)が282議席を獲得し大勝した。インド会議派(INC)は44議席にとどまり,惨敗。

140518a■印総選挙結果(http://www.cnbc.com/id/101678624)

この隣国の総選挙の経過を,ネパールの大手メディア(英語)はほとんど報道してこなかった。開票によりBJPの大勝が判明しても,メディアの扱いはそれほど大きくはない。少し詳しい記事は,AFPや新華社など外国通信社の配信を使って済ませている。まるで,遠い外国の出来事の一つのような,淡泊な扱いだ。

確実視されているBJPモディ政権成立についても,ネパール側の報道は,少ない。各紙は,コイララ首相がモディ氏との協力について語ったとか,パンディ外相が印ネ関係は変わらないだろうと語ったとか,短く伝えるだけ。また,元駐印大使で知印派のLR・バラ―ル氏やBB・タパ氏も,対ネ政策の基本に変化はないだろう,と簡潔に語るにとどめている。大喜びしそうなカマル・タパ氏ですら,これを王政復古のチャンスに利用するそぶりは,今のところまったく見せていない。どの勢力も,「シカト」とまではいわないまでも,そのように見える態度だ。

140518b ■カナルUML議長(UML HP)

これと対照的なのが,中国に関すること。印総選挙のさなか,統一共産党(CPN-UML)のカナル議長が訪中した。20名の大訪中団で,5月6-16日の10日間。この様子は,インドのことなどまったく眼中にないかのように,各紙とも遠慮なく,大胆に報道した。(ほぼ同時期のバブラム・バタライUCPN-M幹部の訪中については,「軽い日本,重い中国」参照)

報道によれば,カナル議長は,李源潮副主席との1時間以上に及ぶ会談において,「一つの中国」を確認した上で,ラサ―シガツェ鉄道のカトマンズ延伸を強く要請した。そして,テレグラフ記事(5月18日)によれば,カナル議長は,こうもいったという。

「中国の鉄道がカトマンズまで延伸されれば,ネパールはこれまでの内陸封鎖(landlocked status)の束縛から解放されるであろう。」

さらにまた,カナル議長によれば李副主席がこういった,とテレグラフは書いている。

「中国は,ネパールの内政に干渉はしないが,しかし,もしネパールの主権が外国勢力により脅かされるようなことがあれば,中国はネパールの側に立つであろう。」

この前か後か分からないが,李副主席は「中国は,ネ印関係の強化を願っている」とも語ったそうだから,李副主席の発言の意図は必ずしもはっきりしないし,またこれはカナル議長からの又聞きだから,この通りの発言があったのかもはっきりしない。

しかし,そうした留保をした上で,もしテレグラフ記事が大筋では間違いないとするなら,カナル議長やテレグラフ,あるいは同趣旨の記事を書いた他紙は,ずいぶん大胆だといってよいだろう。これは,インド総選挙にたいする「シカト」のような態度とは大きく異なる。

インドに対しては,ネパールには,何をしても大丈夫だという,子供のような依存と甘えがまだあるのではないか? しかし,たとえそうだとしても,最近は少々やり過ぎではないか。チベット鉄道延伸にせよ,中国援助のダムや南北道路や国際空港の建設にせよ,慎重に進めないと,BJP中心の強力モディ政権が成立するインドが,堪忍袋の緒を切り,ネパールへの直接介入に踏み切る恐れは十分にある。そして,それを,もし中国が座視しないとするなら・・・・。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/18 at 21:05

中ネ軍事協力,さらに強化

人民日報(7月24日)など各紙報道によれば,ネパール国軍ラナ総監は,1週間の公式訪問において,中国人民解放軍の房峰輝総参謀長(中央軍事委員会委員)らと会談し,両国間の軍事協力促進で合意した。

中国はすでに2011年,770万ドルの対ネ軍事援助を約束。今回は,その着実な実行とともに,両国軍幹部の交流や将兵教育訓練協力の促進が約束された。

ネパール側は,「一つの中国」支持と,ネパールにおける「反中国活動」取締りを約束し,中国側はこれを高く評価した。

これを見ても分かるように,中国は外交巧者。最近の日本も,軍事ではなく外交で中国に負けていると反省すべきだろう。

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 ■米中「接近」(PLA Daily)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/07/28 at 15:26

カテゴリー: 軍事, 外交, 中国

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中印覇権競争とプラチャンダ外交(4)

6.プラチャンダの訪中
(1)中国のネパール接近
中国がネパールをこれまで以上に重視していることは,間違いない。アジア太平洋研究所Wang Hong-wei教授は,こう述べている(ekantipur, Apr22)。

「プラチャンダは,中国新指導者習近平と会った南アジア初の指導者となった。これは,北京が何を重視しているか,よく示している。」人民大会堂での会談は,極めて友好的に進められた。「この訪問は,戦略的に重要なものだと思う。」

ネパールが重要になったのは,四川大学Zhang Li教授もいうように,チベット問題と南アジア進出のためである。「北京は,ダハール訪中を重視している。というのも,ネパールは,チベット問題にとっても,また南アジアへの中国進出にとっても,地政学的に重要だからである。」(ibid)。

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 ■プラチャンダ議長と習近平主席:人民大会堂,4月18日(中国外務省HP)

(2)チベット問題
中国がネパールを重視する直接の最大の理由は,チベット問題である。新華社(4月19日)は,こう伝えている。

「[習近平主席は]ネパール側が,長期にわたり一つの中国政策を堅持してきたことを高く評価した。」

「プラチャンダ議長は,ネパール側が,一つの中国政策を堅持し,習近平氏を総書記とする中国共産党中央の指導の下で中華民族が偉大な復興を実現するという中国の夢が必ず実現できると確信している,と表明した。」

プラチャンダは,このような中国側の「一つの中国」要求を十分理解した上で,すかさずそれを経済援助と結びつける。

「ネパールの繁栄こそが,一つの中国政策を効果的に促進し,チベットにおける中国の安全保障に寄与することになるだろう。」(ekantipur,Apr22)

これを受け,中国現代国際問題研究所Hu Shisheng所長も、こう述べている。

「安全保障と経済発展は,相互に関連づけられることにより,促進される。ネパールを含むこの地域全体が発展すれば,安全保障上の脅威はなくなるであろう。」(ibid)

プラチャンダは,チベット問題対処と引き替えに,ダムや道路や空港の建設,観光開発などへの中国援助を要請したのである。

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 ■豊かで幸せな新チベットと貧しく不幸な旧チベット(在ネパール中国大使館HP)

(3)中印ネ3国協定
さらにプラチャンダは,「中印ネ3国協定」も提案している(The Hindu,Apr27)。

「ネパールは,地政学的位置あるいは地理からして,隣の両大国との協力によってのみ発展し,独立を守りうる。地理に規定されたこの歴史的真理と政治発展を考えるなら,3国協定こそが,3国すべての利益となると,私は考える。が,これはネパールよりもむしろインドと中国にとって,利益が大きいであろう。」

中印等距離外交ということだろうが,ネパールは伝統的にインド勢力圏内であったので,中国からすれば,これは願ってもない提案ということになる。

マオイストは,ヘトウダ第7回党大会において,人民戦争・文革路線からの転進を宣言し,中国接近への障害をなくした。プラチャンダ自身,「中国共産党の今の政策から学ぶべきだ」と明言している(The Hindu,Apr27)。今後,中国援助による巨大ダム建設,ポカラ空港建設,ラサ=カトマンズ=ルンビニ鉄道建設,南北縦断4道路建設,ルンビニ大開発等が具体化していけば,プラチャンダ利権はますます拡大・強化されていくだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/05/10 at 10:48