ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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ケネディ大使,ジュゴン保護を!

ケネディ大使のイルカ漁非難は,先述のように政治戦略に基づく発言であり,それ以上の正当な根拠は見あたらない。

もしイルカに限らず動物が保護されるべきなら,それは,不殺生倫理によるか,さもなければ人間のための自然保護を根拠とすべきである。ケネディ大使は不殺生倫理の立場はおとりではないはずなので,とすれば,当然,自然保護を非難の根拠とされるべきである。

これはキリスト教の教えにも合致している。聖書は,人間と他の被造物を峻別する。人間は他の被造物すべてを支配し利用する権利を神により与えられ,その限りで他の被造物を保護する。動物保護の根拠は「人道性」ではなく,人間による自然の有効利用にほかならない。

たとえば,パンダを殺して食べるのを禁止するのは,パンダの「知能が高い」からでも「かわいい」からでもない。もしパンダ猟を禁止しなければ,すぐパンダが絶滅してしまうからにすぎない。「かしこさ」や「かわいらしさ」が同情を呼ぶとしても,保護の目的は,あくまでも神の創造になる自然秩序を維持し,もって人間生存の神与の目的に資することである。

さて,もしそうだとするなら,ケネディ大使が率先して反対の声を上げ,本国政府に申し入れるべきは,沖縄のジュゴン保護である。

いま沖縄では,米軍が日本政府と協力し名護市辺野古の近海を埋め立て,広大な軍事基地をつくろうとしている。もしこれが強行されれば,ジュゴンはむろんのこと,他の多くの貴重な動植物が死滅の危機に瀕する。

神の前での宣誓を慣行とされる国の大使として,ケネディ閣下は,本国政府に対し,ただちに辺野古基地建設の中止を進言されるべきであろう。

また,イルカやクジラの捕獲反対を叫ぶ動物愛護団体に対しては,いまこそ辺野古に結集し,基地建設反対に立ち上がれと檄を飛ばされるべきであろう。

これは,けっして過激な極論ではない。すでにN・チョムスキー,M・ムーア,J・ダワー各氏をはじめ,内外の多くの人々が,辺野古米軍基地建設反対,ジュゴンを守れ,と世界に向け訴えかけている。ケネディ大使にも,ぜひ,この平和の訴えへの支援をお願いしたい。

   140122  ■美しい辺野古の海(Google)

【参照】
International Scholars, Peace Advocates and Artists Condemn Agreement to Build New U.S. Marine Base in Okinawa
   (……) the US and Japanese governments planned to close Futenma Marine Air Base in the middle of Ginowan City and move its functions to a new base to be constructed at Henoko, a site of extraordinary bio-diversity and home to the endangered marine mammal dugong. (…..)
   We support the people of Okinawa in their non-violent struggle for peace, dignity, human rights and protection of the environment. The Henoko marine base project must be canceled and Futenma returned forthwith to the people of Okinawa.
   January 2014
Noam Chomsky, John W. Dower, Michael Moore, Oliver Stone, et. al.

世界の識者と文化人による、沖縄の海兵隊基地建設にむけての合意への非難声明
 辺野古は稀に見る生物多様性を抱え、絶滅の危機にある海洋哺乳動物、ジュゴンが棲息する地域です。・・・・
 私たちは、沖縄の人々による平和と尊厳、人権と環境保護のための非暴力のたたかいを支持します。辺野古の海兵隊基地建設は中止すべきであり、普天間は沖縄の人々に直ちに返すべきです。
    2014年1月
ノーム・チョムスキー,ジョン・W・ダワー,マイケル・ムーア,オリバー・ストーンほか
(http://peacephilosophy.blogspot.ca/2014/01/international-scholars-peace-advocates.html)

Defense Bureau keeps information on dugongs from the public [Editorial, Ryukyu Shimpo, Sep.24, 2013]
   Three times in the past, the International Union for Conservation of Nature (IUCN) has recommended action to save the dugongs. That Japan and the United States continue to ignore this recommendation is sinful in the extreme…..
   That they are prepared to cause damage to the sea in order to build a military base is contrary to the global trend of strengthening environmental protection policies. Government officials should feel pangs of conscience for what they are doing to the sea, which is so valuable and rich in biodiversity.

ジュゴン情報非公表 普天間撤去は逆転の発想で (琉球新報社説2013-9-24)
 辺野古埋め立てに関しては、国際自然保護連合(IUCN)も過去に3度、ジュゴンの保護を勧告している。日米が勧告を事実上無視し続けていることは罪深い。・・・・
 海を破壊し軍事施設を建設するという発想自体が、環境保護政策の強化を求める世界潮流に逆行している。政府当局者は、生物多様性に富んだ貴重な海を痛めつけることの罪悪を自覚すべきだ。
(http://english.ryukyushimpo.jp/2013/10/05/11911/) (http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-212912-storytopic-11.html)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/01/22 at 17:06

イルカ漁非難,その反キリスト教的含意と政治的戦略性

1.ケネディ大使のイルカ漁批判
ケネディ駐日大使が,イルカ追い込み漁の「非人道性(inhumaneness)」を,ツイッターで非難した。

140120

この発言自体は,「人間」と「非人間」の区別さえしない,お粗末きわまりない感情的非難であり,聖書の教えにすら反する単なる言いがかりにしかすぎない。

それにしても,いったい誰が,いつ,何の目的で,”human”に “e“をつけ,”humane“とし,ご都合主義的にごまかす巧妙な詐術を考えついたのだろう。われわれ日本人は,はるかに論理的な日本語を使う民族であり,こんないい加減なアメリカ語に卑屈に屈服すべきいわれは,みじんもない。

だが,そこは老獪なアメリカ,そんなことは十分わかった上で,長期的観点から戦略を立て,日本にたいし,この文化的非難攻撃を仕掛けているとみるべきだ。

だから,いくら腹が立とうが,感情的に反発しては負け,アメリカ以上の戦略を立て,冷静かつ論理的に,このケネディ大使発言に断固反論し,世界社会の共感を勝ち取っていくべきであろう。

2.二枚舌の戦術と戦略
アングロサクソンは,政治的能力に長けた民族。短期的戦術と長期的戦略を組合せ,二枚舌を巧妙に使い分け,目標を達成する。単線化,単純化しやすい非政治的民族日本人より,はるかに懐が深いといってよい。

たとえば,ヨーロッパの片田舎の不合理で不便な英語を数百年以上かけ「世界共通語」にしたし,敗戦日本には食パン学校給食を強制し,米作中心の日本農業を衰退させた。コンピューターでも,初期段階で,優秀な日本製基本ソフトを政治的圧力により開発継続断念に追い込み,出来の悪かったアメリカ製を普及させ,その結果,いまや日本はアメリカの電脳植民地。そのうち,日本語そのものが,「不公正な貿易障壁」とみなされ,攻撃され,アメリカ語の公用語化を強要されるであろう。(英語帝国主義への屈服の見本が「美しい国」の安倍首相)。

ケネディ大使のイルカ漁「非人道性」攻撃は,この文脈で見なければならない。

3.「動物の平等権」の侵害
米大使のイルカ漁批判は,言い方を変えれば,米国における牛の近代的・合理的・科学的な屠殺は「人道的」であるのに対し,日本におけるイルカの伝統的・文化的な追い込み漁は「非人道的」だ,ということだろう。なぜか? それは,おそらく牛はバカだが,イルカは知能が高く人間に近いから,ということだろう。

私は,小学生の頃,牛部屋の隣で寝起きし,毎日のように牛の世話をしていた。だから,たぶんケネディ大使より,牛には詳しいはずだ。私にとって,牛はたいへん賢く,忍耐強く,平和愛好的で,「女神」のように優しかった。イルカと暮らしたことはないが,おそらく牛は,イルカと同等かそれ以上に賢いといってよいであろう。

しかし,たとえ百歩譲って牛がイルカより少々知的能力が劣るとしても,それをもって牛(や他の動物たち)とイルカを差別するのは,「動物の平等権」の侵害だ。人間の都合で,動物と動物を差別するのは,不当,不公平であり,許されない。

4.生命の尊厳と「人道的」屠殺
これは自明のことであり,アメリカもそんなことは十分わかっている。それにもかかわらず,イルカ漁を非難するのは,別の目的があるからに他ならない。

一般化していえば,近代的・合理的・科学的に――つまり経済活動の一環として――「人道的」に殺害できる動物は,殺して食ってもよいから,大いに食え! ということ。要するに,アメリカン・ビーフを食え,ということだ。

敗戦のドサクサに紛れ,日本にパン食文化を押しつけ,日本を米国産小麦粉の大市場にしたように,日本人にもっと牛を食わせ,米産牛肉の市場を拡大するのが,米戦略なのだ。

しかも,米国において牛は「人道的」に屠殺され,その現場は可能な限り市民生活から隔離されている。私たちは,牛(や他の動物)がこのように「人道的」に殺されれば殺されるほど,私たち自身が彼らの「生命」を食べて生きていることを忘れてしまうのである。

これが,意識されてはいないだろうが,実際には,動物愛護運動の隠された目的のひとつだ。いや,それが言い過ぎだとするなら,少なくともその善意は金儲けのために巧妙に利用されているといってもよいであろう。

5.南アジアもターゲットか?
しかも,狙われているのは,日本だけではあるまい。日本以上のターゲットは,おそらく南アジアの巨大なヒンドゥー教文化圏であろう。

むろん,この地域には,仏教やジャイナ教などの不殺生の幅広い強力な伝統があり,牛を殺して食うことはタブー。しかし,たとえそうであっても,「死」や「(殺すための)暴力」が,こうして,まるで存在しないかのように,きれいに隠されてしまえば,目にするのは単なる食品の一つとしてのパックされた「ビーフ」にすぎなくなる。そうなれば,ヒンドゥー教徒にとっても,牛肉への敷居は,おそらく低くなるであろう。それは商品としてのパック食品であり,したがって消費さて当然ということ。

しかと確かめたわけではないが,ネパールでは,すでに「ビーフ」は日常的に消費される食品の一つとなりつつあるという。

南アジアは,巨大な人口を擁し,なお急増しつつある。その南アジアに,もし牛肉食文化を受け入れさせれば,アメリカや他の牛肉生産国は,巨大なマーケットを手にするわけだ。牽強付会? そうかどうか,あと数十年もすれば,わかるであろう。

他の論点については,下記記事をご参照ください。

【参照】
動物の「人道的」供犠:動物愛護の偽善と倒錯
動物供犠祭への政治介入:動物権利擁護派の偽善性
インドラ祭と動物供犠と政教分離
毛沢東主義vsキリスト教vsヒンズー教
中国援助ダムに沈黙のNGOとマオイスト

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/01/20 at 14:16