ネパール評論 Nepal Review

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多国間共同訓練に自衛隊参加

ネパールで多国間共同訓練(GPOI)「シャンティ・プラヤ3」(3月20日~4月3日)が始まり,日本の自衛隊も「中央即応集団」の隊員2名が教官として参加している。(中央即応集団はUNMINにも派遣された。)
 【参照】ネパールでのPKO訓練に日本も参加カーターセンターと米太平洋軍とネパール(2)

GPOIは,2005年度から始まった米国支援の国際平和活動のための訓練プログラム。アジア地域では,米国太平洋軍主導で,ネパール,バングラデッシュ,カンボジア,タイ,インドネシア,マレーシア,モンゴルで開催されてきた。

ネパールでの訓練作戦名「シャンティ・プラヤ[プラヤス]」は,「平和への努力」の意。第1回はGPOI発足以前の2000年だが,GPOI発足後はそのプログラムとして2013年に第2回が実施され,そして現在,3回目が実施されている。

今回の「シャンティ・プラヤ3」の実施場所は,以前と同様,パンチカルの「ビレンドラ平和活動訓練センター」。参加国はパキスタン,バングラディシュ,スリランカ,タイ,インドネシア,マレーシア,ベトナム,ガーナ,オーストラリア,英,米,日など28か国で,参加人員は計1024人。

この「シャンティ・プラヤ3」訓練はネパール国軍主催,米太平洋軍後援ということになっているものの,実際には米軍主導の感は否めない。開会式ではハリー・ハリス・Jr米太平洋軍司令官が,「名誉ある平和」のための「平和への努力」を訴え,「ネ米関係は強力であり,さらに強化されていく」と語った。また,A・B・テプリッツ駐ネ米大使も,米国による「シャンティ・プラヤ」支援の意義を力説した。

「シャンティ・プラヤ3」は,たしかに国際平和活動のための訓練だが,実施場所のパンチカルはチベット国境の近く。そのような場所での米軍色の濃い訓練に,日本政府は陸自最精鋭の中央即応集団から教官2名を派遣している。面白く思わない国もあるのではないか?


■シャンティ・プラヤ3(国軍HP)

■米太平洋軍ツイート


■米太平洋軍司令官・駐ネ米大使・プラチャンダ首相(米大使館HP)

*1 “Shanti Prayas-III begins today,” Kathmandu Post, Mar 20, 2017
*2 “Exercise Shanti Prayas III kicks off, 28 countries taking part,” Himalayan Times, March 20, 2017
*3 “Exercise Shanti Prayas –III,” nepalarmy.mil.np/covernews1.php?
*4 “Global Peace Operations Initiative (GPOI),” US Department of State
*5 “Shanti Prayas Exercise Commences in Nepal,” U.S. Department of Defense, March 21, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/28 at 10:52

UNMIN代表、マオイストの使い走り

偉大なプラチャンダ議長が12月30日、カリン・ランドグレンUNMIN代表と会い、UNMIN延長について打診した(ekantipur,31Dec)。

ランドグレン代表の回答は伝えられていないが、マオイストはUNMINを2011年5月28日まで延長することを要請する書簡を書き、その写しをランドグレン代表に渡し、しかもその書簡正文をランドグレン代表に国連本部に持って行ってもらうことにしたというから、UNMIN延長についてはランドグレン代表も内諾を与えているのだろう。マオイストのUNMIN延長要請書簡は、1月5日開催の安保理で審議される予定。

状況はよく分からないが、政府側もUNMIN延長書簡をすでに出しているという。あれあれ、役立たずだから出て行け、と大見得を切ったのは誰だったかな?
 (注)政府のUNMIN延長書簡は誤報。ネパール首相は延長拒否書簡を送った(2011.1.5)。UNMIN延長拒否、ネパール首相

どうも、国連の方が分が悪い。いくら何でも国連には、アメリカが「テロリスト」リストに掲載しているマオイストと共闘を組むことはできまい。かといって、マオイスト要請を無視して撤退すれば、UNMIN失敗の無惨を世界にさらすことになる。これもできまい。

とすると、UNMINにかわる平和構築メカニズムをつくり、これに切り替えることになるのではないか。役人の得意技、看板の掛け替えである。

もしそうなった場合、われらが日本国陸上自衛隊中央即応集団派遣陸上自衛隊員諸氏の活動の評価と、その継承はどうなるのであろうか?
UNMIN代表と日本企業宣伝。戦争も平和もメシのタネ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/12/31 at 23:37

陸自隊員UNMIN派遣,4ヶ月延長

日本政府は11月16日,「ネパール国際平和協力隊」(陸自隊員UNMIN派遣)を4ヶ月延長し,2011年3月31日までとした。

ネパール派遣陸自隊員は,日本政府が直接指揮しているわけではない。陸自隊員は,「中央即応集団(CRF)」司令部所属とされ,そこから「個人として」UNMINに派遣され,UNMIN指揮下で停戦監視活動に当たっているのだ。

この「中央即応集団」は2007年3月28日に編成され,国内の緊急事態(テロなど)への対処と,国際平和協力活動を主な任務としている。これは軍と民の間の灰色部分,自衛隊にとっては未開拓の広大な中間地帯である。防衛省はここに目をつけ,軍民協力を促進し,自衛隊の国内外での活動を急拡大させるための尖兵として,中央即応集団を設置したのである。

その自衛隊にとって,陸自隊員UNMIN派遣は絶好のチャンスであった。中央即応集団の編成が2007年3月28日(朝霞駐屯地発足3月31日),陸自隊員(中央即応集団司令部所属)のネパールへ向けての出発が3月30日。ネパール国際平和協力隊は,中央即応集団発足の祝砲,その尖兵といってよいであろう。

しかも,防衛庁は2006年12月の「省」昇格関連法の成立により「省」に昇格し,それと同時に,念願の自衛隊海外活動も晴れて「本来業務」となった。その防衛省にとって,自衛隊の「本来業務」としての初の海外活動が,このネパール国際平和協力隊だったのである。

ネパールは日本では絶大な人気があり,そこでの停戦監視活動にも危険はほとんど無い。ヒマラヤも象も寺院も,素朴な村や子供も,全部「本来業務」としての海外活動の宣伝に使い放題。日本政府が,当事国のネパールや国連以上に陸自隊員のネパール派遣(派兵)に積極的なのは,そのためであろう。前のめり,イケイケドンドンなのだ。
(防衛省幕僚監部HP)

周知のように,ネパールは印中両大国にもまれ外交上手,国連に平和構築支援を要請しつつ,国連が受諾して本格介入し,大金も投入し,引くに引けない状態になると,掌を返したように国連の「無能」を非難し,ちゃんとやれないなら「出ていけ」とさえ要求し,国連とギリギリの取引をしている。実にしたたか,たいしたものだ。

これに対し,国連も,UNMIN派遣期間の延長を当初の1年から,半年ごと,4ヶ月ごとに設定し,それをカードに,ちゃんとやらないなら本当に引き上げるぞ,と脅し,ネパール側の平和努力を要求している。国連もネパール側とギリギリの外交交渉をしているのだ。

国連の次のUNMIN派遣期限は,2011年1月15日まで。これ以上の延長はしない,と国連は宣言している。ネパール側に突きつけた最後通牒なのだ。(実際には,何らかの形で延長される可能性はある。)

これに対し,不思議なのが日本の陸自UNMIN派遣の期間延長。日本の「ネパール国際平和協力隊」派遣(日本出発)は3月30日,UNMIN発足の2ヶ月半後であったため,派遣期間設定がその分ずれることはあり得るが,3年も経過し,国連が「延長」カードを使うため延長期間を4ヶ月ごとに設定し始めても,日本政府はなぜかそれに合わせることをせず,国連の期間延長の先回りをし,UNMIN派遣期限よりも数ヶ月先を陸自派遣の期限に設定してきた。

2010年1月UNMIN期限5月15日まで延長に対し,3月陸自派遣7月31日まで延長。5月UNMIN9月15日まで延長に対し,7月陸自派遣11月30日まで延長。9月UNMIN2011年1月15日まで延長(最後)に対し,11月陸自派遣2011年3月31日まで延長。

陸自派遣期間は,発足時を除き,つねにUNMIN派遣期間より2ヶ月半先までとなっている。発足が2ヶ月半遅れたのと,期間設定の技術的な問題もあるのだろうが,3年以上もたっているのであり,調整ができないはずはない。

日本政府が,つねに国連の先回りをし,陸自派遣期間を延長してしまえば,日本政府は「延長」カードを使用できないし,国連の「延長」カードの効果も殺いでしまう。日本政府は,2大国中国とインドの間に陸自隊員を派遣している,つまり派兵しているのだ。見方によれば,これはかなり大胆な,危険な政策だ。一刻も早く任務を完了し撤退,つまり撤兵するということは考えていないのであろうか。

ネパール陸自隊員派遣は実際には派兵であり,憲法上許されるはずもないが,それをひとまず棚上げしても,なぜ日本政府が国連の先回りをして派遣期間を延長しなければならないのか,なぜそんなに前のめりにならなければならないのか,どう考えても合点がいかない。やはり,「ネパール国際平和協力隊」を自衛隊海外活動の尖兵として利用することが最大の目的となっているのではないだろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/11/22 at 10:17

カテゴリー: 外交, 平和

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