ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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ネパール共産党の発足と課題(3)

3.UML系とMC系の派閥争い
党名以上に問題なのが,新生ネパール共産党(NCP)のキメラ体質。党内2大派閥のUML系とMC系は,合併を機に差異解消・融合に向かうというよりも,むしろ対立抗争の継続・激化に陥る危険性の方が大きそうだ。

(1)UMLによるMC吸収合併
ネパール共産党は,UMLとMCの対等合併を建前としているが,議会第1党であったUMLと第3党であったMCの間には大きな力の差があり,実際には,この合併はUMLによるMCの吸収合併の色彩が濃い。そのため,あちこちで無理が生じ,軋轢が激化し始めている。

そもそも合併調印・新党発足は,マダン・バンダリ追悼日の5月17日のこと。マダン・バンダリは,1991年発足のUMLの初代書記長。「人民多党制民主主義(जनताको बहुदलीय जनवाद People’s Multiparty Democracy)」を提唱し,それをUML党是として確立,以後の党勢拡大への礎とした。ところが,1993年5月16日,バンダリを乗せた車がトリスリ川に転落,彼は死亡してしまった。UMLはこれを事故に見せかけた暗殺と考え,KP・オリを長とする調査委員会をつくり調べたが,国王政府は結局それをうやむやにしてしまった。しかし,UMLを中心にバンダリを尊敬し慕う人は今も多い。彼らはバンダイは暗殺されたと信じ,命日前後には彼を追悼するための文書を発表したり催事を催したりしている。今年は5月17日が,そのバンダリ追悼記念日。そして,まさにその日,UMLとMCは合併し,「ネパール共産党」を発足させた。これが偶然の一致とは,とうてい思えないであろう。

 
 ■第25回マダン・アシュリト追悼記念式典(アシュリトは同乗死亡党幹部,NCP-Facebook, 2018-05-17)

UMLによる吸収合併の印象は,ネパール共産党(NCP)の基本理念やシンボルを見ると,さらに強くなる。むろん,これらは暫定的なものであり,正式には最初の党大会(1~2年後?)で議論され決定されることになっているが,暫定的なだけにかえって合併時の力関係をストレートに反映しており,興味深い。

NCPはマルクス・レーニン主義を党イデオロギーとし,人民多党制民主主義を党是とする。毛沢東主義(マオイズム)はとりあえず外されており,UMLの人民多党制民主主義が前面に出る結果となった。

次にNCPの党旗や選挙シンボルを見ると,ここでもUML優位は明白だ。むろん党旗は,赤地に鎌・槌が共産党の基本で,ネパールのように共産党乱立だと,党名同様,他党と区別できる斬新なものをゼロから考案するのは難しい。(同じデザインの党旗は,中国共産党など他にもいくつかある。)それはそうだが,それにしてもUML党旗・選挙シンボルの新党NCPへの継承は,あまりにも象徴的,今回の党合併の実態をビジュアルにシンボライズしている。

       党旗      選挙シンボル     党シンボル
NCP 
UML 
M C 

これら党旗・選挙シンボルのうち特に問題となりそうなのが,他党との識別のために用いられる選挙シンボルの方。選挙になればいたるところ選挙シンボルマークで埋め尽くされるし,選挙時以外でも選挙シンボルマークは政党をアピールするものとして好んで用いられている。その選挙シンボルマークとして,NCPがUMLのものをそのまま継承することにしたという事実からだけでも,今回の合併がUML優位であったことは明らかである。これから先,MC系党員は本当に,太陽マークの下で政治活動を続けたり,選挙を戦ったりするのであろうか?

(2)役職の対等配分
このように党是や選挙シンボルではUMLに大きく譲歩したMCだが,政府と党の役職については,対等を目指して頑張った。名を捨て実を取る作戦であろう。

党役職については,上掲NCP概要をご覧いただきたい。議長はオリ(UML)とプラチャンダ(MC)の共同議長制,常任委員会はUML58%対MC42%,中央委員会はUML55%対MC45%と,ほぼ互角に配分されている。代議院議員はUML121対MC53と,圧倒的にUMLが多いのと対照的だ。(ただし書記局だけは,議長と書記長を含むためか,いまのところUMLがやや多い。)

公職ポストも割当はまだ流動的だが,合併の基本方針を取り決めた「7項目合意」(2月19日)によれば,これも対等に近い配分が予定されている。首相は任期前半がオリ,後半はプラチャンダ。大統領と下院副議長はUML,副大統領と下院議長はMC。大臣の割当は今後協議。このように,MCには下院議席とは不釣り合いなほど多くのポストが約束されている。

しかし,こうしたポストのMC優遇が割を食うUML有力者の反発を招くのは避けがたい。そこに他党やインド筋などが介入すれば、政権不安に陥る恐れもなしとはしない。ネパール政治は、そうした混乱の繰り返しであったと言っても過言ではないであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/06/04 at 10:38