ネパール評論 Nepal Review

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(8)

3.マテマ委員会報告
(1)保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)[前出]
(2)「マテマ委員会報告」要旨
1)保健医療制度と医学教育の抜本的見直し。医科大学(医学部)の中央集中の解消。医学部,歯学部,看護学部のカトマンズ盆地内新設のための予備合意書[基本合意書](Lol)は,今後10年間,交付しない。すでに全医大23校のうちの7校がカトマンズ盆地内に立地している。(保健省HP[2018-10-30]によれば,現在の医科大学数は公立4,軍付属1,私立14の計19校。[注])

2)保健医療担当専門機関を設置し,医大開設認可,医大入試,医大付属病院運営等を監督させる。既存の「ネパール医学委員会(NMC)」は機能不全。

3)カトマンズ盆地内では,医科大学は,たとえ準備が進んでいても,新設は認めない。準備中の既存施設等は政府に引き渡す。「マンモハン記念健康科学インスティテュート」,「ナショナル医科大学」,「人民歯科大学」など。

4)大学が予備合意書(Lol)をすでに取得している場合,保健医療コース新設はカトマンズ盆地以外でのみ認められる。

5)医大開設予備合意書を取得し施設整備を終えている場合,その施設は政府に売却することができる。

6)一つの大学が提携(affiliate)できる医大ないし医学部は5校以内(既存医大は除く)。医大(医学部)を持たない大学には,提携医大の新設を認めない。

7)一つの郡に開設できる医大は,一校のみ。

8)提携医大のMBBS(医学士)定員は100人以下,授業料は350万ルピー以下。また,提携歯科大(歯学部)の定員は50人以下,授業料は180万ルピー以下。

9)医師資格試験(NMC実施)合格率が2回連続75%以下の場合,医大認可取り消し。

10)国家は,必要な医大の開設には,税軽減,土地貸与などの助成をすべきだ。

[注]ネパールの医科大学(★公立,☆軍付属,無印は私立)
Tribhuwan University Affiliated (TU)
・Institute of Medicine (IOM), Maharajgunj, Kathmandu ★
・Universal Medical College (UCMS), Bhairahawa, Nepal
・National Medical College (NMC), Birgunj, Nepal
・Janakai Medical College (JMC),Janakpur, Nepal
・Kist Medical College (KISTMCTH), Imadol, Lalitpur
・Chitwan Medical College (CMC), Bharatpur, Chitwan
・Gandaki Medical College (GMCTHRC), Lekhnath-2, Pokhara
・Nepalese Army Institute of Health and Sciences( NAIHS), Kathmandu ☆
Kathmandu University Affiliated (KU)
・College of Medical Sciences (CMS),Bharatpur
・Nepaljung Medical College, Chisapani, Nepaljung
・Kathmandu Medical College (KMC),Sinamangal, Kathmandu
・Nepal Medical College,Jorpati, Kathmandu
・Kathmandu University School of Medical Sciences (KUSMS),Dhulikhel
・Lumbini Medical College,Tansen, Palpa
・Nobel Medical College.Biratnagar
・Manipal Medical College of Medical Sciences (MCOMS),Pokhara
Not affiliated to TU or KU
・B.P. Koirala Institute of Health and Sciences (BPKIHS), Ghopa, Dharan ★
・Patan Academy of Health and Sciences (PAHS),Patan, Lalitpur ★
・National Academy of Medical Sciences (NAMS),Mahaboudha, Kathmandu ★

医科大学の格付け(*8)

*1 चिकित्सा शिक्षासम्बन्धी राष्ट्रिय नीति तर्जुमा उच्चस्तरीय कार्यदलको प्रतिवेदन २०७२ (High-level work report on national policy related to medical education 2072)
*2 “Mathema-led committee submits report,” Republica, 29 Jun 2015
*3 “Mathema committee submits report on new health education policy,” The Himalayan Times, June 29, 2015
*4 “Govt makes public Mathema committee report,” Ekantipur, Aug 4, 2015
*5 “Health Profession Education Commission: Govt picks names for regulatory body,” Kathmandu Post, Sep 18, 2015
*6 “Top Ten recommendation for restructuring ‘Nepals Health Profession Education Policy’,” edusanjal, 2015-07-05
*7 “Health Profession Education Policy sets a precedent for future public policies: Interview Kedar Bhakta Mathema,” Kathmandu Post, 2018-07-09
*8 “Top Medical (MBBS) Colleges of Nepal,” https://edusanjal.com/ranking/top-medical-mbbs-colleges-nepal/

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/10/31 at 16:10

カテゴリー: 健康, 教育

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(7)

[前出]ゴビンダ医師のハンスト闘争(1)~(6)

3.マテマ委員会報告
ゴビンダ・KC医師は,保健医療の抜本的改革には「医学教育政策に関する上級委員会報告(マテマ委員会報告)」の実施が不可欠だと考えている。

ゴビンダ医師のハンスト闘争は,トリブバン大学医学部(IoM)人事への政治介入に反対して行った,最初のハンスト(2012年7月5日~8日)から始まる。人事は大きな利権であり,学部長など大学人事を巡っても政治家の介入が絶えなかった。ゴビンダ医師は,そうした政治介入により大学運営がゆがめられるのを阻止するため,大学人事は年功を原則とせよと訴えたのである。この要求は,以後,今回の第15回ハンストまで一貫して最も重要な要求項目の一つとして掲げられてきた。

1年半後の4回目のハンスト(2014年2月8~15日)になると,年功人事要求に加え,医科大学の新設手続き規正と地方開設推進,医学教育委員会(MEC)勧告の実施など,ゴビンダ医師の要求は国家の医学教育・医療制度全般の根本的改革にまで拡大した。

こうしたゴビンダ医師の改革要求に押され,スシラ・コイララ首相(NC,在職2014年2月11日~2015年10月12日)は2014年11月17日,「保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)」を設置し,保健医療専門職教育(HPE)の現状と課題を調査し,報告を求めることにした。

ゴビンダ医師は,この委員会には委員としては参加していないが,マテマ委員長によれば,委員会の求めに応じ意見は述べている。

(1)保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)
設置:2014年11月17日(S・コイララ内閣設置)
報告書提出:「医学教育政策に関する上級委員会報告2072(2015)」2015年6月29日(S・コイララ首相へ提出)
委員長:ケダル・バクタ・マテマ(元トリブバン大学[TU]副学長)(注)
委員:SR・シャルマ(元カトマンズ大学副学長)
委員:マダン・ウパダヤ(元TU医学部長)
委員:RK・アディカリ(元TU医学部長)
委員:B・コイララ(元TU教育病院長)
委員:G・ロハニ(保健省医療局長)
委員(事務局):H・ラムサル(教育省次官)
(注)Kedar Bakta Mathema. 1945年11月25日生。1991~94年トリブバン大学副学長。(ネパール全大学の学長は首相[王制下では国王]。副学長(vice-chancellor) は大学最高責任者であって事実上の学長。)1996~2003年日本,韓国,オーストラリア,ニュージーランド大使歴任。これまでに政府設置の教育,外交等に関する各種委員会委員歴任。
 ■マテマ元TU副学長(同氏FBより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/10/30 at 14:40

ゴビンダ医師のハンスト闘争(6)

2.ゴビンダ医師ハンスト略年表

(2)第15回ハンスト関係略年表
[2014年]
11月17日:スシル・コイララ首相(NC),ゴビンダ・KC医師(以下KCと略記)要求に応えマテマ委員会設立。
[2015年]
06月29日:マテマ委員会,スシル・コイララ首相に報告書(110頁)提出。
[2017年]
04月17日:プラチャンダ首相(CPN-M),医学教育調査委員会(MEPC)設置。
10月23日:デウバ内閣(NC),KC要求に沿う「医学教育令2017」(「医学教育法」代替政令)を閣議決定。(憲114条:政令は内閣助言により大統領発布。次期議会否決か発布後6か月経過で失効。)
11月23日:「医学教育令2017」,バンダリ大統領が署名し成立。
[2018年]
02月04日:MEPC,デウバ首相に報告書提出し,医大認可不正関与43人の処分勧告。
02月15日:2017年末総選挙で大勝したUML-CPN(現NCP)のKP・オリが首相就任
04月26日:「医学教育令2017」,施行期間満了。
04月29日:政府,マイティガル・マンダラでの集会禁止。翌30日からKC支持派逮捕始まる。
05月09日:「医学教育令」,議会が期限延長議決。
06月07日:KC,「6項目要求」。
06月30日:KC,カルナリ州ジュムラで「無期限ハンスト」開始
07月04日:KC,体調悪化でカルナリ保健科学アカデミー(KAHS)救急室収容。
07月05日:「医学教育令」,期間満了。
07月06日:政府,「医学教育令」大幅修正の「医学教育法案」議会登録。NC,「医学教育令」を「医学教育法」として制定することを求める動議提出。
07月07日:医学協会(NMA),3日以内にKC問題への政府回答がなければスト開始と宣言。
07月08日:マイティガル・マンダラでKC支持集会。
07月09日:KC,酸素吸入開始。
07月11日:NMA,病院1時間スト(救急除く)など全国で抗議活動開始。
07月12日:政府,「医学教育法案」議会提出。
07月14日:KC,心拍異常,白血球減少などで意識失うが,KAHSにはICUなし。政府,KCのカトマンズ強制移送検討開始。マイティガル・マンダラでNC中心のKC支持大集会。
07月15日:ジュムラでKC支持デモ拡大。
07月16日:政府側交渉団結成(団長=KR・バラル教育省事務局長)。政府,「医学教育法案」議会提出。
07月17日:州政府,中央政府の意向を受け中央政府にKCカトマンズ移送を要請。KCさらに衰弱,立ち上がれない。心室性期外収縮。心停止の恐れ。
07月19日:政府動員の治安部隊と学生,看護師らがKAHSで衝突,数十名負傷。警官死亡と伝えられ,KCはカトマンズ移送同意(のち警官死亡は虚報と判明。)政府,軍ヘリでKCをカトマンズへ移送。夕方到着後,KCは収容されたトリブバン大学教育病院(TUTH)でハンスト継続。
07月20日:デウバNC党首,TUTHハンスト中のKC訪問。全国公私立医療機関,救急を除きKC支持スト。マイティガル・マンダラでKC支持集会。アムネスティ,ジュムラでの政府実力行使に憂慮表明。
07月21日:市民団体,バネスワルで抗議集会,著名人多数参加。
07月22日:バサンタプルでKC支持集会。主要14メディア編集長,KC訪問し,支持声明発表。KC体調さらに悪化し,危険状態に。
07月23日:UMLとMCの下部組織(各2),KC要求に沿う「9項目要求」に合意。KC支持集会,数百人参加。
07月24日:オリ首相とプラチャンダ共同議長,KB・マテマ,DK・バスコタ医学審議会(MEC)議長と会い,打開策協議。夕方,政府とKC側が教育相で交渉。
07月25日:医療諸機関,外来診療など休止。医師ら,KC支持デモ参加。
07月26日:TUTHで医学部学生,KC支持デモ。夕方,政府とKC,「9項目合意」署名深夜,KCハンスト終了
07月27日:政府,「医学教育法案(修正なし)」と「9項目合意」を議会提出。KC,ICU収容(6日間)。
07月31日:政府,「医学教育法案」の修正案(「9項目合意」に基づき22か所修正),議会登録。
08月7日:KC,退院。
08月11日:KC側交渉団,首相と官邸で交渉開始。


 ■トリブバン大学医学部/ネパール医学審議会

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/10/09 at 14:29

ゴビンダ医師の市民的抵抗,医学部長解任事件最高裁判決に対して(4)

5.「5項目合意」とハンスト終了
最高裁法廷(P・バンダリ判事とBK・シュレスタ判事)は1月10日,ゴビンダ医師の陳述聴取後,保釈金なしで彼を保釈した。一方,パラジュリ最高裁長官については,市民登録証とSLC資格の調査を命令した。ゴビンダ医師の次の出廷は,2月20日の予定。

保釈後,ゴビンダ医師は政府側(D・ボハラ保健大臣ほか)と交渉,1月12日夜,合意に達し,両者は「5項目合意」に署名した。

5項目合意(1月12日)
(1)「医学教育委員会」を組織するための準備委員会を7日以内に設立。
(2)JP・アグラワル医師はトリブバン大学(TU)医学部長の職にそのまま留まる。
(3)TU医学部に権限を戻すために必要なTU役員会を開催。
(4)TU教育病院改革に必要な予算の計上。
(5)ゴビンダ医師のハンスト終了。

この10日の最高裁決定と12日の「5項目合意」をみると,パラジュリ最高裁長官の辞任ないし解任については何も述べていないが,他の重要な点ではゴビンダ医師の要求が大幅に認められていることがわかる。自らの命をかけハンストで抗議したゴビンダ医師の「市民的抵抗」の勝利といってよいだろう。

しかしながら,ネパールでは,ここからが難しい。合意が成立しても,それが誠実に実行されない場合が少なくないからだ。ゴビンダ医師も,パラジュリ長官が辞任しなければハンストを再開する,と警告している。近く発足するであろう左派連合政府が,この問題とどう取り組むか,注目されるところである。

 ■D・ボハラ保健大臣(保健省HP)

参照資料
* “Police Arrests Dr KC on Charge Of Contempt Of Court,” New Spotlight Online, Jan. 9, 2018
* “Dr KC begins hunger strike demanding resignation of CJ Parajuli,” Republica, Jan 8, 2018
* “Dr KC warns of 14th hunger strike demanding authentication of HPE ordinance, Gives 7-day ultimatum to prez,” Kathmandu Post, Nov 6, 2017
* “Dr KC begins 14th hunger strike Demands resignation of Chief Justice Gopal Parajuli,” Kathmandu Post, Jan 8, 2018
* “Contemptible actions – Supreme Court acted harshly in ordering arrest of Dr KC who was only exercising right to protest,” Editorial, Kathmandu Post, Jan 10, 2018
* “Leaders express their solidarity,” Kathmandu Post, Jan 10, 2018
* “Will continue hunger strike till chief justice resigns: Dr KC,” Kathmandu Post, Jan 10, 2018
* “Protesters demand Nepal Chief Justice’s resignation,” Outlook, 09 JANUARY 2018
* “Nepal Medical Association demands immediate release of Dr KC,” Kathmandu Post, Jan 9, 2018
* “Leaders support Dr KC while major parties keep mum,” Republica, Jan 10, 2018
* “Dr Govinda KC says will continue hunger strike,” Himalayan Times, Jan 12, 2018
* “Govinda KC’s charges,” Nepali Times, 12-18 Jan 2018
* “Dr KC continues his fast, Says struggle goes on until remaining demands for reforms in medical education are met – The SC ordered his release on a general date in a contempt of court case on Wednesday, while calling for an investigation into the authenticity CJ Parajuli’s papers,” Kathmandu Post, Jan 12, 2018
* “I assure that the court will be made justice imparting body: Dr KC,” Kathmandu Post, Jan 13, 2018
* “Nepal Bar Association defends CJ Gopal Parajuli, urges Dr Govinda KC to end fast,” Onlinekhabar, Jan 12 2018
* “Bar unhappy with Dr KC’s protest, urges him to end hunger strike,” Kathmandu Post, Jan 12, 2018
* “I don’t need to display my credentials out in the road: CJ,” Republica, Jan 13, 2018
* “Dr KC ends 14th fast-unto-death protest after agreement with govt,” Himalayan Times, Jan 13, 2018
* “Dr KC ends hunger strike following 5-point deal with govt,” Kathmandu Post, Jan 13, 2018
* Baburam Bhattarai, “Struggle for reforms” Republica, Jan 15, 2018
* “Dr KC ends 14th hunger strike ‘Another fast if Chief Justice Parajuli does not resign’,” Kathmandu Post, Jan 14, 2018
* “Dr Govinda KC released without bail,” Kathmandu Post, Jan 10, 2018
* “A written reply furnished by Dr KC to the Supreme Court on Tuesday,” Kathmandu Post, Jan 10, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/23 at 15:04

ゴビンダ医師の市民的抵抗,医学部長解任事件最高裁判決に対して(2)

3.ゴビンダ医師の法廷陳述
ゴビンダ医師は,1月9日の法廷(P・バンダリ判事とBK・シュレスタ判事)において,11項目に分け陳述を行った。趣旨は抗議ハンスト時の発言と同じ。激しい言葉でパラジュリ最高裁長官を容赦なく徹底的に糾弾している。もしこの中に事実に反する部分があれば,法廷侮辱の動かぬ根拠とされかねないほど際どい陳述だ。陳述(弁明書)要旨は,カトマンズポスト記事*によれば,以下の通り。
*”A written reply furnished by Dr KC to the Supreme Court on Tuesday,” Kathmandu Post, 10 Jan 2018.

ゴビンダ医師の法廷陳述要旨
(1)パラジュリ最高裁長官は,2か所から市民登録証を取得している。これは万人周知の事実。市民登録証を1通だけでなく,それ以上取得する人物は,不道徳で不法。これは犯罪。それゆえ,彼を取り調べ処罰すべきだ。

(2)パラジュリ長官は年齢を偽っている。最高裁長官には,カトマンズ郡役所発行の2枚目の市民登録証の年齢に基づき,在職している。ところが[別の市民登録証によれば],彼は2074年アサド月(2017年6-7月)に,すでに満65歳に達している。法定の停年は65歳。この種の行為は「司法商売」も同然だ。

(3)パラジュリ長官は,LS・カルキ職権乱用委員会(CIAA)委員長を無罪にした後,甥をCIAA顧問に採用してもらった。権威ある司法が売り買いされた。彼は職権乱用罪で処罰されるべきだ。

(4)パラジュリ長官の中等教育終了試験(SLC)合格資格には疑義がある。この件にはスシラ・カルキ前長官の関与も疑われている。裁判官に必要なSLC合格資格を持たずに,どうして最高裁長官たりうるのか? これは,国家や裁判所を暗闇に引き込む犯罪ではないか?

(5)パラジュリ長官は,SLC以外の学歴や資格についても,疑義がある。司法委員会や憲法委員会での審査資料に基づき,調査せよ。

(6)ジャグディシュ・アチャルヤ土地関係事件の裁判で,パラジュリ長官は政府の土地政策を否定し「土地マフィア」有利の判決を下した。「司法が売られた」のではないか?

(7)パラジュリ長官のホテル・カジノ税免除判決は,「司法の死」をもたらすものだ。国家は税収を失った。「司法を殺す」人物に司法の独立が守れるのか?

(8)パラジュリ長官は,Ncell[通信事業会社]事件など様々な事件の裁判において,腐敗を助長した。Ncellの場合,600億ルピーの納税を免れた。これは法の支配に対する嘲笑ではないか。彼の下した判決は見直されるべきだ。

(9)パラジュリ長官は,義理の甥を半年の間に補助裁判官から補助裁判官長,高裁裁判長へと昇進させた。名誉ある最高裁長官たるに不可欠のモラルなし。関心を持つ市民の一人として,彼の辞任を求める。さもなくば,司法の独立と自由が妨害され続けるだろう。

(10)パラジュリ長官の就任は夜の10時半。前任のスシラ・カルキ長官に対する弾劾動議が提出されたその夜のことだった。どの法がこのようなことを認めているのか? 不法行為に関与する人物に司法の尊厳は守れない。彼は辞任すべきだ。

(11)『日刊カンチプル』は,その記事「ゴパル・パラジュリあれば,医科大訴訟あり」を理由に法廷侮辱罪で訴えられたが,無罪となった。記事の記述は司法的に認められたのだ。そのような人物が名誉ある最高裁判所長官の職にとどまることは適切ではない。

[結び]「ゴパル・パラジュリ最高裁長官は,司法への信頼および司法の尊厳と独立に対し挑戦してきたのであり,その行為は法廷侮辱罪にあたるので,私は裁判所に対し,彼を法廷侮辱罪に問うことを要請する。私に対する告発には根拠がない。パラジュリを除く他のすべての最高裁判事からなる法廷に,この事件の審理を求めたい。」

■最高裁(同HPより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/21 at 14:25

ゴビンダ医師の市民的抵抗,医学部長解任事件最高裁判決に対して(1)

トリブバン大学医学部教育病院のゴビンダ・KC(गोविन्द के.सी.)医師が2018年1月8日夕方,最高裁長官を侮辱した容疑で逮捕され,シンハダーバー警察署に留置,翌9日朝,最高裁に連行され(9時到着),体調悪化のため警察救急車内で待機,午後2時から法廷で尋問された。10日,釈放。

この最高裁長官主導のゴビンダ医師法廷侮辱事件は,あまりにも唐突で強引で「お粗末」(10日付カトマンズポスト社説),ネパール司法の権威を著しく損なうことになった。

1.最高裁の不可解な医学部長解任事件判決
今回の法廷侮辱事件のそもそもの発端は,最高裁法廷(ゴパル・プラサド・パラジュリ長官とDK・カルキ判事)が1月7日,トリブバン大学(TU)医学部(IoM)の当時(2014年1月)学部長であったシャシ・シャルマ医師の学部長解任を無効とする判決を下したこと。

S・シャルマ医師は2014年1月10日,医科大認可をめぐる混乱のさなか,TU理事会により医学部長に選任された。これに対し,ゴビンダ医師らが不公正選任として反対,その結果,2014年1月22日,KR・レグミ暫定内閣首相がTUに対し学部長任命の取り消しを命令,S・シャルマ医師は学部長を解任された。

シャルマ医師は直ちに解任は不当と訴えたが,最高裁法廷(S・カルキ長官)はこれを棄却した。その後も学部長人事を巡り混乱が続いたが,少しずつゴビンダ医師がネパールの現状では最も公正と主張する年功選任が認められるようになり,現学部長も年功により2016年12月3日に選任されたJ・アグラワル医師が務めている。

ところが,2018年1月7日,最高裁法廷(GP・パラジュリ長官とDK・カルキ判事)が唐突にも(少なくとも事前報道は見られなかった),4年弱前のS・シャルマ医学部長解任の政府決定を無効とする判決を下した。

この最高裁判決がそのまま適用されれば,S・シャルマ医師は医学部長に復職することになるが,たとえ復職しても医学部長任期は1月14日まで。ほんのわずかにすぎない。なぜ,こんな不自然な,不可解な判決を下したのか?

2.ゴビンダ医師の抗議ハンストと法廷侮辱容疑逮捕
1月7日のS・シャルマ医学部長解任無効最高裁判決に対し,ゴビンダ医師は猛反発,翌8日午後4時からTU教育病院前で抗議ハンスト(通算14回目ハンスト)を開始した。

ゴビンダ医師は,最高裁は「医学マフィア」とつながっているなどと激しい言葉でパラジュリ最高裁長官個人とその判決を容赦なく批判し,長官の辞任と判決の見直しを要求した。

これに対し最高裁は,担当官ネトラ・B・ポウデルに指示してゴビンダ医師を法廷侮辱容疑で告発させ,内務省を通して警察にゴビンダ医師を逮捕させた。逮捕は1月8日夕方,ハンスト開始後すぐのことであった。まさに電光石火,デウバ首相ですら,この動きを知らされていなかったという。

警察は,シンハダーバーの首都警察署にゴビンダ医師を留置し,翌9日午前9時に最高裁に連行した。担当裁判官はP・バンダリ判事とBK・シュレスタ判事。ところが,手続きが延々と続き,ゴビンダ医師の体調が悪化したため,彼は警察の救急車に移された。彼の法廷陳述が始まったのは,ようやく午後2時になってからのこと。手続きのための長時間待機はネパールの長年の慣行とはいえ,これは拷問に近い扱いである。

最高裁での法廷陳述終了後,ゴビンダ医師はビル病院に移された。次の出廷は2月20日の予定。


■ゴビンダ医師(連帯FB)/パラジュリ最高裁長官(最高裁HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/20 at 17:23

ゴビンダ・KC医師,10項目合意でハンスト中止

ゴビンダ・KC医師は10月18日,政府との間で10項目合意を締結し,13回目のハンストを14日目で中止した。

10項目合意要旨
 ・医学専門職教育に関する政令を10月23日までに閣議決定する。
 ・トリブバン大学医学部授業料の値下げ。
 ・トリブバン大学とカトマンズ大学における医学教育不正調査および責任者処分。
 ・医大新設にあたっては,特に人口と地域を考慮する。

この合意要旨からはKC医師の要求が大幅に認められているように見えるが,政府が約束を守るかどうかは定かではない。

最大の問題点は,医学専門職教育に関する規定が法律ではなく政府政令とされたこと。この政令は3か月以内に議会の承認が必要とされているが,立法議会の会期はすでに10月14日に終了しているし,新議会開会は連邦議会選挙後,おそらくは2018年1月末以降となる。選挙結果がどうなるかも全く分からない。たとえ10月23日までに現内閣が政令を制定しても,3か月以内(1月23日まで)に新議会で承認が得られるかどうか,皆目見当もつかないのだ。

KC医師も,そのことは十分わかっているはずだ。「私は,医学教育の改善と医学部の国内における公平な配置のため,これまで闘ってきた。・・・・いまや,議員の多くが人民の利益のために働いていないことが誰の目にも明らかになったに違いない。彼らは,特定の諸集団の利益に奉仕しているのだ。」(*2)

それでも,KC医師は,政府が10月23日までに閣議で医学専門職教育令を制定すると約束したことを大きな前進と認め,ハンストを中止した。そして,政府がもし約束を破ればハンストを再開する,と宣言した。長期ハンストで身体は衰弱していても,意気はますます軒昂である。

■カトマンズ大学医学部(同HPより)

*1 “Dr KC ends hunger strike after 10-pt pact with govt,” Kathmandu Post, 18 Oct 2017
*2 “Dr KC breaks 13th fast after 14 days,” Kathmandu Post, 19 Oct 2017
*3 “Dr KC ends fast after Deuba pledges ordinance from cabinet,” Republica, 19 Oct 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/10/20 at 15:39