ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Posts Tagged ‘医学部

ゴビンダ・KC医師,13回目ハンスト

ゴビンダ・KC医師が10月5日,13回目のハンストに入った。現在の立法議会の任期は来年1月21日まで。11月26日/12月7日には,現行2015年憲法に基づく初の連邦議会選挙が行われる。KC医師としては,これまでの闘争の成果をご破算にされてしまう恐れもあるので,新体制に移行する前に,医学教育/医療制度の改革に目途をつけたいと考えているのであろう。KC医師の要求は基本的には以前と同じ。(参照: 過去記事

・マテマ委員会勧告に従い,医学教育法/健康専門職教育法を制定せよ。
・カトマンズ盆地内での医大新設認可を10年間停止し,地方各地に国立医大を開設せよ。
・医学部授業料の上限を定め,私立医大にも順守させよ。
 [KC医師要求の医学部授業料上限額]
  MBBS:カトマンズ盆地内 385万ルピー,カトマンズ盆地外425万ルピー
  BDS:195万ルピー
  MD/MS:225万ルピー

ところが,こうした改革要求に対し,UMLやマオイストの議員を中心とする「医学マフィア」が強硬に抵抗,「医学教育法案」を骨抜きにし,改革を阻止しようとしている。

「主要3党は,医学マフィアの企てに加担している。これは,民衆の四分の三に医療を受けられなくし,中下層階級出身学生に医学教育を受けられなくするものだ。」また,「カトマンズ大学医学部は,政府規定額より高い授業料[500百万ルピー]を取り,これにより医学マフィアに金儲けさせる許しがたい役割を果たしてきた」。このようなことは,「断じて許せない」(*3)。

KC医師は10月12日,51名からなる対政府交渉団を組織し,政府と具体的な交渉に入ることにした。また,これに呼応して10月14日には,大規模なKC医師支援デモも行われた。連邦選挙で騒然とする中でのハンスト闘争。KC医師にとって,状況は有利とは言えない。今後どう展開するか,予断を許さない。

 支援ツイッター(7月20日)

*1 “Dr Govinda KC launches 13th hunger strike,” Kathmandu Post, Oct 6, 2017
*2 “People should hit the streets to support Dr KC: Prof Mathema,” Republica, October 9, 2017
*3 “Dr KC on 13th hunger strike, wants KU VC sacked,” Republica, October 6, 2017
*4 “Dr KC warns of stern protest against judiciary,” Republica, October 9, 2017
*5 “Justice missing from judiciary: Dr KC,” Republica, Oct 11, 2017
*6 “Dr KC names talks team of 51 members,” Republica, October 13, 2017
*7 “Rally taken out in support of Dr KC,” Himalayan Times, October 15, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/10/17 at 15:31

カテゴリー: 社会, 教育

Tagged with , , ,

ゴビンダ医師,合意履行を求めハンスト

ゴビンダ・KC医師が,医学界改革に関する合意の履行を政府に求め,7月24日から無期限ハンストを決行している。前回(2016年11月13日~12月4日)から半年後,11回目のハンストだ。

ゴビンダ医師の要求は,医科教育と医療行政の近代化・公正化であり,終始一貫している。(参照:ゴビンダ医師の改革諸要求

ネパールでも,医者は特権階級であり,医科教育や病院経営はカネになる。当然,そこには利権を目当てに政治家や有力者,ゴビンダ医師に言わせれば「マフィア」が介入し,様々な不正・腐敗が生じる。ゴビンダ医師は,それらを排除し,地域差のない国民のための公正な医療を実現することを,一貫して要求してきたのである。

ゴビンダ医師の要求は,昨年末のハンスト闘争の結果,政府(プラチャンダ首相)が「医科教育法」(2016年9月法案提出)制定に向け努力することを約束したことにより,大きく前進するかに見えた。

ところが,政府は「医科教育法」制定を先送りしてきたばかりか,同法立法趣旨に反するような動きを強めてきた。同法制定以前の私立医大設立認可への動き,私立医大の高額授業料(1000万ルピーに及ぶ場合もある)の放置,私立医大への不正入学(学力不足受験生の裏口入学),トリブバン大学幹部教職員と私立医大との不透明なコネなど。

これらの問題解決が難しいのは,有力政党や政治家が深く関係しているため。たとえば,いま問題にされているジャパ郡ビルタモドの「B&C病院」はマオイスト系だし,「マンモハン記念健康科学機構」はいうまでもなくUML系。ゴビンダ医師の要求が「政治的」とならざるをえないのももっともだ。

ゴビンダ医師の要求は至極もっともだ。そうした要求を無期限ハンストで訴えざるをえないところに,ネパール医学界をむしばむ根深い宿痾があるのではないだろうか。


 ■Facebook: SolidarityForProfGovindaKc, 10 Aug 2017

追加(8月17日)】ゴビンダ医師,洪水被害拡大の状況を考慮し8月15日,ハンスト中止(23日目)。

*1 “Dr KC warns of agitation if Nat’l Medical Education Bill not amended,” Kathmandu Post, May 3, 2017
*2 “Dr KC warns of hunger strike from tomorrow,” Kathmandu Post, Jun 4, 2017
*3 “Dr KC warns of death fast over erring colleges Memorandum submitted to IoM dean,” Kathmandu Post, Jul 17, 2017-
*4 “Govt seeks more time to address demands,” Kathmandu Post, Jul 30, 2017
*5 “Dr KC’s hunger strike: Talks with govt team inconclusive,” Kathmandu Post, Aug 2, 2017-
*6 “Save Dr Govinda KC’s life: NHRC to govt,” Kathmandu Post, Aug 4, 2017
*7 ABHI SUBEDI, “Rainbow of KC’s Satyagraha,” Kathmandu Post, Aug 6, 2017
*8 “Dr KC’s health deteriorating ‘critically’,” Republica, August 9, 2017
*9 “A deal that disregards Dr KC’s demand,” Kathmandu Post, Aug 10, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/12 at 19:13

カテゴリー: 行政, 教育

Tagged with , ,

ゴビンダ医師との合意、ホゴをホゴに

プラチャンダ内閣は12月11日、ゴビンダ医師との合意のホゴをホゴにし、一転、政府として合意実行に当たることを閣議決定した。
 ・専門委員会をいくつか設置し、政府として合意実行に当たる。
 ・「医科教育法」成立まで、私立医科カレッジのTU提携認定は行わない。B&C医科カレッジのTU提携キャンセル。

ガガン・タパ保健大臣「政府は、ゴビンダ医師との合意の線に沿い作業を進める。」
 
*1 “Govt takes ownership of deals with Dr KC,” Kathmandu Post, Dec 12, 2016

(c)谷川

Written by Tanigawa

2016/12/13 at 20:18

カテゴリー: 社会, 教育

Tagged with , ,

ゴビンダ医師との合意ほご,プラチャンダ首相

プラチャンダ内閣が,ゴビンダ・KC医師に約束した医学教育改革の約束を,合意署名3日後に反故にした。政治家の約束,鴻毛の如し。

プラチャンダ内閣は,医療制度・医学教育改革を要求してハンスト(10回目)を続けていたゴビンダ医師に対し,要求に沿う改革への努力を約束し,ハンストを止めさせた。その合意の中でも最も重要な約束の一つが,「『国家医科教育法』成立まで,医科カレッジのTU提携(affiliation)を認可しない」というもの。(10回目ハンスト11月13日~12月4日。参照:ゴビンダ医師,ハンスト終了

ところが,報道によれば,プラチャンダ首相はゴビンダ医師との協議を進めながら,他方では教育省を通して「ネパール医学委員会(NMC)」に圧力をかけ,私立病院・医科カレッジのB&C Medical College Teaching Hospital and Research Centreのために,TU提携を認めさせようとしてきた。提携認定手続きは,ゴビンダ医師ハンスト中の11月24日頃から進められ,月末までにはNMCが予備調査をほぼ終了,12月2日にはB&CのMBBS(医科学士)教育適格性を認める報告書を教育省に提出した。もし教育省がこの報告書に基づきTU提携を認定すれば,B&Cはトリブバン大学医学部やカトマンズ大学との提携が可能となり,MBBS課程を開設できる。TU提携認定は,私立医科カレッジにとって決定的に重要な資格要件なのである。

B&Cは,2015年3月,マオイスト幹部の一人を中心とする私財25億ルピーの出資により,ジャパ郡ビルタモドに開設された。メチ・ゾーン最大の病院であり,700ベッド。開院式にはプラチャンダ議長が出席し,主賓として除幕をとり行った。他党有力者も出席していたが,設立の経緯を見れば,マオイスト系とみてよいだろう。そのB&CのTU提携認定を,マオイスト議長たるプラチャンダ首相が政治的圧力をかけ強引に押し進めようとしている。

ゴビンダ医師は,当然ながら,このB&CのTU提携認定に真っ向から反対し,ハンスト再開を考えている。もし再開されれば,11回目のハンストとなる。

161209a161209b(B&Cホームページより)

*1 “Govt flouts deal it reached with Dr KC,” Kathmandu Post, Dec 8, 2016
*2 “Govt breaches deal with Dr KC, allows affiliation to B & C College,” Republica, December 7, 2016
*3 “Govt forces NMC to issue letter to MoE,” Republica, December 7, 2016
*4 “700-bed hospital opens in Birtamod,” Kathmandu Post, Mar 2, 2015

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/11 at 10:24

ゴビンダ医師,ハンスト終了

ゴビンダ・KC医師が12月4日,10回目のハンストを22日目で終えた。要求の一部が実現し,他の多くについては政府が実現への努力を約束したからである。

(1)実現された要求
 ・TU医学部長の交代(KP・シン教授辞任,JP・アグラワル教授就任)
(2)政府の約束
 ・医学部授業料の上限設定
  MBBS(医科学士):350万ルピー(カトマンズ盆地内),420万ルピー(盆地外)
  BDS(歯科学士):190万ルピー
 ・各州に国立医科カレッジ設立
 ・TU医学部の自治権尊重
 ・「国家医科教育法」成立まで,医科カレッジのTU連携を認可しない。
 ・公立医科カレッジ学生の半数に奨学金支給。将来的に全学生支給を目指す。
 ・マンモハン医科カレッジの国有化
 ・カルキCIAA委員長の弾劾

以上のように,ゴビンダ医師のハンストは,政府約束にとどまるものが多いとはいえ,相当の成果を上げて,終了した。ネパールにおいて,ハンストは,いまなお重要にして有効な政治闘争の手段なのである。

しかしながら,これは民主主義にとっては誇るべきことではない。生命を懸けたハンスト(fast-unto-death)に訴えざるを得ないのは,民主主義が有効に機能していないからに他ならない。ハンストは民主主義失敗の指標といっても言い過ぎではあるまい。

 161206

*1 “Dr KC ends fast-unto-death on 22nd day,” Republica, December 5, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/06 at 17:35

TU医学部長交代,ゴビンダ医師要求通り

トリブバン大学(TU)が12月3日,ゴビンダ・KC医師のハンスト要求を呑み,医学部長を交代させた。医学部長は,医科カレッジのTU連携認可やカレッジ学生定員の決定など,医療制度や医科教育に関する強大な権限を有する。ゴビンダ医師は,その重要人事を,ハンスト(10回目)により変更させたのだ。

1.第10回ハンスト対政府要求
(1)TU医学部長の年功任命。T・カニヤ副学長(事実上の学長)の解任。
(2)医学部授業料の上限設定
 MBBS(医科学士):350万ルピー(カトマンズ盆地内),385万ルピー(盆地外)
 BDS(歯科学士):200万ルピー
 [注]私立医科カレッジMBBSは4~5百万ルピー。マテマ報告は350万ルピーを勧告。
(3)TU医学部の自治権拡大。
(4)「医学教育法」成立まで,医科カレッジの新規認可禁止。
(5)マテマ委員会勧告および他の合意事項の実行。
(6)カルキCIAA委員長の弾劾,およびRN・パタックCIAA委員の取り調べ。
(7)JR・ギリ委員会が告発した医学部職員の処分。(告発の詳細不明)
(8)「学部長選考委員会」に関するこれまでの合意の実行
(9)各州に1校以上,医科カレッジを開設。

2.医学部長の交代
トリブバン大学は11月13日,KP・シン教授を医学部長に任命した。これに対し,ゴビンダ医師は,この人事は年功原理に反するとして,シン教授を解任しJP・アグラワル教授を学部長に任命するよう要求した。(ただし年功の点で,2教授の差は微妙。)

そうしたなか,12月2日,KP・シン教授が,就任わずが20日にして学部長を辞任した。そして,翌12月3日,JP・アグラワル教授が医学部長に任命された。ゴビンダ医師の要求の一つが実現されたのである。

しかし,12月3日現在,ゴビンダ医師は,カニヤ副学長の辞任など,他の要求が満たされていないとして,なおもハンスト闘争を継続している。

 161205b161205a

*1 “TU appoints Dr. KP Singh IoM dean amid controversy,” Republica, November 14, 2016
*2 “Dr KP Singh steps down as IoM dean,” Kathmandu Post, Dec 3, 2016
*3 “Dr Agrawal appointed IoM dean,” Kathmandu Post, Dec 3, 2016
*4 “KC adamant on Khaniya’s ouster as bid to convince continues,” Himalayan, December 03, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/05 at 19:29

カテゴリー: 教育

Tagged with ,

ゴビンダ医師,10回目ハンスト開始

トリブバン大学医学部(IoM, TU)教育病院のゴビンダ・KC医師が11月13日,ハンストを開始した。9月26日開始の前回ハンストは,ダサイン入りとともに終了。今回はその再開であり,通算10回目となる。

1.ゴビンダ医師の要求
ゴビンダ医師の要求は,医療制度と医学教育の改革であり,一貫している。現在の具体的な要求は,次の通り。
 ・医科教育法を速やかに制定せよ。
 ・医科教育不当介入のカルキCIAA委員長の弾劾。
 ・トリブバン大学副学長へのTR・カニヤ教授の任命に反対。
 ・トリブバン大学医学部長は年功により選任せよ。

2.医学部利権
医学部は大組織であり,関係利権も巨大である。たとえば,TU医学部は現在,医学教育をする連携カレッジを8校承認(affiliate)している(下掲リスト参照)。これらのカレッジは,入学定員増を図るため,有力者に関係機関への口利きを頼む。あるいは,利権を狙う有力者が,新たな医科カレッジを承認させようとしてTUに圧力をかける。TUの副学長(事実上の学長)や医学部長は,そうした働きかけの最大のターゲットであり,事実,CIAAを含む様々な政治勢力により,これまでに幾度も医学部長が任期途中で交代させられたという。

3.年功人事の「合理性」
ネパールでは,いまもってアフノマンチェやチャッカリが蔓延し,利権が構造化されている。そうしたところでは,能力主義・評価主義といっても,実際には人事への外部介入やコネ人事の口実とされてしまう危険性が高い。いまのネパールでは,近代的な能力主義,業績主義よりも,むしろ年功制の方が実際には「公平」であり「合理的」であるといわざるをえない。ゴビンダ医師が医学部長の年功選任を要求するのも,おそらくそのような考えからであろう。

今回のハンストでは,ゴビンダ医師は,医学部長へのKP・シン教授の選任に反対し,年功どおりJP・アグラワル教授を選任すべきだと主張している。年功どおりでないと,結局,医学マフィアに踊らされる利権的政治任命となってしまうからだという。

[参照]Tribhuvan University (T.U) affiliated
Institute of Medicine (IOM); Universal Medical College (UCMS); National Medical College (NMC); Janaki Medical College (JMC); KIST Medical College (KISTMCTH); Chitwan Medical College (CMC); Gandaki Medical College (GMCTHRC); Nepalese Army Institute of Health Sciences ( NAIHS). (Source List of Medical Colleges Of Nepal, MEDCHROME)

161120

*1 “Dr KC warns of another fast,” Kathmandu Post,” Sep 4, 2016
*2 “Dr KC begins 9th fast-unto-death,” Kathmandu Post, Sep 26, 2016-
*3 “Cabinet fails to dwell on Dr KC’s demands,” Kathmandu Post, Sep 28, 2016
*4 “Dr KC begins his 10th hunger strike,” Kathmandu Post, Nov 13, 2016
*5 “What does the IoM dean issue mean? Orthopedic surgeon Govinda KC’s protracted fight against ‘political hand-picking’ continues,” Kathmandu Post, Nov 16, 2016
*6 “Dr KC in frail health on 6th day of fast-unto-death,” Kathmandu Post, Nov 18, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/11/20 at 16:45