ネパール評論 Nepal Review

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(27)

7.ハンスト:開始から終了まで
 (1)ジュムラでハンスト開始

(2)体調悪化
ゴビンダ医師は,6月30日午後3時頃から,郡スポーツ開発委員会ホールでハンストに入った。報道では,酸素吸入は受けてもグルコース(ブドウ糖)は拒否したとされているから,このハンストはおそらく水と食塩のみの最も厳しいハンストであったとみてよいであろう。

ゴビンダ医師の体調は,スポーツ開発委ホールの劣悪な環境もあって,ハンストに入って間もなく,急速に悪化していった。医学的なことは全くの専門外だが,報道によると経過はおおよそ次のようだったらしい。

ハンスト3日目の7月2には,早くも手足,頭部,胸部の痛みを訴え,尿量は200ml/日に激減。KAHS(カルナリ健康科学アカデミー)医師は,危険な状態に陥りつつあると警告した。

7月4日になると,ゴビンダ医師の体調はさらに悪化,危なくなったので,KAHSの医師らが午後5時半ころ,彼をKAHSの救急病棟に移した。以後,7月19日午後のカトマンズ強制移送まで,彼のハンストはKAHSで続けられることになる。以下,体調悪化の状況――

7月7日:手足,胸部,頭部に痛み。血圧低下,白血球減少。静脈内注入液,投与。
7月8日:酸素吸入開始。
7月11日:白血球減少,血糖値低下,血中マグネシウム低下。筋肉けいれん,嘔吐感。ほとんど話せない。
7月14日:せき。心拍異常。
7月16日:心拍異常。喉の異常,手のはれ。立てない。体重65㎏から56㎏に減少。
7月19日:常時酸素吸入開始。胸の痛み,せき。PVCs(心室性期外収縮)で心停止の恐れ。   
     ⇒⇒午後,カトマンズへ強制ヘリ移送


Solidarity for Prof. Govinda KC FB2018年7月17日/18日

*9 “Dr KC continues hunger strike in Jumla despite deteriorating health,” The Himalayan Times, July 02, 2018
*10 “DAO Jumla orders KIHS for best treatment as Dr Govinda KC’s health deteriorates,” Republica, July 2, 2018
*11 “Dr KC taken to emergency unit after his health deteriorates,” Kathmandu Post, Jul 4, 2018
*12 DB BUDHA, “We can’t treat Dr KC at present site: Doctors,” Republica, July 4, 2018
*13 “Dr Govinda KC rushed into ICU as his condition deteriorates,” Republica, July 4, 2018
*14 “Dr KC admitted to emergency ward,” Republica, July 5, 2018
*15 “Dr KC’s health ‘worsens’,” Kathmandu Post, Jul 8, 2018
*16 “Dr Govinda KC shifted to special care unit,” HIMALAYAN, July 8,2018
*17 “Dr Govinda KC shifted to special care unit,” HIMALAYAN, July 08,2018
*18 Devendra Basnet/DB Budha, “Dr KC refuses medication,” Republica, July 10, 2018
*19 “AHRC urges govt to save Dr Govinda KC’s life,” HIMALAYAN, July 11, 2018
*20 “KAHS prepares ventilator and defibrillator for Dr Govinda KC,” HIMALAYAN, July 15, 2018
*21 “Govt forms talks panel led by Education Secy Baral,” Republica, July 16, 2018
*22 “Dr KC appeals for medical attention,” Republica, July 17, 2018
*23 “Dr KC diagnosed with hypocalcemia,” Republica, July 17, 2018
*24 “Dr KC says govt is indifferent,” Republica, July 19, 2018
*25 “Dr Govinda KC diagnosed with PVCs; govt sends helicopter to bring him back,” HIMALAYAN, July 19, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/03/20 at 16:38

ゴビンダ・KC医師のハンスト闘争(1)

コビンダ・KC医師が7月10日,医学教育・医療制度の抜本的改革をもとめ決死の無期限ハンストを開始した。8回目のハンストであり,支援も拡大したため,UML=マオイスト連立政権(オリ首相)はゴビンダ医師に歩み寄り,「4項目合意」を締結,ゴビンダ医師は7月24日,ハンストを終えた(*2,3,4)。(「4項目合意」の内容については後述。)

しかし,この「4項目合意」は広範な約束を含み,その中にはカルキCIAA委員長弾劾も含まれている。政府にとって,履行は極めて困難だ。

さらに,ゴビンダ医師ハンストの終了後間もない8月11日,今度は,ガンガ・マヤ・アディカリが戦時犯罪裁判を求め,決死の無期限ハンストを始めた(継続中*1)。人民戦争期の戦時犯罪には,官民,与野党を問わず,有力者が多数かかわっており,それらの調査,裁判,処罰は,これまた極めて困難だ。

この間,政権は,UML=マオイスト連立(オリ首相)からNC=マオイスト連立(プラチャンダ首相)に交代した(8月3日)。しかし,交代後の現政権のプラチャンダ首相は8月26日,ゴビンダ・KC医師らと会い,前政権と彼らとの約束は守ると明言した(*5,6)。

しかしながら,その約束の中には,前述のように,カルキCIAA委員長弾劾を始め難しい課題が多い。そこで,ゴビンダ医師も,こう念押ししている。

「もしこれらの要求が実現されなければ,次のハンストを始めるに何ら躊躇しない,と彼(プラチャンダ首相)には告げておいた。」(*6)

プラチャンダ首相にとって,ゴビンダ医師ハンストは,潜在的には継続しており,いつでも再開されうる強力な闘争なのである。

このように,プラチャンダ首相はいま,ゴビンダ医師とガンガ・マヤ・アディカリによる,いずれ劣らず対処の難しいハンスト闘争に直面している。後者についてはすでに概説したので,以下,ゴビンダ医師ハンストについて見ていくことにする。

160831b■ハンスト連帯FB(8月30日)

【参照】
*1 戦時犯罪裁判要求,プラチャンダ首相の覚悟は?(1
*2 “Four-point agreement forged, Dr KC to end hunger strike,” The Himalayan Times,
July 24, 2016
*3 “Dr Govinda KC breaks hunger strike,” Republica, July 25, 2016
*4 Manish Gautam, “Dr KC to call off fast after govt agrees to meet some demands,” Kathmandu Post, Jul 25, 2016
*5 “Will address your demands as far as possible, PM assures Dr Govinda KC,” The Himalayan Times, August 26, 2016
*6 “PM to ‘take initiatives’ to address Dr KC’s demands,” Kathmandu Post, Aug 27, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/01 at 13:27