ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(15)

5.オリ共産党政権成立とその医学教育政策
(3)医学教育法案批判
 ①ガガン・タパ(コングレス党議員,元保健大臣)
 ②ディレンドラ・P・バドゥ(コングレス党議員)
 ③スシラ・カルキ(元最高裁長官)
 ④KB・マテマ(元「医学教育政策に関する上級委員会」代表,元トリブバン大学副学長,元駐日大使)
 ⑤ビシュヌ・P・アルヤル(ジャーナリスト)(以上前出
⑥カトマンズ・ポスト社説
ネパールの有力紙の一つ『カトマンズ・ポスト』は,7月16日付社説「悪しき処方箋:オリ首相公約は万人の繁栄保障だが,医学法案は一握りの人々の暴利をもたらすだけだ」において,政府案を完膚なきまでに批判している。少々長いが,重要部分を抜き書きしておく(“Wrong prescription: PM Oli’s stated goal is to ensure prosperity to all but medical bill will profiteer only a tiny section,” Kathmandu Post, Jul 16, 2018)。

「この法案[医学教育法案]がネパール全体の医学教育改善ではなく,少数の事業家や彼らとコネのある政党政治家に利益をもたらすことを第一の目的に起草されたことは,いまや周知の事実である。反対派を特に怒らせたのは,この法案が前回のKC医師ハンスト時に政府がすでに決めたことの撤回に他ならないからである。」

「政府がなすべきは,この法案を撤回し,各方面の意見を広く聴取し,それを修正することである。以前には,保健医療教育法案に関する意見聴取のためマテマ委員会が組織された。今回も,医学界の優れた人々を委員とする同様の委員会を組織すべきであろう。今の法案は致命的な損傷を受けている。政府と社会の間で合意を形成し信頼を回復するには,多大な努力が必要である。」

「オリ首相は,かつてネパール全人民の繁栄こそが第一の目標だと述べた。が,現在の法案は,ほんの一握りのネパール人が大多数の人々を犠牲にして利益を得るようなネパールを目指しているように見える。この法案が可決され法律となれば,貧弱な教育環境にもかかわらず多額の授業料を学生からとる医大の開設が可能となる。医大は首都や他の大都市にだけ開設され,貧しい地域には何の便益ももたらさないだろう。」

「オリは良い統治の確立を目指すとも言った。しかし,この法案はコネ資本主義と結託した法による支配の蔓延をもたらす恐れのあるものであり,悪しき統治の典型にほかならない。この法案が可決されれば,人々は政府への信頼を失い,公約の諸目標を実現する意思が政府にあるのか疑うであろう。この法案は撤回し,これ以上の先送りをせず,意見を広く聴き,改めて法案を起草しなおすべきである。」

参照ネパール医学士(MBBS)取得こそ,インド学生にとって最善の選択
なぜネパール医学士取得がお勧めなのか?
 ⇒提出書類準備が容易,ビザ不要,授業料が印・米・英・加などより安い,カリキュラムが印に近く高水準,TOEFL不要
ネパール有名医大の最低必要学費(2018年)
   医科大学[認可提携元大学]: 最低必要学費(1 Lakh=10万ルピー)
1 Nobel Medical College, Biratnagar [Kathmandu Univ] : 50 Lakh
2 Universal College of Medical Sciences [Tribhuvan Univ]: 55 Lakh
3 KIST Medical College, Imadol, Lalitpur [Tribhuvan Univ]: 46 Lakh
4 National Medical College, Birganj [Tribhuvan Univ]: 60 Lakh
5 Devdaha Medical College, Devdaha [Kathmandu Univ]: 45 Lakh
6 Nepal Ganj Medical College, Nepalganj [Kathmandu Univ]: 50 Lakh
7 Chitawan Medical College, Chitawan [Tribhuvan Univ)] : 52 Lakh
8 Birat Medical College & Teaching Hospital, Biratnagar [Kathmandu Univ]: 46 Lakh
9 Manipal College of Medical Sciences, Pokhara [Kathmandu Univ]: 50 Lakh
10 Lumbini Medical College & Research Cente, Palpa [Kathmandu Univ]: 45 Lakh

 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/01/07 at 16:15

ゴビンダ医師のハンスト闘争(12)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ
2.ゴビンダ医師ハンスト略年表
3.マテマ委員会報告
4.医学教育令制定と医学教育問題調査委員会報告(以上前出)

5.オリ共産党政権成立とその医学教育政策
(1)医学教育政策後退とゴビンダ医師の抵抗
2018年2月15日,オリ共産党政権が発足した。ゴビンダ・KC医師の要求する医学教育改革については,コングレス党前政権も積極的とは言えなかったが,それでも前年秋,ゴビンダ医師の要求をほぼのみ「医学教育令2074(2017)年」を制定した。ところが,同政令発布直後の総選挙で大勝し政権を奪取した共産党(NCP)は,ゴビンダ医師の要求するような医学教育改革には強硬に反対してきた。ゴビンダ医師の改革要求闘争は,オリ政権発足により,これまでの成果ですら根こそぎ反故にされかねない状況となった。

事実,オリ政府は,「医学教育令2074年」の施行にも,それを法律として制定することにも否定的であった。また,医学教育問題調査委員会(MEPC)報告の公表や,そこで勧告されている腐敗・権力乱用責任者処罰にも着手しようとはしなかった(*1)。

これに対しゴビンダ医師は,改革要求が容れられなければハンストに入る,と繰り返しオリ政府に警告した。そして,このゴビンダ医師の不屈の戦いに,市民・学生・保健医療関係者らの支持も拡大し,政府はついにシンハダーバー(政庁地区)南西角交通要所のマイティガル・マンダラでの集会を禁止する強権発動に出た(集会参加者一斉逮捕は6月30日開始)。政府が力で医学教育改革を抑え込もうとしていたことは明らかである。

■マイティガル・マンダラ(赤丸印,Google)

しかしながら,それでもゴビンダ医師への支持拡大は止められず,「医学教育令2074年」の次の期限(7月4日)までに何らかの具体策をとらざるを得ない状況に,オリ政府は追い詰められていった。この間の経過の概略は以下の通り。

5月3日,ゴビンダ医師は,「次の議会で医学教育法が制定されることを期待している」とのべ,もし同法制定をはじめとする医学教育改革が実現されなければハンストに入る宣言した。主な改革要求:
・「医学教育法」の制定
 ・医学教育問題調査委員会報告で処分勧告された43人の処分実施
 ・規定以上の授業料を取る医大の処分
 ・マイティガル・マンダラでの集会禁止の撤回

これに対し,オリ内閣は5月9日,「医学教育令2074年」の継続を議会可決はしたが,それ以上の改革には手を付けようとはしなかった。そこでゴビンダ医師は6月7日,従来の改革要求に医療関係者脅迫禁止法の制定など新たな要求をいくつか加えた「6項目要求」を政府に突き付け,要求が容れられなければハンストに入る,と改めて宣言した。

ところが,議会で三分の二以上の絶対多数を握るオリ政権は,またもやゴビンダ医師の要求を無視した。オリ首相は,デウバ内閣がゴビンダ医師の諸要求をほぼ受け入れ制定した既存の「医学教育令2074年」を法律として継承発展させるのではなく,その精神に反する新たな“医学教育法”の制定(旧医学教育法への事実上の復帰)を目論んでいた。ゴビンダ医師は,こう非難している。

「この政府の方針は認められない。われわれは,一般の人々に利用可能な高度な医療と,妥当な負担で可能な高度医学教育を実現するために闘っているのだ。(*2)」

ことここに至って,ゴビンダ医師は,オリ政府には医学教育改革への意思なし,と判断せざるをえなくなった。そして,ついに6月29日,北西部カルナリ州のジュムラにおいて,彼は無期限ハンストに入ることになったのである。第15回目のハンストである(*2)。

■BBCのハンスト報道(ゴビンダ教授連帯FB)

*1 “Dr Govinda KC serves 15-day ultimation, warns of another hunger strike,” Onlinekabar, 3 May 2018
*2 “Dr KC to start 15th fast unto death from today, in Jumla,” Republica, 29 Jun 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/29 at 16:21

ゴビンダ医師のハンスト闘争(11)

(3)ガウリMEPC委員長の医大ビジネス批判
MEPC委員長のガウリ・カルキ(Gauri Bahadur Karki)は,法律家として様々な委員会に参加し,汚職責任追及を中心に重要な役割を果たしてきた。特に特別裁判所裁判長(2009年3月~2012年12月)であったときは,有力政治家,高級官僚,警察幹部,軍幹部らの汚職解明に取り組み,責任を厳しく追及してきたことで知られている(*1)。

ガウリ・カルキは,2月4日のMEPC報告書提出後,委員長の職を退いたようだが(退任日不明),医学教育問題については,その後も厳しい批判を続けている。医学教育の現状認識についてはゴビンダ医師と基本的には同じであり,いわば「共闘」関係にあるので(実際に両者の関係がどうなのかは不明だが),以下,2018年7月16日付『セトパティ』記事(*12)に基づき,彼の発言要旨を紹介する。

医大経営は金密輸より儲かる。
「金密輸には危険が伴う。投資が必要だし,密輸の金を没収されるリスクもある。ところが,医科大学では,投資なしでも金儲けができる。たとえインフラ不備であっても,政治家に少し金を握らせて医大提携開設認可を取得し,次にネパール医学委員会(NMC)を買収して入学学生定員枠を取得すれば,それだけで,以後,何十億ルピーも掻き集めることが出来る。」

買収は割に合う。
「授業料が1人500万ルピーだとすれば,医大は学生を50人多く入学させれば,それだけで収入が2億5千万ルピー増えることになる。誰でも買収できるのは,それゆえである。」
「医大が何十億ルピーも掻き集められるのは,高度な教育も,有能な教授雇用も,不可欠の設備機器購入も,病院の良好な運営も必要としないからである。その結果,政治家や役人を買収する金は,ふんだんにあることになる。医療分野の腐敗の根本原因は,ここにある。」

NMC汚職
「NMC(ネパール医学委員会)の医大調査には5~7人が行けば十分なのに,18~20人の全スタッフが出向く。調査ではなく,金儲けのために他ならない。」
「こうした不正行為が明らかになったのは,ゴビンダ・KC医師が不正行為廃絶闘争を始めて以降のことである。」

政治家は外国病院に行くな。
「政治家は,ネパール国民を国内開設医大のなすがままにまかせ,自分たちだけ外国に行って治療を受けるべきではない。」

■ガウリ氏ツイッターより

*1 “Gauri says goodbye to SC,” Kathmandu Post, 13 Dec 2012
*2 ”Probe panel summons 20 ex NMC officials for investigation,” Republica, August 4, 2017
*3 “Medical education ordinance sent to president,” educatenepal.com, 2017-10-24
*4 “President enacts Medical Education Ordinance,” Onlinekhabar, Nov 10, 2017
*5 “Probe Commission summons TU, KU officials,” Republica, November 13, 2017
*6 “Medical education probe panel summons officials,” Himalayan, 13 Nov 2017
*7 “No action yet against 43 officials fingered by medical probe panel,” Republica, 1 Jun 2018
*8 “MEC holds first meeting, office to be set up at MoE,” Himalayan, February 06, 2018
*9 “Probe committee suggests reforms in medical education,” Himalayan, February 06, 2018
*10 “Corruption in med education: Govt mum on probe report,” Kathmandu Post, Feb 8, 2018
*11 “MEPC report and the issue of reform in the medical education section,” Review Nepal, 18 Feb 2018
*12 Prashanna Pokharel,“Medical colleges earn more easily: Probe Commission chair Prashanna Pokharel,” Setopati, 16 Jul 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/03 at 07:06

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(10)

(2)MEPC報告書の提出
デウバ首相による「医学教育令」制定の3か月弱後,首相任期終了(2018年2月15日)直前の2018年2月4日,「医学教育問題調査委員会(Medical Education Probe Committee [MEPC])が調査報告書をデウバ首相に提出した。

MEPCは,ゴビンダ医師らの要求によりプラチャンダ首相(MC)が2017年4月17日に設置した委員会であり,紛らわしいがMNC(ネパール医学委員会)とは別の組織。

医学教育問題調査委員会(MEPC)
設置目的・権限:医科・歯科大学の開設,授業料,学生数,教職員配置などの調査,および「ネパール医学委員会(Nepal Medical Council)」の運営状況調査。
委員長:ガウリ・B・カルキ(元特別裁判所裁判長[注])。
委 員:ウペンドラ・デブコタ(医師),スルヤ・P・ガウタム(教育省事務次長),ほか数名。
 [注]最高裁判所―上訴裁判所(16)―郡裁判所(75)
    最高裁判所―(他の裁判所)特別裁判所/行政裁判所/労働裁判所
    (ただし連邦制移行に伴い,裁判所組織も改変中。)

このMEPCが2017年8月3日,ネパール医学委員会(NMC)の元委員らを召喚し,医科大学受入学生不正増員容疑で聴取することを決めた。召喚されたのは,アニル・K・ジャー元委員長,AE・アンサリ元副委員長を含む元委員ら20名(*2)。

さらにまたMEPCは,職権乱用調査委員会(CIAA)の専門職員8名も,カトマンズ大学医学部大学院入試に不正関与した容疑で召喚した。

そして11月に入り,医学教育令が制定されると,その直後の11月12日,MEPCはトリブバン大学(TU)とカトマンズ大学(KU)の幹部の召喚を決めた。TU幹部はカトマンズ・ナショナル医科大学設立に不正関与した容疑であり,KU幹部は医大授業料不正値上げの容疑。

召喚された大学幹部
TU:ヒラ・B・マハルジャン元副学長,ティルタ・R・カニヤ副学長,スダ・トリパティ名誉総長(Rector),ディリ・ウプレティ教務職員(Registrar),およびカトマンズ・ナショナル医科大学インフラ監査担当のカルビル・N・シャルマ教授ら他の教職員6名。
KU:ラムカンタ・マカジュ副学長ほか。

さらにこの日,MEPCは,前回の召喚に応じなかったNMC調査委員のシャシ・シャルマ医師も再召喚した。

このようにMEPCが召喚し聴取してきたのは,主にネパール学界,政官界の著名有力者たちであり,ここからだけでもネパールにおける医学教育問題の根深さ,解決の難しさがよく見て取れる(*5,6)。

MEPCは,こうした召喚・聴取に基づき2018年2月4日,デウバ首相に報告書を提出した。その概要は以下の通り。

MEPC報告書概要
・医学分野の改革につき調査し,それに基づき改革を実行せよ。
・医学生たるに必要な能力の確保・維持。
・医科大学学生定員は,NMCが割り当てる。
・学生数過多,授業料過大徴収,教育水準不足の医科大学に対する処分。
・大学,保健省,教育省,NMC各代表からなる委員会を設置し,医大を年2回以上調査。
・不正関与の教職員等43名の適正な処罰。処罰被対象者は,召喚されたTU副学長らであり,在職者は免職。また,医学教育に不当介入したCIAAロックマン・カルキ委員長についても適正な処分を行う。
・連邦医大を設置し,その下に各州3校までの提携医大設置を可能とする。
・医学教育令が実際に施行されるまで,提携医大の学生数は提携元大学が定める。
・医科大学の大学暦の統一。

このような内容の報告書を作成したMEPCは,それをデウバ首相に提出しようとしたが,当初,首相は受け取りを拒んだ。これに対し,ガウリ・カルキMEPC委員長が受け取らないなら郵便で送りつけると迫ったので,仕方なくデウバ首相は2018年2月4日,報告書を受け取り,担当の教育省に回した。ただし,報告書を受け取ったものの,首相はそれを公表せずコメントも一切拒否した。保健医療改革への消極姿勢が如実に表れている(*7,8,9,10,11)。

▼カトマンズ・ナショナル医科大学(同校FBより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/01 at 15:17

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(9)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ
2.ゴビンダ医師ハンスト略年表
3.マテマ委員会報告
 (1)保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)
 (2)「マテマ委員会報告」要旨 [以上前出]

4.医学教育令制定と医学教育問題調査委員会報告
(1)医学教育令の制定
ゴビンダ・KC医師のハンストは,「マテマ委員会報告」提出後は,その速やかな実施が具体的な要求の中心に据えられることになった。

このゴビンダ医師の要求は,デウバ内閣(NC, 2017年6月7日~2018年2月15日)が,その政権末期に「医学教育令2017年」を制定・発布(大統領署名11月11日)したことにより,相当多くの部分が形式的には実現された(*3,*4)。

しかしながら,この「医学教育令」は,改正できず失効した旧医学教育法の代替政令にすぎず,議会で承認されなければ失効するし,大統領によりいつでも撤廃できる(注)。そのためゴビンダ医師は,「医学教育令」の速やかな施行を求める一方,同政令を法的により安定した「医学教育法」として制定することを次の具体的な要求の中心に据え,闘争を継続することになった。

しかしながら,2017年末選挙で大勝し次期政権を担うことになった共産党(UML+MC)はコングレス党以上に保健医療改革には消極的であり,ゴビンダ医師の改革闘争は予断を許さぬ状況になってしまった。

 (注)憲法114条要旨:議会閉会中に対処が必要な事態が生じたときは,大統領が内閣の助言に基づき政令を発布する。政令は法律と同等の効力を持つが,発布後開会の両議会のいずれかで否決されれば,失効する。また,政令は大統領によりいつでも撤廃される。さらにまた,政令は議会が否決せず大統領が撤廃しなくても,議会開会後6日経過すると失効する。

▼MEC医師資格試験合格率(保健省HP)

(http://dohs.gov.np/wp-content/uploads/2017/09/Nepal-Medical-Council.pdf)

谷川昌幸(C)

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2018/11/30 at 17:11

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(8)

3.マテマ委員会報告
(1)保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)[前出]
(2)「マテマ委員会報告」要旨
1)保健医療制度と医学教育の抜本的見直し。医科大学(医学部)の中央集中の解消。医学部,歯学部,看護学部のカトマンズ盆地内新設のための予備合意書[基本合意書](Lol)は,今後10年間,交付しない。すでに全医大23校のうちの7校がカトマンズ盆地内に立地している。(保健省HP[2018-10-30]によれば,現在の医科大学数は公立4,軍付属1,私立14の計19校。[注])

2)保健医療担当専門機関を設置し,医大開設認可,医大入試,医大付属病院運営等を監督させる。既存の「ネパール医学委員会(NMC)」は機能不全。

3)カトマンズ盆地内では,医科大学は,たとえ準備が進んでいても,新設は認めない。準備中の既存施設等は政府に引き渡す。「マンモハン記念健康科学インスティテュート」,「ナショナル医科大学」,「人民歯科大学」など。

4)大学が予備合意書(Lol)をすでに取得している場合,保健医療コース新設はカトマンズ盆地以外でのみ認められる。

5)医大開設予備合意書を取得し施設整備を終えている場合,その施設は政府に売却することができる。

6)一つの大学が提携(affiliate)できる医大ないし医学部は5校以内(既存医大は除く)。医大(医学部)を持たない大学には,提携医大の新設を認めない。

7)一つの郡に開設できる医大は,一校のみ。

8)提携医大のMBBS(医学士)定員は100人以下,授業料は350万ルピー以下。また,提携歯科大(歯学部)の定員は50人以下,授業料は180万ルピー以下。

9)医師資格試験(NMC実施)合格率が2回連続75%以下の場合,医大認可取り消し。

10)国家は,必要な医大の開設には,税軽減,土地貸与などの助成をすべきだ。

[注]ネパールの医科大学(★公立,☆軍付属,無印は私立)
Tribhuwan University Affiliated (TU)
・Institute of Medicine (IOM), Maharajgunj, Kathmandu ★
・Universal Medical College (UCMS), Bhairahawa, Nepal
・National Medical College (NMC), Birgunj, Nepal
・Janakai Medical College (JMC),Janakpur, Nepal
・Kist Medical College (KISTMCTH), Imadol, Lalitpur
・Chitwan Medical College (CMC), Bharatpur, Chitwan
・Gandaki Medical College (GMCTHRC), Lekhnath-2, Pokhara
・Nepalese Army Institute of Health and Sciences( NAIHS), Kathmandu ☆
Kathmandu University Affiliated (KU)
・College of Medical Sciences (CMS),Bharatpur
・Nepaljung Medical College, Chisapani, Nepaljung
・Kathmandu Medical College (KMC),Sinamangal, Kathmandu
・Nepal Medical College,Jorpati, Kathmandu
・Kathmandu University School of Medical Sciences (KUSMS),Dhulikhel
・Lumbini Medical College,Tansen, Palpa
・Nobel Medical College.Biratnagar
・Manipal Medical College of Medical Sciences (MCOMS),Pokhara
Not affiliated to TU or KU
・B.P. Koirala Institute of Health and Sciences (BPKIHS), Ghopa, Dharan ★
・Patan Academy of Health and Sciences (PAHS),Patan, Lalitpur ★
・National Academy of Medical Sciences (NAMS),Mahaboudha, Kathmandu ★

医科大学の格付け(*8)

*1 चिकित्सा शिक्षासम्बन्धी राष्ट्रिय नीति तर्जुमा उच्चस्तरीय कार्यदलको प्रतिवेदन २०७२ (High-level work report on national policy related to medical education 2072)
*2 “Mathema-led committee submits report,” Republica, 29 Jun 2015
*3 “Mathema committee submits report on new health education policy,” The Himalayan Times, June 29, 2015
*4 “Govt makes public Mathema committee report,” Ekantipur, Aug 4, 2015
*5 “Health Profession Education Commission: Govt picks names for regulatory body,” Kathmandu Post, Sep 18, 2015
*6 “Top Ten recommendation for restructuring ‘Nepals Health Profession Education Policy’,” edusanjal, 2015-07-05
*7 “Health Profession Education Policy sets a precedent for future public policies: Interview Kedar Bhakta Mathema,” Kathmandu Post, 2018-07-09
*8 “Top Medical (MBBS) Colleges of Nepal,” https://edusanjal.com/ranking/top-medical-mbbs-colleges-nepal/

谷川昌幸(C)

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2018/10/31 at 16:10

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ゴビンダ医師の市民的抵抗,医学部長解任事件最高裁判決に対して(1)

トリブバン大学医学部教育病院のゴビンダ・KC(गोविन्द के.सी.)医師が2018年1月8日夕方,最高裁長官を侮辱した容疑で逮捕され,シンハダーバー警察署に留置,翌9日朝,最高裁に連行され(9時到着),体調悪化のため警察救急車内で待機,午後2時から法廷で尋問された。10日,釈放。

この最高裁長官主導のゴビンダ医師法廷侮辱事件は,あまりにも唐突で強引で「お粗末」(10日付カトマンズポスト社説),ネパール司法の権威を著しく損なうことになった。

1.最高裁の不可解な医学部長解任事件判決
今回の法廷侮辱事件のそもそもの発端は,最高裁法廷(ゴパル・プラサド・パラジュリ長官とDK・カルキ判事)が1月7日,トリブバン大学(TU)医学部(IoM)の当時(2014年1月)学部長であったシャシ・シャルマ医師の学部長解任を無効とする判決を下したこと。

S・シャルマ医師は2014年1月10日,医科大認可をめぐる混乱のさなか,TU理事会により医学部長に選任された。これに対し,ゴビンダ医師らが不公正選任として反対,その結果,2014年1月22日,KR・レグミ暫定内閣首相がTUに対し学部長任命の取り消しを命令,S・シャルマ医師は学部長を解任された。

シャルマ医師は直ちに解任は不当と訴えたが,最高裁法廷(S・カルキ長官)はこれを棄却した。その後も学部長人事を巡り混乱が続いたが,少しずつゴビンダ医師がネパールの現状では最も公正と主張する年功選任が認められるようになり,現学部長も年功により2016年12月3日に選任されたJ・アグラワル医師が務めている。

ところが,2018年1月7日,最高裁法廷(GP・パラジュリ長官とDK・カルキ判事)が唐突にも(少なくとも事前報道は見られなかった),4年弱前のS・シャルマ医学部長解任の政府決定を無効とする判決を下した。

この最高裁判決がそのまま適用されれば,S・シャルマ医師は医学部長に復職することになるが,たとえ復職しても医学部長任期は1月14日まで。ほんのわずかにすぎない。なぜ,こんな不自然な,不可解な判決を下したのか?

2.ゴビンダ医師の抗議ハンストと法廷侮辱容疑逮捕
1月7日のS・シャルマ医学部長解任無効最高裁判決に対し,ゴビンダ医師は猛反発,翌8日午後4時からTU教育病院前で抗議ハンスト(通算14回目ハンスト)を開始した。

ゴビンダ医師は,最高裁は「医学マフィア」とつながっているなどと激しい言葉でパラジュリ最高裁長官個人とその判決を容赦なく批判し,長官の辞任と判決の見直しを要求した。

これに対し最高裁は,担当官ネトラ・B・ポウデルに指示してゴビンダ医師を法廷侮辱容疑で告発させ,内務省を通して警察にゴビンダ医師を逮捕させた。逮捕は1月8日夕方,ハンスト開始後すぐのことであった。まさに電光石火,デウバ首相ですら,この動きを知らされていなかったという。

警察は,シンハダーバーの首都警察署にゴビンダ医師を留置し,翌9日午前9時に最高裁に連行した。担当裁判官はP・バンダリ判事とBK・シュレスタ判事。ところが,手続きが延々と続き,ゴビンダ医師の体調が悪化したため,彼は警察の救急車に移された。彼の法廷陳述が始まったのは,ようやく午後2時になってからのこと。手続きのための長時間待機はネパールの長年の慣行とはいえ,これは拷問に近い扱いである。

最高裁での法廷陳述終了後,ゴビンダ医師はビル病院に移された。次の出廷は2月20日の予定。


■ゴビンダ医師(連帯FB)/パラジュリ最高裁長官(最高裁HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/20 at 17:23