ネパール評論 Nepal Review

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制憲議会選挙2013(38): 指名議席空席の議会は違憲,最高裁

ネパール最高裁は5月12日,B・パスワン議員(ダリット党議長)の令状請求を認め,内閣指名26議席空席の制憲議会は違憲と判決した。要点は次の通り。(参照:指名議席争奪

(1)内閣指名26議席空席のままの制憲議会の活動は,暫定憲法第63条(3)Cの規定に違反し,違憲。
(2)内閣は,権力分有(power-sharing)を口実に指名を先送りしてはならない。判決日(12日)から15日以内に,26議員を指名せよ。
(3)選挙(小選挙区制・比例制)落選者は,指名されてはならない。
(4)国家貢献顕著な独立の人物を選出し指名すること。

この最高裁命令については,「民主法律家協会」集会では,司法の権限を逸脱した行きすぎた「司法積極主義」だ,という批判が多く出された。また,落選大物政治家を抱える政党からは,たとえば「最高裁は制憲議会の管轄内にまで介入した。これはよくない」(ポカレルUML書記長)といった批判も出されている。

たしかに司法積極主義は限度を超えると問題だが,今回の最高裁命令は,指名候補者資格限定の部分には議論の余地があるが,それ以外は妥当である。

選挙投票日は2013年11月19日。すでに半年も経過している。にもかかわらず,指名議席空席のまま,制憲議会は重要事項を次々と審議し,決定してきた。違憲は明白であり,最高裁命令は当然といってよいであろう。(Himalayan, 14,19-20 May)

140522 ■最高裁付近(Google)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/22 at 10:05

空港問題も最高裁へ: 司法積極主義への甘え

トリブバン国際空港(TIA)の管理運営をインドの開発投資会社IL&FSに委託する件に関し,3人の弁護士が最高裁に差し止め請求を提出した。競争入札がなく,また長期的には国益に反するという理由。

このところ,ネパールでは,何でも最高裁だ。正統な権力は最高裁だけだから仕方ないとはいえ,先の制憲議会任期延長禁止命令など,本来なら議会が決定すべき政治的な事柄ですら,なんでもかんでも最高裁に持ち込まれる。

もともとネパールは司法積極主義(judicial activism)であり,国民は,たとえ具体的な事件がなくても,気にくわない法律や命令・決定の違憲性を最高裁に訴えることができる。

いわゆる「公益訴訟(public interest litigation)も広く認められている。作為,不作為による権利侵害で訴えることができるのだから,その気になれば,何でも,いつでも最高裁に提訴できる。訴訟天国。弁護士も儲かる。

日本のように司法消極主義(judicial passivism)をとり,訴えの利益がないといって門前払いしたり,高度な政治行為だといって議会・政府に丸投げする(統治行為論)のはもってのほかだが,ネパールのように何でもかんでも最高裁というのも,いかがなものか。

最高裁は,非民主的・保守的な機関であり,既存の正統な法体系の保守が本来の任務だ。その最高裁が,立法・行政の行うべき統治行為を一人あるいは数人の判事で判断する。うまくいくはずがない。議会消滅の異常事態とはいえ,困ったことだ。

1995年,私は最高裁に出かけ,アディカリ首相(共産党)の議会解散の違憲訴訟判決を見学した。首相は定められた手続きに従い議会解散を宣言したのであり,私は当然,合憲と思い,周囲の友人たちにもそう述べた。ところが,判決は違憲。最も政治的な首相の議会解散を,最高裁が違憲と裁決し,すでに解散していた議会を再開させたのだ。びっくり仰天。

いまの最高裁は,制憲議会延長を違憲と裁決したが,巷では,無議会政治から脱却するための議会復活論が急浮上している。で,もし議会復活となったら,最高裁はどうするのだろうか? 認めるにせよ認めないにせよ,ご都合主義の感は否めない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/06 at 19:05

最高裁に尻ぬぐいさせる議会

ヤダブ大統領が,暫定憲法51条(3)により立法議会を招集した。明日,12月19日午後1時開会。要求したのは,与党利権を満喫しているUML,NC以外の主要政党だ。さて,何人が巨大催事(場)に集まるか?

そんな議会にしびれをきたした人々が,11月28日,最高裁に直訴に及んだ。「憲法法曹フォーラム」のC.K.ギャワリ弁護士らが,首相選挙におけるUMLの中立(白票ないし欠席)政策は憲法の精神に反する,首相選挙を最初からやり直せ,という判決を出すことを求める訴えを出したのだ。

この訴えに対し,17日,最高裁はこう裁決した。すなわち,唯一の立候補者ラムチャンドラ・ポウデル氏(NC)は,対立候補なしを理由に当選とはされず,当選には過半数票の獲得が必要だ。また,政党に中立を認めている議会法41,42条は憲法38条,70条(2)(6)に違反し無効である,と。つまり,首相選挙における投票は議員の義務というわけだ。

議会法の合憲・違憲解釈は微妙であり,軽々に判断はできないが,少なくともこの判決で最高裁がほんらい議会が解決すべき政治問題に割って入り,11月28日の提訴からわずか2週間余で問題をバッサリ一刀両断にし,始末してしまった(しようとした)ことは事実だ。

日本や他の大多数の国々では考えられないことだが,ネパールは司法積極主義の国だ。1994年には,アディカリ首相の議会解散に最高裁が違憲判決をだし,UML政権を葬り去ってしまった。議会政治が成熟していないので,最高裁に直訴をせざるをえないということだろうが,議会で解決できない政治問題を最高裁が本当に解決できるのかどうか,大いに疑問である。

司法,つまり「法の支配」は,ほんらい非民主的なものだ。それを忘れ,司法に尻ぬぐいしてもらうのは,議会制民主主義の自殺行為だ。他人に尻を拭ってもらってよいのは幼児だけだ,ということを忘れてはなるまい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/12/18 at 12:53

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