ネパール評論 Nepal Review

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オリ首相就任と共産党統一

1.オリ首相就任
「統一共産党(CPN-UML)」のKP・オリ(खड्ग प्रसाद शर्मा ओली)議長が2月15日,ネパール第41代首相に就任した。

オリは,1952年2月22日,東部テラトゥム生まれのブラーマン。1970年頃から共産主義運動に参加,ジャパ闘争を闘い,73年から87年にかけ14年間投獄された。出獄後,UMLルンビニ地区代表(1990年就任)などを経て,UMLジャパ郡選出下院議員となり,党や政府の要職を歴任した。
・下院議員初当選 1991
・内相 1994-95
・副首相/外相 2006-07
・UML議長 2014.07-
・首相 (1)2015.10.11-2016.08.03 (2)2018.02.15-

2.共産党統一
オリUML議長が首相に就任できたのは,2017-18年の連邦議会選挙において,議会三大政党のうちの二党たるUMLと「ネパール共産党・マオイストセンター[マオイスト](CPN-MC)」が選挙後の統一を掲げ,安定と繁栄を訴え,選挙共闘により勝利したからである。

連邦議会代議院(下院)は議員定数275。このうちUMLは121(44.0%),MCは53(19.3%)の議席を獲得した。未曽有の大勝利である。

この選挙共闘の成功を受け,UMLとMCは選挙前に約束していた両党の統一に向け最後の詰めを行い,2月19日「7項目合意」に署名して一つの共産党となった。仮称「ネパール共産党(Communist Party of Nepal[CPN])」。

この新生「ネパール共産党」は,代議院(定数275)において174議席(63.3%)をもつ。これだけでも絶対多数を優に超えるが,もしマデシ系のRJP-N(17議席)かFSF[SSF]-N(16議席)の協力が得られるなら,三分の二を超え,憲法改正ですら可能となる。強力な安定政権の確立・維持に,形式的には十分な議席数である。

3.新生「ネパール共産党」の先行き?
しかしながら,新生「ネパール共産党」のオリ政権が強力な長期安定政権となるかどうかは,まだ何とも言えない。

(1)党名。新生政権党は「ネパール共産党(Communist Party of Nepal[CPN])」を名乗りたいらしいが,ネパールには共産党が多数あり,「ネパール共産党」もむろんすでに登録使用されている。看板にすぎないとはいえ,名は体を表す,おろそかにはできない。新党の名称はどうなるか?

(2)党是。「マルクス・レーニン主義」には異論はないが,「毛沢東主義(マオイズム)」はどうするか? 多数派のUML系は,もちろん由緒ある「人民多党制(複数政党制)民主主義」を党是とすることは当然と考え,譲る気はない。これに対し,人民戦争を戦い抜き事実上勝利したMC系は,多かれ少なかれ原理主義的な「毛沢東主義(マオイズム)」を放棄しはしないであろう。

(3)権益配分。議席,政府役職,党役職等の権益をどう配分するか? 政治闘争の赤裸々な本音部分。今回,MCが「ネパール会議派(NC)」との連立を解消してUMLに乗り換えたのも,NCがMCへの役職配分30-40%を拒否したのに対し,UMLは40%を約束したからだといわれている(*1)。身近な現世利益は現実政治を動かす大きな要因である。
*1 Kamal D. Bhattarai, “The (Re)Birth of the Nepal Communist Party,” The Diplomat, 21 Feb 2018.

新生「ネパール共産党」は,いまのところUML系6対MC系4の取り決めを守り,議席や主要な役職を配分しつつある。

党議長は,UML系のオリとMC系のプラチャンダ(PK・ダハル)が第一回党大会まで共同で務める(共同議長)。ただし,党大会がいつになるかは不明。

首相は,前半3年をオリ,後半2年をプラチャンダが務める。ただし,政権たらいまわし批判を恐れ,密約になっているともいわれており,約束通り政権が回されるかどうかは不明。

大統領と下院副議長はUML系,副大統領と下院議長はMC系に割り振る予定。

大臣ポストは,UML系11(61%),MC系7(39%)と,約束通り,6対4にきっちり割り振った(2018年2月24日現在)。しかし,これで不満はないのか? 以前であれば,大臣ポストをいくらでも増やし,ばら撒くことができたが,いまは憲法66(2)条により25大臣以下に制限されている。

(4)対印・対中関係。メディア,特に日本の新聞は,「親中安定政権誕生」などと書き立てているが,ネパールの対印・対中関係は,そう簡単ではない。

そもそも,いまや昇竜・中国を無視しては,世界の大半の国々は自国国益を守りえない。嫌中・日本ですら,中国無視や敵視は観念論,中国をよく観察し互恵関係を深めていかざるを得ない。ましてや国境を長く接し歴史的関係も深いネパールが中国に接近するのは,国益を考えるなら,当たり前。問題は,中国にどう接近し,どのような関係を構築していくかだ。

オリ首相はブラーマンで,もともと親印。親中の国王と闘い,14年間も投獄された。そのオリが,グローバル化の下での中国台頭により中国カードを手にし,使い始めたので,親中と見られているに過ぎない。国益第一なら,他の政治家であっても,多かれ少なかれ同じことをするはずだ。

一方,プラチャンダもブラーマンで,もともと親印。ネパール・マオイストは,中国共産党をニセ毛沢東主義者と非難し,激しく攻撃していた。中国側も,ときにはネパール体制側を支援しマオイスト弾圧に加担したことさえあった。いまはプラチャンダも中国に接近しているが,オリ同様,それは国益の観点からの戦略的な選択とみてよいだろう。

そこで問題は,オリ首相がたとえ戦略とはいえ,中国により接近した場合,インド筋が何らかの形で介入し,オリ政権打倒を画策するのではないかということ。そして,その際,働きかけのターゲットとなるのは,「ネパール共産党」反主流派のMC系,つまり親印・親マデシのプラチャンダではないか,ということ。

政権党「ネパール共産党」においては,オリ首相の率いるUML系が多数派。プラチャンダ率いるMC系は少数派であり,どうしても冷や飯を食わされ,不満がたまる。そこにインド筋が働きかけ,MC系の造反,連立組み換えによりオリ政権を崩壊させることは十分に考えられることだ。

事実,この数年の政権交代は,第三党マオイストによる連立相手組み換えによるものがほとんど。マオイストは2015年,UMLと組んでオリを首相とし,2016年には相手をコングレス党(NC)と取り換えてプラチャンダを首相とし,そして今度またUMLと組んでオリをふたたび首相とした。第三党のマオイストが,キャスティングボートを握っている。

そこにマデシ問題がらみでインド筋が介入してくるかもしれない。インドは,NC,マオイスト,マデシ系諸党の連携による親印政権を期待しているとみられている。

(5)移行期正義。「ネパール共産党」内のMC系の人々にとって,人民戦争期の重大な人権侵害をどう処理するか,つまり移行期正義の問題をどう解決するかは,個々人の浮沈に直接かかわる重大問題である。人民戦争期には,国軍,武装警察など政府側だけでなく,マオイスト側にも,重大な人権侵害に加担した人が少なからずいた。被害者側は,国際社会の強力な支援をバックに,責任者の処罰と損害賠償を求めている。これを受け,UML系も移行期正義の実現には肯定的である。しかし,もしオリ政権がこの問題に一歩踏み込めば,幹部を含め加害を疑われている人の多いMC系が激しく反発し,たちまち政権は動揺するであろう。オリ首相は,この難問をどう処理するか?

(6)憲法改正。マデシ系の人々は,インドの強力な支援をバックに,彼らの権利が認められるよう憲法を改正することを要求している。この要求に対し,MC系は肯定的,UML系は否定的。この問題は,インドが非公式国境封鎖を強行せざるをえなかったほど深刻。オリ首相は,この憲法改正問題をどう考え解決を図るつもりか?

以上のように見てくると,オリ内閣が親中長期安定政権になるかどうかは,まだいずれともいえないと考えざるをえない。今後の成り行きが注目される。


■オリ首相ツイッター(2月23日)/プラチャンダ議長フェイスブック(2月18日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/02/25 at 17:46

京都の米軍基地(103):反対ビラなし

元旦に行ってみて驚いたのは,第五に,米軍基地反対ビラが,後述看板を除けば,一つも見られなかったこと。基地運用開始前後頃までは,今回走った道路沿いに反対ポスターやビラが多数掲示されていた。ところが,注意深く見ていたが,袖志や尾和の集落内を含め,今回は一つもなかった。

これは,反対派の戦術転換の結果であろうが,その背後には,すでに出来上がってしまったものはもはやどうしようもないという,何らかの諦め心情が多かれ少なかれあるのではないかと思われる。「国益」を掲げ,官僚主義的狡知と利権で強引に既成事実を積み重ねていく権力との闘いは,難しい。

そうした中,平海岸駐車場向い道路わきの看板と,島津米軍住宅隣の看板は,残っていた。勇気ある反対闘争だ。

170105c■元日の平海岸

170105a170105b■平海岸駐車場向いの反対看板

170105d■島津米軍住宅隣の反対看板。駐車は「Y」ナンバー車(数字消去)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/01/05 at 09:45

京都の米軍基地(68):翼賛奉仕へ粛々と

経ヶ岬進駐米軍への翼賛奉仕体制づくりが,米軍主導で,粛々と進められている。権力もカネもあるから,住民は翼賛奉仕に加担した方が得策,反対派はじり貧,見る影もない。

150423f■「つかみ取られる日本(!?)」(米軍FB)

1.視察・宴会
米軍最前線最先端基地には,米日要人の視察が続々。4月13日には防衛大臣政務官ご一行が,はるばる秘境・経ヶ岬にまで,ご機嫌伺いにこられた。視察後は,もちろん宗主国のための宴会。視察団:防衛大臣政務官・石川博崇,防衛省地方協力局地方調整課長・藤代誠,航空幕僚監部総務部長・荒木文博,中部航空方面隊副司令官・金子真一,中部航空警戒管制団司令・山本祐一ほか(敬称略)。

その数日後(たぶん4月19日)には,京都府の山田知事が視察。日本のメディアはあまり報じないが,誠実な米軍は,ちゃんと報告してくれている。

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 ■防衛大臣政務官等の視察(米軍FB)/宴会(米軍FB)

150421a■山田知事視察(米軍FB)

2.日米友好協会
地元も盛り上がっている。4月16日には,特定非営利活動法人「京丹後市日米友好協会」が設立された。目的は,「京丹後市民と米国人をはじめとする基地関係者との相互理解と友好関係を増進し、地域社会の安心安全に寄与すること」。

米軍人・軍属およびその家族との交流なのに,なぜ「日米友好」なのか? 相手は,毎日のように世界のどこかで戦争をしている,世界最強の恐ろしい軍隊。目的と名称が一致していない。が,われらが京都府知事は,もちろん「国益」のため,法人設立を認可した。

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 ■協会マーク(米軍FB)/協会会合(米軍FB)

3.消防協定
その数日後の4月21日には,京丹後市が,「在日米陸軍基地管理隊緊急業務局統合消防本部」という,いかにもおどろおどろしい米軍機関との間で,消防協定を締結した。

「協定書」はまだ未見だが,報道によると,米軍基地で火災が発生した場合,米軍の要請を受け,市の消防隊が消火にあたるのだそうだ。

大丈夫かな? 基地内は日本の治外法権。しかも,危険物ごろごろ。一応,燃料タンクなどの情報は提供されるそうだが,本当に危険なもの,つまり軍事秘密であり「特定秘密」でもありうる恐ろしい危険物の情報など,ちっぽけな自治体の消防になど教えるはずもない。

それなのに,中山市長は満面の笑みをたたえつつ,米軍統合消防長と固く握手し,「協定書」を取り交わした。市長によれば,「今回の協定によって、米軍の安全と同時に市民の安全も守れることにつながる」(NHK京都4月21日)という。

どうして? 危険きわまりない外国軍基地の火災現場に突入し,滅私奉公させられるのは,市長ではなく,市民を守るはずの消防隊員なのに。

150423b■協定書交換(米軍FB)

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 ■協定書交換(NHK京都)/米軍責任者(NHK京都)

4.エルモ京丹後支部
独立行政法人「駐留軍等労働者労務管理機構(エルモ)」も,たぶん4月上旬に,開設。「経ヶ岬通信所の日本人雇用者のため」だそうだ。それにしても,「エルモ」とは,ちょっと気恥ずかしくなるような,が,いかにもそれらしい,名称ではある。

150423c■開設文書交換(?)(米軍FB)

*「レーダーサイト火災時の消火協力 京丹後市と米軍が協定 消火設備の事前点検も」産経ネット版,2015.4.22
*「米軍基地と京丹後市が協定」NHK京都ネット版,2015.4.21
*14th MDB,FB

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/23 at 18:43

京都の米軍基地(62):レーダー稼働と秘密指定とイエスマン首長

米軍が12月26日,Xバンドレーダーの運用を開始した(公表同日午後9時)。警察庁の特定秘密指定発表と同時ないし直後の,絶妙のタイミングだ!

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 ■Xバンドレーダー(京丹後市HP)

1.特定秘密の指定
特定秘密保護法(秘密法)は,すでに2013年12月6日,自公強行採決により成立していたが,施行は2014年12月10日から。

このスケジュールにあわせ,政府は指定されるべき秘密の選定作業を進め,朝日新聞(12月27日)によれば,すでに政府10機関が約370件を特定秘密に指定しているという。いかにも秘密法らしいのは,機関自ら発表したのは今回の警察庁が初めてで,他の諸機関は自ら積極的には発表はしていないこと。秘密は秘密にしておきたいというのが本音であろう。

警察庁発表の主な秘密は,情報収集衛星,テロ,外国政府などとの協力,スパイ活動,部隊の戦術・運用,情報提供者などの人的情報源。これらの秘密は秘密であって具体的なことは皆目見当もつかないが,Xバンドレーダーに関することは何でも,この秘密の網のどこかに引っかかりそうだ。

秘密指定は,警察庁のものだけではない。朝日新聞(12月27日)調べでは,他にも多数ある。
  防衛省 244件
  内閣官房(内閣情報調査室など) 49件
  海上保安庁 15件
  経産省 45件
  総務省 2件
  法務省 1件
  国家安全保障会議 1件

2.Xバンドレーダーの稼働
京丹後のXバンドレーダーは,この秘密法体制(国民監視体制)発足と同時に運用を開始した。単なる偶然の一致ではあるまい。

Xバンドレーダーは最先端の監視装置であり,北朝鮮はむろんのこと,中国をも常時監視する。この監視装置には,それを守る最先端の強力な秘密防衛体制=住民監視体制が不可欠だ。特定秘密保護法は,まさしくその要請に応えるもの。京丹後市は,Xバンドレーダーを受け入れることにより,かつての日本三大秘境の一つから,一躍,日本最先端の秘密法モデル地域に向かって,大きく前進したのである。

Xバンドレーダーは,単なる機械ではない。Xバンドレーダーは,それを支える社会体制の中でのみ機能する。その体制を,「Xバンドレーダー体制」と呼ぶ。

3.仲井真前知事と中山市長と基地利権
「Xバンドレーダー体制」は,中に入ってしまえば,とりわけ有力者にとっては居心地がよい。中山京丹後市長は,運用開始に関するコメント(12月26日)で,こう語っている。

「施設の本格開始に当たり、我が国の平和と安全という尊い国益への貢献を真摯に願うとともに、自治体としては、同時に、様々な面での住民の安全、安心の確保が大前提であるとして、この間、このための準備や対策に国、米軍、京都府、地元住民はじめ関係者の皆さんとともに、万全に取り組んできました。・・・・」(赤字=引用者)

このコメントを目にしてすぐ思い浮かんだのが,安倍首相との会談後の仲井真・前沖縄県知事のことである。前知事はこう語った。

「安倍総理大臣、菅官房長官にはこのような機会を私どもに与えていただきまして、心から感謝申し上げます。また、今、総理大臣自らご自身で、我々がお願いした事に対する回答の内容をご説明いただきまして、ありがとうございました。いろいろ驚くべき、立派な内容をご提示いただきました。沖縄県民を代表して、心から御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。」(首相官邸「仲井眞沖縄県知事との面談」平成25年12月25日,赤字=引用者)

141227a ■安倍・仲井真会談(2013年12月25日,官邸HP)

この二人の基地自治体首長の姿勢は,中央政府の基地利権による懐柔にオドオドしながら追従する,という点でよく似通っている。自治体(地域政府)は,本来,国家に先在し,「地方自治の本旨」(憲法92条)に則り統治されるべきなのに,彼らはその誇りと責務を忘れ,自ら国家の下請け機関に甘んじてしまっている。

だから,「尊い国益への貢献」の前提条件として繰り返し強調される「住民の安全安心」も,住民自身のための「住民の安全安心」と錯覚してはならない。それは,正しくは米軍と日本政府のための「住民の安全安心」であり,より正確には「お上のための住民監視」にほならない。

4.米軍基地と秘密法の威嚇効果
下掲文書は,レーダー運用開始後,京丹後市が公表したもの。この赤字警告を無視して,故意に,あるいは何かの弾みで,誰かに事前にこの内容を漏らしてしまったらどうなるか? あるいは,何気なくしゃべったことが,結果的に,この文書の内容と同じだったとすると,どうなるか? 

秘密法施行以前であっても,職務秘密の漏洩は多かれ少なかれ処罰される場合があるが,秘密法施行後は,はるかに重罰であり,その威嚇効果は絶大となる。

米軍やXバンドレーダーについても,「見ざる,聞かざる,言わざる」となることは避けられず,かくして京丹後はG・オーウェルも真っ青の住民監視管理社会となってしまうであろう。

 ▼防衛省文書(京丹後市HP)
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/27 at 19:12

京都の米軍基地(61):米軍のプレゼンス・プレゼント

最先進にして最強の米国と,極東の後進国日本の辺境地。はや勝負あり! 米軍のプレゼンスに,京丹後はメロメロなのだ。

たとえば,京丹後市国際交流協会企画の「国際交流会」(12月21日)。米軍基地からもオルブライト司令官ら5人(朝日デジタルでは4人)が招待されて参加,久美浜の「豪商稲葉本家」を見学し,会食した。参加費(飲み食い代など)を米軍側も負担したか否かは,報道では不明。

この交流会は,いかにも日本流(!)といった,少々気恥ずかしくなるような“おもてなし”。日本女性の大正琴を聴き,和室でばら寿司を箸で食べ,お茶を楽しんだ。普通の日本人はとうの昔忘れてしまった,外国向け日本文化のご披露だ。

むろん絵になる。さっそく米軍は宣伝に使いまくっている。

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 ■交流会案内/交流会(中隊FB)

141222c ■交流会(中隊FB)

辺境地の丹後にとって,米軍進駐は,願ってもない僥倖。米国の文化は世界最新であり,米語(英語)は世界共通の超一流言語。極東の辺地の辛気くさい日本語など,グローバル化時代には,なんの役にも立たない。米国の文化と言語を学ぶにも,米軍進駐は願ってもない好機なのだ。

地元は,米軍向けの日本語講座を準備しているらしいが,これはムダ,やめた方がよい。逆だ。地元民が米語(英語)を学び,道路標識も店内表示も,すべて米語に書き換え,米軍関係者を見たらまず米語で話しかけるよう努力すべきだ。すでに米軍基地との連絡の公用語は,米語となっているらしい(未確認)。

そもそも日本国元首の安倍首相からして,洋魂和才ないし洋魂洋才が目標であり,初等教育英語必修化など米語(英語)の日本普及に余念がない。これが安倍首相の掲げる「国益」であり,丹後が「国益」第一を掲げるなら,当然それから見習うべきだ。

いずれそのうち,丹後進駐の米兵や軍属やその家族,ときには彼らの子供たちが,小中高校の授業や市民向け語学講座で,ボランティアとして,あるいは特別講師として,本場の本物のネイティブな米語を教えてくれるようになるであろう。日本人の米語はまがい物,日本人英語教師は格下。かくして,一流の米国人と米国文化,二流の日本人と日本文化という序列がじわじわ地域に浸透していき,やがて“米国人をさえ見ればただ腰を屈するのみ”が習い性となってしまうだろう。

安倍首相がお手本だ。安倍首相は,国際社会で日本元首として発言するときでも,平気で日本語を放棄し,カタカナ米語(英語)を使う。日本語を放棄して「国益」追求などバカバカしくて,アホらしくて,お話にもならないが,安倍首相にはそんな問題意識など,ひとかけらもない。京丹後市は,その安倍首相が唱える「国益」を第一とし崇めている。

米国は日本人のそのような性向を鋭く見抜き,巧妙に行動している。アングロサクソンは,世界辺境の三流言語であった英語を,ほんの数百年で超一流の世界共通語にしたこと一つを取ってみても,政治戦略に長けており,きわめて現実的だ。ロマンではなく,実利で彼らは動いている。

米軍は,ロマンチックな善意一杯の日本流“おもてなし”は宣伝にめいっぱい利用しつつ,他方では,こんな中隊シンボルマークを堂々と掲げ,地元住民を威圧している。彼らは,最前線の軍隊であり,イザとなれば,本国のため――京丹後住民のためではなく――命を賭けて戦う覚悟だ。すべてはその手段。利用できるとなれば,大正琴を聴きもすれば,箸で寿司も食う。ただ,それだけ。それが,アングロサクソン流なのだ。

141222a ■常在戦場の第14ミサイル中隊(中隊FB)

その結果,はや,こんなトンデモナイ規制ですら,地元住民はすんなり受け入れてしまっている。この飛行制限区域,つまり危険区域には,経ヶ岬はおろか,国道178号線や袖志海岸など,陸地部分も広く含まれている。経ヶ岬展望台に行くと,なにかのはずみで「人間の丸焼き」になってしまうかもしれない。

141222e ■飛行制限区域(京丹後市)

【参照】
「米軍人と住民交流会 京都・京丹後市」読売テレビ,2014-12-21
「ばらずしランチで国際交流 京丹後」朝日デジタル,2014-12-22
金田そうじん「経ヶ岬Xバンドレーダー基地に勤務する米国人の生活を支援する「フレンドシップクラブ」を立ち上げよう」2014-12-7
金田そうじん「ウエルカム アメリカン フレンズ」2014-12-19

谷川昌幸(C)

京都の米軍基地(52):福島質問への政府答弁

安倍首相が,福島みずほ参議院議員提出の質問書(6月20日)に対する答弁書(6月27日)を提出した。要点は以下の通り。

「Xバンド・レーダー・システムの我が国への追加配備は、我が国に飛来する弾道ミサイル情報の確度及び同時追尾能力を更に向上させ、弾道ミサイル防衛により万全を期する必要性を踏まえたもの」

「弾道ミサイル防衛システムは、・・・・専ら防御的なものである。・・・・「・・・・軍拡競争を煽ることにつながる」との御指摘は当たらない・・・・。」

「工事着工日の情報を含め、米側との具体的なやり取りについては、相手国との信頼関係もあり、お答えを差し控えたい。」

「Xバンド・レーダー・システムの出力等の詳細については、米軍の能力に関わるものであることから米国は公表しておらず、防衛省としても公表を差し控えている。・・・・必要に応じて同システムの周囲に立入禁止区域を設定する・・・・。」

⇒⇒答弁書第一七七号,またはWld-peace資料室

これが,「国益」やそのための「軍事秘密」の正体だ。米軍とその下働き日本政府には,地元住民の自由や権利を守るつもりは,毛頭ない。辺境丹後は,ワシントンと東京の「安全と利益」のための安上がりの捨て石にしかすぎない。

福島みずほ議員は8日,経ヶ岬の米軍基地建設現場を視察し,9日には府庁でXバンドレーダー設置反対を申し入れている。

140710 ■福島議員ツイッター

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/10 at 11:09

京都の米軍基地(47):関連事業・交付金の抗いがたい魅力

1.森本インター
経ヶ岬米軍基地へのアクセス・インターとなる鳥取豊岡宮津自動車道「森本インター」の工事が,着々と進んでいる。2016年完成予定で,この12月とされるXバンドレーダー搬入には間に合わないが,開通後は,このインターが米軍により頻繁に利用されることになるだろう。

「森本インター~経ヶ岬」は,丹後半島の奥地,小集落が散在するだけで,昼間でも人通りは少ない。ましてや日没後ともなると,森閑,人っ子1人見当たらないところも少なくない。米軍マル秘作戦には絶好の立地だが,地元住民にとっては,治外法権に近い米軍人・軍属の往来は薄気味悪く,不安は募るばかりだろう。

140621c ■事業箇所(「道路事業事前評価審査表」)

2.土建の魅力
この宮津自動車道のうち,いま工事中の野田川大宮道路は,全長4.3km,事業主体は京都府で工事期間は2005~2016年。わずか4.3kmだが,大きな橋とトンネルのため,総事業費160億円の大事業だ。といっても,事業の重要部分は,大林組,宮地エンジニアリングなど,地域外の大手・中堅企業が受注している。

しかし,それでも地元企業にも,幾分かは工事が回される。「森本インター」の場合は,下図のように,「マルキ・山崎組JV」。 「最高落札金額168,602,040円」と報道されているので,もしこれが両社JVの落札金額だとすると,全体の1%程度となる。わずかだが,うるおう。

土建を中心とする公共事業は,地方経済にとって魅力的であり,欠かせないものだ。

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 ■森本インター工事(2014-6-17)

3.米軍再配備交付金
米軍基地受入と直接関係するのが,「米軍再編交付金」。京丹後市には,今年度6億1300万円(前年度繰り越し分7900万円)が,交付される。10年間で30億円程度の見込み。福祉,防災,教育などに当てられるという。

府事業としては,「上野平バイパス」が19億円,「丹後町三宅~弥栄町久地」が9億5千万円。府の6月補正予算には,基地関連道路整備に1億5千万円が計上された。7割は防衛省負担という。

こうした直接的・間接的に米軍基地と絡む事業の拡大は,地元経済にとっては抗いがたい魅力だ。米軍基地受入派も,Xバンドレーダーが日本の安全に寄与し「国益」に叶うなどとは,本心では信じてはいまい。また,米軍は,たとえ「鬼畜米英」ではなくとも,やはり武器を持つ外国の軍隊であり,恐ろしいであろう。が,背に腹は代えられない。過疎地・丹後は,今日,食わなければならないのだ。

その今日食うための口実として,明日の「国益」ほど,便利で使い勝手のよいものはない。名誉と実益が,ともに手に入る。一挙両得。過疎地・丹後にとって,こんなよい話しはまたとはないのであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/21 at 11:30