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京都の米軍基地(44):コケにされコケた京丹後市

米軍への「お願いのお願い」を条件に基地受入を決めた京丹後市が,予想通りコケにされ,早くもコケた。

防衛省が基地工事開始を府・市に通告したのが26日昼,翌27日早朝にはもう工事が始まった(TBSニュース「米軍Xバンドレーダー配備、京都・京丹後で着工」)。工事概要の説明はなし。工事受注業者らも市民には不明。(注)

これはヒドイ。わがアパートでは,小さな修理工事や室内改装ですら,何週間も前に通知し工事概要が掲示される。米軍やその下働き防衛省には,その程度の最低限の市民的良識すらないのだ。

各紙報道によれば,27日午前6時半頃から基地用地(米軍専用施設区域)に大型ダンプやショベルカーなど10台以上が順次到着し,整地やフェンス設置工事が始められたそうだ。あれ,京丹後市はどう言っていたっけ? 「工事を行う際には,通勤時間帯・・・・は避け」(「広報きょうたんご」2014年6月)

米軍はむろんのこと防衛省にも,「お願い」や「お願いのお願い」を聞くつもりは毛頭ない。そんなものを真に受けると,虚仮にされ転けること必定。

むろん,優秀な官僚出身市長や市議会選良は,そんなことなど,十二分に承知している。すべて分かった上で,住民を虚仮にし,「国益」という名の「私益」を図ろうとしているのだ。

基地再編交付金は,今年度,5億3千万円(総額30億円程度)。分捕り合戦が始まり,さじ加減の醍醐味が,陣笠にまで,それなりに再配分されるだろう。

 *毎日新聞5月24,26日;京都新聞5月26-27日;赤旗5月28日;読売新聞5月24日
 (注)現在の工事業者は「ミライト・テクノロジーズ・アクティJV」。(株)ミライト・テクノロジーズは住友電工系で,本社は大阪。もう1社は,米軍関係事業を多く手がけている(株)アクティ(本社:岡山市)ではないかと思われる。地元企業の参加はまだ不明。(6月6日追加修正)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/29 at 16:57

京都の米軍基地(39):二重の危険にさらされる住民

京都の住民は,米軍Xバンドレーダーの危険に加え,福井原発事故被曝の危険にもさらされている。

これを改めて思い知らされたのが,兵庫県発表(4月24日)の「放射性物質拡散シミュレーションの結果について」。福井原発事故による放射性物資の拡散がこれだけ遠くにまで及ぶとすれば,京丹後市(印)はむろんのこと京都市(印)ですら深刻な被曝の危険にさらされていることになる。

そこで不思議なのは,京丹後市や京都市・京都府が原発廃止に回らないばかりか,原発再稼働の場合の危険性を深刻に受け止め,地域住民避難の準備や訓練を十分にやっているようにも見えないこと。まぁ,さもありなん――京丹後市長や京都府知事には,はるか彼方の「国益」の方が大切なのだから。

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 ■兵庫県シミュレーション

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 ■舞鶴市避難計画/京都市対応計画
 
[参考資料]
・兵庫県「放射性物質拡散シミュレーションの結果について」2014年4月
・「京都市原子力発電所事故対応暫定計画」平成24年4月
・「舞鶴市原子力災害住民避難計画」平成25年3月
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/25 at 20:37

京都の米軍基地(34):イルカ軍団,丹後半島近海来襲

イルカが,500頭の大群をなし,京丹後市の丹後半島近海を遊弋しているのが目撃された(4月2日付読売ほか)。いうまでもなく,米軍Xバンドレーダー部隊の先遣隊だ。要厳戒! [イルカ500頭回遊(NNN)]

1.経ヶ岬をイルカ聖域に
米欧イルカ人道主義派によれば,イルカは知能が高く,人間の考えや気持ちをよく察知し行動できるそうだ。とすれば,イルカ社会では,ケネディ駐日大使がイルカの権利擁護に尽力し,また丹後半島にXバンドレーダーを設置する計画であることも,すでに知れ渡っているにちがいない。

そこで,イルカたちは考えたのだ。丹後半島近海に行けば,イルカの生存権は守られる。万が一,地元漁民が攻撃を仕掛けてきても,すぐケネディ大使らが非難の声をあげ,イルカ人道派も押しかけ,イルカを守ってくれるはずだ,と。

しかも,丹後半島周辺海域は,ブリなど高級魚の好漁場。イルカのエサとなる魚はたくさんいる――他の魚類はバカだから喰われて当然,生存権はない。思う存分食べ,イルカ仲間を増やし,丹後半島沖をイルカ聖域とすることも夢ではない。

2.イルカの米国益貢献
これは大恩ある米国に報いることにもなる。イルカは大量の魚を食う。しばらくすると丹後半島近海の魚は激減する。そうなれば,漁師たちは漁ができず,廃業に追い込まれる。こうして漁師がいなくなれば,電磁波やら温排水といったXバンドレーダー反対の理由もなくなる。

さらにまた,日本漁業が衰退すれば,日本人の食習慣が肉食中心に変化し,米国産の牛肉や畜産用飼料の対日輸出が増加し,米国益に大きく貢献する。したがって,イルカ人道主義派に保護され,丹後半島近海の魚を食い尽くすことは,米国の大恩に報いることになるのだ。

3.壱岐イルカ事件の教訓
まさかと思われる方は,「壱岐イルカ事件(1980)」を思い出していただきたい。イルカ被害に耐えかねた壱岐漁民が捕獲のためイルカを追い込んでいた網を,イルカ人道主義者の米国人が切断し,数百頭を逃がした。彼は逮捕・起訴されたが,執行猶予が付き,実質的にはイルカ人道主義が勝利した。その後,壱岐ではイルカ捕獲は断念され,水族館で「人道的」に飼育されるようにさえなった。

壱岐で勝利したイルカ軍団は,北上し,今度は丹後半島近海を攻撃目標と定めた(*)。ここで心すべきは,イルカ軍団が丹後漁民を攻撃し始めても,米国政府は絶対に漁民は守らないということ。米国政府は,イルカ人道主義を国益のため利用しており,漁民の味方など端から念頭にないからだ。(* イルカ軍団は,3月下旬には宮津湾内,4月9日には伊根湾内に深く侵入し魚を追っているのが目撃された。京都新聞4月10日)

4.イルカ人道主義と米軍国主義との共犯関係
丹後半島近海にイルカ軍団が布陣し,経ヶ岬に米軍Xバンドレーダー基地ができたら,どうなるか? 

イルカは,ブリなど高級魚を食い散らす。たまらず漁民がイルカ駆除を始めようものなら,たちまちイルカ人道主義者がやってきて,彼らを攻撃する。そして,ケネディ大使だけでなく,おそらく駐留米軍人・軍属らも,何らかの形で漁民攻撃に加勢するだろう。イルカ人道主義は,米軍国主義と共犯関係にあるのだ。

5.アングロサクソン偽善のしたたかさ
ちょっと冷静に考えれば,イルカ人道主義がいかにトンドモナイ偽善であり屁理屈であるかは明白だが,その無茶苦茶,無理難題をまるで「正義」であるかのように筋道を立て,巧妙に世界を丸め込んでしまうのが,西洋,とくにアングロサクソンの凄いところだ。この卓越した偽善能力は,彼ら自身も認めている周知の事実だ。たとえば,バーナード・ショーは,『運命の人』において,ナポレオンに次のように語らせている。

▼BERNARD SHAW, THE MAN OF DESTINY,1898
NAPOLEON. That accounts for it. The English are a nation of shopkeepers. Now I understand why you’ve beaten me.
LADY. Oh, I haven’t beaten you. And I’m not English.
NAPOLEON. Yes, you are――English to the backbone. Listen to me: I will explain the English to you.
LADY (eagerly). Do. [….]
NAPOLEON. No, because the English are a race apart. No Englishman is too low to have scruples: no Englishman is high enough to be free from their tyranny. But every Englishman is born with a certain miraculous power that makes him master of the world. When he wants a thing, he never tells himself that he wants it. He waits patiently until there comes into his mind, no one knows how, a burning conviction that it is his moral and religious duty to conquer those who have got the thing he wants. Then he becomes irresistible. Like the aristocrat, he does what pleases him and grabs what he wants: like the shopkeeper, he pursues his purpose with the industry and steadfastness that come from strong religious conviction and deep sense of moral responsibility. He is never at a loss for an effective moral attitude. As the great champion of freedom and national independence, he conquers and annexes half the world, and calls it Colonization. When he wants a new market for his adulterated Manchester goods, he sends a missionary to teach the natives the gospel of peace. The natives kill the missionary: he flies to arms in defence of Christianity; fights for it; conquers for it; and takes the market as a reward from heaven. In defence of his island shores, he puts a chaplain on board his ship; nails a flag with a cross on it to his top-gallant mast; and sails to the ends of the earth, sinking, burning and destroying all who dispute the empire of the seas with him. He boasts that a slave is free the moment his foot touches British soil; and he sells the children of his poor at six years of age to work under the lash in his factories for sixteen hours a day. He makes two revolutions, and then declares war on our one in the name of law and order. There is nothing so bad or so good that you will not find Englishmen doing it; but you will never find an Englishman in the wrong. He does everything on principle. He fights you on patriotic principles; he robs you on business principles; he enslaves you on imperial principles; he bullies you on manly principles; he supports his king on loyal principles, and cuts off his king’s head on republican principles. His watchword is always duty; and he never forgets that the nation which lets its duty get on the opposite side to its interest is lost.He――

▼近衛文麿による要旨引用(『英米本位の平和を排す』1918)
曾てバーナード・ショウは其「運命と人」の中に於てナポレオンの口を藉りて英国精神を批評せしめて曰く「英国人は自己の欲望を表すに当り道徳的宗教的感情を以てする事に妙を得たり。しかも自己の野心を神聖化して発表したる上は何処迄も其目的を貫徹するの決断力を有す。強盗掠奪を敢てしながらいかなる場合にも道徳的口実を失わず、自由と独立を宣伝しながら殖民地の名の下に天下の半を割いて其利益を壟断しつゝあり」と。ショウの言う所稍奇矯に過ぐと雖、英国殖民史を読む者は此言の少くも半面の真理を穿てるものなることを首肯すべし。

このショーの自国民認識は,歴史的事実に適合しており,正確無比である。さすが,イギリス人!(アイルランド出身だから,なおさらかもしれないが。)これに比べたら,私のイルカ人道主義批判など,大甘,足下にも及ばない。アングロサクソン政治の凄さは,平気で肉を切らせ,結局は,相手の骨を断ち,シャブリ尽くすところにある。これにどう対抗すべきか?

6.偽善には偽善をもって
これは難しい。偽善はケシカランといって偽善との真っ正面からの闘いから降りてしまい,本音の「日本人本位」に逃げ込み,独善に陥り,「日本人の正当なる生存権」のためには戦いも辞さずなどと空威張りし始めたら,負けである。

政治では,建前や偽善は,独善に陥りやすい本音や赤誠よりも大切だ。アングロサクソン型偽善には,それ以上の普遍性をもつように見える建前,それ以上にもっともらしく見える偽善でもって対抗し,世界世論の支持を獲得する以外に勝利する方法はない。

イルカ問題も同じこと。イルカ人道主義が偽善であることは明白だが,これに感情的に反発し,日本特殊論や「日本人本位」に逃げ込み,立てこもってしまっては,丹後半島とその近海は,イルカ軍団と米軍基地に席巻されてしまうだろう。すでに丹後半島には,Xバンドレーダーだけでなく,オスプレーなど,他の米軍最新兵器をも配備する計画があると報道され始めている。

この1月,グアムに行ってきた。広大な米軍基地を背景にイルカ・ウオッチ! 楽しかった。

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 ■ソレダッド砦(スペイン統治時代)/ウマタック湾とサン・ディオニシオ教会(マゼラン上陸・略奪地)。砦からはイルカの群れが湾内にまで入り込んでいるのが見えた。平地,良港は米軍が占領・使用。写真撮影:2014-01-30

谷川昌幸(C)

京都の米軍基地(33):ヤラセ環境影響調査と市長の無責任

防衛省が2月25日,Xバンドレーダー配備のための環境影響調査を開始した。電波(電磁波),騒音,排水の3項目。

この調査は,いうまでもなくヤラセ。そもそもレーダーの出力が「特別防衛秘密」ないし「特定秘密」だから,防衛省調査員らには,それはおそらく知らされてはいないであろう。

肝心要のレーダー出力も分からないのに,どうやって環境への影響を調査するのか? あるいは,調査後,調査結果の根拠や妥当性を問われたとき,どのように説明するのか? 全くもってナンセンス。バカらしくて,小学生ですら失笑するに違いない。

ところが,いったん「国益」のための「特別防衛秘密」や「特定秘密」が大前提とされると,そのような根拠なしの荒唐無稽な説明が,堂々とまかり通ることになってしまう。

調査など形だけでよい。数値はサイコロの出目でも記入しておけば十分。住民はすでに「国益」呪文,「特定秘密」呪文の暗示にかけてしまった。何を言っても疑いはしない。

この状態での環境影響調査など,もはやヤラセ。完全な”under-control”だ。もはや,何を言っても,地元住民は怒りはしない。たとえば,京丹後市の中山市長は,京都新聞の取材に――記事が正確だとするなら――こう答えている。

「住民の安全安心が守れない場合は,直ちに停波を求める。どうしても安全性の回復がなければ撤退を求めることもありえる」(京都新聞2月26日)

誰が見ても,山陰の小さな地方自治体の市長に,そんなことをする力はない。相手は世界最強の米国。国際法違反の戦争だろうが暗殺だろうが,国益のため必要と判断したら,平然と冷酷に実行してしまう。その冷徹アメリカに,アジア辺境の小さな自治体の市長が,「停波を求める」,「撤退を求める」というのだ!!

これは――記事が正確だとするなら――何の根拠もない無責任な空手形。リアリティのかけらもない。ウソだと思うなら,沖縄を見てみよ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/10 at 22:35

京都の米軍基地(31):MBS「見えない基地」再放送を

毎日放送(MBS)「見えない基地~京丹後・米軍レーダー計画を追う」(2014年1月19日放送)を録画で見た。関係者や地域社会への細心の配慮をしつつも,問題の本質に多角的観点から肉迫していく。本格的ドキュメンタリーの傑作といってよいだろう。

番組の制作意図と概略は,MBSホームページ「取材ディレクターより」に簡潔に述べられているので,ご覧いただきたい。なお,MBSにはラジオ番組「どこへ行く自衛隊」(2013-11-10)もある。

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 ■MBS「見えない基地」/MBS「どこへ行く自衛隊」

1.地域分断
このドキュメンタリは,それ自体,決して難解なものではないが,扱われている主題は,複雑で重苦しく,難しい。

過疎の村,京丹後市宇川に,昨年早春,突然,米軍Xバンドレーダー基地建設が告げられる。そして,地元住民に対しては,説明らしい説明をせぬまま,一方的に,強引に基地建設計画が進められていく。

その過程で,衝撃的であったのは,やはり地域社会の分断である。原発とまったく同じ構造。権力による脅しや,カネによる直接的・間接的懐柔で,たちまち地域社会は分断され,隣近所はおろか家族ですらいがみ合い争う。過疎とはいえ,美しく平和であった地域社会が,猜疑と憎悪の底なし沼に引きずり込まれつつある。

もはや丹後は元へは戻れまい。表立っては怒るに怒れない忍従,救われようもない重苦しさと悲哀。

2.「国益」優先の市長
ところが,驚くべきことに,地元・京丹後市の中山市長は,当初から一貫して,地元住民ではなく,はるか海の向こうのアメリカや山の彼方の東京(政府・防衛省)に,目を向けてきた。いかにも総務庁-内閣府出身,上意下達の官僚主義的役人根性が抜けないらしい。

MBSは,むろん,この中山市長の卑屈な役人根性を見逃しはしない。番組では,中山市長が「住民益」「市民益」ではなく,「国益」を引き合いに出す場面を,いやらしいまでにリアルに描写している。

「国益」とは,要するに「お国のために」「滅私奉公」ということ。憲法第92条「地方自治の本旨」を無視し,地元の住民・市民ではなく国家権力の側に立つ中山市長! MBSは,そんな無様な,卑屈な場面を撮りたくはなかったにちがいない。しかし,そこはドキュメンタリーのMBS,心を鬼にし,涙を呑んで,カメラを回した。MBSの覚悟,プロ根性が偲ばれる迫真の画面からは,保身のため住民を売り渡した中山市長の虚勢とオドオドした内心が透けて見て取れる。

140216b ■MBS取材にこたえる中山市長

3.車力基地の実情
番組では,Xバンドレーダー基地ができたらどうなるかを見るため,つがる市の車力基地を取材している。この部分を見ると,防衛省や,その下請け・中山市長の説明がいかに無責任かが,よくわかる。

車力米軍基地は軍事機密,ピリピリした厳戒態勢下にある。こんなものに不用意に近づいたり写真でも撮ろうものなら,しょっ引かれたり,下手をするとテロリストかスパイとみなされ,射殺されるかもしれない。相手は「治外法権」の米軍。何をされるか分からない。

また,米軍関係者の犯罪や交通事故も少なくない。さらに,補助金漬けについては,余計なコメントはつけず,淡々と事実だけを描いているが,それだけにかえって,考えさせられ胸にこたえる。

4.「見えない基地」の再放送を
この番組「見えない基地」は,同局の「映像’14」シリーズの一つだ。「映像’14」は関西地域放送番組だが,レベルの高いドキュメンタリーで知られている。「見えない基地」も秀作。

しかし,残念なことに,この番組は日曜日の深夜(24:50~25:50)に放送された。見逃した人も少なくなかろう。実に,惜しい。何とかならないか。

手っ取り早いのは,録画番組をネットで公開するという手。たとえばーー
 ▼LunaticEclipseYokosu「見えない基地」YouTube
しかし,これは海賊版ではないか? もしそうだとすると,権利を守るための闘いが権利侵害を犯すことになってしまう。

やはり,一番望ましいのは,制作した毎日放送自身が,もう少し見やすい時間に再放送したり,ネットで公開することだ。有料でもよい。これほど優れたドキュメンタリーなら,料金を払ってもみたいと思う人も少なくないはず。ぜひ検討していただきたい。

5.特定秘密保護法の恐怖
蛇足ながら最後に一言,特定秘密保護法との関係について。周知のように,特定秘密保護法はすでに成立し,年内には施行される。

この特定秘密保護法が施行されると,おそらくMBS「見えない基地」のような番組は制作できないであろう。あるいは,それどころか,地元民や観光客がうっかり写真を撮っても,「おい,こら!」と,しょっ引かれる恐れがある。そんなことはない,と政府やその出先機関の市長は反論するかもしれないが,危ないと思わせるだけでも,威嚇効果は十分なのだ。

MBS「見えない基地」の描く車力米軍Xハンドレーダー基地。厳戒態勢にあり,触れば祟り必定の「タブー」そのものだ。そんな恐ろしいものが,車力とは異なり丹後では一般道路・住宅地・観光名所のすぐ側にできる。名所・穴文殊からだと,子供が石を投げても当たる距離だろう。

Xバンドレーダーについては,電磁波や騒音が主に問題にされてきたが,政府にとってはこれは想定内。議論がここに集中するのをみて,政府はほくそ笑んでいたにちがいない。

Xバンドレーダー基地の最大の危険性は,軍事機密,特定秘密にある。見せないで見るXバンドレーダー。ブラックホールのように,近づくものを片っ端から吸い取り破滅させる。そんなものが住宅地の目の前,観光名所のど真ん中にできる。

番組「見えない基地」の最初と最後は,経ヶ岬展望台からの分屯基地遠望であった。この展望台は,以前,私が分屯基地監視の名所として推薦したところだ。しかし,Xバンドレーダーが設置されたら,このような撮影はできなくなるだろう。たとえ,撮影禁止の立て札が立てられなくても,撮影には公安や警察やその他諸々の監視をつねに意識せざるをえない。何となく不気味だから自主規制,となるにちがいない。

あるいは,それどころか国道沿いの民家の庭先や二階からカメラを向けても,危ない。「軍事機密」「特定秘密」が写る可能性があるからだ。

こうして,京丹後は「Xバンドレーダー体制」に組み替えられていく。

140216a shariki tango ■米軍基地の位置関係:車力/経ヶ岬(京都民報

谷川昌幸(C)

京都の米軍基地(18):Xバンドレーダー受け入れ表明

京都府知事と京丹後市長が,予定通り,すんなりと米軍Xバンドレーダーの経ヶ岬配備を受け入れた。抵抗らしい抵抗もなく,めぼしい補助事業もない。米軍=防衛省=米日軍事産業にとっては,赤子の手をひねるより簡単。楽勝。安上がりで済みそうだ。これが,かつての都,京都の現状なのだ。

1.お願いの倍返し
京丹後市広報や新聞各紙(9月10-11日)によれば,9月10日,山田・京都府知事と中山・京丹後市長が小野寺防衛相と面会し,京都府知事要請書「米軍TPY-2レーダー配備に係る確認・要請事項」と京丹後市長要請書「米軍のTPY-2レーダーの追加配備について」を手渡した。そして,これを受け取った防衛相は「政府として責任をもって対応する」と回答した。知事は,これを「安全確保など政府の責任で対応する約束をもらった」と評価し,記者会見で受け入れ方針を表明した(朝日9月11日)。正式表明は9月17日の定例府議会において。

しかし,日本政府が米軍に対し「お願い」はできても,重要な事案については規制らしい規制はできないことは,沖縄を見るまでもなく,周知の事実である。京都府と京丹後市は,日本政府に対し「米軍へのお願い」を「日本政府にお願い」したにすぎない。「お願い」の倍返しだ。

2.Xバンドレーダー体制と秘密保護法
ここで改めて思い起こすべきは,Xバンドレーダー配備は単なる武器と軍人・軍属の配備ではないということ。それは,より正確には,京丹後市を「Xバンドレーダー体制」のもとに置くということを意味する。

いま安倍内閣は「特定秘密保護法」の制定を急いでいる。朝日新聞によれば,その概要は次の通り。
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特定秘密保護法案
 (1)防衛(2)外交(3)外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止(4)テロ活動の防止――の4分野について、行政機関の長が指定した「特定秘密」を漏らした場合に、刑事罰が科される。最長は懲役10年。公務員だけでなく、特定秘密の提供を受けた国会議員、特定秘密を取り扱う業者、これを漏らすよう促した人など民間人も対象となる可能性がある。(朝日9月11日)
————————

これは,京丹後市「Xバンドレーダー体制」にとっては,まさに願ったり叶ったり,鬼に金棒。もし“経ヶ岬Xバンドレーダーの出力は○○KW”などという「特定秘密」を某国や某々国の人に,いやたとえ日本の友人・知人にであれ,知らせたなら,「特定秘密漏洩罪」により逮捕され,懲役10年にされてしまう恐れがある。

山田知事は,警官増員や派出所増設を国に要請したが,これも,本当は,公安関係機関と協力し,近隣住民を監視させるのが隠された真の目的。しかし,それもしばらくの間。「特定秘密保護法」が成立すれば,もはやそんな遠慮はいらない。政府は増派された警官を存分に動員し,公然と住民を監視することができる。

3.原発とXバンドレーダーとオスプレイ
さらに警戒を要するのが,オスプレイの饗庭野演習場(滋賀県高島市)での演習。米軍は目的合理的であり,たまたま饗庭野を選んだのではない。地図を見ると分かるように,饗場野は一群の福井原発のすぐ近く。そして,まもなく経ヶ岬にXバンドレーダーも配備される。いずれもテロ攻撃目標。オスプレイは,それらの防衛のため,饗庭野で訓練すると考えるべきだ。

原発防衛のためなら,原発の上や近辺を飛ぶ。落ちるかもしれないが,そんなことは米軍の知ったことではない。

そして,京丹後。Xバンドレーダーは,某国や某々国の情報活動の重要ターゲットとなり,またテロ攻撃の目標ともなる。所有主の米軍は,当然,これを守るため最善の努力をする。その一環としてオスプレイを飛ばすことは十分にあり得ることだ。丹後住民は,いずれ低空飛行のオスプレイに脅かされながら生活することを余儀なくされるであろう。

4.滅私奉公こそ「国益」
それもこれも,お国のため。滅私奉公こそ「国益」。「国益」とは,所詮,そんなものなのだ。

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■右下赤塗り=饗庭野演習場,赤星=経ヶ岬Xバンドレーダー,海岸赤印=原発(Google)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/09/11 at 15:24

京都の米軍基地(14):受け入れ方針合意

京都新聞他各紙によれば,京都府知事と京丹後市長が1日,Xバンドレーダー配備について協議した。

中山京丹後市長:「問われているのは国益。住民の安心安全が確保されれば協力するのはむしろ道理」(京都新聞8月2日)
山田京都府知事:「京丹後市の意向が非常に重要。府議会の意見もいただきながら対応したい」(京都新聞8月2日)
朝日新聞(8月2日):「北朝鮮のミサイル発射に備えたいとする日米政府の意向を踏まえ,山田知事らは『国家の問題を地方として尊重する』と判断した。」

これらの記事が正しいとすると,「米政府→日本政府→京都府・京丹後市→地元住民」ということになり,論理があべこべ。

京丹後市住民にとって,国益など二の次,ましてやアメリカ国家の安全など三の次だ。まずは自分と家族と近隣の安全。それをどう守るか?

東京や大阪の電力が足りないからといって原発を受け入れ,土地がないからといってゴミ処理場を引き受ける。東京や大阪やアメリカのことは,彼らの問題であり,原発やゴミ処理場やXバンドレーダーが彼らにとって必要なら,都市部やアメリカに設置させよ。

民主主義は,もともと個々人が生きる自由をもち,何よりもまずそれを主張するのは当然の権利だ,という考え方を大原則としている。国益なんか二の次,ましてやアメリカ国益なんかアメリカ人が考えればよいこと。「国家の問題を地方として尊重する」のは,本末転倒。

人権と民主主義の原則に立つなら,臆せず,断固こう主張すべきだ。「地方の問題を国家として尊重する」

130802 ■米軍Xバンドレーダー(US Navy HP)

【資料追加:京都米軍基地・年表
 ・電磁波の影響に関する府参事会意見(2013年7月)
 ・参議院井上議員質問への答弁書(第143号)

【参照】
 ・京都の米軍基地(1)-(13)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/08/02 at 10:45