ネパール評論 Nepal Review

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ネパール憲法,誉められたり貶されたり

ネパール政治が難しいのは,一つには,当事者でない外国や国際機関がことあるごとに介入し,それらを国内勢力がそれぞれ外圧として便利に利用することにある。たとえば,憲法について,国連事務総長と人権監視(HRW)が1月26~27日,こんなことを言っている。

潘基文国連事務総長(Daily Press Briefing, Jan 26; Himalayan, Jan 27)
  憲法第一次改正は,「憲法問題解決への重要な一歩」,「国境物資補給路の正常化に寄与」。関係者が自制し,平和的な話し合いと「包摂民主主義」に則り解決に取り組むことを願う。

 160128a■ネパール各地の国連機関

人権監視(「ネパール:政情不安が新憲法前進の妨げ」1月27日)
 タライの反憲法闘争により,50人以上が死亡し,生活必需品や医薬品が十分輸入できなくなった。震災復興も滞っている。「ネパール政府は40億ドル以上の震災復興援助金を受け取りながら,犠牲者にはまだ1ドル分すら配分していない」(ブラッド・アダムズHRWアジア局長)。
 憲法は,いくつかの重要な改善はあるものの,とくにタライの諸民族は排除されたと感じ抗議を始めた。9月には約45人が死亡したが,住民側の死亡は治安部隊の「過剰な実力行使」によるものだ。
 「ネパール政府は,反対派と交渉することなく,インド政府が対ネ経済制裁をしている――インド政府は否定――として,インド政府を糾弾した。」(同)
 「人権監視は,新憲法は国内の400万人以上の無国籍住民の問題に十分に対応するものではないばかりか,母がネパール人,父が外国人の子供たちにこれまで以上に不利な諸条件を課すものである,と指摘した。」(同)
 「ネパールは,多くの無国籍住民を含むすべての社会共同体の期待に応えるため,長年にわたって議論し憲法を準備してきた。・・・・ところが,主要諸政党は,人道危機の混乱を利用して憲法を通し,これにより市民の多くを深く傷つけ,人道危機をさらに悪化させてしまった。」(同)

 160128b■HRW「世界報告2016」

潘国連事務総長や人権監視の善意は疑わないし,それぞれの発言にもそれなりの根拠はある。しかし,それはそうとしても,独立主権国家の内政にいちいち外から介入し,絶好の外圧の口実を提供し,紛争の火に油を注ぐようなことをするのは,いかがなものであろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/01/28 at 18:39

カテゴリー: 平和, 憲法

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国連を敵に回した靖国参拝

1.国連の靖国参拝批判
国連のパン・ギムン(潘基文,Ban Ki-moon)事務総長が,安倍首相の靖国参拝を批判した。事務総長報道官の「声明」によれば,パン事務総長はこう述べている。
 ・「過去から生じる緊張がいまだに(北東アジア)地域を悩ませていることを非常に遺憾に思う」。
 ・「事務総長は一貫して地域の国々に対し、共有する歴史について共通の認識や理解に至るよう促してきた」。
 ・「他者の感情、特に被害者の記憶に敏感であることや、(各国が)相互信頼の構築や連携強化に尽力すること」が必要。
 ・各国の指導者は「特別な責務」を負う。(共同,12月28日)
これは,まずい。日本は,国連,つまりは国際社会を敵に回してしまったのだ。

2.韓国寄りの国連事務総長
むろん,国連も事務総長のパン・ギムン氏も,必ずしも中立公平ではない。パン氏の経歴は以下の通り: 韓国外交部勤務(1970-),外交部国連課長(1980-),駐米総領事(1987-),駐米公使(1992-),外交通商部長官(2004-),国連事務総長(2006-)。

この経歴から見て,パン事務総長が韓国の国益を考えるのは自然な成り行きだ。国連人事では韓国人や身内の優遇をしばしば批判されてきたし,またネパールに関することでも,たとえばプラチャンダの「ルンビニ開発」など,様々な案件においてパン事務総長の韓国寄りがうかがえる。もちろんアメリカともツーカーの仲のはずだ。

3.稚拙で危険な安倍独善外交
しかし,建前はともあれ,外交では,そのようなこともありうることが当然折り込まれている。この国際政治の常識からすると,準備も根回しもない安倍首相の靖国参拝は,独りよがりの愚策中の愚策といってよい。パン事務総長は,米政府の靖国参拝「失望」声明を受け,絶好のチャンスとばかり,国連としての「遺憾」声明を出したのだろう。

これで,日本は米国ばかりか,世界社会をも敵に回してしまった。繰り返すが,国際機関が中立公平でないのは,自明のこと。それを十分考えた上で,最大限国益に沿うような可能な政策を選択するのが,まともな大人の政治家だ。『美しい国へ』の書評で指摘したように,安倍首相は,精神的に自立した大人の政治家ではない。だから,このような幼稚な失敗外交をやるのだ。

いまの日本は,国際連盟脱退(1933-35年)により国際的に孤立し破滅へと転落していった頃と,構図的には,よく似ている。世界のどこにも通用しない独善を,壮挙と錯覚している。このような世界の非常識をヒステリックに叫ぶのが愛国的ともてはやされ始めたら,集団誇大妄想に囚われ,ふたたび取り返しがつかない事態に陥るであろう。

131228b ■The Korea Times(28 Dec.)

4.中国の対日情報戦略
さらにもう一つ,警戒すべきは,パン国連事務総長の「声明」をいち早く最も詳しく伝えたのは,中国メディアだということ。28日付新華社英語版によれば,パン事務総長は,安倍首相の靖国参拝について,こう発言している。

“It is highly regrettable that tensions from the past are still plaguing the region.”
“The secretary-general is aware of the visit by the Prime Minister of Japan to the Yasukuni shrine, as well as of a strong reaction to it by China and the Republic of Korea.”
“The secretary- general has been consistent in urging the countries in the region to come to a common view and understanding of their shared history.”
The UN chief “stresses the need to be sensitive to the feelings of others, especially memory of victims, and focus on building mutual trust and stronger partnership.”(Xinhua 2013-12-28)

このパン事務総長の公式発言を受け,新華社は,こうコメントした。「安倍首相は木曜日,A級戦犯14人を含む戦死者を祀る神社に参拝した。この神社は,日本の過去の軍国主義のシンボルとみられてきた。」(Ibid)

そして,さらにそれに続けて,中国外務報道官の次のような発言を詳しく伝えた。すなわち,安倍首相の靖国参拝は,日本の植民地支配や侵略戦争を正当化し,日本軍国主義に対する国際社会の審判を否定し,戦後の国際社会秩序を覆そうとするものだ,と。

この中国の靖国参拝批判は,韓国や米国そして国連,つまりは日本をのぞく世界社会の靖国参拝批判と大筋において同じであり,安倍首相の参拝弁解よりもはるかに客観的であり説得力がある。

しかも,中国には日本にはない大国的な戦略的思考がある。中国からは,新華社だけでなく,たとえば中国国際放送など,多くのメディアも同趣旨の靖国参拝批判を世界に向け繰り返し流している。まさしく中国発情報の洪水,日本は到底太刀打ちできない。

世界各地の報道を見ると,多くが新華社記事を転載したり引用したりしている。日本発はあっても,たいてい欧米通信社系のものだ。しかも,多くは英語メディアだから,記事へのコメントは,たいてい外国人のものであり,日本人からのものはほとんど無い。見るも無惨な,安倍ニッポン完敗!

131228a 131228d
 ■中国国際放送 英語版/日本語版(12月28日)

5.保守主義者の決起を
安倍首相には,パワーポリティックスへの冷徹な認識もなければ,世界世論を味方につけ国益を図るに必要な戦略的思考もない。保守主義は,本来,成熟した現実主義であるはずだ。自民党の保守本流は,いつまで,このような未熟なアマチュア冒険政治を放任しておくつもりなのだろう。手遅れになる前に,決起すべきではないのか。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/12/29 at 03:00

訪ネは正当,国連弁解

クルチャンドラ・ゴータム氏の手厳しい批判がこたえたのか,国連側が必死になって弁解している。
  ■”Peace process Ban’s key agenda,” ekantipur, 2012-3-15

記事によると,パン国連事務総長の4月末訪ネの主目的は,和平促進だ。国連は,2006年以来,ネパール和平を支援し,2011年のUNMIN撤退後も,関与し続けてきた。

「パンはルンビニのためだけに来ると考える人がいるとすれば,それは事実に反する。」

国連はかなり怒っている。そりゃそうだ。ゴータム氏の批判は,正確に急所を衝いているからだ。

小国ネパールが,国連や中国,韓国を相手に,堂々と論戦を挑む。立派なものだ。ネパール外交からも学ぶべきものは多い。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/15 at 10:07

カテゴリー: 外交, 平和

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パン事務総長の訪ネ批判:ゴータム元国連事務次長補

パン国連事務総長の4月末ルンビニ訪問について,元国連事務次長補(Assistant Secretary-General)のクルチャンドラ・ゴータム氏が,厳しく批判している。ゴータム氏は,ユニセフ元副事務局長でもあり,ネパール国連外交の代表的人物。
 ■Kul Chandra Gautam,”Wrong visit at the wrong time,The questionable wisdom of Ban Ki-moon’s proposed visit to Lumbini,” Nepali Times, March 12, 2012

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ゴータム氏の訪ネ反対理由は,人民戦争の決着もつかず,新憲法もできていないのに,時期尚早ということ。人民戦争中の人道犯罪や人権侵害については,誰1人責任を問われていない。それどころか,マオイストはつぎつぎと高位要職に就き,すべて免訴・免責にしようとしている。

国連も情けない。UNMINは無能として追い出され,今度は高等人権弁務官事務所も追い出されようとしている。そしていま,「ルンビニ国際会議・議長」のエサで,パン事務総長がプラチャンダ議長に釣られようとしている。

プラチャンダ議長は,1万5千の死者と無数の犠牲者を生み出した人民戦争の張本人だ。しかも,まだ暴力革命路線を放棄してはいない。

「国連事務総長が,神聖な仏陀生誕地で開催される国際会議において,血染めの手を恥じることのないマオイスト指導者とともに共同議長を務めるとは,なんたる皮肉か。・・・・聖地の国際会議で国連事務総長が共同議長を務めるのは,平和を願うネパール人ばかりか世界中の多くの仏教徒に対する許しがたい冒涜である。」

それに,「アジア太平洋協力交流基金(APECF)」や「国連工業開発機関(UNIDO)北京事務所」も怪しい。もしパン事務総長が訪ネするというのなら,次の3条件を満たしてからだ。
 (1)マオイストとプラチャンダ議長に暴力放棄を確約させること。
 (2)人道犯罪,人権侵害の罪を問わないような「真実和解委員会」を拒否すること。
 (3)マオイスト戦闘員の統合・復帰を完了すること。

もしこれらの3条件が満たされるなら訪ネもよいが,だめなら,訪ネをキャンセルするか,少なくとも3条件を明言すべきである。

このクルチャンドラ・ゴータム氏の批判は,正論である。私もそう思う。しかし,プラチャンダ議長の偉さは,そのような正論は分かった上で,力と金の現実の流れを読み,それを利用して事態を思う方向へ動かそうとしている点にある。

おそらくパン事務総長も,利用されることは十分に分かった上で,利用するプラチャンダを利用して和平を実現させようとしているのだろう。

そして,プラチャンダ議長は,利用されることが分かった上で利用されようとしているパン事務総長を利用して自分の描く和平を実現しようとしているのだろう。ひょっとすると,大物ゴータム氏に正論を吐かせているのは,プラチャンダ議長かもしれない。

いやはや,ネパール政治はスゴイ。ステーツマンシップのモデルとして研究する価値は十分にある。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/14 at 13:46

パン国連事務総長,4月末訪ネ

パン国連事務総長が4月28日,訪ネし,4月29日現地開催の「ルンビニ開発国際会議」に出席する。

以前,パン事務総長は,新憲法制定を訪ネ条件にしていたから,訪ネ決定は,4~5月頃に新憲法が制定されるということではないかと推測される。もしそうなら,めでたいことだし,それをセットした,プラチャンダ議長は,やはり偉い。

それはそうとして,この国際会議には,16仏教国元首が招待される。さて,日本は仏教国かな? 中国-韓国-国連枢軸により憲法制定がセットされ,お祝いがルンビニで派手に催されるというのであれば,かっこわるくて,日本は出席できないだろう。

偉大なプラチャンダ議長(ルンビニ開発調整委員会委員長)は,パン総長をルンビニ開発委員会委員長に担ぎ出すらしい。もちろん,大ルンビニ(ルンビニ・ルパンデヒ・カピルバスツ・ナワルパラシ)開発構想のためだ。

たぶん,日本は外されるだろうな。カネも青写真も中国と韓国(とタイ)からくる。なんせ,115m大仏,ラサ=カトマンズ=ルンビニ鉄道,新国際空港,そして金ぴか五星ホテルと目白押しだから,落日ニッポンなんか,お呼びじゃない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/10 at 17:50

カテゴリー: 経済, 文化, 旅行, 中国

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仏僧のルンビニ開発反対デモ

仏教僧侶たちが,仏教の政治的利用への反対の声を上げ始めた。12月7日,カトマンズでは,数百人の僧侶らが「宗教に政治を持ち込むな!」といったプラカードを掲げ,デモ行進した。ネパールのお坊さんたちは,えらい。

 仏僧のデモ(クリック再生)

たしかに,プラチャンダは,偉大な政治家だ。彼にとって,仏教なんか掌中のコマの一つにすぎない。チベット封じ込めを狙う中国を引き込むための餌として,狡賢いキリスト教を屈服させるための「平和の哲学」として,そして洪水のように押し寄せるであろう開発利権の呼び水として,政治的に利用してどこが悪い。

平和学の教祖ガルトゥング博士も,ユダヤ教,キリスト教,イスラム教が危険な原理主義に陥りやすいのに対し,非暴力・慈悲を説く仏教は「世界が切実に必要としているものです」と述べ,仏教を絶賛しているではないか。

  ■仏教の政治的利用:ガルトゥング批判

マルクス主義者にして毛沢東主義者たるプラチャンダの掌の上で踊る仏様に,世界中の敬虔なキリスト教徒,ヒンドゥー教徒,イスラム教徒,そして罰当たりな無神論者らが拝跪し,大枚のお布施を差し出すかどうか,これは見物だ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/08 at 11:43

カテゴリー: インド, 経済, 外交, 宗教, 中国

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ルンビニと国連と憲法,プラチャンダの凄腕

1.ルンビニ国際会議,3月開催
プラチャンダ(マオイスト議長,ルンビニ開発国家調整委員会議長)は,ルンビニ開発国際会議を2012年3月,ルンビニで開催することにした。招待予定は,16仏教国元首と仏教高僧,そしてパン・ギムン国連事務総長。日本は招待されるのかな?

2.憲法制定と国連関与の高等戦術
ここで興味深いのが,パン事務総長が憲法制定を出席の条件にしていること。ルンビニ会議までに憲法草案が成立していなければ出席しない,成立しておれば出席する。つまり,パン事務総長としては,国連関与で新憲法制定・平和再建にめどをつけたという実績をルンビニで世界に向け誇示したいわけだ。

【憲法制定予定日程】
  憲法第1草案完成 2月13-27日
  憲法案完成    4月20日-5月20日
  新憲法可決・公布 5月21-27日

これだけ見ると,いかにも国連が主導権を握っているようだが,しかしもう少し子細に見ると,イニシアチブはむしろプラチャンダの方にあるように思われる。プラチャンダは,対内的にはルンビニ開発の巨大利権をエサに,マオイスト主導による新憲法制定を認めなければ,国連事務総長が訪ネせず,ルンビニ開発もパーになる,と圧力をかけている。そして,対外的には,国連が新憲法制定・ルンビニ開発に協力しないと,これまでの平和構築努力が全部パーになり,責任は免れないと脅す。弱者の強みだ。

プラチャンダは,国連と国内諸党を手玉に取っている,あるいは,取ろうとしている。恐るべき凄腕だ。

 札束踊るルンビニのプラチャンダ(Telegraph,Dec7)

3.プラチャンダの掌中の仏教
いや,そればかりではない。プラチャンダは,ヒンドゥー教最高位カーストのブラーマン(バラモン)であるにもかかわらず,仏教を賛美し,そうすることにより仏教を手玉に取り,政治的・経済的に仏教を利用し尽くそうとしている。

来年3月のルンビニ国際会議には,16仏教国元首と仏教高僧を招き,仏教を称え,キリスト教徒の国連事務総長さえも仏様に拝跪させようとたくらんでいるのだ。

もちろん,国連にも中印韓米にも,それぞれの思惑があるのだろう。中国は,反チベット派仏教高僧を送り込めば大成功。またラサ=加徳満都=ルンビニ鉄道利権もある。韓国には,パン事務総長と連携したルンビニ大開発利権がある。米印には,ルンビニ開発関与による中国牽制,等々。

プラチャンダは,それら全部を計算に入れた上で,目的合理的に動いている。いまや世界的政治家だ。

4.カヤの外の日本
この華やかなプラチャンダ外交・国連政治のカヤの外に置かれ,悲哀を託つのが,落日のわが日本国。

ルンビニ開発国家調整委員会は12月2日,関係諸国・諸機関と協議したが,報道によると,招かれたのはインド・中国・韓国の大使と,世界銀行・ユネスコの代表だけ。日本は,国家としては,完全に無視され,カヤの外。

来年3月のルンビニ国際会議に招かれる16仏教国の中にも,ひょっとしたら日本は入れてもらえないかもしれない。世界に冠たる仏教大国なのに。

もちろん,仏教の政治的利用に反対し,日本自ら毅然として参加拒否するのであれば,それは潔く立派な態度である。それであれば,私は,仏教徒として,日本国政府を断固支持する。

* ekantipur, Dec.6.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/07 at 11:34

国連に赤旗,プラチャンダの勝利

われらがプラチャンダ議長が,国連訪問の所期の目的をほぼ達成,世界的政治家の仲間入りを果たした。めでたい。

1.国連事務総長,ルンビニ開発支援を約束
11月8日,プラチャンダは,ネパール政府ルンビニ開発委員会(HLNSC)委員長としてパン国連事務総長と会見,彼に,3月開催予定の国際ルンビニ開発会議への出席と,「国際ルンビニ開発委員会」議長への就任を要請した。

パン事務総長は,3月の国際ルンビニ開発会議への出席と,ルンビニ開発への政治的・精神的支援を約束した。

「国際ルンビニ開発委員会」については,ルンビニ開発応援団の「リパブリカ」は,1ヶ月以内にパン事務総長を長とする「国際ルンビニ開発委員会」が発足すると報道しているが,他紙はそこまでは断定していない。おそらく,議長就任の明確な言質まではとれなかったが,受諾してもよいというニュアンスの回答は得たのであろう。

2.国連に赤旗
プラチャンダは,エベレストに赤旗を立てるとホラを吹き,実現した。次に,世界に赤旗を立てるとホラを吹き,これもまた実現した。

プラチャンダは,アメリカがテロリスト監視集団に指定している(2011年10月現在)マオイストの親分である。ネパール政府HLNSC議長などという肩書きはほとんど知られていない。彼は,世界最強の現役暴力革命主義政党マオイストの党首であり,「勇猛なプラチャンダ」として恐れられている。そのプラチャンダ党首の要請を,パン事務総長はほぼ丸呑みした。プラチャンダは,国連に赤旗を立てたのだ。

3.ブラーマン仏教平和主義
プラチャンダが,ヒンドゥー教と距離を置いてきたことは,事実である。首相の時,ヒンドゥー教伝統儀式には出席しなかったし,つい最近の実父の葬儀でも重要なヒンドゥー教儀式を回避した。

しかしながら,プラチャンダがヒンドゥー教の最高カースト,ブラーマン(バラモン)に属することは明白な事実である。

そのブラーマンたるプラチャンダが,唯物論共産主義政党の党首として,仏教を万人の拝跪すべき平和主義として喧伝し,仏教聖地ルンビニを「世界平和都市」としようとしている。そして,その「ブラーマン仏教平和主義」を,キリスト教徒の国連事務総長が全面的に支援する。そこに,仏教徒はいない!

世界には,キリスト教,ユダヤ教,ヒンドゥー教,神道,無宗教など,様々な立場の人々がいる。その全世界を代表すべき国連が,仏様(仏像)の前で,本来の仏教徒を無視し,世界平和式典を主催あるいは共催してよいのか?

私は,生まれながらに仏教徒であり,道元なども少々かじり,仏教は立派な宗教であると確信している。しかし,それだからこそ,マオイストによる仏教の政治的・経済的利用は許せない。もしマオイストがマオイストなら,堂々とマオイズムの立場から,あるいは非宗教的立場から,平和思想を構築し,それに沿って平和運動を展開すべきだろう。

4.偉大なプラチャンダ
むろん,そんなことは十二分にわかった上で,われらがプラチャンダは,仏教を政治的に,また経済的に,利用しまくっている。いや,国連までもが,プラチャンダに引きずり回されている。

やはり,プラチャンダは偉い。

* Republica,Nov.9&10; Nepalnewscom, Nov.8&9; ekantipur, Nov.9; Rising Nepal, Nov.10.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/11 at 11:15

ルンビニ開発も新国際空港も韓国

昨日(8日),プラチャンダ議長はパン・ギムン国連事務総長と会見し,ルンビニ開発への協力を依頼することになっていたが,さてどうなったのだろう? その成否は別として,ルンビニ開発の根回しは,早くから想像以上に着実に行われていたらしい。

1.バン事務総長,親友をルンビニ開発特使に
ネパール政府系ライジングネパール紙によると,次のような流れになる。

5月28日: イスタンブールで,カナル首相がバン事務総長と会談。事務総長は,ルンビニ開発協力を再確認。

数ヶ月後: バン事務総長,親友の韓国建築家Kwak教授をルンビニ開発特使としてネパールに派遣。訪ネしたKwak教授は,カナル首相,プラチャンダ議長,ルンビニ開発担当政府高官らと会談。プラチャンダとは個別に2回会談。

11月2日頃: ネパール政府が,Kwak教授に,ルンビニ広域開発マスタープランの作成を依頼する書簡を送付。

この流れから,早くから根回しがあったことはわかるが,どことなく国連の私物化のような気がしないでもない。

2.第2国際空港,韓国企業提案
このルンビニ開発とおそらく連動して,Landmark Worldwide(LMW)という韓国企業が,バラ郡に第2国際空港を建設するプランをネパール政府に提出した。政府は,LMWに優先権を与えるという。

建設予定地は,チトワンに近く,ルンビニへも遠くはない。もしここに国際空港ができれば,数が限定されるヒマラヤ観光とは桁違いに多い観光客が期待できる。また,広大なタライの産業開発への玄関口ともなる。やはり,韓国は目の付け所がよい。カネにもならないヒマラヤにロマンをかけつづける日本が負けるのは,当然だ。

3.インドの逆襲?
中韓のこの猛攻に対し,インドとネパール親印派は警戒心を募らせ,インドからのルンビニ投資を唱え始めた。

また,中韓が仏教聖地ルンビニを開発するなら,印ネはヒンドゥー教聖地パシュパティにも開発費を出せと要求し始めた。これも,もっともな主張だ。

4.仏教vsヒンドゥー教
仏教を担ぐ中韓派に対し,シバ神を担ぐ印派。そんな対立関係に発展しかねない。国連は,仏様に加担して,大丈夫なのかな?

* Rising Nepal, Nov.8; ekanitpur, Nov8; Republica, Nov.9.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/09 at 13:41

カテゴリー: インド, 経済, 中国

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ルンビニ開発と国連事務総長選挙

共産中国の新華社記事(ネット版)は,即物的,唯物論的で面白い。ルンビニ開発問題でも,アッサリこう書いている。

1.国連工業開発機関・パラス・プラチャンダ
新華社記事(7月18日)によれば,「アジア太平洋交流協力基金(APECF,執行共同議長Xiao Wunan)」は6月,ルンビニ開発に関する覚え書きをネパール政府との間で締結した(当時の首相はUMLのカナル)。

つぎにAPECFは7月15日,ルンビニ30億ドル開発計画に関する覚え書きを「国連工業開発機関(UNIDO,中国投資・技術移転促進事務所所長Hu Yuondong)」との間で締結した。

このAPECFの共同議長団は「興味深い背景と利害の混合」を見せている。スチーブン・C・ロックフェラーJr,J・ローゼン(米ユダヤ協会議長),L・H・チャーニー(不動産業,米大統領元顧問),そして「UCPN-M指導者にしてネパール元首相のプラチャンダ,およびプラチャンダにより打倒された国王を父とするネパール元皇太子のパラス」である。

APECFのXiao Wunan執行共同議長はこう語っている。「大乗仏教,小乗仏教,そしてチベット仏教諸派を始め,世界中の仏教高僧たちが,このルンビニ開発への大きな期待を表明した。」

これは実に即物的。非常に興味深い記事だ。

2.国連事務総長選挙とルンビニ開発
また別の新華社記事(6月13日)によれば,ネパールはパン・ギムン国連事務総長の再選を強く支持した(再選決定は6月21日)。ネパール首相外交顧問のミラン・トゥラダールはこう述べた(当時の首相はUMLのカナル)。

「パン氏は個人的に,特に平和プロセスに関して,ネパールときわめて親密であった。12項目合意からUNMIN設立にいたるまで,彼はネパール平和プロセスに深く関与された。彼の再選を願っている。・・・・パン氏はまた,仏陀生誕地ルンビニ開発にも特別の関心を示し,指導力を発揮してこられた。彼は,ネパール首相に,2012年にルンビニを訪問すると語った。」

これまた即物的な記事。この記事によれば,少なくともネパール側は,パン事務総長再選支持の見返りとして,ルンビニ開発への国連支援を求め,事務総長側からも肯定的な反応を得たという感触をもっているのである。

Written by Tanigawa

2011/11/06 at 11:43