ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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ネパール不動産バブル,日本人もビックリ!(3)

3.不動産価格高騰の主要因
都市部とその近郊の不動産価格が高騰し続けている主な要因は,ネパリタイムズ記事などによれば,以下の通り。

(1)1990年民主化運動とマオイスト紛争
民主化運動成功後の自由市場社会化により人口流動化が始まったところに,マオイスト人民戦争(1996-2006)が勃発,紛争の激しかった地方から多くの人々が都市部に逃れた。紛争が終結しても紛争中に流入した人々の相当数が地方に戻らなかったのに加え,自由市場社会化の加速により地方から都市部への人口移動は増加し続けた。

近年の移入者比率は,バグマティ州(カトマンズなど)が47.3%,ガンダキ州(ポカラなど)が40.2%,第1州(ビラトナガルなど)が38.9%。

(2)不動産取引の規制の甘さ
ネパールの不動産取引は,規制が甘く,銀行は大量の不動産融資をしている。庶民が預けた金も,不動産投資に回されている。

政治家,官僚,軍人,裁判官など,政官界有力者の多くは自身や縁者が不動産所有者であり,したがって,彼らの影響下にある政府や中央銀行(Nepal Rastra Bank)には,不動産取引や融資を規制するに十分な意思や能力を持たされていない。

(3)不動産取引税の低さ
市民所得税は最大36%,法人所得税は25%だが,不動産取引税は極めて低い。
土地取得後5年以内で売却⇒利益の5%が税
土地取得後5年以上で売却⇒利益の2.5%が税

また,不動産取引においては,関係職員を買収して取引額を低く見せ,課税額を引き下げることも行われているという。

(4)不動産マネーロンダリング
経済学者のAchyat Wagle教授は,不動産マネーロンダリングを,こう批判している。「不動産は,不正に得た金の一時移転先として理想的なものとなったので,土地を必要としない人々までが土地に投資した。・・・・そして,働かなくても短期間で金持ちになれるので,不動産投機は起業意欲を失わせることにもなった。」(Nepali Times)

(5)農地の宅地転用
農地の細分化・宅地転用についても,大量の金で買収が行われ,規制法が改定された。その結果,2021年だけでも,50万もの新たな不動産所有証書が発行された。また,合法的な分割土地であっても,係官は土地取引手続きの際,賄賂を要求するという。

■10年前撮影の新興住宅地(カランキ付近,2012/12/10)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2022/02/26 at 10:11

ネパール不動産バブル,日本人もビックリ!(2)

2.給与・金利と不動産価格
ネパリタイムズ記事は,市街地や近郊の不動産価格の高騰を警告しているが,そこで暮らす住民にとって,それはどの程度のものなのか? 比較のため,現在の所得水準と銀行金利を見ておこう。

(1)平均給与
ネパールの実勢給与については,インターネットの職業紹介サイトが概観には便利だ。サイトごとにかなり大きな差があるが,以下,おおよその参考までに。

SALARY IN NEPAL(2022)[ルピー/月,$1=Rs120]
平均月収:大企業[57,456] 中企業[48,600] 小企業[29,160] 零細企業[16,200]

Salalies on position in Nepal(2022/02/22)[ルピー/月]
平均的給与(賞与込)[15,053~55,556]
職種別:行政[30,256] 教育[26,282] 農業[22,470] 商業[28,561] 旅行・ホテル[22,006] 自動車関係[28,380] 銀行[37,372]

Average Salary in Nepal 2022[ルピー/月]
全国平均的給与(手当込)[20,400~360,000](全体の25%が47,000以下,75%が84,000以下)
都市別平均的給与: カトマンズ[86,900],ポカラ[80,700]
職種別:小学校教員[52,900] 中学校教員[67,800] 警官[45,800] 看護師[60,200] 歯科医[151,000] 土木技師[73,600] プログラマー[76,700] パイロット[142,000] フライト・アテンダント[53,800] ホテル・マネージャー[145,000] 弁護士[158,000]

(2)銀行金利
Nabil Bank(2022/02/13)
住宅ローン 12.00% / 普通預金 6.03%  定期預金(3か月以上)11.03%

他の銀行については,以下参照。Nepal Bank Ltd Everest Bank Limited

(3)不動産価格
ネパリタイムズ記事では,不動産価格の実例が,いくつか紹介されている。
・パタンのアパート(ベッドルーム2)=850万ルピー
・パタンの小住宅用地=1600万ルピー
・バクタプルの道路沿いの土地=20年前の70倍の価格
・カトマンズ・ダルバルマルグの不動産(土地?)=9千万ルピー/33㎡
・カトマンズ・ティンクネの土地付き住宅=8千万ルピー(6年前の4倍)
・カトマンズ・リングロードから4㎞の土地=5年前の5倍の価格

不動産価格について,より “real” なのは,ネット広告。無数にある。たとえば,以下参照。Hamro Bazaar Nepal Homes Real Estate Nepal Basobaas Nepal 99aana

▼不動産の販売価格例Hamro Bazaar 2022/02/24)

◆住宅(土地付き)

  • ラジンパト: 3階建 土地89.0㎡ 1700万ルピー
  • ラジンパト: 平屋 土地286.2㎡ 4000万ルピー
  • ブダニルカンタ: 3階建 土地116.4㎡ 2800万ルピー
  • マハラジガンジ: 2階建 土地79.5㎡ 1300万ルピー
  • テク: 3.5階建 79.5㎡ 1750万ルピー
  • チェットラパティ: 3.5階建 土地79.5㎡ 2250万ルピー
  • マイティデビ: 3階建 土地47.7㎡ 1300万ルピー
  • カランキ: 2階建 土地111.3㎡ 1150万ルピー
  • ニューバネスワル: 3階建 土地31.8㎡ 400万ルピー
  • バクタプル: 2.5階建 土地79.5㎡ 860万ルピー

◆アパート(マンション)

  • ラリトプル: 107.5㎡ 1720万ルピー
  • ラリトプル: 63.2㎡ 1250万ルピー
  • ラリトプル: 47.4㎡ 890万ルピー
  • タパガウン: 158.1㎡ 3150万ルピー
  • カリマティ: 35.3㎡ 627万ルピー
  • ドゥンバラヒ: 93.0㎡ 1650万ルピー

◆土地

  • カランキ: 95.4㎡  230万ルピー
  • カリマティ: 101.8㎡ 300万ルピー
  • カリマティ: 435.7㎡ 580万ルピー
  • スワヤンブー: 127.2㎡ 240万ルピー
  • ゴカルナ: 349.8㎡ 120万ルピー
  • ラリトプル: 190.8㎡ 129万ルピー
  • バクタプル: 149.5㎡ 120万ルピー
  • ブダニルカンタ: 127.2㎡ 250万ルピー

220222a ■不動産広告 Real Estate in Nepal

谷川昌幸(c)

Written by Tanigawa

2022/02/25 at 11:15

ネパール不動産バブル,日本人もビックリ!(1)

1.Unreal Real Estate Prices: 非現実的な不動産価格
ネパールでは,不動産価格の高騰がなおも続いている。狂乱地価を体験した日本人から見ても,その様は,かつての日本以上に異様とさえ見える。「不動産バブル」といわざるをえない。

この問題につき,ネパリタイムズが長文の批判記事を掲載している。

Ramesh Kumar,”Kathmandu’s unreal real estate prices;The urban property value bubble is artificial,and could spell an economic crisis if it bursts,” Nepali Times,February 5,2022

タイトルは,「カトマンズの非現実的な不動産価格」。土地や建物は「現実の,不動の(real)」財産(estate)であるはずなのに,カトマンズではそれらが「非現実的な,夢のような(unreal)」価格になっている,というのだ。

では,どうなるか? 「都市部の不動産価格は不自然な作為的バブルであり,破裂すれば経済危機を招くだろう。」

これは大変。日本では1980年代半ばからの不動産バブルが90年代初めに破裂,以後,長年にわたり日本は深刻な後遺症に苦しめられた。日本沈没の悪夢が正夢になりかけた。国力がそこそこあった日本にして,この有様。もしこれと同じようなことがネパールで起きたなら,日本以上に深刻な経済危機に陥るのではないか?

以下,他のネット情報も参照しつつ,ネパールの不動産取引について検討してみよう。

220219aNepali Times,February 5,2022

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2022/02/23 at 15:01

カテゴリー: ネパール, 社会, 経済

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人民政府の統治,追認か否定か?

マオイスト政府が,人民革命期の人民政府統治を追認するか否定するかで,大混乱に陥っている。

周知のように,人民戦争後半,マオイストは各地に「人民政府」を設立し,相当程度,実効支配していた。人民裁判所もあり,土地取引や結婚のような民事から,犯罪処罰などの刑事事件まで扱っていた。その人民政府の実効支配の効力を,追認するか否かは,マオイストのメンツだけでなく,個々の関係者の利害に直接関わるだけに,深刻な問題なのだ。

最大の争点は,なんといっても土地取引。ルクム・ロルパなど西部9郡だけで約1万件あり,人民政府は土地取引税2%を課し収入としていた。この人民戦争中の土地取引を,1月12日,マオイスト政府が合法として追認する決定をした。

これに対し,NCやUMLは猛反対,撤回を要求し,最高裁も執行停止命令を出した。これを受け,結局,バブラム首相は2月9日,人民戦争中の土地取引の追認・合法化の決定を取り消した。

しかし,これではバイダ派など急進派は収まらない。土地分配を受けた農民も黙ってはいない。マオイスト政府は,代替策として貧困農民の救済策を出さざるをえないが,これも実行するとなると,極めて難しい。バブラム首相の農民救済策は,その場しのぎのリップサービスといってよいだろう。

土地以外の問題は,今のところ大きな争点となってはいないが,実際には,他にも深刻な問題がたくさんある。たとえば,親の認めない結婚をマオイスト人民裁判所が認めた結婚の有効性,あるいは人民裁判所による刑事罰の有効性。もしこれらが無効とされたなら,名誉回復や損害賠償など,たいへんなことになる。

結局,マオイスト人民政府の統治をどう評価するかの歴史問題であり,これは深刻だ。歴史にカネが絡んでいるので,なおさら難しい。さて,どうするか?

* Himalayan Times, Feb10; Republica, Feb10; ekantipur Feb9, Feb1; nepalnews.com Feb9; Jan22.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/02/12 at 12:37

没収地返却拒否,マオイスト反主流派

各紙報道によると,マオイストのタパ書記長は,没収分配土地は十分な補償なしには返却しない,と語った。「土地を耕作者に!」は,人民戦争のスローガンであった。プラチャンダ議長やバブラム首相は,この革命の大義に背いているというのだ。

その一方,バイダ派は,新たに地主土地の没収も始めたらしい。ヒマラヤン(22日)によると,コングレスのカリコット郡代表の土地をバイダ派が没収したが,警察は傍観しているだけだったという。

バイダ派地区代表によると,彼らは,人民が収穫した米の半分を持ち帰った地主から,それを人民に返させただけだという。そうかもしれないが,収穫米の全部を耕作者のものとするのであれば,土地没収と結果的には同じだ。

この説明が事実だとすると,収穫米の半分を年貢として取り上げる地主に対し,マオイストが小作人の側に立ち闘っていることになる。

収穫の半分が年貢! 日本の小地主の一人としては,何ともうらやましい話しだ。わが村では,からり以前からマイナス地代(礼金を払って耕作していただく)となっている。こんなことなら,政府肝いりの「研修労働者制度」によりネパールから農民を招き,わが田畑を耕作していただいた方がはるかにましだ。年貢は10%程度でよい。50%もとられるネパールに比べたら,はるかに有利だ。今度ネパールに行ったら,「日本で農業を!」と大々的に宣伝してみるつもりだ。

いずれにせよ,バイダ派は耕作農民のために,年貢50%を取っているらしいコングレス派地主と闘っている。10数年前と同様,その限りではバイダ派に正義がある。新人民戦争が始まるかもしれない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/23 at 12:00

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