ネパール評論 Nepal Review

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京都の米軍基地(110):米軍の英語帝国主義

先日,好天に誘われ,久しぶりに経ケ岬米軍基地の見学に行ってきた。いくつか見られた変化の一つが,米軍英語帝国主義の顕在化。

日本軍もそうだったが,軍は,外国に進駐すると,軍事制圧と並行して文化制圧を図る。特に言語。「はじめに言葉があり,言葉は神であった。」その言葉を進駐軍が重視するのは当然だろう。

経ケ岬米軍は,硬軟様々な言語政策を使い分けている。軟の方の典型は,繰り返し批判してきた,軍人・軍属がおやつ付きで遊んでくれる子供向け行事。少し硬くなると,“生きた英語が話せる”が売りの様々な日米交流事業。そして,さらに硬くなると,地域社会に英語(米語)を事実上強要する強権的駐留政策。

たとえば交通標識の英語表記。丹後では,米軍関係事故がすでに51件も発生している(憂う会「現地報告」11月5日)。日本の交通事情に疎く日本語も解さない米軍関係者に,特権的に車の運転を認めているからだ。事故の場合も,補償交渉は圧倒的に住民不利。こうした状況では,被害を受ける住民としては,せめて基本的な交通標識だけでも英語表記にしてほしいと要望せざるをえなくなる。事実上の英語使用強要への不本意な屈伏である。

むろんグローバル化の進展とともに諸外国との交流が深まり,様々な言語が日本にも入ってきているが,これはいわば自然な多言語化・多文化化であり,権力的に強要されたものではない。

これに対し,丹後半島の標識の英語化は,米軍駐留により半強制的に選択させられたとみるべきである。主権国家の国民として,これは甘受しがたい屈辱である。われわれは,このような米軍英語帝国主義に屈することなく,米軍と日本政府に対し,日本で車を運転する者には,運転に最低限必要な日本語と,日本の交通法規および交通慣行を学ばせよ,と要求し続けるべきであろう。


 ■「横断歩道注意」標識/標識前の丹後半島


 ■基地反対フェスタ看板と「注意」標識/標識付近から望む米軍基地

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/11/08 at 08:08

京都の米軍基地(21):「苦渋の判断」の甘さ

京丹後市の中山市長は,9月11日の議会定例会(第2日)や9月19日付文書「TPY-2レーダー配備への協力及びこれを巡る経過,考え方について」において,米軍Xバンドレーダー受け入れを表明した。市長は,「苦渋の判断」と繰り返しているが,事柄の重大性に比べ,あまりにも甘く,軽い。米日「政産軍共同体」は,何ら苦く渋い思いをすることなく,タナボタで,京の都の西北,経ヶ岬を手に入れることになる。

市長の説明によれば,防衛省からの申し入れが2013年2月26日,それ以降,半年以上にわたり,「防衛省等による15回をこえる説明会」や市議会での議論等を通して様々な検討と確認を行ってきた。そして,9月10日,京都府知事とともに小野寺防衛大臣を訪問し「大臣から政府として真摯で責任ある対応の確認を得た」ので,京丹後市として「必要な協力を行うことと総合的に判断」したというのである。

しかし,この判断のどこに「苦渋」があるのだろう? あらかじめ決められたシナリオ通り,事は淡々と進められ,予定通りの決着を見たということではないのか?

そもそも,これは自治体=地方政府の自立的「判断」に値するものではない。お上(かみ)が申されることなので,お国の大義のため,滅私奉公,忠義を尽くします,ということに他ならない。まさかと思われる方は,この上意下達の関係を念頭に置き,次のような市長の文章(TPY-2レーダー配備への協力及びこれを巡る経過,考え方について)を読んでみていただきたいーー

「今回のご要請は,わが国の責任ある政府当局から国の防衛,国の安全,安心という大きな国益が真剣に問われています。・・・・同じこの国の地域の一員として,このために必要な負担を分かち合い,いささかなりともできる貢献はやっていくという姿勢が大切であるということは,自ずと道理であります。」(日本語になっていないが原文のまま引用)

完全な上から目線。上意下達の官僚主義の作文。ここには,地域住民一人一人の権利保障から出発するという民主主義の精神は認められない。

だから,市議会での説明も官僚答弁,まるで面白くない。そもそも,米軍基地受け入れという重大案件を,なぜこれまで本会議でなく主に議員全員協議会で議論してきたのか? 

市議会会議規則が手元にないので正確には分からないが,一般に協議会は協議するところであって,正式の議会審議の場ではない。にもかかわらず,米軍基地問題は,これまでほとんど議員全員協議会で議論されてきた。真剣な議論や言質を取られることを恐れているとしか思えない。そのくせ,おそらく協議会で議論は十分やったとされ,正式議会での審議は採決のための単なる儀式で済まされてしまうのだろう。上意下達,下請け地方議会らしい姿だ。

そのせいであろう,小野寺防衛大臣訪問直後であるにもかかわらず,議会9月定例会でこの問題について質問をしたのは,京丹後市HPを見る限り,共産党の3議員だけ。いったいどうなっているのだ。頑張れ,共産党!

議会定例会(9月11日) (ユーチューブ音声再生→下記クリック)
田中邦生(日本共産党)
米軍基地配備問題について
 (1)安全安心は本当に担保されたのか
 (2)「無いに越したほうがいい」が全市民の声
 (3)危険な米軍基地配備計画は撤回すべき
橋本まり子(日本共産党)
米軍基地配備と住民の安心について
 (1)市が提示した受け入れに際する条件で、事件事故に関して、市民は本当に安心といえるのか
森 勝(日本共産党)
米軍基地問題について
 (1)現状と基本的問題点について

[参照]
京丹後市・中山泰市長の経歴 
   130928
学歴
昭和50年3月 峰山中学校卒業
昭和53年3月 天理高校卒業
昭和60年3月 京都大学経済学部卒業
職歴
昭和60年4月 総理府・総務庁入庁
平成元年4月 科学技術庁科学技術振興局研究交流課専門職
平成3年4月 総務庁行政管理局行政情報システム企画課係長
平成4年7月 総務庁行政管理局行政手続法制定準備室室長補佐
平成6年7月 総務庁行政管理局副管理官
平成8年8月 沖縄開発庁沖縄総合事務局総務部人事課長
平成10年7月 沖縄開発庁長官秘書官(井上吉夫、野中広務、青木幹雄 各長官)
平成13年1月 経済産業省大臣官房企画官 兼 製造産業局人間生活システム 企画チーム長・デザイン政策チーム長
平成14年8月 内閣府総合規制改革会議事務室次長
平成16年5月17日 京丹後市長
(京丹後市 http://www.city.kyotango.kyoto.jp/shisei/shicho/profile/index.html)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/09/28 at 21:40

米軍基地京都設置問題関係資料:前泊編著『日米地位協定入門』

米軍基地ができると,京都・丹後はどうなるのか? それは,この本を読むと,手に取るようによく分かる。
  ■前泊博盛(編著)『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』創元社,2013年3月
  【参考】米軍経ヶ岬基地年表

本書によれば,在日米軍は,日米安保条約,地位協定,および他の諸々の合意や「密約」により,日本国内で自由に行動する広範な権限を認められている。

米軍関係者には日本への「出入国自由の特権」があり,米軍基地には「排他的管理権」がある(p35)。米軍には日本の法律が適用されず(p75),米軍基地は一種の「治外法権」であり(p73),米兵犯罪はほとんどまともには裁かれない(p73)。

法的には,安保条約等の日米条約群が憲法を含む日本の国内法に優位しており,その意味では「日本は法治国家ではない」(p238)。日本は,アメリカの属国・植民地であり,「主権国家とはいえない」(p86)。

本書は,在日米軍と米軍基地のこのような恐るべき実態を,豊富な実例と資料を用い,具体的に解明し,分かりやすく解説している。

いま京丹後市・経ヶ岬に設置されようとしているのは,まさに本書が告発する,そのような米軍基地である。

このような米軍基地は,いったん設置してしまったら,もはや撤去はおろか,最低限の監視や規制すらできない。いくら人権や民主主義を主張しようが,シビリアン・コントロール(文民統制)を叫ぼうが,馬耳東風,「治外法権」や軍事機密で守られた米軍や米軍基地を,いったい誰が,どのようにしてコントロールするというのか。

原発と同様,米軍基地にも,様々な甘い利権が付き,地域はすぐ分断され,取り込まれ,基地依存経済に転落してしまう。

そして,経ヶ岬基地には,160人もの米兵や軍属が配属される。橋下徹大阪市長があからさまに指摘したように,軍人・軍属の有り余る性的欲求は,何らかのかたちで慰安されなければならない。経ヶ岬基地でも,そのための慰安・娯楽の場が,必ず近辺の町村,たとえば宇川,伊根,間人,網野,峰山,宮津などにつくられるにちがいない。

橋本市長は,軍隊と性的慰安の必然的関係を指摘した点では,決して誤ってはいない。軍隊に性的慰安・娯楽施設はつきものだ。そして,もし橋本市長が沖縄米軍司令官に提案した合法的風俗業の活用で満足できなければ,性暴力に走りがちなこと,これまた事実だ。韓国や沖縄などで繰り返されてきた米軍関係者の性犯罪を見れば,これは明白だ。

しかも,そうした犯罪は,米軍特権や治外法権により,まともに裁かれ,処罰されることもない。

米軍基地の受け入れは,地域社会の健康と安全を根こそぎ放棄することにほかならない。日米の産軍官複合体の利益のために。

130524a
   ■本書の帯

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/05/24 at 19:19