ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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南アジア中印オセロ対局,ネパールの「目」は中国に

2017年ネパール選挙について,抜群に「明快」で,読んで「面白い」のは,『日経アジアンレビュー』の記事「新対局において中国がインドを包囲 次々と南アジア諸国を北京が勢力圏内に」:
 ▼Yuji Kuronuma, “China has India surrounded in their new Great Game: One after another, Beijing is pulling South Asian countries into its orbit,” Nikkei Asian Review, 19 Dec 2017.

[Yuji Kuronuma, “China Has India Surrounded In Their New Great Game: Nepal, Sri Lanka, Pakistan — Beijing is pulling South Asia into its orbit,” Spotlight Nepal, 20 Dec 2017. この『スポットライト-ネパール』掲載記事では,ネパールに加え,スリランカ,モルディブ,パキスタンなど他の南アジア諸国の状況についても分析されている。ここでは,ネパールのみを扱った『日経アジアンレビュー』掲載記事について,紹介・論評する。]

著者は,南アジアを「巨大なオセロ盤」に見立て,そこで中国とインドが盤上の「目(国や地域)」をめぐって陣取り合戦をしているとみる。

このオセロ対局で,いま勝利を手にしつつあるのが中国。「つい最近,北京の勢力下にはいった目は,2018年初に親中政権が発足する見込みのネパールである。これは,地域二大国の間の定位置にいたヒマラヤのこの国にとって,大きな変化となる。ネパールのこれまでの政権は親印の立場を維持してきたからだ。」

むろん著者も,ネパールはなおインドとの関係が特に経済や出稼ぎ労働の分野で大きいことは認める。が,中国は道路や鉄道のネパール延伸などインフラ投資を積極化,ネパールへの接近を図っている。「UML幹部らもニューデリーの『管理統制』からの離脱の意思を隠そうとはしない。」

インド情報機関[RAW?]のRSN・シンも,ネパールの政権交代は「中国の後押し」によるものであり,ネパールへの影響力拡大を狙う狡賢い中国の戦略の一部だと語ったという。

記事はこう結ばれている。「インド近隣で中国に引き寄せられている国はネパールだけではない。最近まで,近隣諸国の多くは手強い交渉相手であり,ライバル二大国を競わせ,より多くの経済的支援等の約束を獲得しようとしてきた。ところが,それらの国々が,このところすんなりと中国勢力圏内に入る動きをますます強め,インドをいたく狼狽させている。」

以上のように,この記事は南アジア政治を中印対局のオセロにたとえて説明するもの。たしかに白黒ハッキリ,「明快」でスッキリし,見て読んで「面白い」。が,南アジアの政治って,そんなものなのかなぁ? 白黒がしょっちゅう入れ替わったり,あいまいだったりするのが,南アジア政治の常態のような気もするのだが?

 ■Spotlight Nepal(20 Dec 2017)より。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/09 at 16:42

中ネ共同軍事訓練の地政学的意味

ネパール国軍と中国人民解放軍が,カトマンズの「パラ軍学校」において,初の共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」(4月16~25日)を実施している。これは,ネパールをインド勢力圏内の一小国とする伝統的な見方からすると,驚くべき新たな事態とみてよいであろう。(参照:ネ中共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」

そのことを中国政府側から明快に分析し,その意義を高く評価しているのが,『環球時報』のこの記事:
 ▼Liu Zongyi, “Indian Worry Over China-Nepal Drill Outdated,” Global Times, 21 Apr 2017
著者のLiu Zongyi氏は上海国際問題研究院の上席研究員。以下,この記事の概要を紹介する。

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「サガルマータの友好2017」は,テロ対策と災害救助を目的とする中国とネパールの共同軍事訓練である。ネパールは,中国と緊密な経済関係を持つに至り,「一帯一路」への参加も希望している。それには,テロ対策を進め,「この地域の安全と安定」を図ることが不可欠だ。また,ネパールは地震など災害多発国であり,災害救助訓練も必要だ。

この共同軍事訓練は,こうした目的を持つものであり,当初,大隊規模での実施を予定していたが,インドの対ネ圧力により,「パラ軍学校」での小規模な訓練となってしまった。が,たとえそうであっても,この共同訓練には大きな意義がある。

インドはこれまで,冷戦的な地政学的観点から,ネパールやブータンを「自国の勢力圏内」におき,「中国との間の緩衝地帯」として利用してきた。そして,ナショナリズムが高揚し,モディ首相が就任すると,インドは「対中強硬策」をとり,「中国が南アジアやインド洋沿いの国々と経済協力を進めることを警戒し,中国の影響力を押し返そうとしてきた」。

ネパールは,そのようなインドに「政治的,経済的,文化的など様々な面で依存してきた」。そのため「ネパール人の多くが,シッキムのように,自分たちも国家としての独立を失うのではないかと恐れてきた」。

そのネパールにとって,「この共同軍事訓練は,中ネ二国間関係が政治的・経済的・文化的なものから,軍事的防衛の領域にまで拡大したこと」,あるいは「ネパールが大国間バランス外交に向け前進したこと」を意味する。さらにまた,「中国との共同軍事訓練は,ネパール国内の民族的分離主義を抑止することにも役立つ」。

中国は,中国‐ネパール‐インドの三国間関係につき,明確な立場をとっている。中国は,ネパールが中国とインドの架け橋となることを願っている。中国‐ネパール‐インド経済回廊を前進させることにより,これら三国すべての発展を加速できる。インドが中国とネパールの協力をどう見るにせよ,中国とネパールとの協力は,両国民の利益となるものであり,拡大し続けるであろう。

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以上が,Liu Zongyi上席研究員の『環球時報』掲載記事の要旨。中ネ共同軍事訓練をバックに唱えられているにせよ,議論それ自体は,まったくもって正論である。ネパールが独立を堅持し,もって中印の架け橋になるとは,ネパール政府が以前から繰り返し唱えてきたネパール外交の表向きの基本方針だし,中ネ印の平和的経済発展にも反対のしようがない。

たしかに,新たな「正義と平和」は,新たな強者の側にある。ネパールは,昇竜・中国に導かれ,インドの勢力圏から脱出し,相対的により独立した「中印のバランサー」ないし「中印の架け橋」へと向かうのであろうか?


■ネ中共同軍事訓練(国軍HP)/一帯一路(Xinhua Finance Agency HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/04/25 at 19:10

カテゴリー: インド, ネパール, 経済, 軍事, 外交, 中国

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ネ中共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」

ネパール国軍と中国人民解放軍が,国軍パラ訓練校(マハラジガンジ)において,初の共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」作戦を開始した。4月16~25日実施の予定。

ネパールは,軍事的には,これまでインドや英米との関係が深かった。ところが最近,中国が急接近,資金的にも教育訓練でも中国援助が急増している。その結果,ネパール国軍の中に,有力な親中派が形成され始めたという。

中国は2002年,バングラディシュと防衛協力協定を締結し,武器も供給し始めた。そのような関係を,ネパールやスリランカとも構築したいと中国は考えているという。そうなれば,パキスタンはすでに軍事的に中国と密接な関係にあるので,インドを封じ込めつつ「一帯一路(OBOR)」を実現するという中国の野望は,大きく前進することになるであろう。

【参照】
・2008年:中国,ネパール国軍に対し260万ドルの援助約束。
・2011年:中国,ネパール国軍に対し777万ドルの援助約束。
・2013年6月:中国,武装警察隊訓練校開設のため36億ルピー援助表明。
・2017年3月:対ネ投資会議において,中国が83億ドル(ネパールGDPの40%相当)のインフラ投資表明。
・2017年3月23-25日:中国国防大臣ら軍関係幹部がスリランカ訪問を終え,訪ネ。大統領,首相,国防大臣らと会談。共同軍事訓練について協議。中国側,ネパール国軍に対し3千2百万ドル援助を表明。
・2017年3月27日:中国,訪中したプラチャンダ首相に5月地方選援助(1億3千6百万ルピー)を表明。
・2017年4月16~25日:ネパール・中国共同軍事訓練「サガルマータの友好2017」

*1 “Nepal-China Joint Military Training Commences,” Nepalese Army HP (n.d.)
*2 “10-day Nepal, China joint army drill starts today,” Kathmandu Post, Apr 16, 2017
*3 Anil Giri, “Nepal-China joint military drill begins,” Hindustan Times, Apr 16, 2017
*4 Nihar R Nayak, “China’s growing military ties with Nepal,” The Institute for Defence Studies and Analyses HP, March 31, 2017

 ■ネ中共同軍事訓練(国軍HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/04/18 at 18:14

カテゴリー: インド, ネパール, 軍事, 中国

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蘭州発加徳満都行,一番列車発車

中国甘粛省蘭州から5月11日午後,加徳満都(カトマンズ)に向け,一番列車「蘭州号」が発車した。43車両にコンテナ84個積載。ラサ経由でシガツェまで行き,そこでトラックに積み替え,キロン経由でカトマンズまで運ばれる。定期運行。

 160515a160515b
  ■蘭州号(*1)

新華社掲載の写真を見ると,西蔵鉄道の線路は堅固な造りだし,カトマンズ行車両の編成もなかなか立派。さすが,中国はすごい。いまや鉄道大国だ。鉄道建設国際入札で日本が負けるのもむべなるかなだ。

といっても,まだシガツェから先が未完成のため,蘭州からカトマンズまで10日間もかかる。いまのところ,経済的にはあまりメリットはないだろう。しかし,チベット鉄道延伸計画は進んでおり,カトマンズまで結ばれるのも,そう遠い先のことではあるまい。そうなれば,中ネ間の交通は格段に便利となり,コストも下がり,人と物の往来が劇的に拡大するだろう。5月11日発車の一番列車は,その露払い,前祝といったところであろう。
  (注)中国各地からの鉄道ツアーはすでに多数売り出されている。
   160515■西安中信国際旅行社HP

さらにもう一つ,当面,これよりもはるかに重要といってよいのが,加徳満都行一番列車発車のもつ政治的な意味(*2)。先の連立組み換え首相交代騒動は,裏でインドが画策していたといわれている。インドは,現行憲法堅持で親中・反マデシのオリ政権を嫌い,コングレスに働きかけマオイストをUMLから引き離し,憲法改正・親印・親マデシのNC=マオイスト政権をつくらせようとした。この政権転覆のたくらみは,一時成功するかに見えたが,マオイストがオリ首相に「9項目合意」を呑ませることによりUMLとの連立継続をとったため,頓挫してしまった。

この間,オリ首相は,バンダリ大統領の訪印をドタキャンし,さらに駐印大使の召還さえも断行してしまった。これは重大な決断であり,対印関係はいま危機的な状況にあるといっても言い過ぎではあるまい。

そのような中,カトマンズに向け,中国から一番列車が発車! それは中ネの時間距離的接近をビジュアルに誇示するものであると同時に,当然,それは両国の政治的接近をも世界に向け強烈にアピールしている。新華社掲載の「加徳満都行蘭州号」写真の,それは,それは巨大なこと! 

といっても,むろんインドが,ネパールにとって,依然として地理的にも文化的にも最も近い国であることに変わりはない。地政学的に,ネパールはインド勢力圏内にある。そのネパールへの中国の急接近――ネパール政治に何かこれまでとは異なることが起こる可能性はある。それが何かは,まだわからないが。

*1 Liang Jun, “China opens its first combined transport service to Nepal,” People’s Daily Online, May 12, 2016.
*2 SANJEEV GIRI, “Beijing ‘sends’ freight train for Nepal,” Kathmandu Post, 2016-05-13.
*3 Ananth Krishnan, “China opens new trade route to Nepal amid India tensions,” India Today, May 12, 2016.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/05/15 at 11:20

カテゴリー: インド, 経済, 外交, 旅行, 中国

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象と竜の喧嘩も恋もネパールの災禍:HB・ジャー

オリ首相訪中の評価は大きく分かれている。SD・ムニは,前述のように,過大評価を戒め,中国も参加した南アジアの経済統合の促進はむしろこの地域の利益になるとして,インド国益の重要部分を確保しマデシの正当な要求を支持しつつ,ネ中接近への冷静な対応を勧めている。(ネパールの「中国カード」とインド国益:SD・ムニ

これに対し,マデシ勢力に近いと思われるSB・ジャー(ICCR 研究員)は,オリ首相訪中・「中ネ共同声明」の歴史的重要性を認め,インドとネパールに警告を発している。以下,その要旨。
 ■Hari Bansh Jha , “Chinese Strategic Deal with Nepal,” The Vivekananda International Foundation, 5 Apr 2016 ( http://www.vifindia.org/article/).

1.オリ首相訪中の成果
SB・ジャーによれば,オリ首相訪中によりネパールは,(1)広州の港の利用,(2)中国からの石油供給,(3)鉄道建設計画(チベット―カトマンズ―ポカラ―ルンビニ)など,大きな成果をえた。

一方,中国は,とくに戦略面で大きな成果をえた。オリ首相訪中後,さっそくネパール国軍参謀総長に対し,許基亮中央軍事委員会副主任が中ネ防衛戦略協力の強化を申し入れ,房峰輝人民解放軍総参謀長はネパールにおける自由チベット運動の阻止を求めている。

「中ネ協定は,中国と南アジアを結び付ける歴史的な動き。それは,この地域の地政学的関係を変えることを目的としている。」(Hu Shisheng, Director, the Institute of South and Southeast Asian and Oceanian Studies at the China Institutes of Contemporary International Relations)

2.戦略的合意のネパールにとっての重さ
「中ネ合意は,ネパールと中国の間の経済的取り決めというよりは戦略的取り決めの意味の方がはるかに大きい。それは,ネパールのインド依存を少なくすることにより,ネパールを中国の傘に近づけることを目的としている。この合意により,中国のネパールに対する影響力は増大するだろう。それは,ネパールの社会経済や安全保障に対してばかりか,インドに対しても,大きな影響を与えるだろう。

この新しい状況の下で,インドはネパールにおけるインドの利益を守ろうとするだろう。そうなったとき,ネパールは自国における近隣二大国の利害をうまく調整できるであろうか。もしバランスを欠けば,ネパールは破滅ということになりかねない。巨象二頭が争っても愛し合っても,ネパールは踏みつけられ苦しめられることになる。」(SB・ジャー)

160409■在ネ中国大使館HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/09 at 21:05

カテゴリー: インド, ネパール, 軍事, 中国

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欧印共同声明の釈明おおわらわ,駐ネEU大使

R・ティーリンク駐ネEU大使が4月5日,カマル・タパ副首相兼外相と会談し,先日の欧印首脳会談共同声明につき,釈明にこれ努めた。

1.ネパールの抗議とEU大使の釈明
新聞報道によれば,タパ外相はこう抗議した。――ネパール憲法が欧印首脳会談でなぜ取り上げられたのか? EUはネパール憲法の評価を変えたのか? 問題があっても,ネパールは自力で解決できる。内政干渉は認めない。

また,ネパール外務省もつぎのような声明を出した。インドとEUは「ネパールの主権を尊重し,・・・・無用な声明を出すことは控えるべきだ。・・・・[声明は]内政不干渉の基本原則[に反し],国連憲章と国際法規範を侵害している。」(Nepali Times, 3 Apr)

これに対し,ティーリンクEU大使は,半時間にわたり釈明した。その要旨は,大使フェイスブックによれば,次の通り。「EUはつねにネパールの平和構築を強く支持し,憲法を歴史的成果として歓迎してきた。この立場に変わりなない。」

かなり苦しい言い訳だ。人民戦争中ならいざ知らず,ネパールはすでに平時,新憲法は制憲議会において平和的かつ民主的に制定された。それなのに,欧印が外からネパール憲法に対し注文を付けた。明白な内政干渉。訪ネ中の独議員団(4人)ですら,共同声明は「不適切だ」と語ったという。

 160406a ■EU大使FB(4月5日)

2.EUの介入慣れとインドの外交力
それにしても,なぜEUは,こんな余計なことをしてしまったのだろうか? その理由の一つとして考えられるのは,EUないし西洋諸国の無際限とも思える対ネ介入が日常化し,この程度のことが問題になるとは思いもよらなかったのではないか,ということ。いつもの善意のネパール支援の一環。

もう一つは,やはりインドの外交力。新憲法については,インド国境沿いのマデシの人々が,自分たちの権利が十分に認められていないとして激しい反対闘争を繰り広げ,これを陰に陽にインド政府が支援してきた。インドは,マデシの要求に沿うようネパール憲法は改正されるべきだと考えてきた。その立場から,インドは欧印首脳会談の場にネパール憲法問題を持ち出し,共同声明にそれを書き込むようEU側を説得し,それに成功したということであろう(Nepali Times, 3 Apr)。さすが,外交のインド!

[補足]マデシは欧印共同声明を歓迎。
スレシュ・マンダル(タライ・マデシ民主党):「共同声明に対する抗議は不要だった。・・・・われわれに対する不正義について国際社会が声を上げるのは当然である。」(Nepali Times, 3 Apr)
R・ライ(タライ・マデシ・サドバーバナ党):「これこそ,周縁化された社会諸集団に対する差別を国際社会は容認しえない,ということの証である。」(同上)

3.ネパール関与の難しさ
このように見てくると,欧印側にも,ネパール側にも,それぞれそれなりの言い分があることが分かる。

そもそもネパールは,低開発問題や人民戦争を自力では解決できず,国際社会の支援を求め続けてきた。国際社会は,ネパール側の要請を受け,経済的にも人的にも大きな負担を引き受けてきた。憲法制定も,ネパール側が要請し,国際社会がそれにこたえ,支援し続けて来たことである。

ネパールの主要諸政党は,その国際社会の全面的支援を受け,2015年9月,新憲法を制定公布した。ところが,その憲法は,国際社会,とくに西欧諸国やインドにとっては,マデシや他の周縁的諸集団を十分には包摂しておらず,不十分なものであった。そこでインドとEUは,彼らが支援してきた憲法制定をそもそもの目標通り包摂的なものにするよう,共同声明で要請した。印欧からすれば,至極当然の要請であったわけだ。

ところが,オリ政権にとっては,新憲法は自分たちが成立させたものであり,自分たちにとってはこれで十分なものであった。そこで,「欧印共同声明」でのネパール憲法言及を内政干渉として激しく非難し,拒否することになったのである。

こうした政権の都合による支援要請と,一転してのその拒否は,ネパールでは決して珍しいことではない。最も極端な例は,人民戦争解決のため要請され介入したUNMIN(国連ネパール政治ミッション)。UNMINの本格展開で人民戦争の終結のめどがほぼ着いた最終局面で,ネパール政府は突如,UNMINを「無能」と非難して追い出し,時の政府に都合のよい戦後体制をつくった。「それはないよな。お気の毒なUNMIN」と同情しきりだった。(参照:ネパール派兵、7月末まで延長

ことそれほどまでに,ネパールへの関与は難しい。逆に言えば,インドと中国に挟まれ地政学的に難しい状況の下で曲がりなりにも独立を維持し続けてきたネパールは,島国の日本では想像もできないほど,したたかな国だ,ということでもあろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/06 at 15:26

カテゴリー: インド, 外交, 憲法

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中国・ネパール共同声明

オリ首相が3月20-27日,中国を公式訪問,その成果を取りまとめた共同声明(3月23日付)が発表された。経済協力を中心に内容は広範に及ぶが,主なものは以下の通り。
 *Joint Press Statement between the People’s Republic of China and Nepal, Beijing,March 23, 2016

共同声明の概要
・平和5原則の確認
・中国側:ネパール憲法公布を歴史的前進として歓迎
・ネパール側:「一つの中国」政策支持。「ネパール領土をいかなる反中国活動にも使わせない」
・中国側:ネパール治安関係機関の能力強化支援 
・ネパール側:総領事館を広州開設決定,成都開設予定
・中国側:「一帯一路」推進
・中国側:石油製品の商業ベースでの供給。ネパールに中国石油・ガス基地建設
・アラニコ道路,シャブルベシ-ラスワガディ道路,カトマンズ・リング道路などの改修・改良
・中ネ国際鉄道およびネパール国内鉄道(タスワガディ‐カトマンズ,カトマンズ‐ポカラ‐ルンビニなど)計画の推進
・中ネ自由貿易協定交渉および国境経済ゾーン計画の推進
・30億人民元(2016-2018)の対ネ経済援助
・自家用ソーラー発電装置3万2千セットの対ネ援助
・中ネ送電線架設,アルン‐キマタンカ等の水力発電所建設援助
・中国側:ネパール観光開発支援(観光関係者への中国語教育など)
・中国系銀行支店のネパール国内開設
・中国文化センター等による中ネ文化交流の促進,ネパール人留学生の受け入れ

これらの中には,約束されたものと要望として出されたにすぎないものとが混在しており,どこまで実行可能か,よくわからない。しかし,経済分野を中心に中ネ関係が大きく前進したように見えることは,たしかだ。これをどう評価するか? インドからの見方なども交え,見ていくことにしたい。

160331■ネパール外務省FB3月23日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/03/31 at 20:03

カテゴリー: 経済, 外交, 中国

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