ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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地方を744地区に区割り

プラチャンダ内閣は3月5日,地方再構築委員会(LLRC)提出の地方区割(local unit)案を修正のうえ採択した。

LLRCは当初,地方を719地区に区割する案を提出したが,マデシ諸党がこれに激しく反発,5月地方選挙ボイコットを宣言したため,プラチャンダ内閣は,第2州を中心にさらに25地区を追加して全国を744地区に区割することにした。この閣議決定は公報掲載をもって施行される。([3月15日追記]マハ・ナガル4,ウパ・ナガル13,ナガル246,ガウン481,計744)

▼閣議決定された地方区割(区割追加郡のみ)
  郡  LLRC案⇒閣議決定
 サプタリ 12⇒17
 シラハ 12⇒17
 ダヌサ 13⇒17
 マホタリ 14⇒15
 サルラヒ 16⇒17
 ラウタハト 15⇒16
 バラ 13⇒15
 カトマンズ 9⇒11
 マナン 3⇒4
 バジャン 11⇒12

5月14日投票のための区割追加とはいえ,いかにも泥縄。しかも,線引きの基準として人口を第一にすることにはそれなりの根拠がある半面,人為的設計主義となるおそれが多分にある。地域の伝統や文化は,この地方区割にどの程度反映されるのであろうか?

 ■WIKIより(2017-03-10)

*1 “Govt okays taskforce proposal for 744 local units,” Republica, 5 Mar, 2017
*2 “Govt brings bill for delineation of electoral constituencies,” Republica, 9 Mar, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/10 at 15:15

カテゴリー: 選挙, 行政, 議会, 憲法

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地方選,5月実施?

ネパールの代議院議員任期は5年だが,経過規定(憲法296条)により現議員(立法議会議員)の任期は2074年マーグ月7日(2018年1月21日)まで。はや1年を切っている。したがって,代議院議員選挙の準備を急がなければならないが,それには,なによりもまず州,郡,町村の選挙を行い,正統な地方政府を構成しておくことが必要である。(上院の方は議員の大半が地方と州の長や議員から互選されることになっており,町村や州の正統な政府が成立していなければ,そもそも選出できない。)

これは,政治的にも実務(事務)的・経済的にも,たいへんな大事業である。へたをすると,国家そのものが選挙倒産しかねない。本当に,実施できるのだろうか?

準備は進められている。立法議会(連邦議会)は1月25日,「改正選管法」と「有権者登録法」を可決した。そして,地方(स्तनिय),州,連邦の3レベルの選挙を実施するに必要な他の法令や制度の準備も急いでいる。

しかし,州については,マデシ諸勢力が現行憲法付則の州区分に強硬に反対,議会ではこの部分の改正につき議論が続いている。州区画は,事実上まだ確定していないといっても過言ではない。この状態で,どのようにして州議会選挙を実施するのか?

地方レベルの村(गाउँ)や町(नगर)も,当然,どう区画するかをめぐり,タライを中心に,大混乱している。現在,地方自治体は町が217,村が3117あるという(CBS2002では町58,村3915)。「地方制度再編委員会(LLRC)」は1月6日,これらを719に再編・統合する答申書をプラチャンダ首相に提出した。

このLLRC答申は,地方自治体を「人口と地理」を基準に719に区分している。これに対し,タライ諸勢力は,「人口」を基準に区分すべきだと主張している。タライは人口が多い。タライは,答申では719自治体のうち30%しか配分されていないが,「人口」だけを基準にすれば,少なくとも45%は配分されることになる。これは,州区分争いと同じ構図だ。町村は生活に近いだけに,州区分以上に再編・統合は難しいだろう。(日本では平成大合併の後遺症がなおも継続中。)

 ▼1町村の区画基準人口(LLRC,2016年10月)
  地 域  村(ガウン) 町(ナガル)
  山 地 13,000    17,000
  丘 陵 22,000    31,000
  タライ 40,000    60,000

現状はこのような有様なのに,プラチャンダ首相は,必要な法令を成立させ,5月半ばまでに地方選挙を実施すると繰り返し明言している。自らの手で地方選挙を断行し,これをてこに,州議会選挙と連邦議会選挙を実施しマオイストを勝利に導きたいと考えているのだろう。

しかし,本当にプラチャンダはこれらの選挙を実施できるのであろうか? あるいは,かれ,または他党の誰かがこれらの選挙を実施するとして,それでネパールの財政はもつのであろうか? 

ネパールに設計主義的な選挙民主主義(選挙原理主義)を押し付けた国連や西洋諸国は,責任を免れない。必要なカネとヒトの支援を惜しむべきではあるまい。

170129■松本の姉妹都市カトマンズ(同市HPより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/01/29 at 16:59

連邦制,希望から失望へ(3)

2.シャンブー・デオ「アイデンティティ連邦制よりも分権化を」
アイデンティティ連邦制を原理的に批判し,民主的な集権化と分権化の必要性を説いているのが,この記事。少々難解だが,要旨は以下の通り。
 ▼Shambhu Deo, “Identity-based federalism: Decentralization is a better option,” Himalayan Times, 21 Dec. 2016.

「アイデンティティ連邦制(Identity-based federalism)は,ネパールにとって耐え難いリスクである。・・・・包摂的な民主主義,開発,平等を実現し,国民に効果的なサービスを提供する国家の責任を果たすには,アイデンティティ連邦制よりも実効的な分権化の方が効果的である。」

「南アジア諸国の大半は,20世紀半ばまで英国の植民地だった。それらの国々は,独立すると,アイデンティティに基づく連邦制をとりやすかったので,それを採用した。これにより,文化的,言語的,宗教的,民族的に異なる多くの小国家の人々を,一つの国にまとめたわけである。ところが,ネパールは,すでにこの段階を乗り越え,強く団結した統一国家になることに成功していた。」ネパールは,連邦制の長い経験を持つアメリカやスイスとも,膨大な人口を持つインドとも異なる。「2千9百万のネパール人は,分割されない一つの統一体として生きていくことができる。」

「連邦制は,各部分が統治機構を持つので,他と比べコスト高の統治制度である。」また,「連邦制は,インドで経済的不平等,民族格差,地域格差が拡大していることを見れば明らかなように,それ自体,政治的,経済的,地域的,民族的平等への前進を必ずしも保証するものではない。」ネパールでも,階級の方がアイデンティティよりも重要なのだ。

それにもかかわらず,ネパールは,単一制国家構造を放棄したため,人々の統合が弱体化し,政治が不安定となり,法と秩序が揺らぎ始めた。「アイデンティティ連邦制をさらに推し進めると,この国は暴力と終わりなき紛争に陥るだろう。そのようなことは止めるのが賢明だ。」

「国家は集権化と分権化の双方を必要とする。」「分権化は,民主主義の最小単位たる個人をてこに,国民統合と民主化を推進する。分権化された地方統治は,国家の民主主義のレベルを判断する指標である。」

「ネパールにおいて,より効果的に人民の要望に応えうるのは,アイデンティティ連邦制ではなく,定期的に選出される分権化された地方統治制である。アイデンティティ連邦制は,複雑で,コスト高で,不平等を拡大し,国民統合を脅かす制度であるにもかかわらず,主権を分割し,その連邦制[の各州]に自立権を与えるのは,ネパールには受け入れがたいリスクである。」
161225a■2015年憲法の州区画(Wikimedia Commons)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/30 at 01:12

京都の米軍基地(75): 議員質問の制限

京丹後市議会6月定例会において,議長が米軍基地に関する質問をしていた平林議員の発言を途中で遮り,質問範囲の制限を宣言した。要旨は以下の通り(正確には議事録参照)。

「質問は当該団体の行政を対象としますので,この範囲で行われる必要があります。このため,たとえば防衛,郵政(?),外交,司法,国会に関する事項については,質問することは出来ません。しばしば問題になるのは,米軍や自衛隊の基地が所在する地方議会において,国の防衛政策や日米安保条約の是非等が議論・論議の対象となることです。この場合,基地所在の結果として,たとえば騒音が激しいとか青少年の非行の誘因となるとか,その対策等を議論するのであれば差し支えないが,騒音や青少年非行の根源として国の防衛政策の是非を論議することは出来ません。それは国会がやるべきことであり,地方議会の守備範囲を超えるからです。」

「[安保法制は]まだ国会で議論されており,決まっておりませんので[京丹後市議会では質疑すべきではない]」([]内引用者補足)。

これは面白い。一昔前の行政学者も真っ青の御用形式論理だ。でも,日本国憲法の定める「地方自治の本旨」って,本当にこんなものなのかな?

▼京丹後市議会 平成27年6月定例会 (質疑視聴は下図右リンクをクリック)
第2日(6月18日)
平林智江美(日本共産党)
1 安保法案と米軍基地について
(1)戦後70年節目の時、まちがった戦争という認識はあるか
(2)安倍首相の暴走で戦争する国にしようとしている。安保法案について市長の考えを聞く
(3)米軍基地が安保法案により市民にとって安心安全とはいえないが
(4)米軍関係者の居住地が網野島津にできると聞く。弥栄は通過地域として不安の声が出ている。弥栄住民への説明対応は
 150709f 質疑視聴

第3日(6月19日)
森 勝(日本共産党)
1 戦争法案と「集団的自衛権」について
(1)戦争法案のネライとその目的について
(2)戦争法案と憲法9条の関係について
(3)集団的自衛権行使は自治体、国民に何をもたらすのか
2 宇川米軍基地と米軍居住地問題について
(1)戦争抑止論と沖縄の負担軽減について
 150709g 質疑視聴(7分経過付近の中間部分割愛)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/09 at 18:43

京都の米軍基地(36):軍民混在の恐怖

防衛省は4月13日,袖志での説明会において,米軍基地の5月着工,Xバンドレーダーの12月末運用開始の予定を一方的に言い渡した(京都新聞4月14日)。

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 ■第1期工事完成後/第2期工事完成後

地元住民にとって,最大の脅威は,北朝鮮でも中国でもなく,米国軍人・軍属だ。むろん,軍人や軍属個々人が悪いのではない。彼らも,地元住民と同様,本来,よき息子であり,よき父や夫であり,そしてよき市民だ。しかしながら,彼らは米国益のため極東の島国の,英語のまったく通じない辺境地に派兵され,連日,最前線の緊張の中に置かれる。個人として善良で優しい人であればあるほど,この緊張に耐えられず,逸脱行動に追いやられやすい。彼らも同情すべき犠牲者なのだ。

米国の下請け,日本国防衛省の説明によれば,5月から米軍人・軍属が京丹後に派兵され,峰山町内のホテルに駐留する。たぶん,あのホテルであろう。そうなれば,そのホテル周辺はむろんのこと,市内――といっても田舎の小さな町にすぎないが――の商店や飲食店や遊技場でも,丹後の人々は前線派兵の米軍人・軍属と日常的に接触することになる。

繰り返すが,米軍人・軍属は,地元の人々と同様,本来は正直で善良な人々だ。しかし,かつて戦争が米国人を「鬼畜」(大日本帝国プロパガンダ)としたように,僻地前線派兵の緊張が,彼らに異常なストレスを与え,彼らに異常行動をとらせる恐れは多分にある。前線派兵の軍とは,そうしたものだ。

それなのに,京丹後市議会は,あまりに脳天気。補助事業の皮算用で色めき立っている。

大村副市長:「地域振興で再編か、民生かということですが、御存じのように[基地]再編交付金は100%、民生安定事業は5割、平均5割ということですので、丹後町ですから、5割の補助金の裏には過疎債が使えるということですので、非常に有利な財源にはなると思います。ですから、地域として考えるならば、宇川地域、網野町地域に広げるかどうか、よくわかりませんが、民生安定の事業を中心に使われていくほうがいいのかなと。それから、民生安定にいく、なじまないような部分については再編交付金を使っていくと。再編交付金はやはり市全体での利用と言いますか、使用も考えるべきだというふうに思っています。」(基地対策調査特別委員会,2014年2月5日)

丹後市議会は,こんな目先の小利分捕り合戦をしていてよいのか? 地域が米軍最前線基地にされ,最新鋭レーダーを持ち込まれれば,当然,それを守るためのハードとソフトが必要になる。レーダー基地防衛のためのミサイル等の持込,工作船や破壊工作に備えた防衛部隊の強化,そして地域の防諜・治安強化など。

市議会が国家下請け機関なら,それも致し方ない。が,もしそうでないなら,いますべきは地域住民の平和と安全のため,Xバンドレーダー基地受入を根本から再検討し,その撤回を申し入れることではないのか。

[参照]
京丹後市エックスバンドレーダー配備に関する説明会―市長挨拶2013-08-07
京丹後市エックスバンドレーダー配備に関する説明会―経緯2013-08-07
京丹後市エックスバンドレーダー配備に関する説明会-質疑2013-08-07
京丹後米軍基地地元説明会(宇川)防衛省(桝賀氏)2014.04.16
京丹後米軍基地地元説明会(宇川)質問&意見2014.04.16 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/15 at 14:30

京都の米軍基地(31):MBS「見えない基地」再放送を

毎日放送(MBS)「見えない基地~京丹後・米軍レーダー計画を追う」(2014年1月19日放送)を録画で見た。関係者や地域社会への細心の配慮をしつつも,問題の本質に多角的観点から肉迫していく。本格的ドキュメンタリーの傑作といってよいだろう。

番組の制作意図と概略は,MBSホームページ「取材ディレクターより」に簡潔に述べられているので,ご覧いただきたい。なお,MBSにはラジオ番組「どこへ行く自衛隊」(2013-11-10)もある。

140216 140213d
 ■MBS「見えない基地」/MBS「どこへ行く自衛隊」

1.地域分断
このドキュメンタリは,それ自体,決して難解なものではないが,扱われている主題は,複雑で重苦しく,難しい。

過疎の村,京丹後市宇川に,昨年早春,突然,米軍Xバンドレーダー基地建設が告げられる。そして,地元住民に対しては,説明らしい説明をせぬまま,一方的に,強引に基地建設計画が進められていく。

その過程で,衝撃的であったのは,やはり地域社会の分断である。原発とまったく同じ構造。権力による脅しや,カネによる直接的・間接的懐柔で,たちまち地域社会は分断され,隣近所はおろか家族ですらいがみ合い争う。過疎とはいえ,美しく平和であった地域社会が,猜疑と憎悪の底なし沼に引きずり込まれつつある。

もはや丹後は元へは戻れまい。表立っては怒るに怒れない忍従,救われようもない重苦しさと悲哀。

2.「国益」優先の市長
ところが,驚くべきことに,地元・京丹後市の中山市長は,当初から一貫して,地元住民ではなく,はるか海の向こうのアメリカや山の彼方の東京(政府・防衛省)に,目を向けてきた。いかにも総務庁-内閣府出身,上意下達の官僚主義的役人根性が抜けないらしい。

MBSは,むろん,この中山市長の卑屈な役人根性を見逃しはしない。番組では,中山市長が「住民益」「市民益」ではなく,「国益」を引き合いに出す場面を,いやらしいまでにリアルに描写している。

「国益」とは,要するに「お国のために」「滅私奉公」ということ。憲法第92条「地方自治の本旨」を無視し,地元の住民・市民ではなく国家権力の側に立つ中山市長! MBSは,そんな無様な,卑屈な場面を撮りたくはなかったにちがいない。しかし,そこはドキュメンタリーのMBS,心を鬼にし,涙を呑んで,カメラを回した。MBSの覚悟,プロ根性が偲ばれる迫真の画面からは,保身のため住民を売り渡した中山市長の虚勢とオドオドした内心が透けて見て取れる。

140216b ■MBS取材にこたえる中山市長

3.車力基地の実情
番組では,Xバンドレーダー基地ができたらどうなるかを見るため,つがる市の車力基地を取材している。この部分を見ると,防衛省や,その下請け・中山市長の説明がいかに無責任かが,よくわかる。

車力米軍基地は軍事機密,ピリピリした厳戒態勢下にある。こんなものに不用意に近づいたり写真でも撮ろうものなら,しょっ引かれたり,下手をするとテロリストかスパイとみなされ,射殺されるかもしれない。相手は「治外法権」の米軍。何をされるか分からない。

また,米軍関係者の犯罪や交通事故も少なくない。さらに,補助金漬けについては,余計なコメントはつけず,淡々と事実だけを描いているが,それだけにかえって,考えさせられ胸にこたえる。

4.「見えない基地」の再放送を
この番組「見えない基地」は,同局の「映像’14」シリーズの一つだ。「映像’14」は関西地域放送番組だが,レベルの高いドキュメンタリーで知られている。「見えない基地」も秀作。

しかし,残念なことに,この番組は日曜日の深夜(24:50~25:50)に放送された。見逃した人も少なくなかろう。実に,惜しい。何とかならないか。

手っ取り早いのは,録画番組をネットで公開するという手。たとえばーー
 ▼LunaticEclipseYokosu「見えない基地」YouTube
しかし,これは海賊版ではないか? もしそうだとすると,権利を守るための闘いが権利侵害を犯すことになってしまう。

やはり,一番望ましいのは,制作した毎日放送自身が,もう少し見やすい時間に再放送したり,ネットで公開することだ。有料でもよい。これほど優れたドキュメンタリーなら,料金を払ってもみたいと思う人も少なくないはず。ぜひ検討していただきたい。

5.特定秘密保護法の恐怖
蛇足ながら最後に一言,特定秘密保護法との関係について。周知のように,特定秘密保護法はすでに成立し,年内には施行される。

この特定秘密保護法が施行されると,おそらくMBS「見えない基地」のような番組は制作できないであろう。あるいは,それどころか,地元民や観光客がうっかり写真を撮っても,「おい,こら!」と,しょっ引かれる恐れがある。そんなことはない,と政府やその出先機関の市長は反論するかもしれないが,危ないと思わせるだけでも,威嚇効果は十分なのだ。

MBS「見えない基地」の描く車力米軍Xハンドレーダー基地。厳戒態勢にあり,触れば祟り必定の「タブー」そのものだ。そんな恐ろしいものが,車力とは異なり丹後では一般道路・住宅地・観光名所のすぐ側にできる。名所・穴文殊からだと,子供が石を投げても当たる距離だろう。

Xバンドレーダーについては,電磁波や騒音が主に問題にされてきたが,政府にとってはこれは想定内。議論がここに集中するのをみて,政府はほくそ笑んでいたにちがいない。

Xバンドレーダー基地の最大の危険性は,軍事機密,特定秘密にある。見せないで見るXバンドレーダー。ブラックホールのように,近づくものを片っ端から吸い取り破滅させる。そんなものが住宅地の目の前,観光名所のど真ん中にできる。

番組「見えない基地」の最初と最後は,経ヶ岬展望台からの分屯基地遠望であった。この展望台は,以前,私が分屯基地監視の名所として推薦したところだ。しかし,Xバンドレーダーが設置されたら,このような撮影はできなくなるだろう。たとえ,撮影禁止の立て札が立てられなくても,撮影には公安や警察やその他諸々の監視をつねに意識せざるをえない。何となく不気味だから自主規制,となるにちがいない。

あるいは,それどころか国道沿いの民家の庭先や二階からカメラを向けても,危ない。「軍事機密」「特定秘密」が写る可能性があるからだ。

こうして,京丹後は「Xバンドレーダー体制」に組み替えられていく。

140216a shariki tango ■米軍基地の位置関係:車力/経ヶ岬(京都民報

谷川昌幸(C)

京都の米軍基地(22):「詭弁」答弁と無責任市議会

京丹後市議会は,9月24日,議員全員協議会を開催し,「米軍Xバンドレーダーの配備受け入れ要請に関する対応について」協議した。(クリック→ユーチューブ再生)

不思議なのは,中山市長の防衛大臣訪問(9月10日)や受入表明(9月19日)の前に,議会で何の決議もしていないこと。議員全員協議会で何回か協議しているが,これは要するにおしゃべり,正式の議会での受入決議は,新聞報道で見る限り,ない。しかも,受け入れについては,市長「受入表明」だけで済ませ,正式の文書は出さないという。こんな重大問題なのに,議会決議も,文書での正式回答もなし。なぜ要求しないのか? こんなていたらくでは,議会の責任放棄と批判されても,いたしかたあるまい。

受入表明後の議員全員協議会(9月24日)は,したがって気が抜けたビール,中山市長のお話し拝聴に終始した。

131009b ■中山市長の議会答弁(9月24日)

そうした中,1人気を吐いていたのが,共産党の森勝議員。質問は,日米安保や地位協定に関する原理的・理論的なものと,沖縄米軍基地等の現実を踏まえた具体的なものとの二本立て。中山市長は,この質問にしどろもどろ,日米安保も地位協定もまともに読んでいないことが露見してしまった。官僚市長だから,政治家の領分たる原理的・理論的議論は,あまり経験がないのだろう。また一方,具体的諸事実に基づく質問にも,官僚的はぐらかし以外の対応はまったく出来なかった。みじめだ。森議員に「幼稚だ」「詭弁だ」とバカにされても,怒ることすらできない。完敗,森議員に赤旗1本だ。

森議員については,議会HP記載以上のことは何も知らない。本拠は網野町。舌鋒鋭く,懲戒請求(2011年10月)されるようなこともあったらしいが,議会中継で見る限りネアカであり,好感が持てる。論敵からも愛されているにちがいない。

共産党には,よく勉強し,地域住民のため地道に活動している党員が少なくない。空気を読まず(読めず)正論を吐くので煙たがられるが,地域の風通しをよくしていることは間違いない。共産党の良心のような人びとだが,党官僚組織内では正当に評価されていないようだ。というよりもむしろ,立身出世に関心がないからこそ,地域での無私の活動が続けられるのだろう。森議員のことは今回の一連の議会発言でしか知らないが,おそらく共産党のそのような誠実な地方党員のお一人であろう。

ここで不思議なのは,森議員のような論客がいるのに,共産党が彼を十分に活躍させていないこと。何らかの配慮かもしれないが,実に惜しい。いまや京丹後市議会は世界に公開され,中山市長と森議員の議論も世界中の人びとに見られている。彼らはどう評価するか? これは明白。世界市民の多くは森議員の完勝と判定するにちがいない。中山市長の官僚答弁は,霞ヶ関のカスミの中では通用しても,世界市民社会では通用しない。森議員の言うとおり,「幼稚」であり「詭弁」だからだ。

131009a ■森議員の議会質問(9月24日)

米軍は世界最強の軍隊であり,自分の手を縛る約束はしないし,たとえしても守りはしない。それは,直近の饗庭野オスプレイ問題を見ても明白。オスプレイは,経ヶ岬や福井原発群の上を飛行するかもしれないのだ。

それでも経ヶ岬に,軍事機密の塊のような米軍Xバンドレーダーを「誘致」するという。なぜか? おそらく無理な広域合併で無用な豪華ハコモノを造りすぎ,市税じゃじゃ漏れ,首が回らなくなり万事休す,米軍基地にすがらざるを得なくなったのだろう。「国家の安全」だの「国益」だのといった高尚な話しではない。背に腹はかえられぬ。要するに,貧すれば鈍するということであろうか。

[参照]森議員の質問
米軍Xバンドレーダー受入:京丹後市議会(9月24日)
米軍Xバンドレーダー配備:京丹後市議会(9月11日)森議員質問
京丹後市Xバンドレーダー審議(6月20日)森議員質問
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/09 at 22:19