ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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英国人画家,デモ参加容疑で逮捕(5)

マーティン・トラバース氏は,体制プロパガンダ画家ではなく,住民の側に立とうとする壁画芸術家の一人である。体制に抑圧され,周縁に追いやられている人々の苦しみや怒り,そして闘いを通して見えてくる希望を壁画に描きこもうとする。彼の壁画が「政治的」となるのは当然といえよう。

このことは,トラバース氏のIgnite South Asia(April 3, 2014[?])のインタビュー「文化を搾取させるな」(*1)を見ると,よくわかる。Ignite South Asiaは,被抑圧人民の開放を唱える「過激な」組織であり,ホームページにはかつてのプラチャンダ氏など,「過激派」の面々の写真やインタビューが満載されている。では,そのインタビューで,トラバース氏は,何を語っているのだろうか?

「文化を搾取させるな:マーティン・トラバース」(*1)
(1)「新たな夜明け」について
この壁画は,先述のように,サンフランシスコ市街に描かれている。米国議会図書館も写真を所蔵し公開。トラバース氏は,こう語っている。

「ネパールで起こっていること[人民戦争]は,世界の人々にとって様々な点で希望の光であると思います。社会の底辺の人々が鎖を切り権力をとることがどのようにして可能になったのかを見ること――これが,そのころ(2000-2003年),この壁画を描いた主な動機です。」

160521■「新たな夜明け」(米議会図書館HP)

(2)ポカラ壁画について
このポカラ壁画は,トラバース氏が初めて訪ネした2012年3月の「女性の日」に描かれた。「ネパール闘争における女性の役割の重要性――それを訴えるため,何かをしたかったのです。」

160521e■ポカラ壁画(Ignite South Asia)

(3)「鎖を断ち切れ」について
「鎖を断ち切れ」は2012年4月,カトマンズの川沿いの建物の壁に描かれた。この壁画について,トラバース氏はこう説明している。

「壁画を描いていると,スラムの人々がお茶を持ってきてくれた。われわれと一つになったのだ。革命芸術運動(Revolutionary Art Movement)のメンバーと協力して描いていると,地域住民と容易に結びつくことが出来ます。」

160521f■「鎖を断ち切れ」(Ignite South Asia)

(4)芸術を人民の手に
トラバース氏は,芸術と人民解放闘争との関係について,次のようにまとめている。

「人々が壁画を好きになり描くのは,すばらしいことです。が,[それだけでは]社会の底辺で闘っている人々を描くという方向性が欠けている。先に述べたように,壁画は,そうした闘いを描くべきです。私にとって,壁画はそうしたものです。これは極めて大切なことだと思います。」

「特にネパールの歴史においては,人民戦争,すなわち貧しい人民の蜂起の精神を生かし続けるべきです。それには,壁画は良い手段です。われわれの文化を特定の人々に奪われ自分のものにされてしまうことを許してはなりません。」

「ネパールのような闘争があるところでは,闘っている人々の側が訴えようとしていることを描くことが大切です。壁画を描き始める前に,人々が何を語り,なんのために闘っているかを見極め,人々とつながり,ともに座り,顔を見合わせ,そして話を交わすべきです。人々が語ることの奥底にある思いをつかむべきです。そうしないなら,芸術は無意味となり,語りかける声をもつことはないでしょう。」

「さらに,進歩的な人々は,貧困地域の人々に芸術家になってもらうべきです。壁画を描き,芸術に参加する。世界中の芸術運動を見てもらい,人々が芸術を自分たちのものと考え,意見表明のためにその芸術をどのように使っているかを知ってもらう。公開壁画は,まさにそれです。声をあげ,聞かせよう。さもなければ,壁という壁が,広告と掲示,上中流階級芸術の声で埋め尽くされることになってしまいます。」

――以上のように,Ignite South Asiaインタビューのトラバース氏は,極めて雄弁であり,彼の壁画が周縁化され虐げられている人々の声を視覚化し代弁していることをはっきり認めている。いや,そればかりか,かれは地域住民に働きかけ,人民による人民のための壁画制作運動に参加させようとしているのだ。トラバース氏は,ネパールの被抑圧社会諸集団のことを熟知しているとみてよいだろう。

もしそうなら,そしてもし15日逮捕されたトラバース氏がこのトラバース氏なら,15日のシンハダルバール闘争のことは何も知らなかったという各紙報道,とりわけリパブリカ紙の報道は,極めて不自然,不可解と言わざるをえないであろう。

*1 “Let’s not let certain people take our culture and turn it into theirs: Martin Travers,” Ignite South Asia, April 3, 2014[?]

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/05/21 at 12:25

カテゴリー: 社会, 文化, 民主主義, 人権

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英国人画家,デモ参加容疑で逮捕(4)

マーティン・トラバース氏は,ネパールでは著名外国人の一人だと思われる。たとえば,2015年4月には,英国文化振興会(英国大使館)とカトマンズ現代美術センター(KCAC)等との共催で,「マーティン・トラバース壁画ワークショップ」を開催している。

マーティン・トラバース壁画ワークショップ
このワークショップでは,トラバース氏指導の下,ネパール人芸術家らが参加し,英ネ修好200周年記念の大壁画(長辺30m)を英国文化振興会の壁に描いた。(私は未見)

英国文化振興会(ブリティッシュ・カウンシル)HPによれば,次の壁画はカトマンズの周縁化された被差別社会諸集団のためのものとなるという。

このように,トラバース氏は,政治性の強い壁画を描いており,それを英国大使館も十分認識したうえで,彼の制作活動を支援してきたとみるべきだろう。

英国文化振興会の壁画
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 ■制作中(youtube)/完成後(Siddartha Art Callary

トラバース展「闘いと夢:ネパール人民への敬意」(2015年8月23日~9月6日)
160520c
 ■Siddartha Art Callary

Written by Tanigawa

2016/05/20 at 12:18

カテゴリー: 文化

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カトマンズの壁画: 寺院

ティンクネ~マイティガル道路の拡幅近代化のためマイティガル手前の丘が削り取られ,大きな壁ができた。ここに描かれたのが,この寺院。

壁は巨大だし,前景は超近代的ソーラー街路灯付き高規格道路。舞台装置は申し分ないが,作品はいまいち。文字遊びの「Let’s stART」も,遊びきれていない。空間ができると埋めたくなる心理はわからないではないが,広ければ広いほど,使い方は難しくなるようだ。

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ここは,強引な拡幅工事により1階部分が削り取られた家が頑張っているところ。この家は,本格的な補修が行われていたので,このまま存続することになるのだろう。こちらの方がシュールであり,作品としては面白い。

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【参照】 国土改造ブームのネパール 震災なきがごときカトマンズ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/12/08 at 08:36

カテゴリー: ネパール, 文化

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カトマンズの壁画: 広告

マウンテンバイク(山岳自転車)とクリニック(医院)の広告壁画。なかなかセンスがよい。組み合わせの妙と,伝統的な広場を前景としているのとで,余計そう感じるのかもしれないが。

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/12/07 at 08:39

カテゴリー: ネパール, 文化, 旅行

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カトマンズの壁画: 悲しそうな仏様

ここはよく通ったが,このような仏画には全く気付かなかった。古そうに見えるが,震災後に描かれたのだろうか?

 151206

この仏様は,悟りからほど遠い,現世の人のような,悲しそうな表情。背景は爆撃,前景は破壊のようにも見える。半年前の生々しい地震の傷跡もあちこちに残っている。手練れの作とは思えないが,それでもなかなか興味深い。

 151206a■近くの美術学校

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/12/06 at 09:38

カテゴリー: 文化

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カトマンズの壁画: 自由奔放

これは,モモとチャイを注文したら,燃料不足のためコーラとパンを勧められた屋上茶店の向かいのビルの大きな壁画。少々古く消えてしまった部分もあるが,それでも残った部分だけでもなかなか愉快。路地奥であり,どの通りからも見えない。いったい誰が,何の目的で,こんな絵を壁に描いたのだろう?

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/12/05 at 10:39

カテゴリー: 文化, 旅行

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カトマンズのミロ

カトマンズには,こんな「芸術的」な壁画もある。ミロ原画の模写なのか,ミロ風の創作かは素人の私にはわからないが,カトマンズの街にはよく似合っており,違和感はない。近くに芸術学部があるので,先生か学生が描いたのかもしれない。

151204

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/12/04 at 11:14

カテゴリー: 文化, 旅行

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