ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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中国人観光客の存在感:オーストリア

中国からの観光客が激増したのは日本など近隣諸国だけかと思っていたが,これはまったくの思い込み,誤りであった。ツイッター記事によれば,

毛丹青 ‏@maodanqing 中国からの観光客による「爆買い」は減少傾向に転じ始めていた。ブームではないかと言われた。しかしブームは必ず冷める。過度に持ち上げてその後で過度に貶めるのが日本の常だ。昨年海外旅行に出かけた中国人観光客は約1億2千万人、その中から約500万人が日本を訪れてきただけでブームと言えるか。」

たしかに,オーストリアでも,どこに行っても中国人観光客があふれていた。とにかくすさまじい。数十人の団体旅行から数人の自由旅行まで,さまざまな形で観光に来ている。大きな買い物袋をもった人もみられる。

さらに驚くべきは,日本人旅行者の多くが――夏休み前とはいえ――老人(高齢者)であったのに対し,中国人旅行者は青壮年層中心であり,大学生前後の若者も少なくなかったこと。中国はこれほど多くの青壮年をヨーロッパ旅行に送り出せるほど豊かになったのであり,また中国青年たちには世界を見て歩こうという大いなる意欲が満ち満ちているのだ。

中国人旅行者は,その振る舞いでも,日本人とは対照的だった。中国は中華の国。日本人のような辺境島国コンプレックスとは無縁だ。どこで出会っても,自然体で堂々と行動していた。数十人の大集団で通路いっぱいに広がり移動したり,観光名所やレストランで大声で声を掛け合ったり。

オーストリアにとって,リッチな中国人観光客は大歓迎に違いない。老人中心のプアな日本人観光客より,ありがたい。すでに各地・各所の案内の多くは,独語・英語・中国語となっている。

オーストリアには,インド人もかなり来ていた。インドも大国であり,しかも英語ペラペラだから,ごく自然体,悠然と行動していた。歴史ある大国には,やはりかなわない。

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 ■シャーフベルク登山列車(「サウンド・オブ・ミュージック」にも登場)

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 ■ザルツブルク旧市街

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/07/21 at 11:53

カテゴリー: 文化, 旅行, 中国

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中国の広報戦略と戦略なき小国日本

毎日新聞「隣人:日中韓 孤立する日本/7 報道支配、中国外にも」(4月10日)は,刺激的な警世的記事だ。中国政府が,国策として,6千億円(2009年頃)の巨費を投入し,世界世論形成に努力しているというのだ。李長春・政治局常務委員(宣伝担当)は2008年1月,中国中央テレビ(CCTV)で,こう演説した。

「外国語チャンネルの開設を加速し、我々の映像、声をさらに世界各地に波及させよ。国内外の重大事件の報道で、世論の主導権を勝ち取れ」(毎日4月10日)

毎日記事は,オーストラリア,アメリカ,ケニアの事例を,「そこまでやるのか!」とビックリ仰天するほど興味深い実話も交え,紹介している。いかにも中国的で,稚拙とも,乱暴とも言えるが,そこは大国,小さなことは気にしていないようだ。要は,世界世論の米欧支配を打破し,中国の声を広めることが目標なのだ。

ネパールでの「China Daily(中国日報)」宣伝も,この中国政府の世界広報戦略の一環とみるべきであろう。すでに幾度か紹介したが,「ネパリタイムズ」の「中国日報+ランタン無料進呈」キャンペーンは,その率直さに,見るたびにほほえまされるが,戦略的には的確に的を射ている。無料進呈LEDランタンで「中国日報」を読めば,最先端の光により大いに啓蒙(lighten up)されるというわけだ。小さなことを気にせず,大国的な大らかさで,時間をかけ,目的を達成することを目指している。

131214a ■中国のネパール啓蒙作戦(ネパリタイムズ2013年12月13-19日号)

これに対し日本は,ひがみっぽい小国根性丸出し。国土25倍,人口11倍の超大国・中国に対し,経済規模など日本の国力が相対的に低下するのは,必然であり自然なことだ。その宿命を見据えた上で,日本は,量的にではなく質的に,自国の価値を高め,小粒でもピリリと辛い小国としての存在意義を世界に向け発信し,世界社会において「名誉ある地位」(憲法前文)を占める努力をすべきだ。

それなのに,相対的小国化の宿命を直視する勇気を持たず,隣国の発展に嫉妬し,ひがみ,内弁慶になり,「日本を取り戻す」などと空威張りをする。本気で日本を取り戻せば,よくて極東の貧困後進国,悪くすると軍国全体主義国に逆戻りするだけではないか。

今日の「ネパリタイムズ」にも,「China Daily」の宣伝はでている。そこをクリックすると,中国日報ホームページが表示される。その最上段には,ちゃんと,日本批判記事が出ている。日本には,「日本を取り戻す」ためのアナクロ竹槍戦術はあっても,このような大きな世界戦略はない。
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 ■ネパリタイムズ広告⇒China Dailyトップ(4月10日)

140410c ■日本向け広告。戦略的な中印首相握手写真掲載(4月10日)。

中国のネパール進出とアメリカ国益

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/10 at 18:36

カテゴリー: 外交, 情報 IT, 中国

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