ネパール評論 Nepal Review

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マオイストの憲法案(23)

4(17) ダリットの権利,家族に関する権利
マオイスト憲法案第46条はダリットの権利,第47条は家族の権利を規定している。

第46条 ダリット共同体の権利
 (1)いかなる場所,いかなる人にたいしても,カースト,所属共同体,家系,職業を理由とした不可触民扱い,差別,侮辱を行ってはならない。違反は処罰され,被害は賠償される。
 (2)政府,政府系組織,政府系企業の雇用は,人口構成比に応じた比率とする。
 (3)伝統的にダリットの仕事とされてきた職業の近代化。どの職業に就くかはダリットの選択による。
 (4)土地なしダリットへの国家による土地配分
 (5)家のないダリットへの国家による救難所提供
 (6)初等教育から高等教育まで,無償教育および奨学金をダリット生徒・学生に提供。高等技術教育の特別保障
 (7)教育,保健,雇用におけるダリット特恵。所得向上支援
 (8)連邦,州,地域,地区におけるダリットの比例的代表
 (9)公務員,軍,警察へのダリットの比例的雇用と参加
 (10)ダリット集住地区におけるダリットの政治的優遇権。この優遇権は2期で消滅
 (11)丘陵ダリット,マデシ・ダリット,ダリット女性は,それぞれダリット共同体の諸権利を比例的に配分される。

――ダリット(Dalit)は不可触民として差別されてきた人々。「制憲議会選挙法(2007)」では,ダリットには13%(男6.5%,女6.5%)の候補者枠が割り当てられているので,現在の人口比はほぼこれと同じと考えられる。

マオイストは,ダリットを有力な支持基盤の一つとし,その蛮勇によって,彼らの境遇を大幅に改善した。しかし,ダリット差別は社会的に根深く,それゆえ憲法にもこのように詳細に規定せざるをえなかったのであろう。

第47条 家族の権利
 (1)配偶者は1人
 (2)結婚,離婚の自由
 (3)当事者の同意なき結婚の禁止
 (4)家族財産および家族の事柄に関する権利は,両配偶者にある
 (5)育児,教育は両親共同の権利義務。両親を敬い養育するのはすべての子供の共同の権利義務
 (6)(1)(3)の違反は処罰される
 (7)家庭裁判所を各レベルに設置

――家族については,一夫多妻,幼児婚,妻虐待,男児優遇の根深い因襲を念頭に置いた規定となっている。この家族の分野でも,女性,妻,女児の権利向上はマオイストの蛮勇によるところが大きい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/07/10 at 15:46

カテゴリー: 憲法, 人権

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マオイストの憲法案(22)

4(16)女性の権利,子供の権利

マオイスト憲法案第44,45条は女性と子供の権利を保障している。なお,日本社会の全体主義的検閲により「子供」は「子ども」と表記させられているが,「子ども」は分かち書きで見難く醜いので,「子供」と表記する。

第44条 女性の権利
 (1)相続への女性の平等な権利
 (2)あらゆる形の女性差別禁止
 (3)生殖に関する女性の決定権
 (4)宗教,伝統,文化,慣習または他の理由により身体的,精神的,性的,心理的または他の形の暴力を女性に加えてはならない。違反は処罰され,被害女性は賠償を受ける権利を有する。
 (5)比例および包摂原則により国家のあらゆる機関に参加し代表される女性の権利
 (6)積極的格差是正原則により、教育,保健,雇用および社会保障において女性が優遇される権利

――ここでは,あらゆる国家機関への女性の比例参加・代表権が保障されている。実行されるなら,あらゆる国家機関で原則として男女同数となる。人民解放軍兵士の40%が女性となっているマオイストらしい規定である。また,女性のための積極的格差是正措置も明記されている。

第45条 子供の権利
 (1)本人のアイデンティティおよび出生登録に基づき,自分の名前を尊重される子供の権利
 (2)家族および国家により保障されるべき教育,保健,養育,スポーツ,娯楽への子供の権利
 (3)適切な保育・成長への子供の権利
 (4)母語で教育を受ける権利
 (5)工場,鉱山または他の危険な職場での子供雇用の禁止
 (6)子供婚(幼児婚),違法な子供売買,子供の拉致または監禁の禁止
 (7)軍,警察,武力紛争または武装集団での子供使用禁止,いかなる場所でも,またいかなる文化または宗教を理由としても子供を虐待または無視することの禁止,身体的,精神的,性的または他の形の子供搾取または不適切な子供処遇の禁止
 (8)家庭,学校または他のいかなる場所でも,身体的,精神的またはいかなる形でも,子供を虐待することの禁止
 (9)子供のための裁判への子供の権利
 (10)放置児童,孤児,心身障害児,紛争被害児,放浪児または危機にある子供は,国家から特別保護を受ける権利を有する。
 (11) (5)(6)(7)(8)の規定違反は,処罰され,被害児は加害者から賠償を受ける権利を有する。

――子供の権利も,手厚く保障されている。子供の姓名権は,もっともな保障だが,これを憲法に規定せざるを得ない社会的背景については,よくわからない。大人の都合での改名が日常化しているのだろうか?

(6)(7)の規定は,マオイストらしい規定だ。内戦期に,多くの子供を学校などから強制拉致し,拘束し,洗脳し,人民解放軍兵士としたり,物資輸送などで使役したのは,マオイスト自身である。これは国際的非難を浴びた。好意的に解釈すれば,その反省のもとに,これらの規定が憲法案に取り入れられた,ということであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/07/05 at 14:00

カテゴリー: マオイスト, 憲法, 人権

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