ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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タルーのキリスト教改宗も急増

ネパールでは,キリスト教は,クリスマス商戦用には大歓迎だが,本来の宗教としては,昨日も指摘したように,まだ強く警戒されている。タルーのキリスト教改宗に関するこの記事も,その一例。

▼Devendra Basnet, “Conversion to Christianity high among Dang Tharus,” Republica, 14 Dec. 2015.

記事によれば,ダン郡のタルー居住地域では,人民戦争終了以降,キリスト教徒が急増している。そのため,タルー社会の規範が守られなくなり,伝統的な文化や儀式の維持が困難になりつつある。

キリスト教布教は,タルー長老らによれば,ポスターを貼り教会へ誘う,カネや外国援助で釣る,など。むろん,これらの非難は繰り返し用いられてきた常套句だが,少なくとも伝統的社会の側からは,そのようなものと見えるのだろう。

開発格差,経済格差の大きいところでは,神々の争いもカネ絡み,利権絡みと見られる。難しい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/16 at 20:43

カテゴリー: 宗教

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キリスト教絵本配布事件,無罪判決

ネパールの裁判所が12月6日,イエス・キリストを描いた絵本(コミック)を生徒に配布したとして6月に逮捕された8人のキリスト教徒に対し,無罪の判決を下した。キリスト教会にとっては何よりの吉報であり,クリスマス集会では神の栄光が大いに称えられるであろう。

1.事件概要
この事件の概況は以下の通り。(参照:キリスト教徒,逮捕

2016年6月,Teach Nepal(カトマンズ本拠NGO)が,地震トラウマの生徒たちのため,ドラカ郡チャリコットのキリスト教系2校(Modern Nationl School; Mount Valley Academy)において,カウンセリングを実施した。その際,生徒たちにギフトバッグを配布したが,その中にイエス・キリストを描いたコミック絵本が入っていた。

これが地元で問題にされ,警察が6月9日,憲法26条(3)の禁止する改宗勧誘に当たるとして,2校の校長とTeach Nepalのメンバー5人を逮捕した。さらに6月14日には,チャリコット・キリスト教会の牧師まで逮捕してしまった。

2.無罪判決
逮捕された8人は,9日後保釈されたが,裁判は続き,ようやく12月6日になって,裁判所が無罪判決を言い渡した。メルヴィン・トマス(Christian Solidarity Worldwide代表)は,こう語っている。

「チャリコットの8クリスチャン無罪判決を歓迎するが,新憲法26条は改正されるべきであり,このことをネパール政府に対し,ネパール市民社会の人々と声を合わせ要求していきたい。」(*6)

3.キリスト教徒激増への反発
今回の事件は無罪判決で一応決着したが,この事件の背後には,キリスト教徒の増加,特に国家世俗化以降の激増へのヒンドゥー教徒多数派のいら立ちがある。

1951年 0人(記載なし)
1961年 458人
2001年 102,000人
2011年 375,699人

しかし,こうした国家統計は,キリスト教徒を過少集計しているという。「キリスト者連盟(Federation of National Christians Nepal)」によれば,現在,キリスト教会は国内に約1万あり,そのうち2千はカトマンズ盆地3郡にある。信者は,約300万人。その60%がダリットだという。

このキリスト教徒激増は,伝統的支配勢力たるヒンドゥー教徒多数派を警戒させ,キリスト教攻撃に向かわせている。「社会福祉委員会」は,キリスト教系外国援助をしばしば禁止しているし,また政府役人がキリスト教系の学校や孤児院を,キリスト教関係の本が1冊でもあれば閉鎖させるとか罰金を科すとかいって,脅すこともあるという。

こうしたキリスト教会との対立の激化は,宗教が大きな力を持つネパールにおいては,対応が極めて難しい。

ヒンドゥー教徒多数派は,新憲法において世俗国家規定を受け入れさせられはしたものの,生命線たる改宗勧誘禁止ないし布教禁止を第26条(3)に書き込むことには成功した。現行憲法の矛盾の象徴ともいうべきこの憲法の宗教規定を,今後どう扱うか? これは州区画以上に難しい政治課題とみてよいであろう。

Teach Nepal HP
 161210
 ”Equipping Children and Teachers for the Glory of God“(表紙掲載スローガン;引用者顔消去)

【参照】
*1 “Christian population shoots up under secula state,” Republica, Dec 9,2016.
*2 Lorraine Caballero, “Christianity in Nepal rising since 2008 secular democracy,” Christian Daily, 5 Dec. 2016.
*3 Andre Mitchell, “More People Turning to Christ in Nepal,” Christian Today, 8 Dec. 2016.
* Kaley Payne, “Nepali Christians freed after court drops case,” Eternity News, 8 Dec. 2016.
*4 “Crackdown on Christians in Nepal hits snag,” Morning Star News, 7 Dec. 2016
*5 Sarah Stone,”Christians Accused of Proselytising in Nepal Cleared of Charges,” Christian Today, 7 Dec. 2016.
*6 Stefan J. Bos,”Nepal Aquits 8 Christians Over Conversion Children,” Bos News Life, 7 Dec. 2016.
*7 ガガン・タパ議員(NC)ツイッター(12月20日)
 161217

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/12/15 at 22:38

カテゴリー: 宗教, 憲法, 政治

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改宗の自由の憲法保障,米大使館が働きかけ

アメリカ国務省が8月10日,「宗教の自由報告2015」を発表した。その中には,ネパールに関する重要な報告も含まれている。
 ▼“International Religious Freedom Report for 2015,” Bureau of Democracy, Human Rights and Labor, U.S. Department of State.

   160812■「報告」公告(米大使館FB)

この「報告」が,ネパールについて特に問題にしているのが,宗教に関する憲法規定。表現は抑制されているが,内容的には驚くべき事実が,そこには記述されている。核心部分は以下の通り。

「憲法起草過程を通して,米国大使,公使および大使館員は,刑事罰の恐れなき改宗の権利を含む完全な宗教的自由を憲法で保障するよう,ネパール政府高官らに対し,繰り返し強く要請した。米大使と大使館員は,ヒンドゥー教,仏教,イスラム教およびキリスト教の指導者らとも会い,憲法草案に対する彼らの考えを尋ねた。

また大使館員は,カトマンズや他の地域の少数派宗教の地域代表らとも会い,キリスト教徒やイスラム教徒が直面している諸問題につき,話し合った。そこでは,キリスト教徒が改宗を強要しているとするメディアや地域社会による糾弾,キリスト教徒やイスラム教徒の墓地取得が困難なこと,改宗禁止強行実施への懸念,そしてヒンドゥー教国家主義者によりキリスト教諸集団の社会的調和が乱される恐れ,につき議論した。」

ネパール憲法には,たしかに,この「報告」が指摘するような諸問題があることは事実だ。それはそうだが,だからといって独立国家の憲法問題につき,外国が大使や大使館員を動員し,もろに圧力をかけるのはいかがなものか? 内政干渉ではないか?

「報告」は,イスラム教や他の少数派宗教にも言及しているが,全体としてみると,アメリカが政府として,キリスト教のために,布教の権利や改宗の自由をネパールに対して要求している,という印象を禁じえない。

イギリス大使は,自ら改宗の権利の憲法保障を要求し,大問題になると,さっさと辞任し,帰国した。アメリカは,この「報告」が問題にされたら,どうするのだろう?

【参照】
(1)改宗勧奨: 英国大使のクリスマス・プレゼント
(2)「改宗の権利」勧告英大使,辞任
(3)宗教問題への「不介入」,独大使
(4)”Statement on the Promulgation of Nepal’s Constitution” (By John Kirby, Department of State Spokesperson, September 22, 2015)
 The United States congratulates the people of Nepal on their steadfast commitment to democracy. The promulgation of the constitution is an important milestone in Nepal’s democratic journey. The government must continue efforts to accommodate the views of all Nepalis and ensure that the constitution embraces measures consistent with globally accepted norms and principles, including gender equality, religious freedom, and the right to citizenship. ……(http://nepal.usembassy.gov/pr-09-22-2015.html)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/08/12 at 08:55

カテゴリー: 宗教, 憲法

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新憲法による初の宗教裁判

ドラカ郡チャリコットで6月9日,憲法26(3)条により禁止されている布教活動(改宗勧誘・他宗教妨害)の容疑で逮捕され,勾留取り調べ後,保釈されたキリスト教徒8人の裁判は,7月23日開始のはずだが,ネパールのメディアは,いまのところ全く報道していない。まだ裁判は始まっていないのだろうか? (参照:キリスト教徒,逮捕

ネパール・メディアとは対照的に,キリスト教系メディアは新憲法下での初の宗教裁判について,繰り返し報道している。この裁判がネパールのキリスト教会の存亡にかかわると危惧しているからである。

この問題は,間もなく発足するプラチャンダ政権(コングレス=マオイスト連立)にとっても,ジャナジャーティの包摂参加と並ぶ,難しい課題となるであろう。

▼ネパールの教会関係HP
160801b 160801c 160801a

[参照]
(1)Vishal Arora, “Nepal Christians await trial in first religious freedom case under new constitution,” World Watch, July 20, 2016
(2) Julia A. Seymour, “Eight Nepalese Christians Arrested for Illegal Proselytizing: The Country’s Controversial New Constitution Bans Converting Someone to Another Faith,” Christian Headlines, July 25, 2016
(3) Suzette Gutierrez Cachila, “Christians arrested for proselytising face trial in Nepal,” Christian Times, 26 JULY, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/08/01 at 18:40

カテゴリー: 宗教, 憲法

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キリスト教徒,逮捕

6月9日,ドラカ郡でキリスト教徒7人が逮捕された。2人は郡内私学2校の校長,他の5人はキリスト教団体「Teach Nepal」のメンバー。

この7人は,私学2校の課外活動中に,聖書小冊子『偉大な物語』を885人の生徒に配布した。これを地元政治家が聞きつけ,郡役所を動かし,警察に7人を逮捕させたということらしい。容疑は,憲法26(3)条により禁止されている改宗勧誘・他宗教妨害

この事件は,一般紙はあまり報道していないが,いまの政権の基本姿勢をうかがわせる重大な事件である。ネパールのキリスト教徒は,公式には37万5千人だが,実数は230万人に上るという。すでに一大宗教勢力だ。そのキリスト教会が,今回のような,いささか強引な布教活動をすれば,ヒンドゥー教多数派と衝突するのは当然だ。

現行憲法堅持なら,この種の宗教紛争は継続,激化せざるをえない。逆に,憲法改正に向かえば,ヒンドゥー教勢力が黙ってはいない。現政権は憲法堅持だが,いずれをとるにせよ,難しい選択だ。

160618a 160618b

[参照]
*1 “Nepal police arrest Christians accused of converting people to Christianity,” christiandaily.com, 15 June, 2016
*2 “Nepal arrests seven Christians over allegations of converting people to Christianity,” christiantimes.com, 14 JUNE, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/06/18 at 11:24

改宗勧誘は禁錮5年,刑法改正案

オリ政府が,改宗勧誘処罰を規定する刑法改正案の議会提出を準備している。これに対し,宗教関係者,とくにキリスト教会が激しく反発している。先述のクリスマス公休祭日指定取り消しともあいまって,今後,大きな問題となりそうだ。

1.憲法の宗教関係規定
【1990年憲法】
第4条 王国
(1)ネパールは,・・・・ヒンドゥー教の立憲君主国である。
第19条 宗教に関する権利
(1)・・・・何人も,他人をある宗教から他の宗教に改宗させる権利を有しない。
【2007年暫定憲法】
第4条 ネパール国家
(1)ネパールは,・・・・世俗的な連邦民主共和国である。
第23条 宗教に関する権利
(1)・・・・何人も,他の人をある宗教から他の宗教に改宗させる権利を有しない。他の人の宗教を害するような行為は,なされてはならない。
【2015年憲法】
第4条 ネパール国家
(1)ネパールは,・・・・世俗的な連邦民主共和国である。
原注(स्पष्ताकरण):本条でいう「世俗的」は,古来の宗教と文化の保護ならびに宗教的および文化的自由の保護を意味する。
第26条 宗教的自由への権利
(3)何人も,・・・・他の人をある宗教から他の宗教に改宗させること,または他の人々の宗教を妨害することをしてはならない。そのような行為は法に則り処罰される。

このように,ネパール憲法は,一貫して改宗勧誘の禁止を規定してきた。それは,厳密に解釈すれば,当然,布教の禁止となる。したがって,この改宗勧誘禁止規定は,体制派ヒンドゥー教以外の諸宗教,とくにキリスト教会やマオイスト左派により,繰り返し厳しく批判されてきた。

しかし,いかに批判されようが,改宗勧誘禁止規定は憲法の中に残された。ネパール体制派が,改宗,とくにキリスト教への改宗をいかに強く警戒してきたかが,この憲法規定を見るとよくわかる。

2.刑法改正案の改宗勧誘処罰規定
オリ政権が進めている刑法改正は,この憲法の改宗勧誘禁止規定を根拠にしている。改正案の骨子は次の通り。

【刑法第156条】
(1)何人も,他の人々を改宗させてはならない。他の人々の改宗は,組織的働きかけによってであれ,唆しによってであれ,行われてはならない。
(2)何人も,いかなる形の利益供与に依っても,もしくは依らなくても,または少数者集団もしくは少数者共同体が古来維持してきた宗教や信仰を妨害することによって,他の人をある宗教から他の宗教に改宗させてはならないし,また同様の意図をもって自分たちの宗教や信仰を他の人々に宣べ伝えてはならない。
(3)上記(1)および(2)の罪を犯した者は,5年の禁錮および5万ルピー以下の罰金に処する。
(4) 上記(1)および(2)の罪を犯した外国人は,本条の定める禁錮刑の期間満了後,7日以内に本国に送還されなければならない。
(RAMESH KHATRY, ”Not really secular,” Kathmandu Post 10 Apr; Prakash Khadka, “Anti-conversion law will send Nepal backwards,” UCAN India, 14 Mar)

この刑法改正案が成立し,厳密に適用されることになれば,あらゆる布教活動は事実上できないことになる。このような刑法改正案が,本当に成立するのであろうか?

■ネパール王国国章

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/16 at 14:56

カテゴリー: 宗教, 憲法

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クリスマスと布教の自由問題

1.ネパールのクリスマス広告
ネパールのクリスマス広告は、一時よりは控え目となったが、それでも新聞には大きな広告が出ているし、ヒンドゥー教徒の友人からもクリスマスカードが多数送られてくる。キリスト教は、商売先行だが、着実に勢力を拡大しつつある。

121224a ■Republica, Dec24

 121224b ■YES KANTIPUR, Dec24

2.布教活動の活発化
アジアニュース(カトリック系)によると、今年は、ヒンドゥー原理主義者の脅はなく、被昇天大聖堂教会では、ヒンドゥー教徒も仏教徒も参加し、安心してクリスマスを祝うことができる。これは、クリスマスが国家祭日として公認されたことが大きいという。

“2006年のヒンドゥー王制崩壊後、政府は、観光促進のためクリスマスを国家祭日とした。これによりキリスト教徒は、聖像などを店内でも、教会や自宅の外でも飾ることができるようになった。現在、カトリック教徒は1万人。これは、2006年の世俗国家移行時よりも4千人の増加である。

宗教の自由が拡大したことにより、信仰を公にするカトリック教徒の数が増えた。教会は、クリスマス行事を行い、庭には十字架やツリーや花環を飾っている。もはや装甲車は必要ない。

このように表に出て活動できるようになったおかげで、多くの人がカトリックに関心を持ち始めた。カトマンズのある小さな教会では、クリスマス・ミサで24人が洗礼を受ける。ほとんどがヒンドゥー教徒だ。

大聖堂教区ロビン・ライ神父は、人類のためにイエスが生まれたことの本当の意味の証となるよう、信者に呼びかけた。「すべての人が信仰告白により信仰を強化し、キリストのお告げを全国にあまねく広げていってほしい。」

ネパールでは、近年、たいていはヒンドゥー過激派によるものだが、少数派宗教への攻撃が続き、殺害もあった。最悪の事件は、2009年5月23日のカトリック大聖堂攻撃であり、このときは2人が殺され、13人が負傷した。

2011年からは、保守諸政党の提案する改宗禁止法の施行もまた、議論されるようになった。しかしながら、この刑法改正への動きは、新憲法制定問題のため、いまのところは議会で止まっている。”(Asianews.it, 2012-12-20)

3.カトリックの柔軟さと強さ
カトリック教会は、形式主義でありながら、いや形式主義だからこそ、きわめて柔軟であり、それがプロテスタントにない強みとなっている。とにかく、利用できるものは何であれ、布教に利用する。

前掲記事では、「観光促進のためクリスマスを国家祭日とした」と皮肉・嫌味をいいながら、ちゃっかりそれを布教に利用している。キリスト教団体幹部のKB・ロカヤ氏は、クリスマスはヒンドゥー教徒のビジネス・チャンスになっていると皮肉りつつも、「その盛り上がりにより、少数派キリスト教徒の境遇は改善された」と歓迎している。

あるいは、アジアニューズの別の記事(12月10日)は、在ネパール国連人権担当官ロバート・パイパー氏がクリスマス慈善フェアに出席し開会を宣言したことを特筆し、「大部分の慈善用商品はキリスト教徒、ヒンドゥー教徒、仏教徒がつくったクリスマス関連商品であり」、フェアの成功はこれらの人々の「勝利」であると高く評価した。ここでもカトリック教会は、信仰の純粋さなど問題にせず、とにかく利用できるものは利用し、キリスト教受容の下地をつくり出すことに努力している。理屈のプロテスタントにはない、カトリックの幅の広さと強さである。

4.布教禁止規定の存続
先の記事にあるように、キリスト教にとって最大の法的障害は、憲法の改宗強制(布教)禁止規定である。これは世界最先端の超進歩的暫定憲法にも、以前の憲法からそのまま継承され、残っている。

「何人も、他の人を別の宗教に改宗させることはできない。」(第23条1)

これはもちろん改宗強制の禁止規定だが、布教は改宗勧誘に他ならず、容易にこの規定により禁止できる。そして、事実、この規定により布教は事実上禁止されるか、あるいは厳しく制限されてきた。

この改宗強制禁止規定が、西洋諸国の強い反対にもかかわらず、暫定憲法に残されたのは、まさに布教問題こそが、ネパールのヒンドゥー教社会の死命を制すると見られてきたからである。布教禁止規定の正否・善悪は別として、この状況認識そのものは、正確に問題の核心を突いていると言ってよいだろう。

現在、正式憲法の制定が焦眉の課題となり、そこでは連邦制に議論が集中しているが、ネパールの国家社会にとっては、それよりもむしろ、この布教禁止規定ををどうするかの方が、長期的には重要な問題だといっても決して言いすぎではあるまい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/12/24 at 17:43